やはりあーしの青春ラブコメはどうかしている。 作:Vierres
「あ。」
メールの着信音に結衣が携帯を覗くと、落胆した表情になった。
あーしもほぼ同時に自分の携帯に来たメールを見て、ため息をついた。
「比企谷君?二人に卑猥なメールを送るのは止めなさい。あなた彼女達に嫌われたら本当に居場所が無くなるわよ?」
「おい、雪ノ下。どうして二人がメールをみて落胆したら犯人は俺なんだよ。大体な俺はクラスの誰のメールアドレスも知らん。」
「あら?誰からも教えてもらえていないの?残念ね?」
「そう言うお前はクラスメイトのメールアドレスを知ってるのかよ?」
「ええ、知っているわよ?いつもクラス替え毎に、皆がアドレスの交換をしに来るもの。」
「ああ、そうかい。そりゃよかったな。」
え?比企谷君クラスの誰ともアドレスの交換してないの?
そういえば、始業式の日も一人でボーっとしてたっけ・・・。
「あ、あの・・・、比企谷君?ゴメン。その・・・、部活の連絡とかクラスの連絡とかあるし、あーしとアドレスの交換して?」
「あ、あたしもお願い!」
あーしと結衣は速攻で比企谷君にアドレス交換のお願いをした。
「ほい、携帯を渡すから番号とかアドレスとかテキトーに入れておいてくれ。」
ええ?
携帯電話をあーしに渡しちゃってイイの?
「えっと、あたし達が中身見てイイの?」
結衣も戸惑ってる。
「見られて困るようなものは何もないからな?ほら、PINコードは打ったからお前らでも操作できるぞ?」
「あなた、アドレスの登録がそんなに面倒なの?あ、ごめんなさい?今まで登録とかしたことが無かったからやり方が解らなかったのね?」
「いや、知ってるし!中学の時とかアドレス交換とかしたし!」
「そう?よかったわね。」
雪ノ下さんは、そのまま興味なさげに文庫本をまた読みだした。
「ねぇ、比企谷君?この小町っていう子は誰なの?」
結衣、ナイス!あーしも気になってた。
だって、彼のアドレス帳には両親と小町って子の三人分しか登録されてなかった。中学の時のアドレス交換したって子が小町って子?
それと、あーしが以前に渡したアドレスは、結局登録してくれてなかったんだなー。
「ああ、それ妹だ。因みに世界一可愛い。」
「いや、そんな情報要らんし!」
結衣はそう言い捨てたけど、
「あー、妹さんかぁ・・・。」
あーしは少しだけ胸を撫で下ろす。
「そういえば、さっきメールを見て落胆してたけどどうしたんだ?」
「うん、このメールなんだけどね・・・。」
あーしは自分の携帯に着信したチェーンメールを比企谷君と雪ノ下さんに見せた。
「うわー、今時チェーンメールか・・・。まぁでもアレか・・・、匿名で噂を広めるならこの方法が手っ取り早いか・・・。」
そう、最近クラスの中であーしと比較的仲がいい、男子三人に関する中傷の匿名メールだ。
『戸部は稲毛のカラーギャング。ゲーセンで西高狩り』
『大和は最低の三股野郎』
『大岡はラフプレーで相手校のエース潰し』
「おい、戸部が何気に酷いな?あとコイツ等全員、三浦達と比較的仲がいい連中だよな?」
「あら、そうなの?三浦さん。」
「うん、あたしや優美子、それに姫菜って子と良く一緒につるんでるだよ。」
「なら、あなた方とお近づきになりたい人の嫌がらせなんじゃないの?ね、比企谷君?謝るなら今のうちよ?」
「だから俺じゃねーって!大体、この二人のアドレスは今貰ったんだぞ!」
「ふふ、冗談よ。」
「雪ノ下さん、それ冗談になってないから!あー、部室で良かった。」
「だ、だね・・・。今うちの教室少し殺伐としてるからさ・・・、特に三人の耳に入ったらヤバいかも・・・。」
「そ、そう・・・、ごめんなさい。迂闊だったわ・・・。比企谷君もごめんなさい。軽い冗談のつもりだったのだけれど・・・。」
「いや、まあ、構わんけどお前に友達が居ないのはそう言う部分なんじゃないか?もう少し注意した方が良いぞ?」
「面目次第もございません・・・。」
ホント、雪ノ下さん。最近ポンコツに磨きが掛かってるんだけど?
「ん?けど、お前らと仲がイイって言えば葉山は何で名前が出ないんだ?アイツだって叩けば埃くらい出るだろう?この前のテニスコート乱入事件とかも有るんだし。」
「そういえば、そうかも?」
「でも、隼人君って何時でもみんなの中心にいてまとめ役って感じだし、悪口とか言いにくいんじゃ?」
そうだ、隼人はあーし等と休み時間を一緒に過ごす事が多いけど、一つ所にべったりと言う訳ではない。案外まんべんなくクラスの皆と仲良くやっている。
唯一の例外は比企谷君だけだ。
「困ったわね・・・。そのメールが届きだしたのは、いつ位からなのかしら?」
「うーんと・・・、先週の中頃からかな?」
「テニス事件から時間は、それなりに経っているわね?先週の中頃で何かクラスで事件とかナニかなかったかしら?」
「どうしたの?雪ノ下さん?ナニか気になる事でもあるん?」
雪ノ下さんは姿勢を正して、比企谷君を見つめる。
「そうね、コレは放置できないわ?噂がこれ以上酷くなると大変なことになると思うのよ。」
「だから!俺を見て言うなよ!」
「勘違いしないで。最大の被害は貴方に及ぶのよ?比企谷君。」
「「え?」」
「考えてみなさい。クラスの中心人物の友人達に悪いうわさが流れているのよ?その中心人物と交流の無いのは・・・?そう、比企谷君だけよね?まあ、表向きは、だけれど。先ほど、三浦さんが言ったわ?冗談になってないって。二人がそう感じているのであれば、早急に犯人を見つけて止めさせないと、比企谷君が犯人にされてしまう恐れが有るわ?」
「「「!」」」
「なので、三浦さん、由比ヶ浜さん。お願い、協力してもらえないかしら?犯人を見つけ出す為の。」
雪ノ下さんがあーし等に頭を下げた。
ええ?雪ノ下さん!とんだツンデレさんだったよ!あーし今まで、ぜっんぜん気が付かなかった!
コレは、あれだ。
好きな子には意地悪して気を引きたくなるってヤツ!
あーしも負けていられない・・・。
「と、とにかく先週の中頃にクラスで何が起きたのかを、もう一回冷静に考えようよ?優美子。」
結衣にしては、真面な返答だ。
「けど、事件が起きたのが先週の中頃なんだろう?だったら、原因はもう少し前に有るんじゃないか?」
「そうね?燻っていたものが爆発したのが先週中頃と考えるべきよね?」
「だとしたら、先週の初めのころ?」
「うーん・・・、先週の初めと言ってもなぁ・・・。職場見学の班分けを今週の末までに決めておけってホームルームで言われた事くらいしか俺には解らんわー。」
「あ!」
あーしは思わず声を上げた。
「職場見学!」
結衣も何か気が付いたように声をあげる。
「なるほど・・・。」
雪ノ下さんも判ったみたい。
「え?」
比企谷君以外は心当たりがあるみたいだ。
~~~~~~~~~
「で、本当にあの三人の中に犯人が居るのか?」
翌日の昼休み。
あーし達はもう一度部室に集まり、クラスの中の状況を整理してみた。
あーし達女子三人の予想は、犯人は戸部、大和、大岡の三人の中の誰か。
理由は職場見学の班分け。
三人で一つの班を作る。
葉山隼人と組みたいなら、誰かがあぶれることになる。
どうしても組みたいなら、誰かを蹴落とさないとイケなくなる。
それと、あーしらのクラスは三三人。男子一七人女子一六人で三人ずつだと丁度十一の班が出来る。
因みに普通に分けると男子が一人余り、女子二人と組むことになる。
なので、予めあーしと結衣は姫菜に断りを入れて、比企谷君と組むことにした。これで、比企谷君が班分けに余ってしまい妙な噂に乗せられないように出来たハズ。
班が出来たグループは、教室後ろの掲示板にメンバーの名前と見学の希望先を書いて貼りだす。
見学の希望先は、比企谷君が自分の自宅とかふざけた主張を譲らなかったけど、あーしも丁度最終就職の希望先だし是非とも見学したかったから賛同したら、あっさりと市役所に変更しやがった。
まあ、公務員って安定してていいよね?
知らんけど。
あと、最終就職の希望先はちゃんと見学しておかないとだから、コレはいずれ実行するとしよう。
「むしろ、葉山をあぶれさせる為の罠の可能性はないか?葉山と組みたい女子は多いだろう?女子二人と男子一人の組は絶対に出来るんだし。」
その可能性を考慮して、あーしと結衣は一計を案じた。
「その辺の恐れもあるんで、一応保険を掛けておいた。」
「うん、姫菜に隼人君と組んでもらうの。」
「あと一人は?どうするのかしら?」
「比企谷君が言う通り女子の犯行なら恐らくは、残りの枠に名乗りを上げるはず。」
「誰も名乗りを上げず、噂が沈静化したら犯人は3人の誰かの可能性が高い。と言う訳ね?」
「班分けは大体クラスの半分くらいが終わってるし、期限は明日までだからね?今日の感じだと、まだ動きは出ていないけど・・・、チェーンメールはあーし達が今朝、班を作って掲示板に貼りだした以降は送られていないよ?」
「渦中の男子三人の雰囲気はどうかしら?」
「うーん、気まずそうにしているけど他に組む相手が居ないみたいで、三人で組むみたいだよ?」
午後の予鈴が鳴り、あーし達は教室に向かう。
「あ!三浦さん!由比ヶ浜さん。それと、比企谷君も!」
「よっす!戸塚!」
「よっす!みんな。ところで職場見学の班、三人で組むんだね?いいなぁ、ボクも比企谷君と組みたかったよ~。」
「え、マジか?昨日言ってくれていれば組めたんだよ・・・。そうだ、三浦?由比ヶ浜?どっちか抜けてくれない?俺、戸塚と一緒がイイ。」
あーしと結衣はその瞬間、比企谷君のお尻に蹴りを入れた。
「ちょ!暴力反対・・・。」
「あはは、ホント三人は仲がいいね!僕は他の人を当たってみるよ!」
戸塚は教室に走って行った。
~~~~~~~~~
放課後になっても例のチェーンメールは届かなかった。
やっぱり、犯人は三人の誰か?
あーしが、そんなことを考えながら机を片付けていると・・・。
「ねぇ、ヒキタニの班が決まった途端に、変なメールが来なくなったね?」
は?
「あー、だねー。ほら、例のメールで噂になってたのって、三浦さんと仲がイイ三人だったもんね^。」
「結局アノ三人は他の人と組めずに、三人だけ孤立しちゃったねー。」
相模と仲がいい子達が皆に聞こえるように通る声で変なことを言い出した。
クラスを見渡すと、皆の視線があーしと比企谷君に集中している・・・。
そして、戸部・大和・大岡の刺すような視線が比企谷君を射抜いている・・・。
比企谷君もその圧に押されて、席を立てなくなっているようだ。
「それにしても、ヒキタニが三浦さんや結衣ちゃんと組むとはねー?」
「教室では全然話とかしないから、交流が有るとか誰も知らなかったよねー。」
相模も調子に乗って話に加わる。
アンタがソレ言うか?
二週間ほど前にあーし達とテニス対決しただろう?
「なぁ、ヒキタニ君?ちょっとイイかなー?」
戸部が比企谷君の席に近づく。それに合わせて大和と大岡も・・・。
「わりーけどさ、ちょっと携帯みしてくんない?」
「ちょ!戸部!なんで比企谷君の携帯を見たいのさ!」
「いやー、念のためだっしょ?」
「でも、人の携帯を見るとかは!」
「いや、大丈夫だ。三浦、俺の携帯の中身は知っているだろう?」
!
そうだった。
電話番号もメールアドレスも登録しているのは五人だけだ。
メールの着信は全部企業の広告とアマゾンのお知らせ。
送信履歴に至っては、何もない。
家族ともメールの遣り取りは無いんだろうなぁ・・・。
「戸部にも大和にも大岡にも全部見せるよ。けど代わりにお前らの携帯の中も俺には見せろよ?俺だけ疑われたんじゃ、不公平だしな。」
「ふん!それは当然だろ?俺達3人はもうお互いの携帯を確認しあってるしな。」
大岡はお互いの携帯を確認しあってる事を口に出した。
ええ?じゃあ三人は犯人じゃないの?
だとしたら・・・?
ふと相模を見ると、うっすらと笑いながら此方を見ている。
「ほらよ?PINコードを打ち込んだから、好きなだけ中身を見てくれていいぞ?」
「隠しフォルダとかないか?」
「メールボックス以外も確認しよう。」
「あれ?メールアドレス五人しか登録してないぞ?」
「どうだ?因みに三浦と由比ヶ浜は同じ部活だから、アドレスが有るけど登録したのは昨日だ。」
あーしは、その言葉に首肯した。
「あーしも昨日、比企谷君の携帯の中を見たけど、その時は家族の三人しか登録してなかったからね?」
あーしの言葉に苦虫をつぶした顔をしたのは、相模。
「なぁ?みんな?クラスメイトを疑うのは、もう止めよう?疑いだしたら関係がギスギスするだけだろう?皆で仲良くやって行こう。」
隼人が声を掛ける。
「それは無理ね。だって貴方には出来なかったでしょう?」
「雪ノ下さん・・・?」
「由比ヶ浜さんにメールで連絡をもらったわ。悪質なチェーンメールの犯人は罪を比企谷君に擦り付けたかったみたいだけど、とんだ誤算だったわね?」
雪ノ下さんは結衣の連絡を受けて、この場に駆け付けてくれたのだ。
「戸部君だったかしら?あなた達はお互いの携帯を確認しあった上で比企谷君の携帯を見のよね?なら、他のクラスメイトの携帯は確認しないの?犯人は必ずこのクラスに居るわよ?」
更に、雪ノ下さんは戸部を挑発する。
「自分たちの根も葉もない悪い噂を流されて腹が立つでしょう?」
「お・・・、おう、そうだ戸部、この際だからクラスのみんなの携帯を確認させてもらおうぜ!」
「だな、メールが初めて届いたのが先週の授業中だから、この教室で送信されてるハズだぞ。」
「そうね?確認した方がいいわね。ねえ、葉山隼人君?四人グループで貴方だけ悪い話が出ていないのだし、先ずはあなたの携帯を三人に見せてあげたらどうかしら?」
「な、なにを言い出すんだい?雪ノ下さん・・・。」
え?どうして隼人が慌てるの?
「ちょっと!雪ノ下さん?他のクラスの事に口出ししないでくれます?雪ノ下さんは関係ないよね?」
「あら?うちの部の大事な部員が疑われたのよ?無関係どころか当事者よ?私は。」
雪ノ下さん・・・。
「ちょっと待ちなよ!三人は葉山君があんな酷いメールを送るとか思ってないよね?友達でしょ?」
相模の取り巻きの子達だ。
「そ、そうだよ。俺にだって携帯には人には見せられないデータとか有るんだよ?」
「ふーん・・・、その割に三人が比企谷君の携帯を見せろと言ったときは止めなかったね?クラスの人間のアドレスが登録されてると思ってたん?誰ともアドレスの交換をしてなかったから、チェーンメールを受け取ることもなく、噂も知らなかったんだけど?当然、アドレスが無いから送信も出来ないよね?」
あーしは隼人に詰め寄り
「なあ、戸部?あんた同じ部活で一番付き合いが長いんだからさ、代表して隼人の携帯を確認してくんない?女のあーしじゃ見ちゃいけない画像とか有ったら困るしさ?」
「解った・・・。」
隼人は自分の携帯を出したんだけど・・・。
「なに?コレ壊れてんじゃねー?」
「あ、ほんとだ電源が入らない。」
「なんか、水?」
「余計な詮索をされたくなかったんだけどね?戸部、今日の朝練の後の事を覚えているかい?」
「朝練・・・?あ!ゴメン!・・・、その携帯を壊したの俺だ・・・。」
「え?」
あーしは目が点になった。
「いやー、練習が終わって水場で汗を拭いてる時にさ、隼人君の携帯を水の中に落としちゃったんだよ、俺。」
「おかげで、俺は携帯が壊れてしまったんだ。」
「えー、葉山君ってば災難~。」
相模の曇っていた顔も晴れている?
もしかして・・・。
結局、戸部はクラスの男子の携帯のデータを確認し、相模とあーしで女子の携帯のデータ確認をしたけど、怪しい痕跡は見つからなかった。恐らく、相模と隼人の二人はこの件に関わっていると思ったけど、確証が取れなかった。まさか、隼人の携帯が朝から請われていたとは・・・。
それで朝からチェーンメールが送られてきていないなら、犯人はやっぱり?
少なくとも、あーしはそう確信してしまった。
こうして、このクラスでのあーし達のグループはバラバラになった。
大和と大岡は相模のグループとつるむようになり、戸部はあちこちのグループにチョッカイを掛けては迷惑がられている。
隼人はどちらかと言うと相模寄りになったようだけど、時々はあーし達の方にも首を突っ込んでくる。
あーしや結衣に未練でもあるんかな?
で、職場見学は、大半が隼人と同じハイテク企業の会社見学を希望し、班分けの必要が有ったのかどうかは疑問だ。
あーしと結衣、それに比企谷君は何故か雪ノ下さんの班と一緒に市役所の見学を回ったのだった。
雪ノ下さん?もしかしてウチのクラスに来た時に、あーし等の見学希望先をチェックしていたの?