やはりあーしの青春ラブコメはどうかしている。 作:Vierres
奉仕部での昼休みと放課後の勉強会のおかげもあり、あーしの中間試験の結果は目を見張る程向上した。
一年の時は何とか一00位以内をキープは出来ていたが、正直伸び悩んでいた。けれど、奉仕部での勉強会であーしは苦手な国語科目や社会科目の弱点をかなり克服できた。
その証拠に、あーしの順位は何と総合で四0位だ。
結衣も全科目で赤点を回避して、ほぼ平均点に近い点が取れていた。
で、沙希はなんと二0位だったそうだ。
いつも遅刻してきてたし、見た目がチョット不良っぽいからそんなに成績が良いとは思っていなかった。
「で、比企谷君?この数学の点数はなに?あなた、私と三浦さんがみっちりと数学を教えたわよね?全く平均点に届いていないのだけれど?数学だけなら、由比ヶ浜さんの点数の方が上なのよ?もう生きているのが恥ずかしいレベルではなくて?」
雪ノ下さんの毒舌が容赦ない。
「あたしより下だと生きてて恥ずかしいレベルなんだ?!」
結衣・・・。まあ、今回は頑張ったんだからさ。
「みんな、ありがとう。おかげで予備校のスカラシップも無事に取れたよ。」
沙希は、柔らかい笑顔で皆にお礼をいう。
スカラシップについては、あーしも何とか取れた。
志望コースの選択で比企谷君のアドバイスが功を奏したのだ。
「取り合えず、比企谷君と由比ヶ浜さんは期末試験まで頑張るわよ?覚悟なさい。」
「ええ~。試験終わったばっかじゃん!チョットは遊ぼうよ~!」
「そうね?では、由比ヶ浜さんはこの問題集が全問正解出来たら遊びましょう。」
雪ノ下さんは、どこからか分厚い問題集を出してきた。
結衣・・・、寝る暇ないね。
「俺も頑張らないといけないのか?」
「当然でしょう?」
雪ノ下さんは、どうしてそこまで比企谷君に拘るの?
「比企谷君にはこの問題集を用意したわ。この問題集を来週いっぱいで全部解いておく事。毎日部室で進捗確認もするから、二人ともそのつもりでね?」
結衣も比企谷君も、うげーって唸ってるケド、まあしょうがないよね?
結衣はホント二年に上がる時もギリギリだったって本人が言ってた。
比企谷君は理数系をもう少し頑張れば、地方の国公立なら現役で狙えるレベル。
今から雪ノ下さんの特訓についていけば十分に結果が出そう。
確か私立の文系って言ってたけど、どの辺?学部とかは?国公立にランクアップをするなら千葉大とかかな?通いやすいし。
「はぁ・・・、今日も終わったな・・・。やっと部活終了か・・・。」
比企谷君が少しヤツレテる?
「今日も依頼来なかったね・・・。」
結衣は毎日依頼を心待ちにしている様子だ。依頼が有れば期間中は勉強会も無しになると思っているんだろうけど、あの雪ノ下さんがそんなに甘くは無いと思うよ?
完全下校のチャイムの音に合わせて、あーし達は部室を出た。
結衣は家が学校から近いので徒歩。あーしは駅までバスを利用してそこから電車。比企谷君の家は一番遠いけど自転車での通学だから、三人で一緒に帰ることは滅多にないのだけど、今日は何故か比企谷君が自転車ではなかったので結衣が帰りに甘いものを一緒に食べないかと誘ってきた。
「じゃあな、二人とも気を付けて帰れよ?」
何故かそのまま帰ろうとするし!
「ちょっと!さっき誘ったよね?聞こえてなかった?」
結衣も慌てて引き留めようとする。
「え?今、俺って誘われてたのか?え?俺が一緒でイイのか?」
「そ、そのつもりで誘ったんだけど・・・。」
「そうだよ!一緒に行こうよ。」
あーしも押してみる。
駅そばのドーナッツ屋
「良いのか?由比ヶ浜、みんなの分を出して。」
「あー、うん。大丈夫、ドーナッツと飲み物だし、比企谷君と優美子とは一度ゆっく
りとお話してみたかったの。だから今日は私のオゴリ。」
「結衣、ホントにお小遣い大丈夫なん?」
「えへへへ、ほら中間試験でさ、あたしメッチャ成績上がったじゃん?ママから特別
のお小遣いも貰ったんだ。二人は勉強も見てもらってたし、そのお礼も兼ねて。」
「なら、雪ノ下も呼んだ方が良かったんじゃないのか?イイのか?ハブっちゃって。」
「あー、ゆきのんは今度別の形でね?それこそ、ドーナッツ程度じゃ失礼だろうしさ。」
あー、まあそれもそうか。
試験前は殆ど付きっ切りだったもんね。
雪ノ下さんって、結構毒舌なんだけど頑張る子に対しては思いのほか面倒見がイイ。
「ねえ、優美子?なんか新鮮だね?」
「だね!あーし等三人クラスメイトで同じ部活なのに、一緒にこういうとこに来た事無かったもんね。」
「比企谷君、どしたの?ずっと無口だけど・・・、一緒に来るのイヤ、だった?」
「え、あ、すまん。部室でならアレなんだけどな?こういう処に妹以外の女子と来た事が無いんでな、何を話したらいいか解らん。」
あ、そうか結衣とはオタクな話とかできないモンね。結衣やあーしから何か話題を振らなきゃとは思うんだけど、あーしも実は最近結衣と二人だと会話が続かない。あーしの中の心のわだかまりが結衣との間に壁を作っている。
「あ、あのね?今日はチャンスだと思ったから二人を誘ったんだ。あたしの話を聞いてくれる?」
「結衣、どしたん?」
「ああ、俺で良ければ・・・。」
~~~~~~~~~~~~~
「比企谷君。ごめんなさい!」
結衣はそう言うとイキナリ頭を下げた。
「お。おい・・・。」
「本当はもっと早く謝りに行きたかったの・・・。でも、その・・・。比企谷君、脚の具合はやっぱり・・・?」
結衣は入学式の時の話をしてくれた。
それは、高校の入学式の日。
結衣は毎朝の日課の犬の散歩をしていた。
結衣の家は高校の近くだ。
比企谷君は新生活に浮かれて、一時間以上早く自宅を出て自転車で学校に向かっていた。
学校のそばまで来た時、結衣が散歩に連れていた子犬のリードが外れてしまい、道路に飛び出した。
偶々通りがかった比企谷君が道路に飛び出し、結衣の犬を助けた。
救急車で病院に運ばれ、彼は入学式どころではなかった。
全身の打ち身と左脚骨折。彼はそのまま三週間ほど病院で過ごす事になった。
どうりであーしが何時教室の前を通っても教室に居なかったハズだ。
それにクラスの子に知られていなかったのも、その事故のせい。
元々人間関係を築くのが苦手な彼はクラスでボッチとなり、遅れてた授業の内容も誰にも聞けず、特に数学は完全に躓いてしまった。
そして、左脚。
「この左脚な?医者は完治してるって言うんだ。何度も検査を受けた。普段は何ともないんだ。普通に走れるしな?だから体育の授業も普通に出てる。でも、時々足が痺れてな?医者は精神的なモノじゃないかって言ってる。だから一応は月に二度は病院に通ってるんだ。だからなんだろうな?左脚を庇う癖がついてな。」
「じゃあ、脚は?」
「ああ、何でもないんだ。由比ヶ浜を苦しめていたのなら、すまない。」
比企谷君も頭を下げる。
「それに俺がお前の犬を助けたのは偶然だ。それが他のヤツの犬でも助けたと思う。だから、由比ヶ浜お前が気に病む必要はない。もう忘れてくれ。」
最後にそう言って、比企谷君は帰って行った。
「ねぇ、優美子?さっきの話本当かな?本当に脚は治ってるのかな?」
「うーん、あーしもテニスの時にさ、時々脚を引きずってるのを見かけたんだ。だから何かあるとは思ってたんだけど・・・、あ!」
「どしたの?優美子。」
「小町ちゃん!妹の小町ちゃんにこっそり聞いてみるよ。あーし連絡先を交換してるしさ。任せて!」
その日の夜、あーしは小町ちゃんに初めて連絡を入れた。アドレスを交換したのは、かれこれ3週間ほど前だ。けど、あーしも色々怖くて連絡を入れられなかった。
ずるいけど、比企谷君の脚の事は、あーしを助けた時じゃなかった。それが解って気持ちが軽くなっていた。
小町ちゃんの話は比企谷君の話と同じだった。口裏を合わせていないとは言えないけど、考えたら体育の時間に普通に走っているのを見た記憶がある。結構キレイなフォームで走っているの覚えている。
あ、いや。
あーしストーカーとかじゃないから!
ここはもう少し探りを入れる必要はあるので、小町ちゃんには協力を依頼した。
彼を休日に呼び出す手段についてだ。
結衣には、小町ちゃんと遣り取りした内容をすべて話して安心させた。
結衣は彼に謝りたかったんだ。助けてくれたお礼を言おうとして彼の脚の異変に気が付いて、そのままお礼も言えず謝罪も出来ないまま時間が過ぎたのだろう。クッキー作りはそれを打開する手段だったんだろう。
でも、その助けを求めた奉仕部に彼が居た。
結局、何もできずに時間だけが無為に過ぎていたんだ。
もしかして、彼は結衣の心の葛藤を察したから、あーしにも結衣に問い詰めるなと言ったのだろうか。
もしかして、あーしの事も覚えていてあーしに気を使わせないようにする為に知らない振りをしてくれているのかな?
深読みし過ぎかも知れないけど、彼ならやりそうだ。
彼と関わるようになって約2か月。
短い時間だけど、彼の為人はそれなりに理解してきている自信がある。
~~~~~~~~~~~
「で、なんで三浦がココに居んの?あれ?小町は?」
「あれ?小町ちゃんから聞いてない?ほら、ななはの映画。昨日から封切じゃん?偶々チケットが何枚か手に入ったからさ?一緒に行こうよ?」
「えー・・・。」
ちょ・・・、露骨にいやそうな顔をされるとマジ落ち込むんですけど?
「お前、俺と二人でアニメとか見に来て良いのか?学校の連中に見つかったら、後で馬鹿にされるぞ?」
「うーん、ここ南船橋だし?そうそう学校の知り合いには会わないんじゃ?それに朝一の上映だから、大丈夫っしょ?」
そう、今日の映画の一回目の上映は八時四五分からなのだ。ここ、ららぽーと東京ベイの一般の店は早くても一0時からだし、飲食店はさらに一時間以上後の開店だ。
同じ映画が目的でなければ、鉢合わせすることはないし、もし知り合いと鉢合わせすれば同好の士のハズ。
なら、OKでしょ?
あーしだって綿密に計画を練ったんだよ?
で、小町ちゃんに比企谷君をココに呼び出してもらうお願いをしたら、二つ返事で了解してくれたのだ。
実は前売り券は六枚買ってある。
まあ、特典が六種類全部欲しかったってのも有ったんだけど、ママに事故の時に助けてくれた子と同じ部活をするようになって、お礼がしたいと言ったら比企谷君を後日でいいから、家に連れて来る事を条件に特別にお小遣いを出してくれたのだ。
で、これで上手く行けば比企谷君と三回の映画デートが出来るわけですよ!
「チケット代はいくらだ?出すよ。俺もそのつもりだったし。」
「いや、ホント大丈夫!そこは気にしないで!ほら、あーしも隠れオタクっての?実はアニメを映画館で見るのは初めてだし、独りだと心細いんよ。偶然チケットが手に入っただけだしさ?お願い。」
ココではまだ、六枚も持っていることは言えないよね?
「なら、飲み物とか食べ物は俺が買うよ、なにがイイ?」
あーしはオレンジジュースをお願いした。
「ななはちゃん、アンジュちゃん・・・。和解出来て本当に良かったよー!」
あーしは人目もはばからず、号泣した。
いや、ラストの字幕が流れる中、劇場中ですすり泣きやら号泣が聞こえる。
うんうん。
みんな解ってるよね。
多分、今この映画で泣いてる奴とは友達になれる自信がある。
隣をみたら、比企谷君も鼻水を垂らしながら泣いている。
やっぱそうだよね?
比企谷君も同じ気持ちだよね?
「やっべー、俺前売り券を何枚か買っておくんだった!総集編って舐めてた。ごめんなさい!ななはちゃん!来週もう一回来るから!」
よし!
二回目のデートは約束されたね!
あーしは号泣しながらも比企谷君との距離が縮まっていく事にワクワクしている。
『ななはちゃん』マジありがとう!!
映画を見終わって、ららぽーとの中を散策する。
実はもうすぐ結衣の誕生日なのだ。
出来れば誕生日のプレゼントを比企谷君と一緒に探したいってのもあった。
この前までちょっとギクシャクしてしまってたしね?
「で、由比ヶ浜へのプレゼントなんて考えつかないんだけど?」
「結衣の好きそうなものとか見て回ってさ?一緒に考えてよ。男子目線ってのも重要だし。」
「えー、俺そういうの自信ないですけど?」
先ずはアクセとかの小物を見ようと、そういうのが充実しているエリアに来てみたんだけど・・・。
「な、なあ三浦?なんか目がチカチカするんだけど・・・。それに周りの視線も痛いんだが・・・。」
比企谷君は普段こんな処には来ないのだろう、女の子向けの小物やアクセとは縁遠いもんね?
なん軒かの店を一緒に見て回ったけど、メッチャ疲れてるみたいだし?
まあ、あーしもこの辺のアクセ類で結衣に合いそうなものが見つけられなかった。
「比企谷君、疲れてる?もうちょっと我慢してね?次はキッチングッズを見てみたいんだ。最近、結衣は料理に嵌って来てるって言ってたし。」
結衣ってば、この処母親に料理を色々教えてもらっているらしく、時々クッキー等のお菓子を焼いて学校に持ってくる、比企谷君も料理とかするって言うし、小町ちゃんの話だと結構料理上手なんだとか。
なら、キッチングッズなら一緒に見て回っても大丈夫なんじゃ?
「ねえ?このエプロンとかどうかな?」
エプロンなら何枚か持っててもいいよね?あーしは目についたエプロンを試着して比企谷君に見せてみた。
「え、あ、おお・・・、メッチャ似合ってる・・・。」
比企谷君、顔を赤くして言わないでよ!こっちも恥ずかしくなる。
けど、このエプロンは買い。
「結衣用なんだけど?」
「あー、由比ヶ浜のかー、ならもう少しポワポワしてて頭が悪そうなのが良いんじゃないか?」
比企谷君!その通りなんだけど、言い方!
「じゃあ、こっちのポケットがいっぱい付いてるピンクので良いかな?」
「あー、そんなイメージだな。」
とりあえず目的の買い物も出来たしお昼にしようとベンチで一冊のフロアガイドの冊子を二人で眺めている。
「そういえば、比企谷君はラーメンの食べ歩きが趣味って言ってたよね?ここに入ってるラーメン屋とかどうなん?」
「ここのテナントで入ってる店だとやっぱ富田製麺は外せないかな?つけ麺が有名なんだ。あとは、豚骨ラーメンなら一風堂だな。女性客が入りやすい店って事だし。」
「あーし、つけ麺って食べたことないんだよねー。でも豚骨のこってりしたのとかにも引かれるよねー。」
「三浦、お前ラーメンとか良く食べるのか?」
「うん、中学の時は運動部だったしね、試合の帰りとかは部活の仲間と何時もラーメンだったよ?」
「へー、そんなイメージ無かったからビックリした。で、好きな店とかラーメンとかは有るのか?」
「良く行ったのは、なりたけかな?ほら背脂をギタギタにしたヤツが好き。」
「え!お前・・・。解ってるな!」
そんな感じで、あーしと比企谷君は程よく打ち解けてラーメン談義に花を咲かせていると・・・。
わんわんわんわん!
犬が凄い勢いで走って来た。
って、こんな処で犬を放すなんて、飼い主なにしてんのよ?
毛並みのそろったミニチュアダックス。
比企谷君に向かって一直線に走って来る?
その犬は比企谷君に飛びついたと思ったら、思いっきり甘えて来る。まるで飼い主みたいに。
「なんだ?この犬、俺にメッチャなついてるけど・・・。」
「すいませーーーん!!」
メッチャ元気な女の子の声・・・って!
「結衣!」
思わずあーしは叫んでしまった。
「え?あ!え・・・、優美子・・・と比企谷・・・君?」
「あれ?由比ヶ浜?この犬ってもしかしてあの時の犬か?」
「あ、うん・・・。」
「首輪のリードを付ける金具が壊れてるぞ?ちゃんと買い替えてやらないと又事故に合うぞ?」
「あ、うん。ごめん・・・。」
「結衣はどうしてココに?」
「うん、サブレ。この犬のトリミングで・・・。」
「比企谷君も言ったけど、リードが外れるなんてダメだよ?注意しなよ?可愛いこの子が事故に遭ったら辛いでしょ?」
「うん・・・、で、優美子と比企谷君は・・・?あ、何でもない・・・。」
「あーしと比企谷君?うん、見たい映画が有ってね?独りだと行きずらかったから付いてきてもらったんだ。で、コレからお昼なんだけどさ?その子預けられるトコ有ったら一緒に行かない?」
結衣の誕生日のプレゼントを一緒に探してた事は言えないよね?
「そっか・・・。」
「由比ヶ浜はラーメンとか食べられるか?一応、ラーメン屋に行こうかって相談しててな?」
「あーゴメン。あたしこの後、用事あって・・・。ごめん。」
結衣はサブレ?を抱えて行ってしまった。
そして、結衣は部室に来なくなった。