〇〇の(ポケモン)トレーナー   作:カナーさん

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一周年記念作品は考えていなかったわ……。時系列無視の何気ない会話集なら結構ストックはあるので困りはしないけどね……。
今回は前回後書きにて判明したオグリの信用信頼の高さの補填の予定でした。尚ススズとゾロアークの会話は重たいのでカットして代わりの描写追加。
追伸 三週間お待ちください。


かちかつ

 ある日、あなたが気になっていたラーメン屋で堪能していたとき。

 あなたに声を掛けてきたウマ娘がいた。

 

 あなたは誰にも邪魔されないで自由に、言葉では言い表せないが、とても救われていなきゃダメとは言わない。

 その人だけの自由な楽しみ方はある。団欒でも独りもどちらも味があることをあなたは知っている。

 あなたはポケモン達と一緒に食べる以外は独りで静かに楽しむタイプだ。

 もちろん、特別な時は贅沢も忘れない。豊かさとはそういうタイミングに使う。豪遊。

 

 なので急にやってきて一緒に机を共有する場合は多少気分を害すがその時は一緒に食べる気持ちに切り替えることで不満を解消している。

 

 そしてこのウマ娘にも同様に一瞬に気持ちを切り替えて対応する。

 とはいえあなたとそのウマ娘に繋がりはない。

 偶然同じ店に居座っているだけで席が近いということもない。

 

 なんならあなたは自ら遠めの席を選んだの。少なくとも独りの気分だったのだ。

 

 それなのにそのウマ娘は態々あなたの隣の席を陣取り、声を掛けてきたのであなたは意識を切り替えたあとにナンパかと思い至った。

 もしくは財布を忘れて女としての武器を用いるのか。

 

 どちらにしろ台無しである。

 店先にいた黒服達のようにあなたを邪魔する存在なのだろう。それなら遠慮はいらない。やっちゃえ、トレーナー!

 

 

「オグリから今度、一緒にご飯行かないかと誘われて余り怪しさに問い詰めたところなんと"いつも""一緒に"食べる男性から友達も誘ってええと。

 あかん。絶対あかんやろこれ。最初は怪しさ満点で断ろうと思ったけどオグリが心配で着いてきたやけど__

 

__そりゃないやろ」

「タマはいつまで一人で喋っているんだ?」

「そりゃペラペラ口が滑るやろなんやこれオグリいったいどんなセレブの相手と飯行っとるんや。うち初めて__ヒッ」

 

 黒服のウマ娘の一人と目があったらしく悲鳴を上げる体躯の小さなウマ娘。

 昔のコリンクのようだとあなたは懐かしんでいるとまさにその動きを酷似するようにウマ娘が飛び退いてあなたにぶつかる。

 

 容易に抱き止めてトレーナー癖で重さを測定する自分に苦笑いしてゆっくりと降ろす。

 えんじ__よりはもちろんあるのは当然としてメイちゃんよりもある。道場組よりもあるかは流石にあなたも把握はしていない。ウマ娘とはアスリートなので同等はあるだろうという予想。

 

「おわっ!大丈夫トレーナー」

 

 なんでもないとパラパラと手が振る。

 あなたとしては久しぶりに脇に手を差し込んでの運搬。気分はえんじと戯れている気分である。あなたの高い他界ーは結構人気である。

 

「なんか怒りと寒気が込み上げるけどありがとうさん」

 

 あなたは名を覚えていないが一緒にご飯を食べるウマ娘。名をオグリキャップ。

 私は勝手にヒカリ回線やヒカリ二号と呼んでいるこの娘と同じ髪色の先程あなたにぶつかったウマ娘。なんとなく口うるさいドラセナの様な印象を私は受ける。おっとごめんなさい。

 名はタマモクロス。登場してから動きから言動までうるさい。バクオングのような声量でもバネブーのような常に動いているというわけではない。

 

 表現としてうるさい。メリハリに抑揚、タイミングに音と体に乗る感情。雑音でもなくただ主張が激しいのだ。そのおかげか体躯の小ささのデメリットが消えている。そういう工夫なのかもしれない。

 

 時間を確認しても集合時間より早めに到着したあなた達。これがデートならお待たせ、待った?ううん、今来たとこなんてやり取りがあるかも知れないがオグリキャップと二人きりでもそんな浮ついた会話が起こらないので心配はしていない。あれは例えるなら爺と孫の関係だ。よく食べる孫とそれを見て喜ぶ爺。

 むしろ心配なのはタマモクロスというウマ娘である。あなたはツッコミをしてくれるノリのいい相手が相当好みだ。メイちゃんがそれを証明している。陰のマンハッタンカフェ、陽のタマモクロス。十分ある可能性だ。

 

 私がにらみつけているのを感じ取ったのかあなたは苦笑いを浮かべる。

 そんなあなたを置いて周囲のウマ娘は自己紹介を始める。あなたの視界内にいるのはオグリキャップ、タマモクロス、ハルウララ、ライスシャワー。

 

「ええっとよかったのかなウララちゃん。ライスまで一緒で」

「うん、もちろんだよ。トレーナーがたくさんの人と食べた方が飯が美味しくなるから仲の良いの子を呼んでいいって。ライスちゃんは食べるの嫌いだっけ?」

「ううん。ライスも食べるのは好き。でも……ライスもいっぱい食べるよ?」

 

 心配そうな瞳があなたを映す。

 

「そうやったオグリが飛び抜けとるとはいえそれに追加三で、石油王出ないかぎり火の車やな。それとアンタがいくらオグリに金を注ぎ込もうとウチは騙されへんで」

 

 こっちは違う心配をされているとあなたは把握。

 とりあえずお金の事は心配してなくて良いと説明する。あなたにとって一番の大食らいはカビゴンだ。カビゴンの食費は巨額の富を築いているであろうメイちゃんでもあなたに管理を一任するほどヤバいのだ。

 広告収入で何億稼いでいるかわからないあの娘でさえ金の力で無理を通せない。しかもあの娘はあなたのように別荘の管理等余分なお金の支出はない。つまりほとんどをポケモン達に注ぎ込めるのに。

 それなら育てなければいいのでは?となるかも知れないがカビゴンにはカビゴンにしかできない役割がある。

 それは耐久。

 最近新たに開拓されたくいしんぼうフィラのみリサイクルカビゴン。パワーは申し分なく更にそのパワーもはらだいこによってフルパワーに出来たあのカビゴンが元々耐久性が向上し優秀さが増したのだ。

 はらだいこではなくのろい採用であればパワーと耐久が両立できるタンクになる。

 あなたならのろい、リサイクル、じしん、おんがえしorやつあたりだろうか。

 最後のわざはなつき度合いによって威力がわかるわけだがあなたはおんがえし派だ。なぜならあなたはあのカビゴンを毎回満足できるまで食料を用意するのだから好感度に関してはMAXである。

 

 一度抗議かテロでも起こすのかと真剣に誰かに言われたことがある。大量の買い占めで市場を大混乱にするのかと。

 理由をカビゴンと正直に打ち明けると正気ではないと言われた。便利なポロックがあったのであなたは否定はしなかったが。

 

 あなたはカビゴンを養えた上で譲られた屋敷の管理にあなたの趣味を達成できるほどの金銭を稼げる。

 そこらにいるおぼっちゃまやジェントルマンよりもあなたは金があると自負している。あなた自身金銭感覚がバグっているのは自覚しているが金とは使ってこそ真価を発揮するものである。

 まぁ、この世界に来てその価値観は少し変わった。

 なんせ全てゴミになったのだ。

 自分に掛ける費用は皆無であり、良いと巡り合わせのおかげで些細ではあるが自由に投資できる金銭は得た。それを全額注ぎ込めばウマ娘が四。賄えないわけない。金持ち万歳。メジロ家万歳。

 

「はーそれやったら納得やわ。あのメジロ家から金を巻き上げて__ってなにしとるんじゃワレ!?」 

 

 あなたはそこまで言ってない。

 それに特許含めて権利関係はメジロ家に一任しているのでもっと請求や取り立てしても許されるくらいの利益は渡しているのだ。あなたは優しい。

 それに今回はあなたは一銭も使う予定はない。あなたはただの案内人に過ぎないのだ。

 そこで、そういえば主役となる『殿下』様が来てないことに今更ながら気付く。

 その呟きにピクッとウマ娘が反応する。

 

「殿下?殿下って__」

「お待たせいたしましたわ。説得に時間が掛かってしまって。でも最後には見事許可をもぎとってきました」

 

 他のウマ娘同様トレセン学園の制服を身に着けたウマ娘が嬉しそうにあなた達集団に声を掛ける。

 一息置かせるためにとりあえず自己紹介から頼む有無を伝える。これから一緒に食卓を囲む仲になるのだから。

 

「__っとそうですね。ご存知の方もいらっしゃると思うけどあらためて。ごきげんようファインモーションです。これから仲良くレッツ__」

 

 あなたがデコピンをくらわす。

 誰が音頭を取れと言ったのだろうか。テンションの上がりすぎで暴走しているのだろうか。

 どうやって落ち着かせるかと思案しようとしたところでタマモクロスが力強くあなたの腕を掴む。

 

「な、なななにやっとるん!?皇族やぞ!?一緒に頭下げるから謝るぞ」

「そそ、そうだよいくら手加減してもすごい勢いだったよ」

 

 ……あなたとしては皇族だろうが神様でも対応は変わらない。この程度で取り押さえてくるのであれば返り討ちにするだけである。一度負けたリベンジくらいあなたはいつでも受け入れるつもりだ。

 

「あはは。うん、キミは変わらずだね。えっとタマモクロスちゃんだっけ。いいのいいの。この前私が彼の至高の一時を邪魔しちゃってね。それでもこうやってご飯に誘ってもらえるだけ嬉しいの」

 

 あなたは誘ったわけではない。

 事故とはいえSPを全員のばして、中で殿下の談笑している姿を見られたのは痛手であった。まさかその後に探し出されてご飯の誘いが来るとは予想していなかった。呼び出されたのはリベンジだと思っていたのにまさか他の店のオススメを聞かれるとは……あなたの目をしても趣味残念お嬢様とは見抜けなかった。とはいえ無理もない。所作に言葉遣い、纏う空気はまさにお嬢様。久しぶりにまともなお嬢様だと日記にも記されていた。

 どうせなので一緒に向かってハシゴしてきたからか、なんとなく懐かれている気がする。

 

 あなたはSPの黒服がなぜこうも仕事熱心なのかその時理解した。箱入り娘の弊害なのだろうか。

 そしてあなたは悟る。この後何度もお誘い(強制)が起こることを。あいにくあなたはこの殿下様と食べるよりオグリキャップの食べっぷりを見るほうが好ましかったので策を講じて今日というわけである。

 

 オグリキャップは喜んでいい。今日は時間制限もハシゴ制限も金額制限は元々ないが一切の制限はない。全部殿下持ちである。太っ腹である。

 

「それは本当なのか!」

「ええっもちろんです。ご飯はみんなとワイワイ囲んで食べる味もある、とキミの言葉。好きと好きのベストマッチ!今から楽しみです」

 

 ガチガチに固まっていたウマ娘も出てくるラーメンの味と食いっぷりを見せつけられてここでは楽しまきゃ一番の失礼と思い知って思う存分楽しんだ。

 途中から事前にSPの黒服達に渡した予定を上回る行進ぷりにあなたは日記とレポートを引っ張り出して対応しなくてはならないほど濃い一日となった。

 

 

 

 

 外の色と同じくらいの暗さが病室前の座席を染める。

 トレーナーとウマ娘達はその席の上で明るい色を灯さない。消沈。

 どんな表情をすればいいかわからないのだろう。

 

 あなたとしては事前に覚悟を決めていたのだから知らないウマ娘達はともかくトレーナーまでそんな表情で陳列に入る理由がわからない。

 俯いて、どこも見ず、着信音が静かに重くなっても微動だにしないそんな彼をあなたは若干の困惑を抱きながら逃走者の起床を待つ。

 

 なに、あなたとて待つのには慣れている。壁に体を預けられるだけましだ。

 

 そして病室の中からスペシャルウィークが出てきて、再びトレーナーとサイレンススズカの元に戻る。

 引戸はゆっくりと閉められる。けれど中の会話を聞かないようにする配慮はウマ娘にはないらしい。顔を覗かせれるほど小さく開けるその姿に息を吐き出す。

 それを失礼だとか品性が足りないなんてあなたは思わない。気持ちはわかるため大事な話を盗み見するのは褒められたことではないがだからといって彼女達を非難するような視線はない。ただ幼いなという感想を抱くだけだ。

 

「いいの?交じんなくて」

 

 これがあなたのてもち達なら語るに及ばず。

 それにあなたは落ち着いてはいるが心配していないわけではない。

 この世界の医療のレベルはあなた達からすれば驚くほど低いのでもしかしたらあなたの予想から外れるかもしれない。

 けれどあなたはあのウマ娘の言葉を信じてみたい。

 あの走りをしたウマ娘の言葉を信じてみたい。

 

 ……あなたの考えでゾロアークに約束を守らせなかったのは悪いと思っている。

 

「それこそ及ばず。『誰が怪我してもボクが華麗に参上してスピーディーに駆けつけるから』……ね。それを破っていいと思えるいい表情だったもん。あれは邪魔をする方が無粋だね」

 

 わかってはいたがそう思ってくれたならあなたとしても楽である。

 ゾロアークと思いを交わしながら微かに流れてくる言葉に耳を傾けていると大きな音を拾った。

 見れば遮を押しのけて中に流れ込んでいるウマ娘の姿が。

 

 微笑ましいかぎり。

 あなたがセレナ達によって蘇生されたあとの様な気分をあなたは思い出す。

 

 あなたの初めての入院にひっきりなしに見舞いに来る様子にあなたはこんなにも交友関係があったのだと自分の事ながら驚いていた。

 

 それもそのはずであなたの強度はその当時からずば抜けていたのでそんなあなたが入院などと大抵は最初に冗談だと思われ、そのあと本当だとわかればそれが命に関わると考えれない愚か者はいなかった。

 

 あのヒカリまで見舞いくるのだ。あなたが周囲からどう思われているかわかる一幕だった。

 

 ウマ娘達の声をBGMにそんなことを思い出したあなた。そんな姿を見守るゾロアークの隣からあなたに声を投げられる。

 

「なぁz__ゾロアークのトレーナーなんか体を覆えるものないか?」 

 

 雪崩込んだウマ娘の一人のゴールドシップが戻ってきてそんなことを聞いてきた。

 

 用途が不明なので一概にないとは言えない。

 とりあえずあなたはこの世界で購入した白いシーツをバッグから取り出し渡す。

 

 サンキューと言ってそのまま病室へ向うゴールドシップを見送りつつあなたは中の話が終わるのを待つ。

 

 あなたは義理でこうして待ってはいるが本来は部外者である。理事長達に望まれた役回りも既に果たしたわけで__

 

 

「以前のように全力で走ることは__できますか」

 

 笑っていた声から先程他の声で掻き消えた言葉が再び病室に満ちるのを聞こえたためあなたは乗り込む事を決めた。

 壁を挟んでいるがあなたはトレーナーの案ずる空気を感じ取った。そのトレーナーの答えを遮るように変わりに届いたのはさっきと同じ、隣のウマ娘__スペシャルウィークの声だった。

 

「スズカさんならまた以前のように走れます。絶対大丈夫です」

 

 その言葉にあなたは否と唱える。

 以前のように 全力で 走れる。

 

 煙管を楽しむあなただったらここで息を吐き出してしまうだろう。

 

 おい、と困惑した表情のウマ娘達を横目にサイレンススズカのベットの正面に立ちあなたは語る。

 元々サイレンススズカはどういう状態で走ることになるか事前に話をしてある。それはレースで転倒どころの話でなく、もう走れなくなることまで、もっと言えば命が危険に晒されると伝えた。

 

 その上でサイレンススズカは走ることを選んだ。

 あなたの言葉に「えっ」と誰かが呟く。

 

「スズカさん知っていたんですか」

「ごめんなさいね。みんなに心配を掛けたくなくて」

 

 サイレンススズカを見つめる彼女達を微笑みながら答える姿を無視するようにあなたは言葉を進める。

 選択を強いたあなた達にも責はあるが押し進んだのはサイレンススズカである。それがどのような結果をもたらそうともそれはサイレンススズカ自身の責任だ。

 あなた達は一言も走り切れとも諦めるなとも口にしていない。

 ただあのレースをそれでも走りたいか聞いただけなのだ。

 途中で次に託しても良かったのに、今であることに固執したのは他ならないサイレンススズカ自身だ。

 

 だからその足がもう以前のように走れないことは自分自身が痛いほど噛み締めて味わったはずだ。

 未来を燃やして現在に結果を求めようとした対価だ。

 そしてトレーナーに確認した。わかってはいたけど言葉にしてほしかったのだろう。以前のように全力で走ることは難しいと。それを途中でできると書き換えようとしたウマ娘がいたからサイレンススズカは聴き直した。

 

 壊れたものを使い続ければ破損するのは当然。壊れただけなら修復すれば済む話だが破損は違う。そのもの自体を取り換えなくてはならない。そしてウマ娘の体に見合うものなど存在しない。サイレンススズカが選んだ道とはそういうものだ。茨の道なんてものじゃない。

 そもそも道がもう途切れ掛かっているのだ。

 道がないのにまた歩き出すなんて無理な話だ。

 

「そんなのわからないじゃないですか!まだリハビリも始まっていないのに」

「そうだよ。いくらキミでも言っちゃいけないことだよ」

 

 別にあなたは口を挟むつもりはなかった。

 ただ遠回しに死ねなんて言葉を容認できるほどあなたは人でなしではない。

 それほどまでにサイレンススズカの様態は酷いものだ。覚悟の決まった者に投げる言葉じゃなかったからあなたは口を出さざるえなかった。

 せめて本人に意思を確認しろとあなたは言いたい。

 サイレンススズカの聞き方に勘違いするのは理解できるし、年下の学生に言うことでもないのであなたは呑み込んだのだが。

 

 つまりあなたが聞きたいのはそれでもまだ走りたいのか、その一点だ。

 

 年月やそれまでに起こる障害やその後に起こる面倒事なんて関係なくただ走りたいのかそれだけをあなたは聞きたい。あの苦痛を味わって今までの努力を別の形で横槍を入れられて、それでもなおレースにしがみつくのか。

 

 それだけがあなたは気掛かりだ。暖かな空気になったのにそれでも同じ言葉を綴ったのはそういう理由だろう。彼女は肯定がほしいのではない。

 

「もちろんです。私は逃げられぱなしなんて嫌です。リベンジは必ず」

 

 エアグルーヴには果たした彼女。なら今度の相手は自分自身。望むところと息巻く姿を見てあなたは退出する。

 

 担当のウマ娘の思いを聞いたのならそれを導くのがトレーナーの役割だ。ならそれはあなたではなくベットの横に座っている人間の仕事だ。

 じゃあまた明日とか、そんな言葉を残してあなたは消える。

 空気を塗り替える気はサラサラなかった。

 


 

 太陽が完全に沈み、病院の灯火が消え、月明かりだけが頼りになる刻。

 先程まで広がっていた陽気は静謐に塗り替えられてサイレンススズカは安らかに眠る。

 それをあなたは同じ場所に立ち、眺めていた。

 ゾロアークとの対話。再三の覚悟の確認。

 ゾロアークによるもう一人の『私』。成功した『私』が頑張るから失敗したあなたは頑張らなくてもいいと悪魔の囁きを傍観していた。

 自己の否定。優しい欺瞞を引き剥がす所業。

 

 __リハビリすればトレーニングすれば元の自分に戻れるはずですって?

 __みんなと一緒なら以前の走りに戻る?

 

 __そんな都合のいい話あるわけないでしょ

 __身体は変化しやすいもの。しやすいだけで元のカタチに戻れないもの。

 

 __だからあなたはもうあなたは頑張らなくてもいい。

 

 ひどい言葉だと、あなたは自分の顔を隠す。

 ゾロアークは知らない、けれどその言葉はあなたも痛い。でも必要なのた。奇跡(まほう)には必要なのだ。それをあなたは知っている。

 

 ゾロアークが魅せる幻影はサイレンススズカが辿れた物語。走りきった輝かしい軌跡。『夢見た景色』の影が写る。

 

 心を削られて、焦点が会わなくなって崩れ落ちそうなウマ娘。あなたは被逆の趣味はない。サーナイトに眠りに落としてもらって夢ごとくわれてしまえばこんな悪夢のような心象は綺麗に忘れられるだろう。

 

 だけど彼女の言葉はとても私達にも印象深いものだった。

 

「私が目指すのは以前の走りじゃない。以前をこえて、みんなに新たな景色を見せる。それが今の私の走る理由」

 

「確かに私は一度みんなから景色を奪い取ったわ。だからこそ私の背中を押してもらえるかぎり、私の走る景色を見せたい」

 

 このウマ娘がトレーナーに求めたものは自分の現実。そしてそれを打ち破るつもりだと私達は汲み取る。その言葉に満足したのかゾロアークの幻影は輝かしい栄華と共に沈む。

 そうして隣に佇んでいたサーナイトのさいみんじゅつによって眠りについた。

 

 ……立っていた場所からあなたはサイレンススズカに近付いて、巻かれた包帯を解く。

 医療に詳しくないがそれが固定をして歪なカタチに治らないように正しているのはわかる。

 つまり、今が正常に一番近い位置。

 バッグから取り出したかいふくのくすりを表情を確認しながら吹き掛ける。

 続いて取り出すのはふっかつそうときのみのエキスを抽出して作り出された湿布。ふっかつそうほどの効果は期待していないがこの世界の医療品よりは見込めるだろう。

 最後にリオルが作った特性スムージーをゆっくりと口に流し込み、処置を再現して施す。

 

 これであなたのお礼は終わりだ。彼女とメジロマックイーンくらいしかあのチームに興味はなかったが負けたら賞金を支払うのは当然のこと。

 あなた達の予想を上回り、見事ゴールに辿り着いたウマ娘は誰が見ようと勝者だ。

 ただ勝ったはずのウマ娘が真っ暗になることはあなたは許せなかった。勝ったのだから喜んでほしい。それは敗者であるあなたの願いだ。喜ぶ理由は異なってしまうがそこは気にしない。そこまでうるさくない。

 

 むしろうるさかったのはゾロアークの方である。

 あなたは勝ったものに賞金を払うつもりでいたのにそこにストップを掛けたのがゾロアークだ。その思いと慎重さは理解できるためあなたは止めなかったので好きにやらせたわけで、まさかあんな精神攻撃をするとは夢にも思っていなかった。

 そしてなんであの歳で覚悟極まっているのか。

 一瞬同類かと歓喜しそうになったあなただ。

 

「あんまりこんなこと言いたくないですけど先輩、ちゃんと壊れてますね(・・・・・・・・・・)。まぁだからこそ私はいつもどおりに過ごしているわけですが……いいんですか?ここまで介入するってことは、そこまで入れ込むってことがどういう結末を辿るか__私達を『トモダチ』を見限るんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ない。

 あなたは断言する。

 そんなこと絶対にありえないと。

 

「……だってそうじゃないですか。ここまで行動に移すのはテイオーに構っているのとは話が違います!!あれは先輩には必要だった。私達も理解していますだけど!スズカは違うじゃないですか。小言と忠告を入れて十分じゃないですか。だって先輩はそこまで入れ込んだら最後まで気に掛けるじゃない。それは例え帰れるようになっても本当の最後のチャンスでも先輩はスズカの存在で、その責任を背負って足が進まなくなるでしょ。私達が何年一緒にいると思ってるの……」

 

 それはてもちたちのこえだった。

 でもあなたはなにもこたえない。

 だってなんねんもこれからもいっしょにすごしていくよきトモダチはあなたのこたえをもうしっているから。

 わかっていてもさけばずにいられなかったいきばのないこえだった。

 

「……っごめんなさい。答、えはいい。でも、心配だよ。だって私が普段通りじゃなかったら見失いかけていたから。私が普段通りでも先輩はいつも意識が張り詰めていて敏感になって倒す相手もいないのに誰を見据えているの?」

 

 そればかりはあなたのてもちも私もでも知らないことばかり。

 それは__えっ?

 

 あなたは静かに私達を置いて零す。

 おかあさん、と。

 




「みんな大丈夫よ。あの人は自分の思いに真っ直ぐで直ぐに言い出せなかった私の意思を引き出しただけだから。だから彼を責めないであげて」


本来、リオルが見た未来ではゾロアークとスペが助けに行く。ゾロアークは約束したから。だがその現象は起こらなかった。なぜならススズは走りきった。
……逃げ切れなかった。だがススズはその足で見事二着をもぎ取った。けれどゴールに辿り着いても彼女のもはや歩みと化した前進は止まらない。

ポケセンの医療レベル
ポケモンの関連ならだいたい任せて解決できる。普通の世界から考えると異常。ゲームだとお馴染みの音と共に治る。この作品では骨折とかもその日に内に治る領域に設定されている。
薄翼の翼だと話は変わります。でも松葉杖を見なかった(見逃している可能性有)ので解釈は間違ってないはず。

後書きにポケモンの話が多い理由
ウマ娘の世界感は理解があると思われるためポケモン側を補填している。土台がウマ娘でもあるから。

あなたの入院
ウマ娘でいうならいつもタキオンの薬を飲んで光っているトレーナーがタキオンの薬で倒れたという感じ。タキトレ=ペロッこれは青酸カリ!と言っても二次なら十分受け入れられたもの。大抵嘘乙wと誰も心配していないが倒れたのが真であった場合は……。

サイレンススズカの様態
実は酷くなっている。リオルが動かなかった場合だとアニメより軽くなるはずだった。けれど走りきった足の負担は大きく、結果悪化している。

夢見た景色
秋の天皇賞。沈黙の日曜日は破られた。

目の前が真っ暗になった
ポケモントレーナーか敗北すると出るメッセージ。剣盾でこの意味は悔しさで帽子のつばを下げて目を伏せる動作である解釈が生まれた。ダンテさん……。
あのウマ娘もそうなのだろうか。

ファインモーションとサイレンススズカと___
困難な道を歩むもの。
温厚なので問題はないけど微かな同族嫌悪はある。

ゾロアークの行動
今まで行動は本来あなたがはっちゃけているやる行動なのにあなたは静かに殺気立っている。一時的なものであれば問題はないがあなたはこの世界にきてから一度も本当の意味で休んでいない。そうすればあなたは自分すら忘れてしまう。ゾロアークはそれを防いでいた。
ゾロアークの行動力は本来あなたが発揮するもの。
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