〇〇の(ポケモン)トレーナー 作:カナーさん
カツカツとトレセン学園の廊下を歩く。
最初の頃は迷宮のような広さで混乱していた場所も今となっては考え事をしながらでも体が勝手に進んでくれる庭となった。
一週間。スズカが入院してからちょうどそれくらいの期間が過ぎた。
スペちゃんの献身のおかげがそれとも奇跡が起きたのかスズカはもう軽くなら立って歩けるほど回復していた。それでも不安はあるので移動のときは大抵車椅子だ。
トレーナーいわく奇跡で片付けるには異常過ぎるがウマ娘の体はまだ謎があるから神の御業ならあるかもな、なんて言ってたっけ。
まあわかる。入院後日にお見舞いにいったらベットから降りて自分の足で歩いてカーテンを開けている。そんな姿を見たら誰だってスペちゃんだって呆然としていたから。
まあキミがあんだけきつい言葉を言っていたからね。誰だってそうなるよ。病室に見舞いに来るみんなが一堂に同じ反応をするのは縁起でもないけど見ていて面白かった。花みたいにズラーとね。
様態を見ようとすぐにギブスを外しての検診をする話も上がったけど回復祈願を外したくないってスズカが愛おしそうに撫でるからなんも言えずそのまま。外したのは一昨日だっけ。
大変だったのは足の状態よりもスズカを抑えるほうだったね。
走りたくてウズウズしているスズカがまだ病室に根付いてくれいるのはスペちゃんのおかげだね。いや本当にね……。毎日会いに行く理由がスペちゃんが会いたいからじゃなくてスズカを抑えるためだって言うのはその状況を見るまで冗談だと思っていた。
焦りは禁物なのは本人も承知の上だけど、こればかりは強く言えない。ボクだって同じ行動とちゃうからね。
さて、と足を止める。
辿り着いた場所は図書室。中に入室してその後ろ姿を見つける。探し回ってまさかこんなところにいるとは盲点だった。なんとなく外で走り回っている方がらしいと思ってたから。見つからなくてあの公園まで足を運んだのに。
「やっとみつけたよぞろあーく」
ボクのカラーチェンジの姿で伊達メガネを戻しつつ、本から視線を上げて見えた顔はいつもどおり鏡でみるボクだ。でも髪を耳に掛ける所作とかそういう細かいところでボクじゃなくて大人だって感じる。
「……どうしたのテイオー?」
なにか要件があったかな?と熟慮してなにも思い当たらないらしくボクに質問してくる。
「あの人はどこいったのさもう一週間も姿を見てないけど」
「用があるならボクが用件を聞くよ?念の為ここの窓口はボクになってるしね」
なんとなく、会わせたくないって言われたような気がする。
行動に一つくらい文句は言ってやりたいけど、でも思いは真摯であったわけで突拍子もないことをするのはもう十分わかった。わかってその辺を教えるって言ったのはボクだ。文句は飲み込む。ボクが教えれなかったのが悪いしね。
だから別に気にする必要はない。ボク達に顔を合わせづらいのはわかるけどスズカもフォローしてくれたし、なによりスズカは回復している。そっちのほうが大事だからそれくらいもう気にならないのに。
「お菓子のストックがないよ。前まで会うたびに渡してたからのもあるけどスズカの見舞いで数が消えちゃってね。スペちゃんやカイチョーからも催促されてるし」
とりあえず用意していた用件を話してみる。
マックイーンに関しては毎回その場で手作りしていたみたいで悲しそうにない……ない……って呟いていた。それでストックが大きく減った。流石にきのみを生でかぶりつくなんてことにはならなかった。
「あーなるほど。うんわかった。伝えておくね」
「そうじゃなくてどこにいるの?」
今まで一週間も会えなかった期間なんてスピカに入ったときくらいなもの。そこまで頻繁に会うとボクの意識も変わるわけで。変な男性から手間のかかる弟みたいになるのもしょうがないと思うのだ。
正直に告白すると心配。大丈夫かな?
「会いたいの?なんで???」
ノータイムで返ってくる言葉に一瞬たじろぐ。
キミもそうだけどまるでこっちの考えがわかるみたいな言動は心臓に悪い。
「それは心配だからだよ。ぞろあーくだっていつも会えた人が急に疎遠になったら心配するでしょ?」
「そりゃね。でも今は会えないかなー集中したいだろうし、やり遂げさせたいしね」
中々崩れてくれない。難攻不落。
「それにね、最近、多分だけど疲れているんだよ。寝る必要はないけど休むことはあるからね。正月までに全部片付ける予定みたいだからそれまで待てない?」
聞き流せない単語が現れた。
けどそれを口に出そうとして、意識が落ちる感覚に見舞われる。
「ごめんねサーナイト。あっちにいるのに呼んじゃって。姿については気にしないで。懸念していたのはゴルシの方だったんだけど……えっそっちにいるの?なんで?」
崩れ落ちる意識の中、そんな声が聞こえた。
あなたは走る。全力ではないが走る。階段を駆け上がり、曲がり角では衝突のリスクを考え減速し、危険がないことを確認して再び加速に入る。
あなたが今いるのはトレセン学園の三階。先程サーナイトが離脱したため緊急脱出は頼れない。
「待ーて待て待て待て待て待て__」
うるさいので途中から自分の耳を塞いで遮断する。
あなたは逃げていた。なにか悪さをした、なにか逆鱗に触れた。そんなことはない。
ちょっとだけこっちに用事があったので戻ってきた拍子に後ろから追跡しているウマ娘に追いかけられていた。
急にだ。急に降って湧いた直感にあなたは従って視線を向けるとこちらを射抜いているウマ娘が疾走している姿が映った。
あなたはそのまま迷わず自分のギアを上げることを決意。
その判断は間違っていなかったと今確信している。
何度も曲がり、昇降を繰り返しているので全て同じルートを偶然走っているという線は消えた。
他にあるとするなら逃げているから追いかけてしまう等あるがそもそもあなたの自意識過剰でなければあなたと目があった。ならあなたが目標である可能性が一番だ。
廊下を爆走する。
廊下を走るのはあまり好きではない。早歩きで十分であるし、なによりここは走ることが目的の道ではない。であるならそこをゆったりと進む者、風に揺られている者がいるのは当然。
歩行者にとってあなた達こそ邪魔で迷惑な存在であるがあなたとて走りたくて走っているわけでない。
仕方ないとはいえあなた側が悪いのだがそれでも走るのには歩行者達が障害である。
あなたであれば減速のことを考えなければジュンのようにどん!!とぶつかって押し退けることくらいわけない。それをしない時点で十分の配慮をあなたはしている。
ジグザグと追跡者の視線に隠れるように歩行者達を壁して突き進む。ただの廊下であるなら自転車よりも小回りの効くローラーシューズを活かしたいところではあるのだが夜にもなっていない校舎にはまだ沢山のウマ娘の生徒が多い。
僅かな制動距離のミスをあなたがするとは思えないが念の為あなたはより安定した自分の脚力を頼っている。
そんな理由で全力全速前進でない状態のあなたがウマ娘に捕まっていないのは一重にあなたが逃げ慣れてことが大きい。
ダメナさん……からデート(遺跡調査)やメイちゃんから映画撮影やトウガンから化石掘りの誘いなど。あなたがフリーなのを良いことにあなたを囲う勢力も一定層いる。もちろん全部無視している。大抵碌なことじゃないからだ。迷惑メールや非通知電話などは触らないに限る。
なお、上記女性二名はあなたを直接捕まえにくるのでそこは諦めている。そこまで熱烈だとあなたも嬉しいのだ。
そんなわけであなたの逃げのスキルは鍛えられたもの。
しかし時間の問題がある。あなたは追跡者が複数の可能性も考慮している。そろそろ終止符を打ちたいところ。
そんな思考を回していると纏まって会話しながら歩いている集団を捕捉する。後ろを確認して突き進む以外の選択がないことを認知してあなたは踏み込む。
そんな気迫を感じ取ったのか集団の先頭のウマ娘が未来を見たのか怯えたような表情をする。
そのままあなたはウマ娘に突き進み、ウマ娘の左側にある開放された窓に足を掛け、台にして跳び越す。
一言謝ってそのまま進んで角で一休みするあなた。チラッと後方を確認してあなたと同じ方法で垣根を越えてくるウマ娘を見る。そしてやはり目はあなたを捉えている。
階段を昇り、踊り場で足を止めてその距離が確実に縮まっていることを確認する。
そのままギアを再度上げなおし階段を昇り角を曲がって廊下を進み、ある程度の場所で壁に持たれてあなたは呼吸を整える。
そうしていれば追跡者はジリジリと二メートル付近まで近付いてくる。
色は白。あなたはそれが特殊な呼び方のある色だと覚えていたがそれがどんな名前だったか忘れた。けれど最近向上した記憶力がそのウマ娘があなたとどんな関係か覚えていた。あのサイレンススズカと同じチームのウマ娘。あなたにしてはそこまで関係性を覚えているなら十分だ。ただそれでもやはりあなたはなぜ追いかけられているのか皆目見当つかない。
それでもあなたの行動は変わらない。
息を整えて、背にしていた扉を開いて中に入場する。
あなたの目に飛び込んでくるのは三人のウマ娘。
その中で嫌な印象をあなたが覚えているウマ娘と視線が交差して、方や驚き固まり、方や不満も隠さず進む。
その足取りのまま奥にある窓まで進んで滞りなく問題ないことを確認して会長席に適当な金銭を叩き付ける。
そのタイミングで追跡者もこの部屋に乗り込んで来るわけだがあなたの勝利の方程式は既に揃っている。
適度な休憩を見せかけて呼吸を整えるような姿勢を見せ徐々に距離を詰めさせ、あなたがとても疲れてガス欠だろうと油断を誘い、ここ、生徒会室まで誘導することに成功した。
かいとり、うけとり、だんまりと告げてあなたは窓を突き破り、 を投げ出す。
Warning,warning身warning,warning,warning.
先の言葉に意識を向けていたシンボリルドルフはそんなあなたに瞬間的に手を伸ばせず、追いかけていたゴールドシップも袋小路のこの場所に入った時点で停止していた。
他二名も含めて誰もあなたの行動を止めることはできない。
落下の最中、あなたの表情はしてやったりと楽しそうな子供のような表情だった。
それもそうだろう、なんせ驚愕なんて無縁そうな大人の空気を纏った連中が揃いも揃って間抜けな表情をしているのだから。さながらドッキリ大成功!だろうか。
そうしてあなたは地面に激突する。
○
「おい待て!?」
手を伸ばす頃にはもう遅く彼の者の姿は見えない。
「……………………………………」
しん
一瞬の静寂。先程まで資料を片付けていた和気あいあいとした空気は突然の乱入者によって騒音となり、そしてその乱入者が消えることで一緒に霧散した。
ガタと勢いよく席から立ち上がり窓を覗き込む。
後ろからは怒号のような声が突く。
おそろしい。
確認しなくてはならないのに確認するのがおそろしい。一刻もはやく確認して救急車を呼んで、下に降りて救命しなくてはならないのに。動いている姿を見た。目を合わせて声をきいた。動いているのを見た。それが朱く染まっているのがおそろしい。物言わぬオブジェになっている花咲かせている姿が脳内に再生される。
体を動かしてもいないのにふいごのように息が吐き出される。額から背中から不快な汗の感覚が滝のように。
それらの念を振りかぶって現実を直視する。
目があった。
○
華麗に着地したあなたは律儀に落下地点で誰一人として確認してこない彼女らのことを薄情だと酷評していた。
心配してほしいわけではないがここは確認をする場面だろう。まさかこれは自分の常識がおかしいのかと考え始めたところでようやくウマ娘と目があった。
それはあなたを追いかけていたウマ娘ではなかったがとりあえず手を振る。
そのまま立ち去ろうと言うところでゴールドシップが窓から体を乗り出して壁伝いに降りてこようしていた。
なぜ誰も止めなかったのかという苦情は置いといて壁登りならぬ壁降り。あなたがやるぶんには自己責任だがここでウマ娘に怪我されても困るので念の為下にて受け取る体勢をとって、あなたは固まる。
下から生徒会室を見上げたときも首を傾けて見ていたわけだが今回ももちろんどう落ちるか確認するため上で向いている。それは不可抗力。あなたは悪くない。けれど問題は上にいる相手がスカートである点だ。
まだ引き返せるのでそれをウマ娘に進める。
「うっせー!下に降りた頃にはいねぇんだからこうするのが一番だろ。お前が行けたんだからアタシだって行けんだ」
しょうがないやつである。
Youは上でスカート。Meは下。丸見えである。
「んな……み、見るな!」
赤らめて、少女らしい恥じらいがあってあなたは安堵した。見たきゃ勝手に見てろなんて言われたらどうしようかと思っていたところだ。
とりあえずあなたに気を取られて止まったウマ娘が中から腕が伸びて捕まえる。捕まったゴールドシップも下手に暴れると落ちることを理解しているので大人しい。
いつも大人しくいてくれとどこからか電波を拾う。同感である。
中に引きずり込まれるのを確認してあなたは姿を隠すため歩き始めた。
○
正月。
を少し過ぎた一月三日。
新年はトレセン学園周辺にいなかったあなたはこの時期にようやっと帰ってこれた。
周辺にいなかったが新年を迎えたメンバーは割と変わり映えせず、ハルウララ、キングヘイロー、ライスシャワー、マンハッタンカフェ、アグネスタキオンとそれなりの人数と共に過ごした。なんで?やだれ?もあったがほとんどハルウララの様子が気になった方々のようで数時間過ごすと帰っていた(ちゃんと送った)。
残ったのはあなたが目的で集まったウマ娘達。新年一発目から薬品を飲ませようとするアグネスタキオンに心配するマンハッタンカフェ。月を気にしつつ屋台に行く予定を立てているハルウララとあなた。
新年といってもなにかが変わることなく普段通り慎みなく平常のまま過ぎていった。
だが今日は違う。あなたは構える時間が少なくなってしまったポケモン達と過ごす日とあなたは決めていた。断言こそしていないがなんとなく空気を感じ取っている私達はそれを楽しみにしていた。
私達だけの新年会というやつ。
というわけであなたは大量の食材を買うべく適当な店(こたけや)で買い物していた。
カートを前に二台、後ろに一台の合計三台を引き入れてゾロアークと買い物しているあなた。正直この時ばかりはゾロアークが羨ましかった。いつもはそのポジはサーナイトなので文句はないのだけどゾロアークとなると話は変わる。致し方ないのはわかるけど不満だ。
だから私達は見逃していた。今日だけはみんな気分が舞い上がっていた。
だからズカズカとやってくるウマ娘に誰も警戒していなかった。
「確保ー!もう逃しませんわ貴方様」
よりにもよってあなたの直感をすり抜けるウマ娘が。メジロマックイーンと鉢合わせになるなんて。
そのままチームスピカの面々に見つかり一部ウマ娘達の強い要望によりあなたはスピカの新年会に参加することになった。
騒いでもなにも解決しないことをあなたは経験から学んでいるのでさっさとスピカのぶんも含めて会計を済ませて大人しく連行される。
そのままあなたとトレーナーは調理を急かされる。その間に乾杯を始められるがあなたは黙々とこなしていく。彼女らに家庭的なことを求めるほうが間違いであると既に割り切っているので不満一つでない。
TVからはWDTのことが流れ出すがあなたは興味がない。この世界からしたら相当の異端なのだろうがないものはない。
あなたがカットした具材をもってトレーナーが文句と共にお届けする。その間にあなたは千切ったバナナをゴールドシップの机にスペシャルウィークの机に大大盛りのお米を置いて戻る。
「なんで俺達が準備しなちゃいけないんだ」
まぁトレーナーだからだろう。手伝ってくれてもよいがお察しである。彼女達には走る以外の機能はもはや無駄なのかもしれない。……あなたからコラッとお叱りを受けたので訂正しよう。彼女達にはないのだろう。お嫁さん修行が楽しみだ。
「新年会は任せろって言ったでしょ」
「エプロン姿、二人共結構似合ってるじゃない」
言ってない。そしてエプロンの件に関しては揶揄っているのか判断つかないのでスルー。
「メジロ家では使用人の仕事です」
「はいはい、お前等に家庭的なものを望んだ俺が間違っていたよ」
あっ。
三名のウマ娘がムッと眉釣り上げて、そこからは早かった。
トウカイテイオーがトレーナーからお盆を取り上げ、メジロマックイーンが足を、ダイワスカーレットが腕を締める。ちなみに技名は腕挫十字固とスピニングトーホールド。お盆持ったまま脛に小攻撃連打しているのがトウカイテイオー。
やめなさいと二人にはチョップを入れる。
「なんですの?まさか貴方も同じ意見ですの?」
少なくとも乙女はスカートのまま殿方に組み付いてはいけないとあなたは進言する。そこは家庭的以前の問題だ。
その発言でバッと離れてスカートを抑える二名。目を背けるゴールドシップ。
あなた達トレーナーは大人なので構わないがトレーナーの発言も的外れではない。まずは淑女としての振る舞いを求めたいものだ。
「へんたい!」
子供に言われても痛くも痒くもない。
せめて体じゃなくて所作で色気を出せるところからスタートだガキとあなたは内心思ったが留める。
こういうのはもっと効果的な方法がある。
トレーナーを起こして、あなたはせっかく用意したスカーレットのぶんの食器をそそくさと片付ける。悲しいがへんたいの作った料理は食べられないだろう。ウマ娘はよく食べるし一人前くらい増えても関係ないだろう。
「待って待って待って訂正するから待って」
……こういう時は大人気ないと私達は苦笑いするしかない。
訂正を受け取って料理を頂く。今回の主導はトレーナーなので味の方はトレーナーに感想を言ってあげてほしい。少なくとも味見をしたかぎりとても美味であった。
「トレーナー様特性鍋だ!」
「おぉー!」
エビが主役の鍋。あなたはエビに関する知識がなかったのでそこはトレーナーにお願いした。あなたは感覚でやれてしまうのでそこはとても勉強になった。
パクパクと消えていく鍋。
こういう所はウマ娘に好感を覚える。美味しそう食べてる相手に「また太るぞ」発言にはあなたもクスッと笑ってしまった。"また"のところもポイントが高い。メジロマックイーンの横に座り、コンコンと消えていくお米などを補充するあなた。
「なんだか本当に使用人みたいだねキミ」
そんな様子を見ていたからかトウカイテイオーがそんな発言をあなたに浴びせる。
あなたにそんな自覚は微塵もないのでそうだろうかと傾げる。
「ほら今だってそうじゃん。なにも言ってないのにマックイーンに飲み物足したり、ゴールドシップによそってあげたり」
そう言われてあなたは自分の手元を見てみる。確かには器をもらって欲しいものをゴールドシップから言われてないのに自然と選んでいる。マックイーンにいたってはアクションせずあなたから率先して動いていた。
あなたとしても無意識下の行動に自分自身驚いた。
さも当然のようにメジロマックイーンの一歩引いた横にいることもあなたの困惑を加速させる。
「もしかして、マックイーンのところでお菓子作り過ぎて使用人として板についちゃった?」
そうだとしてもあなたが召使いや使用人は無理矢理でない限りないだろう。そんな呪縛にあなたが甘んじているわけがないからだ。
コンコンと音に反応してあなたがその音源を見る。
綺麗な手。その持ち主を見ればその顔にはあなたと同じ困惑。
「バナナ追加でー」
困惑は拭えないまま別のオーダーのため、あなたは立ち上がる。ひとまず考えるのはやめようと切り替える。
冷静になってこのタイミングでバナナと疑問の思いつつとって戻ってきたら全員の視線はTVのWDTに注がれていた。
異名?と共に紹介されるウマ娘を見てもあなたはピンとこない。あなたが反応できたのはシンボリルドルフとオグリキャップくらいなもの。……女の子に怪物は……いいの?
勝利したのはシンボリルドルフ。そのままセンターでライブ。レースだけでなく、体へ負担をこの時まで計算しないといけないのはとても面倒だとあなたはつくづく思う。(seven)
まああれだけ華やかなのでウイニングライブで踊ることが目標のウマ娘も居そうである。それならあなたも言葉はないのだけど。
「ハァやっぱりカイチョーカッコいいなあ」
トウカイテイオーのカイチョー推しも愛も変わらず。
「俺たちもいつかここで走りたいです」
「おっいい目標だな」
あなたの感覚でいうところのポケモンリーグのようなもの。選ばれし実力のあるものだけがその勝負に挑める。そう考えばなるほど、胸を押さえて真剣な表情にも納得がいく。
「そのためにはわたくしたちが結果を出さないといけませんわね」
そこはチームとしての枷があるのかとつくずく慣れない感覚にしこりを覚えるあなた。
チームの力は結局トレーナーであるあなたに収束する。一点のみが抜きん出ていてもそれは総合的には変わらない。チームの力=トレーナーの実力。これはほぼ直結している。
ウマ娘の場合はそこが直結しない。全体の勝率が良くないとチームとしての力が高いとは言えない。
あなたも普通に考えるならそこに意はない。
ただ一体の実力がずば抜けている、むしろ一体だけでリーグを制覇するなんて輩もいるのでそこは含まれないのかと思う。それを従えるのもまた実力だと考えているからだ。
「そのとおりだ。お前等がトゥインクルシリーズで勝ちまくればドリームトロフィーへのゲートは開く」
まぁ一体だけの実力しかないのならそんな場所に乗り込めば、力がまだ身についていないものは蹂躪されるだけなので妥当ではある。
「わっ私も出たいです。私も会長さんやスズカさんと走りたいです」
「スペ、のっている時のお前は確かに速い。だがムラがあり過ぎる、ダービーだけが日本一じゃねえぞ」
スペシャルウィークはそれに「はい」と返事をしてトレーナーは他のウマ娘にも言葉を送っていく。
「ウオッカ、スカーレット。同じチームに競い合うライバルがいるってのは速さへの近道だ。だが相手に負けるな」
「テイオー。お前の才能は誰もが認めるところだ。そこに甘んじるな。才能の向こう側を見つけろ」
「マックイーン。お前はあの名門メジロ家の令嬢だ。その名を知らしめるために泥臭くても努力しろ」
「ゴルシ……はうん。好きなように走れ。」
「そしてスズカ。去年俺はお前に夢を見せてもらった。だがまだ足りない。もっとお前で夢が見たい。リハビリ頑張れよ」
この時ばかりはあなたは後方腕組おじさんの心境だった。ウマ娘達の思い思いの返事
「「はい」」
「うん」
「言われなくてもわかっています」
「オッケー」
「はい」
を聞いてメジロマックイーンとゴールドシップの返しにあなたは口を閉じて笑うのを我慢した。メジロマックイーンに関しては"らしい"と思い、ゴールドシップはそれでいいのかと、でもそれでいいなと思い笑っていた。
この感じ。チームの纏まりを肌で受けて、うんうん、と内心で頷いているとトレーナーからあなたにも声が掛かる。
「あんたも来た当初は大雑把で不明確な指摘だったが名前は覚えていねえけど的確だ。むしろ最初はわざと適当なこと言ってただろ」
やる気がない、モチベーションがないので雑になるのは致し方ない。それにこのトレーナーに教えてもらいたいとも思わなかった。主に前半が大半の理由を占めていたがそれでもあなたはこのトレーナーを知った。ならこちらも教える。あなたにとっては普通のことだ。
「だから今のあんたに聞きたい。こいつらにはそのアドバイスが必要だ……スズカで思い知ったからな。頼りにしてる」
……。ウマ娘のトレーナーの先輩に頼られるのは新人としては荷が重いところであるが承知したと頷く。借りのぶんは働くつもりのあなただ。
「今年のスピカはリギルを超える!気合で負けんじゃねえぞ!」
「おおーっ!」
七名の声が重なる。
共に走る。いいものだ、とあなたは満足気だ。
「じゃいくか」
え……どこに?
バチバチと焚き火が燃える。時刻は夜。場所は加茂神社。今尚初詣で旗は欠かせないらしく屋台も客を逃すまいと全力だ。
「んっんっんっぷはぁー」
焼とうもろこし500。あま酒300。にんじん焼き500。選ばれたのはあま酒でした。
美味しそうに味わうトウカイテイオー。
凶
あちらはメジロマックイーンとゴールドシップ。溜息の姿を見るに面白い引きしたようである。下の言葉もちゃんと目を通すべきである。
あなたとトレーナーと言えばちょうどスペシャルウィークが御守を買うのを見届けた後。それに見を向けながらトレーナーには金運を進める。あなたはおまもりこばんにはお世話になっていたので一足先に買ったばかりである。おまもりこばんがあるのとないのでは金策にしろかなり後に響く。あなたは真髄に進める。
「あんたの金使いを見ると一概に嘘と決めつけれないんだよなぁ」
あなたは勧誘をしているわけでも集金をしているわけでもない。ただ自身の実体験を正直に話しているだけだ。強制でないし、運悪く金の巡りが滞るかもしれない。そこは天運次第である。なので買って後からあなたを責めても話くらいしか聞いてあげられない。それで後悔がないのなら。
お金を増やすには元となる纏まった金が必要とは相変わらず矛盾している。その金がないから増やしたいというのに。
例えトレーナーが買わなくともあなたは買いであったし買わなかったからといってウマ娘達の金銭についてはあなたがやりくりするのは変わらない。授業料だと思ってあなたの財布からお金が消えるだけである。
「うっうん〜」
年下に金を出させていることにか買うべきか悩んでいるのかあなたには預かり知らぬところ。
あなたの目はスペシャルウィークを追い掛けている。
スペシャルウィークはサイレンススズカ用に……いや自分のすら買わなかったことを見るに彼女のためだけ……。
慕うというのは悪いことではないがスペシャルウィークを見ると少し良くない感情が漏れる。
車椅子に乗ったサイレンススズカ。さぞ苦しいことだろう。足が治っているのに使えないもどかしさもさながら、自分を慕ってくれる者が自分に依存したが故に駄目になっていくのを見るのは。
これでレースで負けたら加速するのだがそこで立ち直ってくれるなら御の字。乱れていくならそこはトレーナーの出番だ。まだ思春期学生。大人が舗装してやるくらい問題はない。
苦しいと表現したが三人に囲まれている。
スッと目を細めて空気よりも瞳を凍てつかせながら三名の声が聞こえる位置まで近付き様子を窺う。
女性L「サイレンススズカさんですよね、あの握手してください」
Lが終わった所を見計らって男性Gが足が大丈夫かと問い、おばあさんMが復帰を待ってると声援。
変な事を吹き込まれていないorしっかりとした対応にあなたは安心する。あのトレーナーが仕込めると思えないので誰かが教えたのだろう。
さて、あなたにしては過保護気味に対応もやめてあなたは喜々として出店へ駆り出す。
「お前等いくぞー」
本坪鈴__だったか。子供を見つけるための鈴。魔除けの鈴。庇護を得るなど様々な意味があるがあなたはそちらの音色に興味はない。集まってくるウマ娘達とは対照的にあなたはトレーナーから離れていく。
「あれ、今呼ばれたよ」
出店に顔を出していた彼女とすれ違う。そのまま通り過ぎようとしてガシッと腕を掴まれる。
「呼ばれたよ行こ」
…………。願掛けにしろ何をするにしろ、あなたはこのチームスピカの部外者であることに変わりない。
だからあなたは態々一歩引いた位置でいる必要があると思っているしアドバイスのことも俯瞰視点を持つことを考えるなら結局同じだ。それにあなたは願うなんてしたくない。
「最期が八割だね__なら一緒に祈らなくてもいいからせめて近くに居てよ。部外者でも協力者であることに変わりはないんでしょ?みんなのこと、気を配っていたのに団体行動を自分で乱してどうするのさ。オススメも後で教えてあげるからさ」
あなたは彼女の言葉に説得されるが同時に疑問も生まれる。少なくともあなたが知っている彼女は諭すような事は言わない性格だったと記憶している。
「キミに記憶って言われると……いやそうか。覚えてはいるけど思い出せないタイプだったねキミは」
それは違うが指摘するのも違う。
「そうだね、心境の変化ってやつかな。キミに教えるって言ってボクはもらってばかりだったからお返し。あの公園でのトレードはなくなったけど、もらったものを返すっていうのはキミは断れないでしょ」
よく知っている。
その時ばかりはあなたと彼女の心理的距離は昔に戻り、あなたは無意識に彼女のことを撫でていた。
「……。うんありがとう。さ、行こ?」
先程とは違い優しく引っ張られるあなた。
誰か一緒にいる、誰か引っ張る。誰かを押す、誰か導く。切り開くのはいつも自分で、そんな経験はあなたはあるけれど誰かに引っ張ってもらうのは初めての経験。
これも悪くないとあなたはトレーナーの元へ集まるまで浸っていた。
○
一列に並んでシャラシャラと鳴らす。
順番はゴルシトレーナーウオスカテイマクスペスズ(略)。
ゴールドシップとメジロマックイーンだけ尻尾を上着の下から出してるのポイント高いなと後ろから眺めてあなたは呟く。
「スズカの怪我が治りますように。あっそして蛇口からオレンジジュースが出ますように。あっサイダーでもいいあとこれから出店で牛串とたい焼き買い占めて、いやそれだけじゃねえやっぱすべてのでみせ___」
声に出すな。とあなたと同じ気持ちを抱いた。テレパシーで読み取る私はしょうがないが……いやそれよりもなんてもん願ってんの。
(スピカを最強のチームにする)
((こいつには負けない))
(カイチョーに追いつく)
(メジロ家にふさわしい走りを)
(スズカさんと走れますように)
(必ず復帰します レースに)
あっ良かった。まともで安心する。
他人の願いを聞き入れてしまうこの特性をこのタイミングだけはいつも疎ましく感じる。
あなたと話せるから明日には消えるけどね。
そんなあなたはみんなから催促されている。あなたとて神頼みをしないわけじゃない。ねっとうでやけどしろ!だったりだいもんじ当たれと願うことはある。バークアウト頼むから外すななんてことも。
でもあなたの事情を聞いてそりゃないねって思った。あなたは勘当された身。私達の世界だったら周りに合わせていた。神様が違うから。不敬じゃないかななんて溢していたけどそんな方なら私があの世界に押し込まれただけで済むはずがない。それに納得されたのは不服だけどね。
でも約束してくれた。必ず私達だけのパーティーを。
可笑しな月明かりが彼女に急かして出店に行こうとするあなた達を照らし出す。
冷え込んだ寒気を物ともせず子供は風の子と主張するように二人は楽しそうに駆けていく。
大丈夫。大丈夫よ。待つのは慣れているから。
あなたが孤独を紛らわせるならそれでいいの。
だからどうか自分を見失わないで。もう遅いけどそう願ってる。
サーナイト
エスパータイプは便利。さいみんじゅつとテレポート。
窓から身を投げる。
bw2の序盤にてアデクおじいちゃんが崖の上から平然と降りてくるシーンがある。
直感
ウマ娘ですり抜けるのはメジロマックイーンとマンハッタンカフェ。逆に確定なのはアグネスタキオン、ゴールドシップ、エアグルーヴ。でも本来なら上記の二名でもあなたは対応できる。けれどタイミングが悪かった。親しいものたちを受け入れている頃合いなのが問題だった。身内が強いものは身内が弱点なのだ。
多分金銭で一番トレーナーに負担をかけていない作品。あなたが金銭を惜しむ必要がないからと一纏めにしているのが最もな理由。豪遊は楽しい。
コンコン
あなた達だけの合図。
一体だけでリーグ制覇
剣盾だとある。サザンドラ周回。もしくはエラがみ。
スズカのリハビリ
感覚が少し変調しているので同期するためまだリハビリ。トレーニングの時間は多くなる予定。だがスペの献身は健在となるためスペとグラスの思いは変わらない。
トウカイテイオーとあなた
現状は選手と研修で見習い。でも昔はただのウマ娘とポケモントレーナー。お互いの事情は知らなくても良かった。
月
アローラ地方ももちろん時間は進んでいる。