〇〇の(ポケモン)トレーナー 作:カナーさん
ポケリフレできのみの視線を追うブラッキーのようにおいしいみずに釘付けの姿を見て、あなたは名も知らぬウマ娘に愛着が湧きつつある。
左右にゆらゆら、それに釣られる視線と身体。この状態でおいしいみずを手放したらどんな表情になるだろう。
怒り?悲しい?
落とすのも一興だがあなたは結局いつもその栗のような口の可愛らしさに負ける。
けれどただ負けてやるわけにはいかない。ヒウンアイスをねだるえんじとかで学んだ。
ポイッとかるくおいしいみずを少し高めに投げる。ゆったりとした弧を描いて、ジャンプして口に咥える姿を想像して、ナイスキャッチという言葉を用意して、微動だにしないウマ娘の顔面に直撃した。
しゃがみこんで顔を押えて悶るウマ娘。
あなたは驚いた。
そのパターンは初めてである。チャンピオンからえんじまで幅広く飲み物を投げ渡してきたが顔面で受け止める相手はいなかった。失礼だと最初こそ咎められたりしたがこれがあなたの距離の測り方だ。元より気安い相手でなければそんな行為を頻繁にしないのだ。
あなたは瞳の輝きがますます煌めく。がまずはおでこは大丈夫だろうか。眼は傷付いてないだろうか。
「イテテ、もぉーなにするのさー?」
意外と元気な声が聞こえる。えんじではなくホープトレーナーにランクアップしよう。
「なんかとてもバ鹿された様な気がする」
気の所為だろう。それよりもお詫びにおいしいみずをプレゼントするつもりで彼女の眼前で揺らす。
「……………」
このおいしいみずにはユンゲラーのさいみんじゅつと同じ効果でも付与されているのかと疑問を浮かべる。
とりあえずキャップを開けて有無は言わせず渡す。
バシッと手からおいしいみずは離れ、ゴクゴクと喉に吸い込まれる。
いい飲みっぷりだ。
「なにこれスゴイおいしいね」
プハッ!
デパートを上で疲れたお嬢様にサイコソーダを渡した反応と同じだ!とどこから電波を受信した気がする。
どこの地方でもお嬢様は少し残念なのだとあなたは喜んだ。なに、少し抜けてるくらいがかわいい。
CM並の飲みっぷりに喚起されて、あなたはバックからキンキンに冷えたサイコソーダを取り出す。
プシュ
やはりイイ音だ。
そのまま飲もうと傾け、視界の端に激しく揺れる尻尾が映る。サイコソーダからウマ娘へ視線を移すと防御力が下がりそうなほどしっぽをふっている。可愛くふってはないが行動がかわいい。ウマ娘は実は存在が罪か?
その謎を解明するべく、あなたはサイコソーダも渡す。
一瞬人体への影響を憂いたが最悪フィラの実を口に突っ込めば万事解決だ。さぞ立派なかえんほうしゃをお見舞いしてくれるだろう。
「ンまあーいっ!えなにこれシュワッと弾けて、こんなの今まで飲んだことないよー」
いいリアクションだ。
そんなに反応がいいとあなたもそれに応えたくなる。
投げたボールを咥えてきたポニータを思い出す。彼女達もボールをあなたに渡すと疾走の準備をして楽しさを抑えることなくしっぽを振り回していた。
再び取り出したサイコソーダを期待の眼差しで見つめるウマ娘。しっぽを見ずとも感情は手にとるようにわかる。
Are You Ready?
「もちろん!」
「_いやー今思うとスゴイ不思議だよね。ボクもキミもあの時がはじめましてなのにさ、ボクがトレセン学園の中等部へ進学してもずっと関係が続いているんだもん。しかもお互いに名前を知らないまま」
いつもの公園であなたとウマ娘_トウカイテイオーと並んでベンチに座っていた。
街は夕暮れへ傾き、帳があなた達を隠すだろう。
だがもう隠しきれない。
「あの日から出来る限り毎日ここに通った」
甘味に釣られて。
「へへへ。あの時の美味しさと衝撃が今でも忘れなれなくてね。ようかんやまんじゅうに、はちみつアイスは一目惚れだったね。あまいみつとヒウンアイスだっけ?あんなのズルだよずる。だから通ったんだよ。ずーっとずーっとだ」
トウカイテイオーはそこで言葉をとぎり、あなたを見つめる。
そこにあるのは不安でも警戒でもなく心配。
「ボクにだってオフはある。友達と遊びに行って来なかった日だってある。けどそれでも居過ぎだよ。一回一日中モニタリングしたけど結局帰ってくるのはここじゃん」
あの日のことだろうか。
特に意味もなく街を散策して、未開の地を蹂躪して地図埋めに精を出す。トレーナーとしてそれほど珍しい趣味でもない。後輩のメイもメダルラリーコンプを目指していた。あなたの場合はメダルが地図に変わっただけだ。
あなたは巡ってなかったショッピングモールの試食で腹を整えて、全てのエレベーターと階段を使って関係者以外立入禁止を除く場所を歩き尽くした。
とくにめぼしいものもなかったのでそれなりに歩いてここに戻ってきたわけだ。
「それなりって…県を跨いでの移動をそれなりですますかあー。実はキミ、ウマ娘だったりするの?」
確かにあなたから見ても素敵力のあるウマ娘はいるし、頭に載せている帽子を外さないのも隠していると思われてもしかたのないことだ。
とはいえ外す理由がなかったので被りぱなしだったというだけの話なのだが。
弱い理由でも疑いが晴れるならと帽子をとる。
そこには当然耳はない。
「あーうん知ってた。ありがとうってそうじゃなくて!」
わかっている。あなたも空気を和ませるため意図的にやっている。
なにを心配しているかも大凡理解はしているつもりだ。
「ほんとうかなぁー」
何故このウマ娘はニヤニヤとクソガキムーブを自然に行うのだろうか。そんなことしてもあなたは喜んでそれに笑顔で応えるつもりだ。えんじの帽子を手の届かないところに置くとか。この娘ならアイアンクローを味わわせる。
「ちょちょちょタンマタイム!キミ素手でりんご砕くじゃん」
赤いきのみのことだろうか。
きのみ程度になにを驚いているのだろう。旅出る必須技能でこそないが、身につけると便利である。
この技能は筋トレと自己暗示で身につけれるので機会があれば教えるが。元から筋肉量の違うウマ娘でも効果は見込める。
「それはとても興味のある話だけど…」
OK話を戻そう。
あなたはここへ流れ着いたこと、自宅のないこと、身分を証明できないこと、元の周囲の環境が特異であること、この公園に来るまでの記憶がないことを話した。
ある程度信用があり、かつ周囲に聞かれてもまだ許せる範囲なので、異世界からの漂流者であることは話していない。
「あー思ってたより結構深刻な状態だった。びっくり。ちなみに警察とかは_」
論外である。ジュンサーさんのお世話にはなりたくない。そもそもが眉唾物であり、例え話が通ったとしても面倒事は確実だ。あなたは自由に伸々生きたい。
「だよねー。察してるけどお金は?」
0円だ。冒険を始めてこの方こんな事は初だ。
最初はおこづかいをもらったし、バトルも下手ではないので稼ぎはあった。道具集めの性で所持金の桁が変動するのはよくあったが桁すら消滅した。
おかげで飯にもありつけない。道具集めの性に初めて感謝したくらいだ。
「ボクとしてはなんでそんな状態で生きてこれたのかとても疑問なんだけど。とりあえず、はいこれ」
彼女の手には知らない人の顔が描かれた紙。紙幣だろう。それと数字の彫られたコイン。
トウカイテイオーはあなたを惨めにしたいのだろうか。
「え、なんで!?」
ホープトレーナーからお金をねだるのはえんじからお金を強奪するのとなにも変わらない。むしろあなた達が恵みを渡す側なのだ。
善意からの行動なのはわかるが年下からせびるほどあなたは悪の組織に加入していない。
なので代理案はどうだろうか。あなたが今まで無償で提供していた食物達と交換というのは。上限に到達するまであなたはかなりの額を投資している。それを排出しているのだからトレードとしては十分だと思うのだが。
「おーいいじゃんそれ」
納得してくれたようだ。
あなたはいい笑顔で手を差し出す。
「おっ早速だね。うーん喉乾いたからお水で。200円でどうかな?」
あなたは首を振る。
「じゃあ300!」
あなたは首を振る。
「4、400!」
あなたは首を振る。
「じゃ_」
少し声が震え始めたタイミングでそうじゃないと止める。あなたは金額が足りないと首を振っているのではないのだ。
ただ、今まで無償で腹に収めた食物達をとても深い慈悲によって払わせてほしいと言ってきた彼女の為にあなたもとても心苦しいのだが要求しなくてはならない。
今まで飲み食いしてきた合計金額を。
「は、はぁーーーー!!?」
彼女の声が響き渡る。
あぁ何故だかとても快い。
ふしぎなあめは不確定だが一個2400円だった筈である。
タマムシデパートのお嬢様にサイコソーダを渡そう。
しっぽをふる ポケダンでは相棒のピカチュウ等で出番のあるしっぽをふる。でもヒトカゲのえんまくがさいつよ。
メイ メイちゃん。メイいっぱい頑張るぞ!ちなみに人気女優で映画一本の興行収入は5000億超。これでチャンピオン倒すとかなんかのバグ。しかも実質社長。
Are You Ready? シュワッと弾ける!