かなり難産でしたが出来ました。本文どうぞ〜
承太郎に連れられてやって来たのは巨大な屋敷だった。表札には【空條】、つまりここが承太郎の目的地、そして家だ
「わぁー、おっきなお家」
「ジロジロ見てんじゃねぇよ。さっさと入れ」
承太郎に促されて門をくぐる三人。1人は承太郎に担がれて気絶しているが
巨大と言ったも過言ではない程に大きな屋敷、その通路をギシギシと音を立てながら歩く
「……………もしかしなくても承太郎くん家ってお金持ち?」
「知らねぇよ」
承太郎は説明を省いたが、スピードワゴン財団と言うこの世界でも有数の大企業が空条………というかジョースター家のバックについている。それはジョナサン ジョースターの物語に深く関係している事なのだが、今は割愛しておこう
「………………………承太郎くんってよく冷たいって言われない?」
「よけいなお世話だ、高町」
「やっぱり冷たい」
そんな話をしながら歩く二人の耳に、承太郎には聞き慣れた、なのはにとっては始めての声が聞こえて来た
「あ、今、承太郎ったら学校で私の事を考えてる、今、息子と気持ちが通じ合った感覚があったわ!!」
承太郎のこめかみに血管が浮き出る
「そうなの?」
なのはの問いにさらにイラつきながら、なのはと声の主であるホリィ、母親に向かって言った
「考えてねーよ」
「きゃぁあああああああああ!!」
ホリィの叫び声。それはそうだろう、学校にいると思っていた息子が突然自分の後ろにいて、しかも自分の恥ずかしい独り言を聞いていたのだから
……………まぁホリィにとってはそれが『恥ずかしい独り言』であるかは解らないが
「じょ、承太郎……? 学校はどうしたの? それにその人達は?」
「え、えへへ……。お邪魔します」
ホリィは血の滴る花京院となのはを見て、さらに驚きの声を上げる。そしてその瞳がなのはを捉えたとき、彼女は後ずさりながら口を開いた
「そ、そんな………………承太郎が、承太郎が…………」
「ん?」
「私の知らない所で『彼女』を作って家に連れてくるなんて!!」
「ふぇぇええええええええええ!!」
「…………………………フー」
なのはの驚愕の声と承太郎のため息。承太郎にしてみれば血だらけの花京院についてとやかく言われないのはいいが、さらに面倒な事になったと思っていた
「ちょ、ちょっと承太郎くんお母さん? 私と承太郎くんはそんな関係じゃ………」
「はっ!! もしかして学校を早退してまで家に連れてくるってことはまさか………………結婚の報告!? いえ、もしかして子供が出来たとか………」
「ちょっと待ってぇええええええええ!!!!」
どんどんあらぬ方向に暴走するホリィ。そしてそれを止めようと必死になるなのは。忘れられる花京院。この状況をどうしたものかと思案した承太郎は、結果力技に出る事にした
「鬱陶しいぞ!! このアマども!!」
「あら、ごめんなさい」
承太郎の一喝で、暴走していたホリィは元のぽわぽわした様子に戻った。しかしそれを見たなのははむっと唇を尖らせて
「承太郎くん。お母さんに向かってアマとはどういうことなの?」
「ああぁん。テメーには関係ないだろうが」
「なくても良くない事は良くないの!! 全く、承太郎くんならそれくらい解ると思うのに…………」
「このアマぁ…………」
「アマじゃなくてなのは。とりあえず高町でもいいけど」
その様子を見ていたホリィが少し考える様子を見せてから
「やっぱり付き合ってるの?」
「ねーよ」
承太郎はそう言ってから、もう1つおおきなため息をついた
*
閑話休題
さて、話は戻って花京院だ
「その人、血が滴ってるけど大丈夫なの? あなたがやったの?」
「そっちが後か……………。てめーには関係ない事だ。俺はジジイを探している。広い屋敷は探すのに苦労するぜ。茶室か?」
なのはが承太郎の‘てめー’と言う言葉に反応するが、話が進まないと思ったのか、今度は放置した
「え、えぇ。アヴドゥルさんと一緒にいると思うわ」
「そうか」
そのまま承太郎は茶室に向かって歩いて行ってしまう
「あなた…………なのはちゃんって言うのかしら?」
「え、あ、はい。高町 なのはです。承太郎くんのお母さん」
「ホリィでいいわよ、もしくは聖子でもかまわないわ。それでいきなりこんな事を言うのもなんだけど………承太郎と仲良くしてやってね。あの子、口は悪いけど本当はとてもいい子だから」
「………………………はい、『知ってます』」
そう、なのはは承太郎がいい人だと言う事を知っている。それこそ根拠なく承太郎の言葉を信じる事が出来るくらいには
「おい!!」
その時、茶室に向かって歩いていた承太郎はなのはとホリィの方を振り向いて、口を開いた
「今朝は顔色が良くないぜ。元気か?」
「………………イエス!! ファインサンキュー!!」
その様子を微笑ましいものを見る目で見つめるなのは
「………………何だ、高町」
「んーん、何でもないよ。やっぱり承太郎くんは承太郎くんだって思っただけだから」
その言葉には反応を示さず、承太郎は茶室に向かって歩いて行ってしまった
「あ、待って待って!! 私こんな大きなお屋敷で1人にされたら流石に迷子になるよ!!」
「そう思うんだったらちゃんとついてきやがれ」
なのはは小走りで承太郎に追いついた。その様子を見ていたホリィは思う
(なんだか微笑ましいわね。承太郎)
*
茶室。文字通りお茶を飲む為の場所だ。そこにいたのはジョセフ ジョースターとモハメド アヴドゥル。ジョセフは承太郎の祖父で、アブドゥルはその友人だ。そして二人とも『スタンド使い』でもある
「随分はやく戻ったな承太郎…………。なんじゃいそいつは?」
「『スタンド使い』だ、学校で襲われた。こっちの女は…………………いろいろ面倒だから後で説明するぜ」
「む、随分とひどい怪我をしているな。JOJO、お前がやったのか?」
アヴドゥルの問いに承太郎は答える
「俺は一応手加減したぜ。こっちの女が手を出さなければここまで酷い怪我にはならなかったはずだ」
「ふえぇ!! ボコボコに殴ってたのは承太郎くんじゃない!!」
それを無視して床に花京院を置く承太郎。その周りで浮かない顔をするジョセフとアヴドゥル
「全く話が見えんのじゃが……………、学校でDIOの手下に襲われた所をこのお嬢さんに助けられたと言う事でよいのか?」
「いい訳あるか。この女がお節介に手を出して来ただけだ。俺一人でもなんとでも………」
「そんなこと言って結構ピンチって痛い痛い!! 髪を引っ張らないでぇ!!」
「よけいな事を喋るんじゃねーよ」
「うぅ………」
ぽかんとした様子になったジョセフとアヴドゥル。まぁ目の前でこんなやり取りをされたらぽかんともなるだろう
気を取り直して、ジョセフは咳払いを一つ。そして口を開いた
「つまりはお嬢ちゃんも『スタンド使い』なのかの」
「えーと………、はい。そうだと思います」
その反応に怪訝っと言った様子で反応するのはアブドゥルだ
「思う………とはどういう事だね?」
「『スタンド』……………ってこれの事ですよね」
そう言って、なのはは『スタンド』を出して傍に立たせる。やはりそれは正真正銘『スタンド』だ
「うむ……………、こう言った事を聞くのはなんだが、DIOの手下じゃないだろうね?」
「えっと……………そのでぃおさんって言うのもよくわからないです。第一……………………」
そこでなのはは言葉に詰まってしまった。なぜなら、今の自分の状態を説明する言葉が見つからなかったからだ
アイナに怪しげな装置でゲームの世界に送られ、そして気がついたらよくわからない『スタンド』とやらを操る人に襲われる承太郎をなんだかんだで助太刀する事になった。それをどう説明すればいいかなんて普通に無理だろう
「なんじゃ? なにか言えない事でもあるのかの」
ちなみに、ジョセフとアヴドゥルはなのはの事を信用していない。承太郎を助けたと言うのも、こちらを信頼させる為のDIOの手段かもしれない。そう思う程度にはなのはの事を疑っていた
もちろん、なのはがDIOの手下である訳などなく完全に濡れ衣なのだが
「……………………………あの、凄く突拍子もない話になるんですけど、いいですか?」
「む? まぁ突拍子もないと言う点なら『スタンド』やDIOの話も突拍子もないからのう」
その言葉を聞いて、覚悟を決めたなのはは大きく息を吸い込んで自己紹介をした
「私は、‘私立聖祥大附属小学校3年’の高町なのはです」
小学校と言う言葉を強調して、なのははここに至るまでの経緯の説明を始めた
*
「信じられん………、その話を全て本当だとするならばなのはちゃんはまだ小学生でさらに未来から来た…………もっと言うと、こことは別の世界の可能性すらありその世界には『魔法』なんて概念がある…………、流石に信じられんぞ」
それがなのはの話を聞いたジョセフの反応であった。まぁ当然の反応だろう、違う世界、未来、魔法、どれも世迷い言と切って捨ててもいいくらいの話だ
もちろん彼女は嘘などついてないし、つく理由もない。しかしそれを証明する証拠は何一つないのだ
「そうですよね、やっぱり信じられ……」
「いや、信じるぜ」
自分で言ってても世迷い言の様だと思ったのか、しょんぼりするなのはに承太郎はそう言った
「承太郎くん………」
「今の説明なら何かと符号する所も多い。何より俺はこいつが違う世界から来る所を見ている」
「なんじゃと!!」
それは始まり。承太郎は空間の亀裂としか言えないものからなのはが出てくる所を見ている。その事をジョセフ達に説明するもやはり納得は行かない様だ
「……………………だがしかし、このままこの話を続けてもどうしようもないのは確かでしょう」
話が堂々巡りになりかけ、水掛け論となって来た時、アヴドゥルが言った
「貴女の事は一旦保留にしましょう。今はそこの花京院と言う男が最重要だ」
「………………………あぁ、そうだな」
とりあえず保留。その意味は、まだなのはがDIOの手下であると疑ってると言うのと同義だが、証拠もない以上どうしようもないだろう。そう思い、承太郎は話を進める事に決めた
そしてジョセフは床に寝ている花京院を念入りに調べて行く。そしてそれを見つけた時、頭を振りながら言った
「ダメだな。こりゃあ手遅れじゃ、こいつはもう助からん。あと数日の内に死ぬ」
「そんな!!」
「………………………」
ジョセフの言葉を聞いて、反応を示すのはなのはと承太郎
「承太郎、なのはちゃん。お前達のせいではない。見ろ、この男が何故DIOに忠誠を誓い、お前を殺しに来たのか」
ジョセフは花京院の前髪に触れ、それを掻き揚げながら言った
「その答えが………………ここにある!!」
「……………っ!!」
そこにあったのは肉片であった。ピクピク動き、気味の悪い姿をしている。
「なんだ、このクモの様な形をした肉片は」
「それはDIOの細胞からなる『肉の芽』。このちっぽけな『肉の芽』少年の脳に影響を与える様に打ち込まれている」
「つまりこの『肉の芽』はある気持ちを呼び起こす『コントローラー』なのじゃ
それは『カリスマ』。ヒトラーに従う兵隊の様な気持ち。邪教の教祖に憧れる様な信者の様な気持ち。この少年はDIOに憧れ、忠誠をちかったのじゃ!!」
その言葉になのはは絶句していた。桁が違う、そう思った。彼女はこの歳の人間にしてはかなりの修羅場をくぐっている。それこそ大の大人でもどうしようもない様な事件に関わり、その解決に重要な役割をこなす事もあった。しかし、相手の脳を侵す様な相手と戦った事は一度もない
しかし同時に、怒りを覚えていた。それは『悪』に対する怒り。相手を洗脳するなんてそんなのを許せるはずはない。聞いた話でしかないDIOに対する怒りは頂点に達しつつあった
「……………………………こんなことがあった。四ヶ月前、私はエジプトのカイロで、DIOに出会ったのだ」
「………っ」
そこからアヴドゥルは語りだした。DIOに出会った事、その男がどれだけ恐ろしかったか、そして逃げていなければ花京院と同じ様に『肉の芽』を植え付けられていただろうと
「………………そしてこの少年の様に、数年で脳を食い尽くされ死んでいただろうな」
そこまで言った時、承太郎は動き出した
「死んでいた? ちょいと待ちな、この花京院はまだ死んじゃいねーぜ!!」
承太郎はその場に『スタンド』出す。そして自身の両手で花京院の頭をガッチリと固定した
「な、何をする気なの? 承太郎くん」
「俺の『スタンド』で引っこ抜いてやる」
「待て!! 承太郎!!」
承太郎の『スタンド』が『肉の芽』を掴む。承太郎の『スタンド』は一瞬の内に弾丸を掴む程に正確な、そして素早い動きが可能。その『スタンド』の力なら花京院の脳を傷つけずに『肉の芽』を引き抜けると考えたのだろう。それは概ね正しい、誤算があるとすればその『肉の芽』が生きてる事だ
グチュッなんて嫌な音をさせて『肉の芽』の先端が承太郎の手に食い込んだのだ
「なっ!!」
なのはの悲鳴の様な声
『肉の芽』は自身に害するものを攻撃し、そのものをも支配しようとする。それこそどんな外科医に摘出出来ない理由。そう、『普通』の人間には摘出出来ない理由なのだ
自分の目の前で起きている事に気付いたのか、花京院は目を覚ます
「き、さま…………」
「動くなよ、花京院。動けばお前の脳はお陀仏だ」
「……………」
「花京院さん!!」
「高町も俺に触るんじゃねーぜ」
触手が手を伝い、腕、肩、そして顔にまで上ってくる
「手を離せJOJO!! 顔まで這い上がって来たぞ!!」
アヴドゥルの叫び。しかしそんなものは一切気にせずに承太郎は『肉の芽』を引き抜き続ける。そしてついに
「うぉおおおおおおおおおおおお!!!」
脳の奥深くまで突き刺さっていた『肉の芽』を引きずり出した。そしてそのまま自分の中の『肉の芽』も引き抜き千切る。最期にジョセフに向かって放り投げた
「こぉおおおお!!
ジョセフの腕を伝わる『波紋』の力。もちろんそれはなのはには理解出来ない物だが、それは『肉の芽』を灰へと変えた
「……………なぜ、だ」
額から流れ出る血を拭いながら、花京院は承太郎に問いかける
「なぜ自分の命の危険を冒してまで私を助けた?」
承太郎はその問いには答えない。何でもない様な顔をして外を向く
「承太郎くん」
なのはに催促され、小さく承太郎は答えた
「さあな、そこんとこだが…………、俺にもようわからん」
その言葉を、なのはとたまたま外で聞いていたホリィは奇しくも似た事を考えていた
(ママはちゃあんと見抜いてるんだからね、承太郎)
(やっぱり…………やっぱりそうなんだね。承太郎くんは)
花京院はなんて答えたらいいか解らずに俯いてしまう。その瞳からは何を考えてるかは読み取れなかった
*
その後、なのははDIOについての話を聞く事になる。大西洋から蘇った吸血鬼、ジョースター家の宿敵、ジョセフと承太郎の『スタンド』発現、さらに
そしてそこで重大な事実に気がついた
「私、家がない」
そう、この世界になのはの帰る場所はない。というかそれ以上にどうやって帰ったらいいかも解らないのだ
なのはも馬鹿じゃない。流石にもう何か異常事態が起きていることは気付いている。どう考えてもこれがゲームの中とは考える事が出来ないのだ。そう、ゲームにしては全てがリアル過ぎる
もちろん仕様と言われればそれまでだが、やはりなのはにはこれがゲームだとはどうしても思えない。それ程までにこの世界はリアルなのだ
つまり高町 なのはは今、遭難してる事になるのである。そしてその事に気付くのに丸半日かかった間抜けっぷりについては「馬鹿か」と承太郎のありがたいお言葉をもう既に貰っているので追求はしないでおこう
「ふぅむ………なのはちゃんの話が全て本当と仮定した所で、それをワシらがなんとかする事は出来んのぉ。しかし、憶測は出来る」
ジョセフはそう言いながら、なのはの方を向いた
「そうじゃの、なんの確証もない事なのじゃがDIOが関わってるのではないかとワシは睨んでおる
あの男の影響力は計り知れん。あの男が『スタンド』を発現した事によってワシらジョースター家の人間にも『スタンド』が発現したんじゃからの
そしてDIOのその影響力が、なのはちゃんの言うその『ゲーム』にも影響力を及ぼした。だから君はその世界からこちらに来てしまった……………という仮説じゃ。もちろん確証どころか根拠もゼロじゃがの」
ジョセフはそう締めくくった
「……………………………私、帰れないのかな? もう皆と会えないのかな?」
そう思うと、とたんに望郷の念が押し寄せて来た。父に母、大好きな兄に姉、そして友達のアリサとすずか。今は遠くに行ってしまっている大切な大切な友人のフェイト。そんな彼女らの顔が浮かんでは消え、なのははどうしたらいいか解らず、最後には気持ちを爆発させてしまった
「ふ、ふ、ふぇええええええええええん。あぁあああああああああああん」
「な、なのはちゃんや?」
重ねて言うが、なのはの精神はまだ小学生だ。いくら大人びた所があるといえだ。そんな彼女が突然に異世界に、帰る手段も目処も全く立たないなどという状況に放り込まれたのだ。当然、泣きもするだろう
「…………………………おい、高町」
「うう、うう………」
そんな彼女に承太郎は声をかけた。彼に解決策がある訳もない、自分が人を慰める事に向いてない事など百も承知だ。しかしそれでも声をかけずにいられなかった、共に戦った戦友として
「…………………見つけてやる」
「ふぇ?」
「俺が見つけてやる。てめーが元の世界に帰る方法を。だからもう泣くんじゃねぇ」
その言葉をどう受け取ったのだろうか、悪い様には受け取ってない事だけははっきりと解る表情をしていた。数秒の時間をおいて彼女は泣き止み、口を開く
「…………………うん、ありがとう」
「…………………ふん」
承太郎はそっぽを向いて茶室の外に出た。きっと戻って来る事はないだろう、しかしなのはの心はもう安らいでいた
「………… ジョースターさん。この子は、高町 なのはは違う様な気がします」
「あぁ、ワシもそう思った所じゃ。DIOの手下にしては余りにも邪気が無さ過ぎる。姿さえ見なければ、本当に小学生と言われても信じてしまいそうじゃ
…………………なのはちゃんや」
「あ、…………ごめんなさい。変な所を見せちゃって」
「いや、それは構わん。そしてワシらも承太郎と同じ気持ちじゃ、きっと君を元いた場所に戻してみせる。そして…………すまんかったの、DIOの手下などと疑って」
なのはは一瞬ぽかんとした表情になったが、すぐに笑顔に戻って
「ううん。信じてくれて嬉しいです」
そう言った
*
次の日の朝
なのはと花京院は前日は空条家に泊まる事になった。なのはは家がなく、花京院はもう遅いという理由からだ
なのはとホリィはどうにも気が合うらしく、二人で同じ部屋で寝て遅くまで話し込んでた様子だった(といっても10時くらいにはなのはが限界を迎えたのだが)
「う、ううん………あれ、ここって」
なのはが目を覚ますと知らない天井。寝ぼけて自分が何処にいるのかも思い出せなかったのだが、次第にここが空条家のホリィの寝室である事を思い出した
「あぁ、そうだったっけ……………目が覚めたらアイナさんの研究所なんて展開はないか」
もう殆ど、ここがアイナの造ったゲームであるとは思っていなかった。しかし次の日と言う区切りでなにかが起こるかもという期待がなかったかと言うと嘘になる。だがまぁ元に戻らないのならしかたない、自力で帰る方法を探すし、いっその事DIOと言う人間に会いに行ってもいい。もしかしたら何か知ってるかも知れないのだから
そんな事を考えて布団から身体を起こして、昨日の内にホリィに用意してもらった服に袖を通すなのは。自分の身体の年齢がどのくらいなのかは解らないが、あてらわれた若い頃の服とやらはなのはに問題なく合っていた
なお、なのはが始めから着ていた制服は今はホリィの手によって洗濯が完了され、昨夜の内に干されている
「ホリィさん…………はいないか。どこいったんだろ?」
そう言いながら彼女は立ち上がる。そして辺りを見渡して外に出た
*
広い。それがこの家のなのはの感想だった。何故そんな感想が出て来るのかと言うと理由は至極簡単
「迷った…………」
そう、広い屋敷で迷子になってしまっていたのだ。まぁ当然と言えば当然の事なのだが
しかしそんな時、声が聞こえて来た。知ってる声、これはアヴドゥルの声だろう。ならばそちらに行けば皆いるのかもしれない。そう思って彼女はそちらに足を向けた
そしてかなりの距離を歩いた頃、台所とおぼしき場所でアヴドゥルを見つけた
倒れたホリィと一緒に
そう、なぜかなり距離があるにも関わらずアヴドゥルの声が聞こえたのか、それは彼が叫んでいたからだ。ホリィに呼びかける為に叫んでいたのだ
「ホリィさん!!」
倒れたホリィになのはは駆け寄る。ちょうどいいとばかりにアヴドゥルは
「なのは、ちょうど良かった。ホリィさんの背中を見てくれないか!? 私一人だったらしょうがないのだが、君が見てくれたほうがいい」
「え!? なんなんですか!?」
「いいから!! 事は一刻を争うかもしれないんだ!!」
そう言ってアヴドゥルは後ろを向いてしまった
「えっと………、じゃあ失礼します」
一刻を争うと言われて躊躇や問答をしてる場合ではないだろう。そう思いホリィの服を脱がせて背中を見た
「え……………? なにこれ?」
そこにはシダ植物の様な何かが背中から生えていた。それに手をかざしてみるが触れない。そう、これは『スタンド』だ
「どうだ………、なにかあったかね?」
「『スタンド』です、ホリィさんの背中からシダ植物の様な『スタンド』が生えてます!!」
それを聞いたアヴドゥルは歯を食いしばり、拳を握りしめながら言った
「ホリィさんにも『スタンド』が…………しかし先ほどの触った時に感じた高熱、『スタンド』が『害』になっているッ!! JOJOとジョースターさんにだけDIOの肉体から影響があり、ホリィさんに異常がないので安心しきっていた。いや、‘安心しようとしていた’のだ……ッ。そんなはずがない、ジョースター家の血が流れている限りDIOからの影響は‘あるはずだった’のだ!!」
一息
「ただ、『スタンド』とはその本人の精神力の強さで操るもの、闘いの本能で行動させるもの!! おっとりした平和的な性格のホリィさんにはDIOの呪縛に対しての『抵抗力』がないのだ!! 『スタンド』を行動させる力がないのだ!! だから『スタンド』がマイナスに働いて『害』になってしまっている!!
このままでは……………『死ぬ』、取り殺されてしまう」
「そ、んな……………」
なのははホリィを抱いたままそう呟いた。いくら小学生と言っても『死ぬ』と言う意味が分からない訳ではない。だから二の句が次げずにいた
なのはが思い出すのは昨夜の事。会ったばかりの自分に親切にしてくれて、本当の母の様に面倒を見てくれて、寝る前は本当に幸せそうな顔で息子について語っていたホリィの顔を思い出していた
いつのまにか、承太郎とジョセフのそこにいた。片方はブチギレ寸前と言った表情で舌を鳴らし、片方は心配げな表情で娘の名を呼ぶ
「ワシの、もっとも恐れていた事が、起こりよった………。ついに、娘に『スタンド』が………。『抵抗力』がないんじゃあないかと思っておった、DIOの魂からの呪縛に逆らえる力がないんじゃあないかと思っておった…………」
ガンッ
なにかをぶつける様な音がした。承太郎はジョセフの胸ぐらを掴んで壁に叩き付けたのだ
「言え!! 『対策』を!!」
「承太郎くん!! 待って、落ち着いて!!」
ホリィを放すわけにもいかず、その場で承太郎に呼びかけるなのは。しかし頭に血が登った承太郎には聞こえない
しばらくして、ジョセフは重い口を開いた
「ひとつ、DIOを見つけ出す事だ。DIOを殺してこの呪縛を解く事のだ。それしかない!!」
*
ホリィを寝室に寝かせ、なのは、アヴドゥル、ジョセフ、承太郎の四人は居間に集まっていた。ホリィの安否、今後、この先を話し合う為だ
「……………………なんでてめーまでここにいやがる」
「私だってホリィさんの事が心配だもん。それに私も『スタンド使い』だよ。話を聞く権利はあると思うな」
「ち、勝手にしろ」
承太郎はそれっきりなのはの方は見ずにジョセフに向き直る
「それで? DIOの居場所は?」
「………………………………ワシの念写では奴の居場所がわからん。奴はいつも闇に潜んでいる。いつ念写しても背景は闇ばかり、どんな方法を持ってしても闇の解析は出来なかったのだ」
それを聞いた承太郎は動く
「おい、それを早く言え。ひょっとしたらその闇がどこか、解るかもしれねぇ!!」
承太郎はジョセフが持っていた念写したDIOの写真をひったくり、自身の『スタンド』で解析を始めた
そして数秒、承太郎はそれを見つけた
「っ。DIOの背後の空間に何かを見つけた。スケッチさせてみよう。俺の『スタンド』は脳の針を正確に抜き、弾丸を掴む程正確な動きをする」
そう言って、『スタンド』にペンを持たせそれを書き出す。そこには一匹のハエが写っていた
「ハエだ!! 空間にハエが飛んでいたのか!!……………いや待て、このハエ、見覚えがあるぞ!! JOJO、図鑑はないか?」
「離れに書庫がある」
「メモは貰うぞ」
そう言ってアヴドゥルは調べに行った
*
今、なのはの心はささくれ立っていた。そしてDIOと言う男の好感度も下がりまくっていた
洗脳まがいの事をして花京院に承太郎を襲わせ、さらにあの優しいホリィにまで危害を加える。なのはにとってそれは到底認可できる事態ではなかった
「……………………ねぇ承太郎くん。そのDIOってひとの居場所が解ったらどうするの?」
「当然行くぜ。どうやら打ちのめした所で問題ない悪党みたいだ」
「どこに行くのか解らないけど、きっと外国だよね。危ない旅になるんだよね?」
「あぁ」
「…………………………………私も行く」
なのはは決意に満ちた眼差しでそう言った
*
アブヴゥルが戻って来た時、そこは修羅場と言っても過言でない状況だった
「ダメだ。女を…………しかも聞いた話だったらまだ小便臭えガキらしいじゃねぇか。危険な旅になるとわかってて連れて行けるか」
「なおさらだよ。私だって『スタンド使い』だよ。戦力は一人でも多い方がいいじゃない」
「………………ち、このアマぁ。調子に乗ってんじゃねーぞ? ああ?」
「心配してくれるのはありがたいけど、私も引けないよ」
承太郎をなのはの睨み合い、そしてそんな時に帰って来たアヴドゥルは思った。タイミングが悪かったと
「………………あー、すまない。ハエの正体や分布が解ったからとりあえず中断して聞いてくれないか」
アヴドゥルの言葉に何か言いたそうな表情を浮かべるが、無視して彼は話を続けた
ハエの正体は『ナイル ウエウエ バエ』。エジプトのナイル川にのみ生息するハエだった。つまりDIOはエジプトにいる
「エジプト…………じゃあ今から行かないとだね」
「高町てめー、いい加減にしねーと怪我させてでも置いて行くぞ」
承太郎が威嚇する様に言う。その言葉を受けて、なのはの目が据わって行く。最終的にプッツーンなんて音がして
「…………………じゃあ勝負だよ」
そう言った
刹那、空条家の居間が爆発した様な衝撃に襲われ承太郎は居間から中庭に放り出される。なのはが『スタンド』で承太郎を放り投げたからだ
「て、めー……………高町!!!」
「ふん!! 昔っから言う事を聞かない子には殴った方がいいって言うもんね!!」
なのはが思い出すのはアリサやすずかと友達になった時の記憶。フェイトと友達になった時の記憶。半ば間違った思考なのだが、自分が正しいと思う事に対して暴力に訴えるのをなのははためらわない
承太郎も『スタンド』出し、臨戦態勢を整える
「やめんか!! 二人とも!!」
ジョセフの静止もむなしく、2人の『スタンド』は激突した
*
2人の『スタンド』は近距離にしか行けないが、精密な動作が出来てパワーがある。そして2人の性格も直情的で、とりあえず殴れば相手を倒せるなんて考えの持ち主だ
そんな2人が激突したらどうなるか。答えは簡単だ
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!」
「やぁああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
正面衝突の殴り合い。いわゆる突きの早さ比べである
拮抗は一瞬だけ、承太郎の拳でなのはは数十メートルも吹き飛ばされてしまった
「おせーぜ高町」
「ま、だ。だよ」
なのはの『スタンド』は承太郎のより遥かに遅い。一撃の威力は上でも速度が遅いのだ
だからといってその程度で高町 なのはが折れる事はない。状況の打開策など考えつかないのにまたも特攻をしかける
「このアマぁ………。マジで怪我しても知らねーからな!!」
マシンガンの如き拳のラッシュ。いくつかは受け流すもその程度で止まる訳もなく、再びなのはは吹き飛ばされた。なのははその場に踞って、膝をついている
「く…………うぅ」
「いい加減にしやがれ、本気で俺たちについてくるつもりならこれ以上の痛みが怪我が襲うかも知れねーんだぜ?」
「それでも……………それでも私は!!」
この程度ではなのはの心は折れない。痛みでは折れない。そう考えた承太郎は決定的な言葉を口にした
「それ以上に、もしかしたら襲ってくるDIOの手下を『殺す』事になるかも知れねーんだぜ? それが解ってるのか? 高町」
そう、この先なにがあるか解らない。例えば敵に傷つけられるかもしれない。例えば殺されるかもしれない。例えば、敵を『殺さなければならない』かもしれない。その全てが重い意味を持ち、まだ精神が小学生である事を考えたら、それを背負わせる訳にはいかない。承太郎はそう考えて戦っていたのだ
しかし承太郎は見誤っていた。高町 なのはの異常性とその性質を
「それでも私は、目の前に困ってる人がいて、それを手助け出来る力を自分が持ってるなら………………、その力をその人の為に使いたいの!!」
彼女は痛みでは止まらない、彼女は言葉では止まらない、彼女の精神は絶対に折れない。例え敵が強大でも、精神を追いつめられても、その精神が折れる事は絶対にない
なのはは立ち上がる。そして両手の人差し指と親指で四角を作り、そこに承太郎を映した
「………………なんだ? 写真でも撮るつもりか?」
「ううん。いつもはレイジングハートがやってくれたから、それを自分でやるだけ」
承太郎は知らない。彼女は管理局のエリートにバカ魔力と言わしめた程の威力の砲撃を放つ魔導士だった時の事を
そして今している動作が『ロックオン』と言う事を
「うん、出来る。私の『スタンド』なら………………いくよ、『レイジングハート』!!」
それは元の世界でなのはが変身する時に言っていた愛機に対する掛け声。そしてその名をこの世界の自分の『相棒』につけたのだ。何も言わぬ『スタンド』はかすかにうなずいた様な動作をした
『勇敢な心』。それが高町 なのはの『スタンド』の名となった
「ディバイィィン、バスタァァァァアアアアアアアアアーーーー!!!」
桜一閃。
「ぐ、うぅおおおおおおおおおおおおお!!」
「やぁあああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
今度は承太郎が吹き飛ぶ番だった。石で出来た壁に直撃し、衝撃でヒビが入る。承太郎は肩で息をしながらなのはを見ていた
「私は!! ホリィさんを!! 皆を助けたいの!! 」
「……………………………………………………フー、やれやれだぜ」
承太郎は長い沈黙の後、小さく口を開いて
「怪我、しそうになったら逃げな」
そう言って、なのはから目を離した
*
その後、ジョセフやアヴドゥルにこってり搾られて平謝り。やはりその2人もなのはの同行に渋ったが、先ほどの戦闘を見ていた為、仕方ないとなのはの同行を認めた
さらに承太郎に命を救われた花京院も旅の道連れに加わり、5人でのエジプト行きとなったのだ
ホリィはスピードワゴン財団の優秀な医師が24時間態勢で看護することになった。しかしそれでも50日が限界だろう
承太郎とジョセフはホリィに別れを告げ、そして5人が空条家の門に並び立つ。ちなみになのはは元の制服姿だ
「JOJO、出発前に占い師のこの俺がお前の『スタンド』の名前をつけてやろう」
「名前?」
アヴドゥルがそう言いながら大量のカードを取り出した
「運命のカード、タロットだ。絵を見ずに一枚無造作に引いて決める。これは君の運命の暗示でもあり、『スタンド』の能力の暗示でもある」
承太郎はさしだされたカードから、無造作に一枚のカードを引いた。そこに絵がかれたカードは『星』それを見てアブドゥルは言った
「星、スターのカード。名付けよう、君の『スタンド』は
ここに、今この瞬間、承太郎の『スタンド』の名が決まった
ここにいる全ての『スタンド』の名が決まったのだ
空条 承太郎
ジョセフ ジョースター
モハメド アヴドゥル
花京院 典明
そして高町 なのは
かれらに一刻の猶予もない。ホリィを救うため、彼らはエジプト行きの飛行機に乗り込んだ
To Be Continuing
本文でなのはのスタンドの容姿を書き忘れていたので、ついでに『勇敢な心』のデータを書いておきます
『レイジングハート THE STAND』『勇敢な心』
Ragingの意味は激怒なのだが、ゴロが悪いので勇敢。不屈でもいい気がしたが、個人的な趣味でこんな名前になりました
近距離パワー型 人型で白とピンクを基調とした硬質なドレスを着た女性の様な姿をしている
精密動作やパワーは『星の白金』に匹敵、パワーだけなら凌駕する。しかしスピードがC
『勇敢の心』はほんの一瞬だけ遠距離型以上の距離に行く事が出来る。なのはが決めた目的地に向かってどんな障害があろうと粉砕しながら猛スピードで突き進む能力。『勇敢な心』は着弾地点で消滅する
この能力の発動時の最大射程は現在80メートル。また、デメリットとして『スタンド』の発射後は数秒間、『スタンド』を出す事が出来ない状態になる。
破壊力 A
スピード D
精密動作性 A
射程距離 C
持続力 B
成長性 A
……………………………………うん、なかなか壊れ性能だなぁ
没案
承太郎「上等だ高町!! 表に出ろ!!」
なのは「怪我しても知らないからね!!」
花京院「わ、私も同行させてもらお………」
な・承「「うるさい!!」
花「…………………………………なぜ同行したくなったのか、私にもわからないんだがねーだ」(小声)