『暗青の月』の後編です。短いですけど書く時間がないのです……
ゆらゆらと、偽船長は沖の方へと流されていく。遠目に見ても脱力しきった彼は最後には海の中に消えていった。それと同時になのはは
「はん、散々スタンドの能力自慢をしてた割には大ボケかました奴だったな」
ポルナレフは勝ち誇ったように鼻を鳴らしてそう言った。口角を上げて言った彼は同意を求めてなのはを見ると
「く………ぅ……、」
どこか苦しげに、歯を食いしばって何かに耐えていた。彼女は片方の腕でアンを掴んでいるので、もう片方の腕は必然的に船の柵を掴む形になる。それをする事で力が入りやすくなるのは当然の事なのでおかしなところは何もない。しかし彼女の形相はどんどん苦ししげに変わっていっているのだ。まるでなにかに耐えているかのように
なのはの『スタンド』、『不屈の心』のパワーは現時点で確認されている『スタンド』の中でも最高クラスの力を持っている。そのパワーはもはや重機に匹敵、否それ以上のものだ。女の子一人を引き上げるくらい訳のない事。しかしなのははいつまでたっても彼女を船に引き上げない。いや、‘引き上げる事が出来ない’
「どうしたんじゃなのはちゃん。はやく女の子を引っ張り上げて上げないか」
なのはは答えない。ただ苦しげに呻くだけ
(力が…………抜ける……)
その瞬間、それが見えた
「ふ、フジツボだ!! あの甲殻海生生物のフジツボだ!!」
それは『不屈の心』の腕から船腹に向かってビッシリとそれは生えていた。そこから『不屈の心』の力を吸い取っているのだ。それでも『不屈の心』のパワーなら問題なく引っ張り上げる事ができるだろう。しかしそれが出来ないのは‘フジツボを使って海中からなのはを引きずり込もうとしているからだ’
「なのはちゃん!! 『スタンド』を引っ込めるんだ!!」
「ダメ!! 今引っ込めたらアンちゃんが‘あいつ’のいる海の中に落ちちゃう!!」
ジョセフの叫びに少し方向性の違う返答を返しながら、なのはは汗だくになりながら引きずりあげようと、自分の体を起こそうとする。それを周りの仲間たちも手伝うが、海中にいる
「……んぁ!!」
なのはの体が船から投げ出されてしまった
「なのはさん!!!!」
花京院は
なのはは花京院に目線を送って考えを伝え、思いっきり上にアンを投げ飛ばした
「ッ!!」
投げ飛ばされた少女は力の戻っていない『不屈の心』と落下する勢い。それによって一瞬だけ空中に静止する、しかしその瞬間を見逃すはずもない花京院。彼は『法皇の緑』を操ってアンを救い出す事が出来た。しかし
「花京院さん!! 私はだいじょ……」
なのはは自分の言葉を伝えようと叫んだが、海面に叩きつけられてその言葉は泡となって消えてしまった
*
なのはは海中に投げ出された拍子に空気を吐き出してしまう
(いけない……、少しでも空気の消費は抑えないと……。出来るだけ思考も簡略化するべきだ)
そんなことを考えた瞬間。なのはの目の前に『暗青の月』が現れた。なのはは自分の思考を簡略化していたため、何も考えずに『不屈の心』のパンチをぶちかます。しかしそこは海の中で、相手は海で最高のパフォーマンスを披露する『スタンド』。いとも簡単に交わされてしまった上にそのまま反撃、水圧を叩きつけられてそのまま海底の岩に叩きつけられてしまった
その際にこぼれ出そうになる空気を必死で噛み殺し、目の前に現れた『暗青の月』をキッと睨みつた。そこに悠々と現れた偽船長はニタニタした笑みを浮かべながら口を開いた
「よーこそようこそ。ようやくきてくれたか『暗青の月』の独壇場、海中へ……。この俺を舐めとったらいかんぜよ? おネェちゃん」
「…………多分私、あなたより年下なんだけど」
ここで行われ会話は全て、『スタンド』同士の会話。『スタンド』とは精神力の発露。音声による会話ではなく、テレパシーの様な会話が可能だ。それはコツさえつかめは誰でもできる様な簡単な事。もっとも、テレパシーと言っても通話できる距離は普通に会話できる程度だし、それを行う過程で微量ながら『スタンドパワー』を使う。水中など特殊な条件下でしか使う意味のない技術である
閑話休題
「さて、おネェちゃん。面倒な問答は先に済ましてしまおうじゃねーか。お前は今こう考えているはずだ。こいつはいったいどのくらい海の中に潜っていられるのか? 自分の限界は2分って所だがこいつはいったいどれくらい潜っていられるんだ? ってな」
そこでにたりと笑って
「俺の肺活量は普通の人の三倍!! さらに訓練する事で潜水の自己ベストは6分12秒よ!!」
「こんな事してないでスポーツ選手になればいいと思うな!!!!???」
思わずツッコミを入れてしまったがそれは脅威だ。明らかにやばい
肺活量じゃかなわないなら空気を断続的に手に入れる事のできる場所。つまり水面に向かわなければならない。その結論に達して海面に向かって移動し始めたが
「はっはっはっっはぁあああ!!! 周りをよく見ろ!! さっきから『暗青の月』が水中に渦の流れを作っている事に気がつかないのか!! おネェちゃん!!」
もちろん気がついている。そして体にこびりついたフジツボが再び繁殖しそのエネルギーを『不屈の心』から奪っていて、その度に力が抜けていっている事に
(やばい、水圧で肺が押されて空気が抜ける。しかもパワーが奪われて‘バスター’一発分くらいしか力が残っていない。これは本当に‘ヤバイ’)
『暗青の月』が海中なら独壇場といったのは嘘でもハッタリでもなかった。フジツボ、動き、水中戦の慣れ。どれを取っても間違いなく水中なら最強だ
(策は一つだけ。しかも運に頼る要素が大きすぎるそれに……)
間違いなく殺してしまう
そう思った瞬間、なのはの頭の中に氷水を垂らした様に冷たくなった。冷静に、酷く冷たく、そして。‘高町なのはは相手が悪だと断定した’
渦の中心に向かってなのはは泳ぐ。そう、もっとも流れの少なく力が伝わりやすい場所へ
「どうしたどうしたおネェちゃん!! もう降参か? 棺桶は海底に決めたんか? えぇ? おネェちゃ……」
偽船長が言えたのはそこまでなぜなら彼の目に入ったのは両手で四角を作ったなのはだったからだ。しかしそれで逆に笑う。偽船長は大きな笑みを浮かべる。分っていたのだ、この距離から力の抜けた『不屈の心』では大したスピードは出ない。それでころか届くかどうかすら怪しい。そんなものを打たれた所で痛くもかゆくもない。だから笑みを浮かべて対峙して。『不屈の心』が発射された。それで終わり、致命的な隙が生まれたなのはは『暗青の月』にズタズタに引き裂かれて死ぬ。だから船長はゆっくりと迫ってくる『不屈の心』を満面の笑みで迎えて
目の前で止まり、自分の顔面をわし掴みにした『不屈の心』に驚愕した
「私の『スタンド』は不器用で、一直線にしか飛ばせない。でもこれだけゆっくりとした速度で撃つならかなりの自由は効く」
淡々と。あまりにも淡々とした声でなのはは言う
「そしてこれだけ弱ってしまったら私は大した距離は飛ばせない。つまり‘あなたの目の前くらいまでしか飛ばせない’」
ゴキゴキと『不屈の心』は掴んでいない方の拳をを鳴らす。もう半分くらい『不屈の心』の姿が消え始めているのは、なのはが操作できる範囲外に行ってしまったからだろう。しかしあらかじめ行動をインストールしてあった『不屈の心』は止まらない。機械のように冷たく
「あの世で頭、冷そうか」
偽船長の顔面を殴りつけた。そのバワーと衝撃は、海底で殴ったにも関わらず水柱が上がるほどのものだった
*
結論だけ言えば、偽船長の思い通りの結果になってしまっただろう。彼は皆が乗っている船に爆薬を仕掛けていたのだ。脱出用のボートに全員乗り込んでそれなりに落ち着いたのは、一旦日が沈み空が白んできたころだった
To Be Continued
私の作風というか時間が空いたからなのか相変わらずプロットガン無視だからなのか、なのはが原作よりバグってまいりました。なのはのセリフで一番好きなのが『もう少し、頑張らないとだね』ってA'sのリーンフォース戦のセリフです。あの状況であのセリフが小学生から出るとか凄いとか当時思ってました。てか狂って……うわ、何をするやめろ!!
没案
承太郎「スターーーフィンガァアアーーー!!」
なのは「あ、それ完全に出番なくなったよ?」
承「………………ふーー」