またここに戻ってきた。
目の前に広がるのは、崩落した建物。
仰向けになっている私に膝枕してくれているのは、イオだった。
1週目、2周目の私は血の渇きを潤す必要があったけれど、3週目からは、その必要は無くなった。
前にも言ったけど、これは身体が神骸に適応したからだと思う。
元々クイーンは、吸血鬼(レヴナント)の渇きを克服し、ヴェインの外にいる化物<アラガミ>に対抗するために生み出された存在。
結果的には暴走して、かなりの被害を齎した訳だけど、それでもその体質には全吸血鬼が望むものがあるといって良い。
渇きを潤すためには、人間の血、もしくは血涙が必要になる。
人間の血は血涙よりも美味しく感じるらしく、吸血鬼に捕まったときには、血液生成器として、扱われることが多いと聞いた。
こういったことを防ぐために、総督府は人間を保護する代わりに、献血を義務付けている。
血の代替となる血涙。
これは、血涙の泉と呼ばれる植物に実り、泉付近は吸血鬼のための保護区となることが多い。過酷すぎる環境でなければ。
大抵の吸血鬼は保護区に滞在することを望んでいるけど、保護区の数の少なさと滞在人数が限られていることから、血涙を見つけて一喜一憂する生活を余儀なくされている。
そして、絶対数が少ないそれは、争いの種になって、力の無い者は搾取される。力のある者は、弱い者を奴隷として扱い、彼らが見つけた血涙を奪う。
泉を見つけた者は、保護区に入る優先権を得るが、独占のために、そもそも報告をしない者も多い。
渇きが続けば、堕鬼(ロスト)となり、理性なき怪物と成り果てる。
心臓を潰さない限り、身体は修復され、延々と彷徨い続ける訳だけど、そこに苦しみや悲しさは存在しない、と私は思ってる。
だから、相手のために殺すという感情は、都合の良い解釈で自分を守っているだけだ。
長くなったけど、私は、堕鬼や堕鬼になりかけている吸血鬼を殺す理由に、相手のためだという理由付けをするなと言いたい。
殺す理由はいつだって自分の都合なんだから。
この狭い世界において、力の無い者が力のある者に従うのは、当然で、どんな扱いをされても文句は言えない。その暴力を蛮行を止める手段がないのだから。
ただし、それがずっと続く保証もないわけで。
「私たちを都合の良い駒にしようとしてたみたいだけど」
そういって私は横柄な吸血鬼を見下ろす。
「返り討ちにされる可能性は考えなかったの?」
今目の前に広がっている光景は、これまでの旅路(ルート)とは異なるものとなっていた。
本来であれば、私たちは抵抗せず、横柄な吸血鬼に捕らえられていたところだった。けど今回は最良の結末(ハッピーエンド)を迎えるための布石として、それ変えた。
「クソが、手負の吸血鬼だって聞いてみればこんな獣がいるなんてな」
横柄な吸血鬼はそう言いながらも、武器から手を離さず、こちらの出方を伺っていた。
「どうせ死ぬのだとしても、抗わないのは性に合わないからな」
そうして互いに武器を向けあった。