松野唯吹はライブハウスで睦という、この前であった少女に、
12月27日出会うのだった。
(バンドが楽しいと思ったことは一度も無い…)
それは、バンドをする前の僕なら、そういう感情を抱いていた。
僕はそう感じた。
「どうして、睦さんは、そう思うの?」
「やっていて、これだって感じないから。
それに、やる意味はもう無い」
「えっ…?」
「その…松野さんは、どう思う?」
「僕は…」
唯吹は思った。最初は楽しくなかったと感じた。
風夏に振り回されては、どうなるかと思いつつ、
何度も辞めようと思ったこともあった。
それでも、こころのどこかで楽しいと思う事もあっただから、
彼はこう答えた。
「難しい。言葉で表すのが困難だ。それくらい思う事があっても、
難しいんだ。一言では、とても表せないが、
楽しいことがあっても、辛いことはあった。
でも、楽しいことが多い方…かな?」
「そっか」
「睦さんは、どうして、ギターを始めたのですか?」
「わたしは…何が楽しいのか、わからない…
だから、始めた」
「それでギターを…」
「うん」
と、睦は頷いた。
「僕は親に習い事として、ピアノ教室に通っていて、
それで、ブランクはあったけど、でも、バンドをして楽しい」
「そっか。見つけたんだね。楽しい事」
「そうでもないよ。風夏に振り回されてばっかりだよ…」
「松野さんは、バンド、やり続けるつもり?」
「まぁ…一応は…解散と言われない限りは。はい」
その後、僕は睦さんと別れた。
彼女は、どこかで寂しいと思い歪んだ考えを持っているかもしれない。
それを救いだすには、どうしたらいいのか?
と、一瞬、思うのだった。
松野家
「唯!おかえり!」
「ただいま」
「もうすぐ、年末だね~」
「といっても、やることが無い」
「唯お兄ちゃんって、風夏ちゃんと、どこかに行ったりしないの?」
「行きません」
「バンドの練習は?」
「明日の28日が、最終日」
「そっかー」
唯吹は風呂に入り、晩御飯を食べて、
自分の部屋に向かった。
彼は思うのだった。ピアノは楽しいと思ったこともある。
楽しくないと思う事はあるが、やめる気は無いと改めて感じるのだった。
「風夏なら、睦に何て言っているんだろう…
それに、バンドを一度も楽しいと思ったことが無いって…
どこかで、引っ掛かる…」
と、ブツブツと独り言を言っていいた。
ブツブツと言いつつも、就寝するのだった。
12月28日 年内のバンドの練習、最終日になっていた。
彼は歪んだ何かを思いつつ、感じつつ、年内最後の練習に参加するのだった。