ありふれたやり甲斐と生き甲斐を探して   作:戦鬼

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モジュロ最終巻、楽しみです。そして今回で《寒気凜冽》のタイトルは終了です。
次のタイトルどうしようかなぁと考え中。


寒気凜冽⑥

「お前は強い。だから出し惜しみはしない〝限界突破〟」

 

今回光輝の使う〝限界突破〟は、通常ものとは少し違う。

 

〝限界突破〟の使用時間は限られており、本来なら伸ばすことはできない。そこで光輝は出力を制限し、魔力による身体強化の効果アップにのみに力を置く為、魔法は必要な時以外は極力使わない。理論的にはこれで魔力消費を抑え、限界突破の時間を伸ばす事はできるが、そのぶん戦い方に制限がされる。持ち主の能力向上とそもそもの斬れ味の良い聖剣のような特殊な武器を持って、尚且つそれを扱える光輝だからこそ上手くいく戦術。

 

(この魔物…やっぱり)

 

だが、決して力技でゴリ押すような戦い方ではない。むしろ戦闘時の状況判断能力は上がっている。

 

速度を上げる為、身体強化を足に集中させたことで、〝限界突破〟の効果も相まってフロストタートルでは眼で捉えることなどできない。

 

 

 

まだ七海がハジメと再会する前に、王都で様々な敵への対処法を教えられていた。

 

『巨大な相手は、その巨体故に、足元が疎かになる事が多い。巨大になればなるほどにそれは顕著になる。まぁ正確に言うなら微妙に違いますが、それは置いときましょう。ともかく、巨大な相手は、まずは足から動きを封殺してしまう所からです』

 

『そういえば、以前私達を助けに来た際にベヒモスとの戦闘時も、そうでしたよね』

 

雫が思い出しつつそう言う。

 

『そう、我々はその手の魔物から見たら、矮小な存在です。故に、足場は隙を作りやすい」

 

 

「〝限界突破・光速〟」

 

魔力を足に集約し、更に光輝の得意とする光魔法を付与する事で〝限界突破〟の効果を足元に強く出るようにして動く、光輝独自の使い方。ハジメの呪具、黒帝のような事をしているが、簡単にできることでは当然ない。そもそも、〝限界突破〟の効果を一部にのみ発揮させるのはどちらかというとデメリットの方が多い。

 

(っ!身体が、痛い!気を抜いたら、全身がバラバラになりそうだ)

 

身体強化を1部分のみにほぼ集約して、かつ文字通り限界を超えさせることにより全身の強化の強度安定が取りづらい。〝魔力操作〟の技能を持たない光輝では尚更だ。下手をすれば強度の強くなった足とそこから上が、速度に耐えれず分離。もしくは足以外、特に臓器が崩壊してもおかしくない。

 

「ぐっ、ああああああああ!」

 

光輝は肉体崩壊を防ぐべく、足以外の部分にもある程度魔力を回し、〝限界突破〟の効果を僅かとはいえ発揮させることで、自分の肉体を維持しているが、その操作のバランスが狂うと、あっという間に光輝は自らの行為で肉体が損傷する。

 

「シッ!」

 

聖剣でフロストタートルの足を斬る。まず前右足、次に真ん中の左足と後ろ右足と、グネグネと動いて足を落とす。バランスを取りづらくなって、咆哮を上げて、倒れそうになるが、ただ転倒させるだけではない。

 

「〝光爆〟」

 

光輝は傾くフロストタートルの地面に魔法を放つ。移動の際に聖剣で光魔法を僅かだが地面にマーキングしていたのだ。〝光爆〟による衝撃波で、更にフロストタートルのバランスが崩れ、転倒しまさにひっくり返った亀のようになる。

 

「もらった!」

 

高く跳び、腹を突き刺さそうとするが、フロストタートルの足が甲羅の中にしまわれる。そしてそこから猛吹雪という言葉すらも軽く聞こえそうなほどの雪と氷が混じった風が出て、ほぼ同時にフロストタートルの巨体が高速回転し、光輝を弾き飛ばす。

 

「ガ◯ラかよ⁉︎」

 

ハジメは周囲から出てくるフロストタイプの魔物を撃ちつつ、そんなツッコミをしていた。

 

「っち!」

 

どうにか着地した光輝に、高速回転をしたままのフロストタートルが体当たりをしてくる。

 

「〝天翔閃・震〟!」

 

聖剣を大きく上段に構え、一気に振り下ろし巨大な光の斬撃が飛ぶ。斬撃は光の速さで飛び、空間に僅かな綻びを生む。その光がフロストタートルに命中し、フロストタートルの左半身を削り、動きを停止させた。だが

 

「!再生…いや、変化か!」

 

斬られたはずの足が伸びて、そこから出たのは新しい足ではなく、別の頭。更に先程の〝天翔閃・震〟で削った筈の部分も瞬時に回復し、全ての足部分が別の頭になり、合計7つの頭が出てきた

 

(やっぱり、最初に考えてたとおりだ。こいつの身体は龍太郎や雫が相手をしている魔物同様なんだ。再生魔法と、形状を変えた所も見ると、他にも神代魔法が関わっているんだろうな)

 

フロストタートルの7つの頭は当然のように、口から魔法を放つ。全てが当たれば凍傷では済まないレベルの吹雪と、氷砲弾とも言える猛攻。

 

「助かる、鈴」

 

既に光輝には鈴の作り出した結界で守られている。だがそれを、フロストタートルも、光輝も直前まで知らなかった。

 

仙域鈴(せんいきりん)、さすがに〝聖絶〟なんてつけられないから、〝邪絶〟ってつけようかな」

 

呪具によって展開していた、呪力の守り。鈴命名、〝邪絶〟によって、攻撃を防ぐ。フロストタートルはなぜ効かないのか混乱したように警戒して、少し下がる。

 

光輝は直前まで知らなかったが、そうしてるだろうと予測(・・・・・・・・・・・)はしていた。

 

(こいつを倒すには、内部の核を硬い外装ごと一撃で破壊するしかない。〝神威〟しかないが、多分それだけじゃまだ心許ない。結界の外にいる雫と龍太郎に援護を…いや、あっちもあっちでフロストタイプの魔物を相手してる。今迂闊に結界を解いたら、乱戦になる。…だとするなら手は1つ。まずは〝神威〟のチャージ終了まで耐える。鈴の結界がどれだけ保つかはわからないから、回避をしながらで、且つ攻撃の手を、緩めない)

 

作戦を決めた光輝はさっそくチャージを開始する。光が、周囲の魔力が、光輝に集まる。それをただ傍観するほどフロストタートルは甘い事はない。複数の頭を伸ばして直接攻撃するのと、魔法を放つので分けて攻撃をしてくる。

 

(魔力の調整…は、なんとかなってる。〝限界突破〟の出力を抑えつつ、効果分配し、チャージと速度を維持)

 

チャージをしつつ、先程の動きを同時並行で行う。更に

 

「神意よ!全ての邪悪を滅ぼし光をもたらしたまえ」

 

(((平行詠唱!)))

 

勇者グループの面々は驚きを隠せない。声にこそ出さないが、それには七海も驚き、ユエとティオは驚くことはしないが、『ほぅ』とでも言うような表情をする。

 

七海ができるようにと言われた時から、ずっと訓練し続けてきたもの。だが、これはそう簡単にできる事ではない。詠唱をしているということは、その時点で魔力を動かしている。肉体内部で動く、魔力に意識が行く中で、身体を動かすのは至難の技。しかも現在光輝は〝限界突破・光速〟の維持、〝神威〟の為のチャージとして周囲にある魔力、すなわち外部から取り込んで来る魔力の調整と運用をし、フロストタートルの攻撃への対応として、魔法は使わないが、反撃の為に懐に潜り込んでの一閃の攻撃。これら全てを同時に行なっている。

 

「神の息吹よ、全ての暗雲を吹き払い、 この世を聖浄で満たしたまえ」

 

(((しかも、完全詠唱!)))

 

言うなれば今光輝は、数10個の導火線付きのダイナマイトをお手玉代わりにしながらジャグリングし、その上曲芸をしながら火の上で綱渡り移動をしているようなもんである。僅かなミスで自身の魔力が暴発するか、フロストタートルの攻撃を受けてしまうか、肉体が耐えきれず破損するか、まさしく極限の荒技だ。

 

「神の慈悲よ。この一撃を以て全ての罪科を許したまえ 」

 

本来なら、これで詠唱は終了だが、まだチャージが続いている。

 

「神の威光よ、我が御霊に宿れ」

 

(新しい詠唱!)

 

雫含め、それは知らない。光輝も初めて使う。…否、その攻撃は、一度だけ似たような事をした。

 

大迷宮への出発前の1日訓練の時、それはあった

 

『ぐあぁ!』

 

『攻撃にキレがない…だけではないですね。焦りが目に見える。敗北のし過ぎで、自分に自信がないのですか?』

 

『っ!るっさい‼︎』

 

光の斬撃が七海に向かうが、魔力が上手く操作できておらず、威力はお粗末。呪力で強化した剣で簡単に弾かれた。

 

『攻撃が馬鹿正直すぎです。感情が昂るのはわかりますが、それでも頭の中では冷静に相手の観察と攻撃方法の選択を並行してください』

 

加速してきた七海の蹴りが、光輝の鎧部分にあたるが、その勢いと蹴りの衝撃が鎧の内側に来て、「おぐぅ!」と光輝は声を出してふっ飛ぶ。

 

『回復お願いします。立ちなさい天之河君。それとも、もう終わりですか?』

 

回復で強制的な戦闘を強要される。これまでの七海の訓練はある程度の優しさや、加減があったが、それが全くない。回復をしている辻も、やり過ぎではないかと思える。

 

『な、め、る、なぁぁあぁぁ‼︎』

 

(また同じですか)

 

光輝は聖剣を持って構え、魔力を放出する。瞬間、光輝が消えた。だが咄嗟に七海は正面を防御する体制になると同時に、光輝が突貫

 

(⁉︎)

 

してない。今七海が防いだのは聖剣だけ。それを持つ筈の人物はいない。

 

(まさか)

 

速度を保った状態で聖剣を投げ捨てた。そして本人は、正面の防御に気を取られている七海の、後ろ

 

(その程度)

 

が、すぐさま聖剣を弾いて、グルンと光輝に向き直る。光輝は拳を握っている。その腕には光の魔法がある。

 

 

「神の鉄槌、この身に与えよ」

 

そして、それまで回避と一撃離脱に専念していた光輝が、フロストタートルに向けて突貫する。フロストタートルは7つの口から魔力を出して正面に集約し最大の一撃を放とうとする。それに合わせるように、光輝は聖剣を振り上げ、溜まった魔力を放出せんとする。が、それは起こらず一瞬で光輝が聖剣だけ残して消える。

 

投擲された聖剣が回転して飛びフロストタートルの7つの内の1つ、元々の頭の部分に当たり、刺さる。そして光輝はフロストタートルの後ろに回り込む。だが、フロストタートルは、それにも対応した。尾を出すように、後ろから8つ目の頭が出て、その口に魔力が放出されようとしている。光輝は今、両手を光の魔法で輝かせている

 

 

(光魔法を直接打撃で叩き込むつもりですか)

 

七海はならば自分も、呪力を乗せた拳をと構え、振り下ろす。その最中、まるで後出しジャンケンのように、光輝は握っていた拳をパーにして広げる。光が霧散したと同時にそれを投げた

 

(土⁉︎いつのまに⁉︎)

 

ただの土。なんの効果もない。七海はサングラスをしているので目を塞ぐこともできないが、気を逸らすくらいはできた。

 

『であああああああ!』

 

ドンともう片方の、魔力のこもってない拳が、七海の胴体に命中した。

 

 

それは、光輝にとって賭けだった。これだけ頭の増えた対象に、そもそも効果あるか。増えた頭にそれぞれに視認効果があるか、どれか1つのみに視覚効果があり、残りは攻撃だけできる飾りなのか。そして1つの頭の視認能力のみを奪った際、他はどうなるか、そもそも奪えるのか。

 

(だが、そんなことは実際は些細なことだ)

 

ダメならその時はその時(・・・・・・・・・・・)とし、光輝は実行をする。

 

「〝光爆:散華(さんか)〟」

 

カッ!と光が爆ぜる。強すぎる光が、光輝を隠し、至近距離で強い光を受けたことでフロストタートルの目を奪う。

 

〝光爆:(散華(さんか)):簡単に言うなら、スタングレネード。通常の〝光爆〟を自身の手の中で発動させるのだが、威力を極限まで落として殺傷能力を無くし、周囲に拡散させる事で更に威力を落とす。その代わり、拡散する事で強い光を広範囲に広げて視界を塞ぐ。

言うまでもないが、発動の瞬間、光輝は目を閉じる必要がある。いくら光魔法に適正と耐性があって且つ自分の技でも、至近距離の強い光を受ければ、目が焼かれ、タダでは済まない。しかし、そうなると次の行動に制限がつく。閉じていた目を、開くまでの僅かの時間だが、戦闘中ではかなりの隙だ。光で踠く相手が暴れて攻撃を乱射したりでもしたら、目を潰した意味がない。

 

が、これらは本来ならの話しだ。

 

(今の俺には、鈴の防御がある)

 

鈴は魔法による結界を展開される時と同様、仙域鈴(せんいきりん)で結界を作る時も、足し引きを考えて展開したのだが、それプラス縛りを入れた。魔法による攻撃のみを守るという縛りだ。これにより、魔法攻撃以外には効果がほぼないが、そのぶん魔法への耐性と耐久と持続性をあげた。鈴は呪術については知識不足且つ素人だ。が、これまでの結界の展開と、七海の教え、そして縛りの情報から、呪具でもいける事を確信していた。

 

これにより、光輝は目を閉じる必要がない。〝光爆:(散華(さんか))〟をして、フロストタートルのみが光輝を見失い、ならばと全ての頭から魔法の総攻撃を周囲にしようとする前に、光輝は新たな技を、フロストタートルにぶち込む。

 

「〝神威:絶拳(ぜっけん)!〟」

 

速度をつけてそのまま腕を振り抜き、フロストタートルに拳を当てる。光魔法が灯る拳が、当たった瞬間、フロストタートルが大爆発を起こし、拳が当たった所から先にも、衝撃が通り、削られていく。

 

〝神威:絶拳(ぜっけん)〟: 通常の〝神威〟を拳に宿し、その部分に身体強化を一時的に集中し、〝限界突破〟で出力をあげ、1点集中による魔法の拡散をさせないことで、相手に当てた瞬間に超上昇した拳と〝神威〟を至近距離から、拳を通して対象の内部へと貫通しその後拡散放出する。その際、〝神威〟の発動と同時に拳を振るう事で、まるで拳にジェット噴射装置をつけたように速度がでることで、打撃そのものの威力も増大している。攻撃に様々の難題はあるが、命中すれば、特級相当の相手でも大ダメージを負う事は間違いない攻撃。事実、フロストタートルは1撃で木っ端微塵になった。

 

(やった)

 

確かな手応えと、その後来る倦怠感。だが、それでも達成感が強く光輝に

「まだです!」

 

「!」

 

七海が声を出された瞬間、光輝はありえないものを見た。砕けていた、フロストタートルの一部だった氷が、集まって、再び最初の時と同じ姿となっていく。

 

(なぜだ⁉︎破壊したはずだ!……いや、違う。魔石を破壊できなかったのか!)

 

魔力の流れを見た瞬間、気付いた。1体のフロストイーグルが、おそらくフロストタートルの内部にあったはずの魔石を爪に掴んでいた。結界外から入って来たわけではなく、内部で出現したのだろう。勝てないと踏んだ瞬間、魔石を分断してかつ移動したか、もしくはそういう機能が最初からあったのか。どちらにしても、魔石を破壊できない限り、フロストタートルは再び再生し、結界外で戦う雫や龍太郎と戦うフロストイーグルやフロストワーウルフとの戦いも終わらない。

 

「逃す…ぐっ!」

 

〝限界突破〟の時間切れによる倦怠感…だけではない。〝限界突破:光速〟による全身の痛みと疲弊。更に〝神威:絶拳(ぜっけん)〟は威力が強い分、拳に力を集約してるので、集約中も攻撃の瞬間も、痛みがずっとあり、今回は鈴の結界で魔法の耐性があったとはいえ、自分にある程度のダメージが返ってきていた

 

魔力は光輝の装備である鎧にハジメの改良で〝魔素吸収〟の効果を付与しているのでどうにかなるが、肉体の疲労とダメージは、回復魔法がないとどうにもならない。

 

「それ、でも!」

 

聖剣が光輝の意思を感じ、伸ばされた手に戻って来た。全身の痛みを我慢して光輝が動こうとした時、光輝とフロストタートルを囲んでいた結界が、バリンッと砕けて解かれる。

 

「鈴⁉︎」

 

なぜそんな事をと光輝が言うよりも早く、鈴次の行動をしていた

 

「〝聖絶:囲〟」

 

結界がフロストイーグルごと魔石を捕らえた。そのまま〝聖絶:圧〟で潰すこともできたが、すでに雫が動いていた。

 

「刻め、〝爪閃〟!」

 

雫の攻撃と同時に鈴は結界を解除し、黒刀が抜刀される。だが一振りに幾多もの斬撃がでて、フロストイーグルと魔石の逃げ道を無くす。更に二之太刀として鞘を向けるが、それはただの鞘ではない。

 

「呪具、〝撃鉄〟」

 

ハジメ製作呪具、〝撃鉄〟: これは〝衝撃変換〟を付与した呪具だ。その効果は、鞘が受けた衝撃の吸収と放出。これは鞘で防御した時だけなく、棍棒のようにした時や、納刀と抜刀の際の衝撃をも吸収し、チャージする。そして放出の際は威力を倍増させて放つ。チャージしなくとも使えるが、衝撃をチャージするほど強くなり、しかも衝撃のチャージに上限はない。

 

衝撃波が魔石と、鞘が向けられた正面全てを抉り、削った。

 

「う、おぉ」

 

この呪具は、樹海の大迷宮の攻略後に作った。故にこれまでチャージしていた衝撃はさほど多くはない。なのに放出した衝撃波の威力に、雫は呆然としていた。勿論これには理由がある。

 

衝撃のチャージの上限はないが、この効果自体に呪具に備え付けてある呪力はさほど減らない。だがハジメは、放出の時は全ての呪力を使用するという縛りを入れ、且つこの呪具にも完全呪具化をしない縛りを入れた。これにより、僅かなチャージでも凄まじい衝撃波を生む。

 

フロストタートルの魔石が砕けた瞬間、周囲の魔物達も砕けていく。氷の塊が崩れていく音が、広い空間に響く。

 

(南雲君の呪具の錬成が、一段階進化していたのは知っていましたが、谷口さんの呪具も、八重樫さんの呪具も、凄まじい…あ)

 

そういえばと思い出す。

 

「南雲君、勇者グループには、天之河君を除いて(・・・・・・・・)全員に呪具を作ったそうですが、坂上君には何を?」

 

先程の戦闘を含めてまだ見せてない龍太郎の呪具に、純粋に興味がでた七海が問いかける。

 

「ああ、あいつのはまだ未完成なんだ」

 

「未完成?」

 

「後で説明するよ。それよか、まずはあっちだろ」

 

ハジメは勝利の余韻に浸りつつ、香織の回復魔法を受けている光輝達を指差して言う。

 

「おーい、余韻に浸るのはいいが、新しい道もできたみたいだし、回復終わったならそろそろ出発するぞー」

 

声を張り上げて言い、それに光輝達は頷き合い、ハジメ達のいる場所に駆け寄る。

 

「天之河君、〝限界突破〟を使用してましたが、魔力と倦怠感は?」

 

「魔力は、今もこの鎧が周囲の魔力を吸収してくれるのもありますので、少しすれば戦えるレベルになります。倦怠感の方も、香織が傷を治すと同時に回復してくれたので」

 

「そうですか。…さっきの技、随分と自身への負荷が大きいようなので、今回のように大迷宮ボスレベル以外には使わないでください。言わなくてもわかってるでしょうが」

 

「…はい」

 

少しだけ暗い表情で光輝は頷く。

 

「……それと、お見事です」

 

「え」

 

正直、光輝は今回の自己評価はさほど高くはなかった。最後の詰めが甘いと。

 

「少なくとも、大迷宮の最後のガーディアン級の魔物…推定特級レベルの相手に互角以上に戦えたんです。それは、誇っていいことです」

 

「ありがとう、ございます」

 

素直に嬉しい気持ちと、悔しさが同時に入り混じる。

 

(あと、どれだけ必要なんだ。俺は、あとどれだけ)

 

「そう言えば、南雲。俺達に倒させて良かったのか?攻略認定を受けられなくなるんじゃねーか?」

 

龍太郎が気になっていた事をハジメに質問をする。

 

(((マスターって言わなくなってる)))

 

地球組の女子グループがそんな事を考えてる事など知らず、ハジメはその問いかけに答える。

 

「あぁ、その点なら大丈夫だ。大迷宮のコンセプト的にもな」

 

「それは、どういうことだ?」

 

首を傾げる光輝達に、ハジメは確認するようにティオへ視線を向ける。ティオは、我が意を得たりというように頷くと口を

「オルクス大迷宮は、南雲君曰く、ひたすら強力な魔物のひしめく空間だったそうです。先程のゾンビとフロスト系のモンスターの戦闘はそれと同等とは言いませんが、似たものでした。そして凍死するほど寒さ…これはグリューエン大火山の逆バージョン。性格に難があると思われる解放者が、試験の内容を被せるとは到底思えません」

 

口を開こうと堂々とした姿勢をしていたティオは、言いたい事全てを七海に取られてしまい、「妾が言おうとしたのに」と小声で呟く。

 

「何よりハルツィナの言った呪術師への試練。それが、あんなものとは考えにくい」

 

「それには、俺も同意。ただ倒すだけなら、あまりにも簡単すぎる」

 

七海の言葉にハジメが同意すると、数百の魔物を倒したユエ達も頷くなどして同意した。

 

(南雲は強い…七海先生の言う呪術師の力を得て、たぶん、元の強さの上限が更に上がってる)

 

力の差がある事はもう認めている。その理由も。だから、だからこそ

 

(俺は、俺には、まだ何が残ってるんだろう)

 

光輝は、考えてしまう

 

(あとどれだけ、俺は強くなれるんだろう)

 




ちなみに
光輝の呪具は光輝本人がハジメに「俺のは今は作らなくていい」と言ったから作ってませんが、光輝が意地を張ったからというわけではないです。そのうち作ってもらう気ではあります。龍太郎のは未完成ですが出すつもりではいます。

…完全呪具化しない縛りが便利だと思う今日この頃

ちなみに2
フロストイーグルがフロストタートルの魔石をキャッチして逃げれたのは偶然です。本来ならあれで終わってましたが、光輝の運が悪かっただけです。光輝は今の自分に不満ですが、とっくに特級に近いレベルの強さがあります。周囲…ハジメ達がやばすぎて自分の強さが目に入ってない状態です。


次のタイトルからは色々と本編と変わってくる場面が所々あると思います
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