ありふれたやり甲斐と生き甲斐を探して   作:戦鬼

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いつもより早く出せたのはモジュロを読んですぐに書いたからです。本当は発売日に出す予定でしたが、体調を崩してしまいました。おかげで買えたのが今日。
電子版を買えって?無印の時からずっと本で買ってたから嫌だった。


魔鏡氷晶

大迷宮。挑む場所がそう言われているのはここに来た全員が知っている。現にこれまでの大迷宮も、その名に恥じない広さであった。この氷雪洞窟も同様にその名に恥じない広さなのは、目の前にある光景を見ればわかる。そして、今回は今まででもっとも、大迷宮らしい作りだ

 

「巨大迷路、ですね」

 

フロストタートルを撃破した事で現れた通路の先にはこれからここに来た者達が進むであろう場所を俯瞰して見ることができる場所があり、そこから見えたまさに七海の言うように巨大迷路が広がっている。雪煙のせいで全体の広さはわからないが、数km…いや、数十kmあるかもしれない

 

「私がこれまで見てきた限り、大迷宮は前哨戦と本番が存在すると思ってます」

 

オルクスの前半の100階層然り、メルジーネの海中での迷宮の入り口捜索然り。挑む前の慣らしか、小手調べ的なもの。

 

「先程の魔物との戦闘までが、おそらくその前哨戦でしょうね」

 

1度とはいえ大迷宮に挑んだ光輝達勇者グループは、『あれでもまだ前哨戦だったのか』と、少なからず戦慄している。

 

「まぁ、前哨戦としたら普通すぎだと思うがな。やってる事はメルジーネの入り口探しと、オルクスの魔物の大群との戦いの、縮小版に近い」

 

「私はオルクスの方は知らないですけど、そうですねぇとしかいえないです。まぁ、だからこそ今から真の大迷宮に挑むって感じがするんですけどねぇ」

 

「ん。そもそも解放者からしたら、他の大迷宮を攻略しているのもある程度前提においてるとしても、これくらい超えていかなきゃ神に挑むなんて無理だって感じなんだろうし…む?なに七海、その顔?あと香織も」

 

ユエが名指しした2人以外(勇者グループ)も、ほとんど似たような顔をしている。そして、考えてることも大体同じだろう

 

『お前ら基準で言うな』

というところだ。だが、同時にハジメグループの面々の考えが間違っているというわけでもない。これまで多少とはいえ、神エヒトの力の一端と大迷宮を1度体験し、見てきたのだから、普通かどうかは置いても前哨戦をクリアできないようならこの先の大迷宮攻略、果てはその先の神との対峙は不可能というのもわかる。

 

「……ともかく、全員離れず南雲君と行動しますよ。あの羅針盤があれば、この巨大迷路の最適解のルートを選択できるはずです」

 

「じゃろうな。雪煙で先の全容もわからん所で、あの羅針盤なしで進むなど、自殺行為他ならん」

 

ティオが七海の言葉に同意してると、ハジメが「そういえば…」と口にする

 

「フリードの奴は羅針盤なしで普通に挑んだんだろうが、どんだけ彷徨ってたんだろうな。この先の別の試練のことも加えると、それはそれでアイツは根性があるんだな」

 

「ハジメ、あんなの褒めちゃダメ。醜男が移る」

 

色々と因縁がある相手でも、大迷宮を攻略した事はそれとは別に評価をしていたハジメに、ユエが隣から反論すると、続く形でシアも話しに加わる。

 

「そうですよハジメさん。どうせ部下に人海戦術で探索させたんですよ。まったく、嫌らしい野郎です」

 

「お前らにそんだけヘイト集めてるとか、あいつどんだけだよ、逆にすげぇよ」

 

「私も、お2人の意見には同意です。正直フリードがこの大迷宮を攻略した事そのものは評価に値するとは思ってません」

 

ハジメは『おいおい』という顔をする。まさか七海ですらこんな事を言うとは思わなかったのだ。

 

「シアさんの言う通り、人海戦術で探索したのはほぼ確実でしょう。戦略としては合理的でも、評価はできないです。たとえ魔人族の軍人が手遅れとしても」

 

「手遅れって、どういうことですか?」

 

と、香織が気になって質問すると、七海僅かに考えるような素振りをして、軽く頷く。

 

「そうですね、言っておいていいでしょう。皆さんは、魔人族と人間族の思想の違いはわかりますか?…あぁ、違う神を崇拝してる部分と、それ以外の存在を悪と捉えている面を除いて」

 

七海が質問の後半で付け加えたもの以外の答えが判断できないので、首を傾げる。ティオとユエはなんとなくわかるような顔だ。

 

「それは、魔人族全体の信仰の強さです。彼らの言うアルブという神の差金か、エヒトのものかはわかりませんが、崇拝のあまり正常な判断ができていない所が多い。友や家族を失った面を含めても、人間族よりも神への崇拝が強すぎる。死を恐れてないんです。神の意志は絶対というものを、完全に植え付けられている。魔人族の内情を全て把握しているわけではないので、憶測でしかないですが、それを加味しても魔人族側の思考と思想が、固まり過ぎている」

 

「んと、すまねぇ七海先生。何が言いたいのかよくわからねぇ」

 

とここで龍太郎が軽く手を挙げて質問する。

 

「魔人族の指揮官たるフリードがここを攻略したのだとしたら、解放者の思うことや、神の真実を見たはず。この世界の信仰心を考えても、それなりに納得感はある真実を聞いても、それでもまるで揺らいでない。これまでの言動を加えて考えると、彼は神の使者として力を得る為の犠牲を容認するだけならまだしも、それを崇高な物として扱っている。ここまで来ると、それはもはや呪いです」

 

呪いと向き合って、立ち向かって、多くの人々と仲間の死を見てきた者として、その考えは七海には到底容認できるものでも、認める事でもない。犠牲は仕方ない、出てしまうものと判断していたとしても、違う。

 

「南雲君、フリードを認めるというのは、この先大迷宮の試練でも、仮に神と対峙する時が来た際も、犠牲は当然と、自分の大切な人達に言うのと同様です」

 

「!」

 

そこでハジメは気付く。そもそも自分に牙を剥き、大切に手を出して来た敵を評価するなど、以ての外だ。

 

「そこまで言われたら、その通りだ。悪かったな、ユエ、シア」

 

「ん。それでいい」

 

「ですです!」

 

と満面の笑みを見せる。つられるように香織とティオも微笑む。

 

「さて、話し戻して、あの巨大迷路ですが……南雲君、一応の事を考えて、ドローンか呪骸を使い、迷宮の上から行けるか試して下さい」

 

「無駄だと思うぞ」

 

「それは私も思いますよ。そんな抜け穴を解放者が許すとも思えないですし、なにより…坂上君」

 

「え、俺?」

 

名指しで言われて龍太郎は困惑した表情になる。

 

「君の事ですから、この巨大迷路を進む事に苛立っているんでしょう?」

 

「え?なんでわかるんだ?」

 

「「「「「いやわかって当然だと思う」」」」」

 

「おまっ⁉︎光輝まで⁉︎」

 

ハジメを除いた地球組の面々は『何を今更』とでもいうように揃って言う。

 

「こっちが何か言わないと、君の場合単純な行動で自滅してしまいそうですからね」

 

「たまに俺くらい結構酷いこと言うよな、あんたも」

 

ハジメは自分に対する周囲の『自覚あったのか』という目線を気にすることなく、オルニスを飛ばす。空間魔法によるゲートをつけたタイプだ。仮にゴールを見つけたらそこまで移動できるように。

 

オルニスは大迷路の上空を飛んでいたが、急に空気がたわむような音が聞こえた瞬間、

 

「お」

 

軽く、そんな声をハジメがだす。そしてオルニスが消えた。どこに行ったと思い探すと、天井から氷塊がせり出て、その氷の内部にオルニスが入っている。

 

「内部での操作や視覚の共有は?」

 

「操作はムリ。視覚はある。多分生きたままあの中に閉じ込められて」

 

七海とハジメが冷静に分析していると、天井の周囲から殺意高めの氷柱がミサイルのようにオルニスを捕えた氷に向かい、氷の中のオルニスごと粉砕した。

 

「あのドローンは呼吸をしてないので、氷の内部で窒息した瞬間、トドメを刺すってところでしょうね」

 

「ん。もしくは万が一脱出された時の追撃用」

 

「殺意高いですねぇ〜まぁ、大迷宮なんでそんなもんですけど」

 

シアが言うように、殺意が高い罠への感想と考察を七海とユエがしているが、龍太郎はちょっとだけ引いている。もし短絡的な行動で空中から行っていたら、自分がああなっていたと想像したのだろう。

 

「ユエ、念の為に聞くが、お前の力でさっきの強制転移はなんとかできるか?」

 

「正直難しい。展開速度が早すぎる。仮に1回、回避できてもその後も同じ速度で連続で来た場合は対応はできない。しかもどれだけの範囲をどれだけ連続して起きるのかも不明。全部に対処してたら、魔力がいくらあっても足りない」

 

「ま、それはそうだな。あとありがちな方法としては、壁を破壊して進むってのがあるが……」

 

とそこでハジメ「あ」と何かを思いついたかのように、イタズラを思い付いた子供のような顔をする。

 

「七海先生、ちょっと任せていいか?」

 

「…………」

 

「いや囮作戦とか炭鉱のカナリアにしようとかそういう意味じゃなくてだ。十中八九俺らが破壊しても、壁は瞬時に塞がるか、そもそも破壊できないだろうさ。だけど、あんたの術式ならどうなのかっていう疑問があってな」

 

そういう事かと、七海は納得する。

 

「七海先生の術式…さっきのゾンビから逃げる時に聞いたけど、対象に強制的に弱点を作る術式でしたよね?」

 

「シンプルだけど、強いし、意外と応用力もある」

 

雫が聞いた事をまとめるように言うと、ユエが続いて評価している。これまで旅の中で何度か助けられたのもあり、それなりに評価していた。

 

「あの、七海先生、それって訓練中の私の結界とかにも使ってたんですか?」

 

「使ったり使わなかったりですね。当時であれば使わずとも、膂力だけでもある程度なら破壊できましたが、今は術式ありでも難しいでしょうね」

 

(それでもできないと言わないあたり、ヤバいな)

 

ハジメは鈴の結界術を評価してる。なんならそれだけで言うならユエ並みに。その結界を破壊できるのだから、1級術師という肩書きは伊達ではない。

 

「君の考えは理解しましたが、万が一…」

 

「わかってるって。なんかペナルティが来たらすぐ助けれるように準備しとく」

 

僅かばかりのため息を吐きつつ、七海は先頭に立って歩き、続く形でハジメ達と光輝達も進む。まさにここが迷路の入り口ですよと言わんばりのアーチ状の門を潜る。

 

「どうやら、潜った瞬間何かするということはなさそうですね。…それでは、ユエさん、防御魔法をお願いします」

 

「言われなくても」

 

七海がこれから何をするつもりなのかは、1度グリューエン大火山の時に見たのもあるので、さっさとユエは防御魔法を展開した。

 

「あの、ユエさん。どうしてこっちに〝聖絶〟の展開をしたんですか?」

 

光輝の質問に答えることはせず、ユエは防御に集中する。

 

「八重樫と谷口なら呪具を使えば理由が見えるはずだ。さっき呪力を再チャージしたから、〝呪力感知〟だけを使ってみろ」

 

ハジメにそう言われて2人は呪具をそれぞれ持ち、見ることだけに集中する。

 

すると七海はおもむろに迷路の壁を見る。おおよそ10mの高さ、厚みは2mのそれに、七海は弱点を作る。7:3の比率の点と線を壁の上下でつくり、その点に向かい、駆ける。

 

(十劃呪法…瓦落瓦落‼︎)

 

氷壁に拳が当たった瞬間、呪力が走る。破砕音を迷路内に響かせ、分厚い氷の壁が砕け、周囲に飛び散り、それが周囲を更に破壊する。ユエが展開した結界にも氷塊がぶち当たり、振動を起こす。

 

「な、なんだあの威力⁉︎」

 

「七海先生の拳もだけど、飛び散っていく氷も」

 

七海の術式と、呪力による身体強化による拳。これで氷壁を破壊したのはわかるが、それで飛び散る氷塊も、思っているよりも威力があるように光輝と龍太郎は見ている。

 

「あの技は、攻撃の瞬間に破壊した対象に呪力を込めているんだよ」

 

鈴の言葉に続き、雫が頷く。

 

「ご明察だ。ちなみに本来はあの技は、自分も巻き込まれるから、瞬時の移動が必要なんだが、今回はティオが先生に防御魔法を付与してたから、問題ない。ま、それよりもだ」

 

破壊された氷の壁は、

 

「再生…しないですね?」

 

「いや、よく見よ」

 

ティオが指差す散らばった氷塊やカケラはスローペースだが、破壊された氷壁に集まろうと動いてる。と、何を思ったのか、ハジメは〝宝物庫〟からシュラーゲンを取り出す。巨大なライフルから紅い閃光が迸り、間も無くそこから放たれた弾丸が、七海が破壊した場所とは違う壁を数枚まとめて破壊していく。だが氷壁は瞬きする間もなく破壊した氷が寄り集まり、空けられた大穴が塞がる。ほぼ破壊された瞬間と同時だ。

 

「こっちはあっという間に再生した」

 

あまりの再生速度と、七海の破壊した壁との違いに光輝は驚く。

 

「そりゃな、普通は対策するわな。壁破壊して一直線にゴールとか、常識だからな」

 

「ハジメ君、そんな常識聞いた事ないから。地球でそんな事したら主催者に怒られて、最悪通報されちゃうから」

 

香織がツッコミを入れるが、ハジメは「それよりも」ともう一度七海の破壊した壁を見る。つられて他の面々も見る。ジッと見てるが、やはり再生速度は遅い

 

「ペナルティは…起きないな」

 

「そもそも、なんで南雲の攻撃はすぐ再生して、七海先生の攻撃は再生しないんだ?」

 

「おそらく、私の術式によって、破壊した氷塊に呪力が留まっていることで、氷壁に含まれる魔力が一時的に通り辛くなっているのでしょう。所謂、バグのようなものでしょうね」

 

光輝はハジメに問うたが、代わりに七海が答えつつ、破壊した壁の向こう側に移動するが、やはり何も起きない。

 

「んじゃま、このまま破壊しながら移動するか。次も頼むぜ、七海先生」

 

「解放者が不憫な気がしてきたわ」

 

雫は若干の同情をしていた。

 

せっかくの大迷路の作成、セコイ手で進むのを妨害する手段もつけていたのにも関わらず、それでも尚、意図も容易く攻略されるなど、考えもしなかっただろう。神代魔法を複数持つ者でも大丈夫なようにしていただろうに。

 

「羅針盤に変化は?そもそも使えますか?」

 

壁の向こう側にショートカットした事でなにが起こるかわからないのと、羅針盤を使うことにペナルティ、もしくは制限がかかると思った七海がハジメに聞くが、「問題ない」と返す。

 

「正直俺もなんかしらの制限があると思ってたが、どうやら大丈夫だ。ま、そもそもこの羅針盤は、神代魔法の上位互換である、概念魔法の産物なんだ。解放者自身も3つしか生み出せなかったって言ってから、問題はないと最初から思ってた。だが、先生が破壊した壁と、そこから先で使えるかは不明だったが、問題なさそうだ」

 

「……そうですか」

 

と呟いた七海は考えこむように、顎に手をやる。

 

「どうした?」

 

「ハルツィナが言っていた、害徒…呪術師への試練。それが少し気になりました」

 

樹海の大迷宮から飛んで行った3つの光。あれの事を考えるなら、この氷雪洞窟でなんらかの呪術師限定の試練がくるはず。にも関わらず、壁の破壊に対応できてない所に、不気味さを感じた。

 

「単純に、ここがその呪術師への試練じゃないって事じゃないですか?ハルツィナの言い分だと、彼女は呪力が見えるだけのようですし、他の解放者が呪力を使えたとも、見えたとも思えないですから、それへの対応が組み込めなかったとか?」

 

「そうだとしたら、呪術師限定の試練と、そもそもハルツィナの呪術師達限定のメッセージを残すというのも組み込めないですよ」

 

シアの意見に対し反論すると、「あ、そうか」とシアは納得する。

 

「考えすぎだって言いたい所だが、確かにそう聞いたらその通りだな。なら、やっぱ壁の破壊した一直線の移動はやめるか?先生だけに負担があるし、それにそのせいで試練の突破ができない可能性も多少はあるし」

 

「いえ、それは実行しましょう。効率的ですし、それに試練については、この迷路をクリアするだけとは思えないので。ただ、できるなら魔物の方は任せてもいいでしょうか?この先のことも考え、ある程度は呪力を温存したいので」

 

「…わかった任せる。魔物の方は、こっちが対応する」

 

気配を消すことのできる固有魔法を持っている魔物もいるだろう。七海に壁の破壊に集中させる為に、ユエ達はコクリと無言で頷く。

 

 

結果として、大迷路はスムーズに進んでいく。

 

「〝閃華〟!」

 

雫の黒刀に付与された空間魔法の力で、空間を断裂させて斬り裂き、現れた魔物胴体がずるりと落ちた

 

途中、想像通り魔物が出てくるが、シアと雫が気配を察知して、撃破するという流れになっている。特に雫は昇華魔法習得によって、〔+攻撃感知〕の効果が上昇しており、いくら気配を消し、氷の中から奇襲を仕掛けてきても、フロストゾンビと違い、出現と攻撃が同時の為、大抵は察知できる。

 

「雫さんすごいですねぇ!私のウサミミイヤーと同等じゃないですかぁ?」

 

「あ、ありがとうシア。でも、シアの方がすごいわよ。私のは基本攻撃にしか反応できないし」

 

キラキラした目で誉めてくるシアに、たじたじになっている。

 

「…………」

 

「光輝?どうした」

 

光輝も複数現れた魔物をきっちり倒したが、何か納得できないのか、自分の手を見ていた。

 

「龍太郎、俺…強くなってるよな」

 

「ん?おお!当然だろ!正直、まだ俺より強いってだけで嫉妬しちまうくらいにな」

 

昇華魔法を駆使しても、今の龍太郎と光輝では差がある。しかも今龍太郎は自分に制限をしている(・・・・・・・・・・)ので、昇華魔法を使うことができない。

 

「でもさ、あれを見るとな」

 

と言い、光輝が見る先には殺られた魔物達、フロストオーガが山積みになっているのだが、全てシアが倒した個体だ。どこそんな膂力があるのかと言いたくなる姿で、巨体の魔物を吹き飛ばし、木っ端微塵にしていく。可愛い見た目なのにやってる事は粗々しい。

 

「まぁ、あれだ。なんやかんや言ってもあの人もハウリア族だろ?深く考えたらダメだと思うぞ」

 

「ウサギの皮を被った(オーガ)か何かだと思ったら良い」

 

「そう、だな」

 

「ちょっとそこ!聞こえてますからね!父様達と同じはやめてくださいよ!」

 

龍太郎と鈴の評価を聞く光輝に、自慢のウサミミで聞き取るシアは必死で否定するが、鈴の隣で聞いてる香織が苦笑して否定しないのが答えだ。

 

術式を使い黒閃を決めたシアは、ハウリア族同等の言動に近くなる。

 

(って言いたいけど、藪蛇だから黙っておこう)

 

『あとシアの尊厳的にも』と香織は心の中で付け加える。

 

「天之河君、功を焦るのが悪いとは言いませんが、成長と実力に差が出るのは常です。誰かと比べる前に、今目の前の事に集中してください」

 

「わかってます」

 

いつぞやのように怒ったようにではなく、静かに、気持ちを落ち着けて光輝は言う。

 

「七海先生、次はそこの壁だ」

 

「わかりました。ユエさん、ティオさん、またお願いします」

 

本当ならもう少しは言いたい事があるのだが、壁の破壊に七海は集中する。

 

「今更じゃが、羅針盤が壁の破壊によって通路を無理矢理作る行為にも適応するとはの」

 

ティオの言う通り、実はここに来るまで七海が壁を破壊したのは数回程度。当初、羅針盤を無視するのはどうかという意見もあった。ところが最初の壁の破壊の時もそうだが、羅針盤は破壊した方向を示し、逆に破壊しても示さない時もあったので、ハジメは羅針盤が最適解の道を選んでいることに気付いた。その証拠に、羅針盤の針が向いてもいないのに壁に穴を開けてすぐに飛び出してしまった龍太郎は、1度罠にかかって死にかけた上に、スタート地点にまで戻された。

 

ハジメのオルニスで誘導してどうにか今は共に行動しているが、その時にハジメと七海からキツイ説教を受けたのは言うまでもない。

 

「できるとわかったなら、それに対応するようにってところだろ。正直最初に壁を開けた時、その先で罠がなかったのは、運が良かっただけだ」

 

「やっぱり、呪術師がここを挑む時に、壁を破壊された時の事も想定してたんでしょうね。流石に羅針盤との併用対策は無理だったみたいですけど」

 

ハジメとシアが考察している内に、再び七海が瓦落瓦落で壁を粉砕した。

 

「む」

 

七海が破壊した先に見たのは、これまでの迷路とは違い、広く扇状に通路が3つあり、更にその先の突き当たりに巨大な両開きの扉があった。

 

「あれも破壊しますか?」

 

七海が聞くと、ハジメはそれを静止する。羅針盤を見て、「なるほど」と口に出す。

 

「間違いなくその扉が、次の場所への移動ルートみたいだが、鍵穴みたいなのがある。無理に破壊してペナルティが来たり、俺らに大迷宮攻略が認められない可能性がある。それに、壁を破壊して最短ルートを通ったが、それでもたぶん6〜7時間以上は経過してる。羅針盤で休憩できる地点を探すと、針がぐるぐる回ってんのを見るに、この場所がそうなんだろう。だから、ここで一旦休憩した方がいい。…ここまで、助かったぜ、先生」

 

ハジメがそう提案すると、七海は少し肩の力を落とす。途中、抑えている呪力を解放する事も考えたが、そうせずに済んでよかったと思う。

 

「一応、周囲の警戒と、壁からまた魔物が出現する可能性があるので、そこには近づかないようにしましょう」

 

七海は全員にそう言い、休息の準備をしているハジメを手伝うこととした。




ちなみに
今回のタイトルは何しようと悩んでました。で、決まったのが《魔鏡氷晶》。
お気付きでしょうが、NARUTO-ナルトの白が使った血継限界の術です。「あ、そういえば」てな感じでこの技が頭に浮かんできたのこれにしました。しばらくタイトルこれでいきます。

ちなみに2
ハジメは炭鉱のカナリアにするつもりはないと言ってますが、事実上してる。でも言わなくても七海は気付いてやったと思う。ただし、これができるのは今だけ。むしろこの行為で大迷宮は呪術師を感知して対策を色々と取ってきます。途中から羅針盤が針を刺さないのもそれが理由。
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