呪術師への試練考えたとき、シアですらああなるのだから、七海じゃ無理ゲーなのでこうしました。
他の虚像戦を書くキャラのは鈴は大体当初考えてたのとそのまんまですが、結末はまるで違う。光輝はかなり悩んだけどコッチにしようと決めてます。
あと、前話で書いた通り、この作品の七海は正確に言うなら七海ではない的な感じで書きましたが、今後もモノローグやキャラには七海と書いて、そして読ませます
シュネー雪原の氷雪洞窟の大迷宮。その本来なら最後の試練である自身の虚像との戦闘。虚像は対象者の戦闘スタイルや魔法の情報を大迷宮内を移動中に収集し、且つその対象が抱えてる問題や闇をも収集し、虚像はそれを突き付けてくる。
試練を行う者は、突き付けられた闇に向き合わなければならない。他者への嫉妬、未来への不安、過去に置いてきた物、そして自分自身の現在。
生きている限り、人は何かしらの負を抱える。それがいつ、どんな時で、どんなものかはその人次第で、乗り越えられるかもその人次第。乗り越えられない者に対しては、虚像はその強さを上げていき、乗り越えた者は虚像を弱体化させる。
他者の心の闇に土足で入り込み、あまつさえそれを時間をかけさせずに乗り越えさせてくる。七海曰く、性格に難ありの解放者がやりそうなえげつない試練である。とはいえ、確固たる強い意思を持ち、更に自分の闇に既に向き合っている者には案外楽である。
だが、
「ぐぁ!」
【私に一撃を与えたこと、自らに向き合うこと、できているのはさすがです。が】
虚像の上昇した呪力と出力、膂力。まさに力技で七海は追い詰められていく。生傷やあざは全身にあり、反転術式で治そうにも、苛烈な攻撃と、洗練された技術がそれをさせてくれない。仮にできても、この状況下ではあまり意味はないだろう。
(おかしい)
さすがに七海も、この状況に違和感を抱いていた。
(この試練は、おそらく自身の闇と向き合い乗り越えていくこと。だとしたら、私は達成できている…はずだ。少なくとも私が出した言葉に嘘はないと確信を持てる)
自身の闇に対して否定するようなそぶりをした際に目の前の七海の虚像はわかりやすく強くなっていると感じた。なら逆に肯定して乗り越えたらどうなるか?普通に考えるなら弱体化だろう。そして本来ならそうなった。
【気付いているでしょう?私が弱くなってない事に】
「……ええ。むしろ、先程と同じ速度で強く…とまでは言いませんが、確実に強くなっている」
【そう言うということは、試練についても気付いてるようですね。この試練は本来、自身が抱えている闇と向き合い、乗り越えると、虚像は弱体化します。それはつい先程、あなたは成した】
虚像は【後は倒すことで完全にクリアです】とも続けて言い、そしそのまま冷酷なまでに冷たい声で言う
【が、あなたは害徒…呪術師です。それに対しての試練も同時進行しています。試練の内容は、〔あり得る未来の強さを持った自身との戦闘〕。そして、先程私は黒閃を成功させた。これにより、更なる実力の上昇をしています】
「これまでの大迷宮の試練とは違いますね。今までは、無理難題ではあっても答えと攻略法はあった。が、今私がしてる試練には、そのようなものは見えない」
【そう。今しているは無理難題ではなく、無理そのものです。解放者は呪術師を信用してませんからね。世界がどうなるか予測がつかない】
「……宿儺の出現で、何が起こったんですか?」
【それを答える機能は私にはありません。が、今現状で呪術師が生まれる大きなキッカケの1つなのは、確かです】
予測つかない世界にしてしまった事だけでも警戒するにはいいだろうが、それ以上に警戒する事を宿儺はしたのだろう。神が必死になって宿儺がした事実をもみ消すくらいには
【それに、今その事を聞く余裕でもあると?】
戦闘が再開される。虚像は武器と拳、呪力のカウンター放出と、手札が依然多い。並の特級呪霊では相手にならないほどの実力がある。現状の七海は見よう見まねで呪力を放出し、あるいは回避のみに集中してどうにか凌げている。だが限界が近い。防御は術式で崩されのでほとんど意味をなさない。
(まずいな、このままでは確実に私は負ける)
諦めているわけではない。だがハジメやシアと違い、自身の才能の限界を七海はわかっている。この状況下で逆転をする目がどこにもない事を誰よりもわかっている。
(なら)
【む?】
七海は呪力を両腕集中させた。そして相手が打撃の攻撃をして来たタイミングを見て回避ではなく前進をしたが、攻撃を入れさせてくれるような相手ではない。虚像は強力な一撃を術式で作った弱点に入れる
ごぎゃと鈍い音がした。内部の骨が砕けて、その一部が内蔵を貫くのを七海は感じた。
「ぐ、ぁあああああ!」
それでも振り絞るかのような拳を喰らわせようしたが、攻撃と同時に虚像は武器を振るう。当然呪具の方だ。
「っっっっっ!」
七海は左腕を差し出すかのように前に出した。そして両断された。…否、両断させた。
【なに⁉︎】
「えああああああああ!」
左腕に込めていた呪力を解除して差し出す。防御をしない縛りと片腕を捨てる縛り。そして、残った腕のみに最大限の呪力を乗せる縛り。
(黒、閃‼︎)
術式で弱点を作り、そこに最大出力を超えた黒閃が光り輝く。呪具の能力も、術式反転も許さぬ速度の一撃に、虚像は吹っ飛び、壁に激突した。
(これで、終わってくれると、いいんですが)
捨て身の一撃とできうる最大限の縛りによる威力上昇。術式なしでは五条悟であっても相当なダメージを受けるであろう一撃。氷の煙が舞い、それが晴れると
【終わり、ですね】
(あぁ、クッソ!)
間違いなく入った。相当なダメージだったろう。打ったのが黒閃だから仮に虚像が反転術式をできてもすぐには回復をしきれないはずだ。それなのに、少しふらつきながらもスタスタと歩み寄る虚像の七海は、まだ戦えそう…
【ぐ…ゔぁ】
虚像が膝をついた。やはりダメージは相当なものだった。
「シッ!」
【ぐあぁ!】
身体を無理矢理動かして七海は隙だらけの虚像に蹴りを入れた。ズザァァと虚像が転がっていくが、追撃ができない。
「っく!」
片腕や内臓の痛みだけではない。これまで受けてきた攻撃に、動くのが困難なほどに。
(せめて、治せる部分を…いや、そんな暇はない!動け、動け、動け!動けぇ‼︎)
気合いだけでどうにかなる問題はとっくに超えている。ずるっと1歩動くのがやっとだが、七海はそれでも歩もうとする
【では、今度こそ、終わらせましょうか】
そうこうしている内に虚像の七海は体勢を整え、七海にとどめを刺すつもりだ。今度はさっきのようにはいかない。確実に殺される。
(だめだ、ある程度治さなければ、もう…動くことも)
七海の反転術式は精度が低く、再生速度は遅い。おまけに現在は手で触れなければ行うことができなくなっている。
【何か、言い残す事は?】
「それ、必要ですか?やはり私のコピーとしては失格ですね」
虚像は七海を見下ろしつつ、片足を上げる。頭を潰すつもりだ。
(悔いはない。がまた色々と面倒ごとを残してしまいますね。南雲君、畑山先生、皆さん)
ズガァァアァァァン‼︎
虚像が足を上げて七海の顔を踏み潰そうとした、瞬間だった。衝撃音と共に壁が破壊されて砕け飛ぶ。
【ちぃ!】
虚像は飛んできた巨大な氷の塊に対応してしたが、片足を上げていた状態であった為に上手く対応できず、命中して吹っ飛ぶ。
「なにが…」
何が起こっているかと状況把握をしようとすると同時に、七海は反転術式を使用して動けるレベルに治していると
「バカオリ!さっさと止まれ!」
「うっさい!そこは死ね!でしょ!それとユエの方がバカだよバーカ!」
凄まじくくだらない言い争いをしながら殺意マシマシの魔法を撃ち合うユエと香織がいた。
*
数分前。
「あ!ユエ!よかったぁ合流できた!」
他の者たち同様に香織も自身の心の闇を虚像に曝け出され、それでも乗り越えて自分の虚像を倒した。その後出てきた通路を通っていた所、ユエと合流した。僅かとはいえ皆と逸れてしまい、しかも自分の闇と向き合わされたのもあって心細い気持ちになっていた。欲を言えばハジメか雫と合流したかったが、それでも仲間と合流できたことで喜んでいたのだが。
「…ユエ?」
トボトボとユエは香織を無視して進む。無視をされた事に香織は怒る…のではなく疑問に思い、次に心配になる。2人はよくハジメをめぐって喧嘩にもなるが、お互いを認めており、両者共に認めないだろうが、確かな絆がある。
(魔力の流れからして、前みたいな偽者じゃない。ここにいるってことは試練もクリアしてるはずなのに)
香織からしたら、いまの声掛けから何かしらの、『ああ、香織
(何があったの?迷路で囁き声を聞いてた時は特になんでもなかったはず。そもそもユエならハジメ君や私達について何を言われた所で揺らぐはずない。あり得るとすれば、封印される前の裏切りについてだけど、それこそユエがどうこう考えるとは思えない)
失った過去よりも、今とこれからこそがユエの求める物である。だからその程度で揺らぐはずもないと香織は確信してる。
「ユエ!」
香織は早足になって追いかけて。ユエの前に立ち肩を持ち、今度は耳元で声をかけた。
「っ!あ、かお、り?」
そこでようやくユエは香織の存在に気付いて、我に返った。
「どうしたのユエ?最初に声かけても無反応だったから」
「…ん。大丈夫、問題ない。ちょっと考え事してた」
「………そう」
ユエは「問題ない」と言うが、考え事をしてたと言う時点であきらかに今のユエには何かしら問題が起きている。
「じゃあ、先に進もう。早くハジメ君とも合流したいし!」
「ん。早くハジメに会いたい」
2人は並んで歩く。おそらくどこかで誰かが戦闘いるのだろうが、その音はしない。単純に遠くにいるのか、それともそういう仕様なのか。いずれにせよ、静かなのが逆に香織は不安になる。
「そういえば、皆大丈夫かな。雫ちゃんと鈴、だいぶ迷路の時点でキツそうにしてたし」
「ん、確かに」
「特に鈴。今私の〝廻聖〟を受けれてないなら、無闇やたらに魔法は使えない。呪具はあるけど、どこまでできるか……早く合流しないと」
不安で香織は心臓が潰れそうになる。それを見てユエは話を逸らす
「雫は?」
その対応は香織も気付いた。言葉に出さないが、(ありがとう)と心で思っていた。
「あ、うん雫ちゃんも勿論心配だよ。でも攻略できるって信じてる。あとは、どれだけ自分に正直になれるか、かな」
「……やっぱり香織も気付いてた?雫がハジメを好きなこと」
「勿論」
きっぱりと香織はユエの問いに答える。
「むしろ私は嬉しい。大好きな親友が、おんなじ人を大好きになれたこと。もし、このあと雫ちゃんがハジメ君の事が好きを言葉にできるようになってたら、一緒に愛そうって言うつもり」
「香織はそれでいいの?」
恋のライバルが増える。しかもそれはこれまでずっと仲の良かった親友ともなれば尚更。
「もし、トータスに来ないでお互いに恋してる事を知っても、日本のルールや法とか関係なく、私は雫ちゃんと一緒にハジメ君を愛すよ」
追加で「あ、でも正妻はどっちか論争はするかも」と香織は言うと、ユエはクスリと笑う。
「あ、それと心配の中に、あの勇者はいないの?」
「え、光輝君?うーんちょっと前、それこそ樹海の大迷宮の時くらいなら私もそう思ってただろうけど…」
仮にも幼馴染で、ユエよりも見てきた時間が長い。だから香織はわかる。
「確かに光輝君も迷路で囁き声の影響は受けてたけど、なんて言えばいいのかな?今の光輝君はあの囁き声に対して…」
「向き合ってる?」
「うーんそれもなんか違うっていうか……違和感っていうか」
ユエはどういうことかわかっていないのか、首を傾げる。
「影響は間違いなく受けているんだよ。それに向き合うこともしてる。けど、なんていうか……そう、私や雫ちゃんの中にある光輝君が、どんどん遠ざかっているみたいな……ごめん、やっぱりわかんないや」
「それでも心配はしてないんだ」
「あ、うん。ほんと、多分なんだけど、光輝君は試練に合格するって思ってる。雫ちゃんと違って、確信はないんだけどね」
「そう。香織がそう言うなら、そうなんだろうけど」
「………」
香織は相手の気持ちに寄り添える。何があったとは敢えて聞かない選択ができる。それでも
「……ユエ、虚像との戦いで何かあったの?」
聞かざるを得なかった。本調子のユエであれば、今の会話の後に『ハジメを諦めて光輝とよりを戻せ』的な嫌味を言ってくる。雫と一緒に愛すと、正妻がどっちだというところなど更に『私が正妻』とでも言うだろう。それがなく、淡々と会話をしていたのだ。それでなくても、ここまで会話をしていれば、いつもならどこかで嫌味を言ってきていた。
「どうして?」
「単純に、ユエが心配だからだよ」
だから濁すことも、待つ事もせず聞いたのだ。そうして香織はユエの両手を握る。優しく、温めるように。
「ごめん」
だがユエは話そうとはせず、謝罪をする。香織が心配してくれている事も、ここまで敢えて聞いてこなかった事の優しさも理解している。
「話したくない?私じゃ、役不足?」
「そんなことはない!…ん、ない」
香織に対して申し訳ない気持ちでユエは言う。
「私自身、整理がついてない。何をどう話すべきなのか、わかってない。昔の事を色々と言われて、ハジメやシアへ想いが揺らぐわけないから、試練は問題なかった」
「うん」
香織はゆったりと話すユエの言葉を聞き入れる。
「香織にティオとも、これから先を歩む仲間としてみているし、これからハジメが2人の想いがより強くなることも認めてるし許してる。けど…」
「けど、なに?」
「その時、思い出したことに、記憶違いがあるかもしれなくて、それを整理したい。だから、それまで待って」
心配させないように、ユエは笑みを浮かべる。握る香織の手を優しく握り返し、問題はないと言わんばかりの穏やか笑みを。
「……そっか。じゃあ、今は聞かない」
「いいの?香織」
「いいの!ユエを信じるよ」
と香織は言い、手を離して進みだす。クルッと1回転して両腕を自分の腰にまわして、右手で自分の左腕を握り、前屈みになり誘惑するように、だが言葉は挑発するようにして告げる。
「行こう!ユエ!もたもたしないで。そんなふうにしてると、ハジメ君の特別、私がすいってブン取っちゃうよ」
「…調子乗んな、バカオリ」
香織の挑発に対して今まで通りの反応をユエに、香織は安堵した。
「でも、もう認めてるよ。きっとハジメも、シアと同じくらいに香織の事想ってる」
「ユエ?」
だが、その言葉を聞いた瞬間、香織にまた違和感……だけではない。今度は拒否感が出てくる。
「……ねぇ、香織」
これもよくわかっていないただの嫌な予感。それも猛烈な嫌な予感だ。香織の心の中で『その先は聞きたくない、言うな、それ以上言うな』と警報を鳴らしている。まるで、面白い物語のオチがとてつもなくつまらなくて、これまでの全てを台無しにされるかのような、そんな予感。
「もし、私に何かあったら、ハジメとシアをお願い」
聞いた瞬間、香織の目から光が消える。
「…………え」
今ユエはなんと言ったか、香織は一瞬理解できなかった。違う、理解なんてしたくなかった。
「シアにも、あとで同じ事を言うけど」
「……て」
頼むから今言ったのは全部冗談だとでも言え。
「とりあえず、この場でこんな事頼めるのは香織だけだから」
「……て」
なんでそんな事を堂々と言える。
「香織とシアがいれば、私がいなくてもハジメをささえることができ」
「……ろ」
なんでそんな事を私に言える。
「約束、してくれる?」
「や…ろ」
なんでユエが私にそんな事を言える。
「香織?」
ユエは香織が何かを呟いていることにようやく気付く。その事実が更に香織の神経を逆撫でし、その瞬間、香織のストレスは、限界を迎えた。
「ぐっ‼︎」
ユエは何が起きたかわからなかった。いや、何をされたかはわかる。グーパンで殴られたのだ。身体強化も魔力も込めてないが、それでも手加減抜きの強烈な1発。問題は、それが目の前にいる香織からされたという事
「やめろって言ってんでしょ!」
「香織?」
ユエはわかっていないが、香織の今の感情が何かはわかる。
怒髪天。その言葉がふさわしい程に、香織は怒りに震えていた。怒ることはこれまでの香織の人生で何度かあった。だが今のユエへの怒りは、香織は今まで抱いた事もない、きっと今まで人生どころか、この先の人生でもこれ以上の怒りはないと言える程の怒り。
「訂正して!撤回して!謝ってユエ!」
「…」
「今の言葉全部、何から何まで!ハジメ君を、シアを任せる、託すっていうところ!そんなふざけたことを言ったことを、全部全部無くして、私に……いや、シアとハジメ君に謝って‼︎」
その怒りに対して、ユエもカチンと来る。
「私の信頼を、覚悟を、ふざけてるって言うの?」
「そう言ってるでしょう?あれ?もしかして自分の言葉わかんなくなってる?哀れだねぇ〜」
明らかな香織の挑発。だが哀れというが、実際は違う。怒りと嘆きだ。
だがそんな事を言い合う前に、ユエも香織も魔力を放出している。これまで彼女たちは言い争いをしているとその背景に龍や般若が出ていた。そしてこの状況を第3者が見ていたら、今回も出て、見えていただろう。ただ、違うのはその般若と龍が怯えているという点だが。
「「‼︎」」
そして特に合図があったわけではないが、お互い同時に、魔力を身体に纏って高速で前に飛び、ぶつかる。互いの魔力が荒れ狂うように周囲を破壊している。この場に大迷宮に来た誰でもいいので見ていたら、間違いなく驚いていただろう。香織とユエが戦っていることではない。香織とユエの魔力のぶつかり合いが、拮抗している事にだ。
やがてぶつかり合う魔力はその中心で爆発し、2人はその勢いで後ろへ下がる。
「魔力の質は中々。でも、香織が私に勝てるとでも?」
ユエの言葉は香織の事を過小評価してのものではない。だが事実として、香織はユエと比べたとき、魔力量も使える魔法の数も、そして、魔力出力も劣っていた
「⁉︎」
ユエの驚きは香織の周囲に渦巻いて集まってくる光の粒子に対してのもの。キラキラと、キラキラと、それら全てに殺意がこもっていることをユエは確信する。
「そうだね、私はユエに勝ててない。強さも、ハジメ君の特別も……でもね、それはこれまでの話」
魔力出力も劣って
もし以前のままなら、先程のぶつかり合いで香織が押し負けていた。
「覚悟してね、ユエ。今の私を怒らせたこと、後悔させてあげる」
ニッコリと、ノイントの身体だが顔は太陽のような香織の笑顔。ただし怒りを含んだ。香織はそれまで殴る為に握り込んでいた右手を開いたと同時に、光の粒子の一部が形をなし、その手に光でできた剣が顕現した。ノイントが使っていた剣の形に似ている。ちなみに出そうと思えばその実体剣を香織は出すことは可能だ。
(なるほど、近接戦闘のつもりか)
すぐにユエはその光の剣は分解魔法の効果を持っている剣と判断し、かつユエに対し近接戦闘をしようとしてるとも判断する。
確かにユエはシアやハジメと比べれば、近接戦はさほど得意ではない。だがそれでも、香織がしようとしてるのは浅はかな考えだ。
「〝五天龍(混)〟」
5体の混合魔法でできた龍がその顎を見せる。ユエは香織を侮ってなどいない。だから全力だ
「なっ⁉︎」
瞬間、ユエの出した5体の魔法の龍は大量の光の剣に串刺しにされ、瞬時に霧散した。そしてユエは見た。香織の姿を巨大な翼を羽ばたかせるその羽のひとつひとつが分解の力をおびた光の剣。だがそれはノイントが使っていた羽とは比べほどにならない量と大きさ。
「今の私は」
「ぐっ!」
「多分ハジメ君やシアよりも速いよ」
ユエは一瞬香織が分身でもしたのかと思ったが、違う。速すぎて正面にいた香織の残像を残したまま、ユエの後ろに回り込まれて攻撃を受けた。今度は光の剣ではなく、ノイントが使っていた剣。ただし刃のついてない側面、平をバッドのようにフルスイングして、ユエを飛ばした。
体制を空中で直し、そのまま浮いているユエは更に目を大きく開いた。
「ここらが、これが、私の全力。限界突破…まぁ、まだ本来のと比べたらもどき以下だけど、このくらいしないとね」
香織の移動は光輝の使っていた〝限界突破・光速〟と似ているが、まったく別物。ノイント本来の速さに限界突破による速度上昇。更に纏う光と翼は魔力放出による、ジェット噴射の役割をはたし、更に速度をあげる。おまけに分解魔法を付与されているため、僅かに当たってもそれなりのダメージを与え、仮に分解魔法の防御ができても、超光速による重さある一撃で、並大抵の相手は粉砕される。香織自身も本来なら光輝同様に自身もダメージを受けるが、光輝のやっていた足元の強化ではなく全身の強化。更に再生魔法である程度のダメージは自動回復する。
本来なら、ノイントは限界突破同等の強化をしてもそれに時間制限がなく魔力も尽きることはないが、香織の場合はまだ未完成の為、時間制限はある。それでもみるみる上がっていく香織の魔力量と出力。周囲が膨大な魔力で歪んでいる
「そう………」
この時、ユエは恥じていた。先程の、戦闘前の自分の言葉をではない。無意識のうちに相手を、香織という絶対強者を舐めていた事を
「いい度胸だ香織!全力で叩き潰す!」
速度を出せば、距離をあければ、ユエとて負ける可能性がある強敵。ならばとユエは魔力による刃を出し、さらに再び〝五天龍(混)〟を出すが、サイズが小さい。攻撃の防御とサポート用にしたもの。そのぶん耐久性と持続性がある。積極的に近づき、分解魔法に対抗できるほどの魔力を持った魔力の刃で距離を詰めて戦うつもりだ
「こっちのセリフ!叩き潰してさっきの言葉全部撤回させる!」
対する香織は距離を詰めてくることは承知済み。近接戦は七海とシアに文字通り叩き込まれた。後はユエを吹っ飛ばして距離を僅かでもあけたら、体当たりをする
「「ぶっつぶす!」」
そして、2人の激闘が始まり、
*
ズガァァアァァァン‼︎
【ちぃ!】
「なにが…」
何が起こっているかと状況把握をしようとすると同時に七海は反転術式を使用して動けるレベルに治していると
「バカオリ!さっさと止まれ!」
「うっさい!そこは死ね!でしょ!ユエの方がバカだよバーカ!」
こうして今に至る
【まったく、他の試練中に割り込みなど】
「アレと戦うなどしないでしょう?」
【しまっ⁉︎】
大きすぎる強さを持つ敵?の乱入に、虚像はそちらに集中してしまう
黒い閃光を放つだけのゾーンに七海はすでに成っている。
(黒閃!)
虚像の顔面に黒い光が輝く。そして飛んでいく先には
「「邪魔!」」
いまだに戦闘中の香織とユエに吹っ飛ばされて逆方向、つまり七海の方に飛ぶ。こうなると予想してた七海は呪力を残っている腕に込めて叩きつけるように殴る。
【ごぅ】
黒閃は出なかったが、それでも地面に虚像がめり込むくらいはあった。勢いは止まらず、虚像はバウンドしながら転がって、壁にぶち当たる。
「さて、これが私の試練に対してどう作用するかわかりませんが、チャンスはもらっておきましょう。……後でお説教ですけど」
規模のでかい喧嘩に巻き込まれる前に、七海はケリをつけようとする。
【まったく、ほんとうに、思うようにならないもんですね、お互い】
「!」
七海は虚像が何をする気かわかるが、距離が開きすぎている。
【さぁ、どうなるでしょうか… 十劃呪法、瓦落瓦落・載!】
虚像が殴った氷の壁に呪力がどんどん広がる。範囲は大きく、天井のほぼ全てに広がって、崩壊を起こした
ちなみに
呪術師への試練はその対象の術式が複雑ではなくシンプルなほど安定して強くなりしかも弱体化しない。時間かけるとどんどん強くなる。しかも七海は通常の試練と並行していたのでハジメやシアよりも強くなる速さが段違いです
ちなみに2
シアが一時的にダウンしてるので、ユエと合流したのは香織です。原作読んでて思ったのは、あれもし香織が聞いたら多分シア以上に怒るだろうな、でした。それを実現させた(香織の実力を上げたうえで)
次回についての情報なんですが、先にこれだけ言っておきます。次回の前書きにも書きますが「間違ってだしてないですよー。これも最初からこうするつもりでした」