ありふれたやり甲斐と生き甲斐を探して   作:戦鬼

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超ふざけて作ったのに無駄に長くなった。反省します(笑)

注意:キャラ崩壊しまくりですが、あくまで劇中の劇ですので


ありふれさんぽ:英雄になりたい錬成師(最終回)

この世界は、戦いが常に続いていた。魔人族は田畑を荒らし、人々を傷つけ、命を奪う。

 

人族最大の危機。それを救うべく、神エヒトは勇者とその仲間たちを召喚した。この世界を救う為、強くなり、困難を切り抜け、いずれは魔人族に勝つ為に。

 

だが、この物語の主人公は勇者ではない。なんの取り柄もない、ただの無能と言われた錬成師のお話。勇者を勇者にする最弱の英雄の話だ。

 

「ハジメ、君はここに残るべきだ」

 

勇者はそう告げる。来たる魔人族と戦う為、自分達は、特に最前線で戦うことになる彼は、オルクス大迷宮で仲間と共に力をつけている。だが、彼はその仲間の1人であるハジメに告げた。

 

ハジメという錬成師は召喚による神の恩恵があまりなかったうえに、錬成師というごくありふれた天職だった。皆に蔑まれていたが彼は自分なりに皆の役に立ちたかった。

 

「だからこそ行きたいんだ。勇者である君と違って、僕じゃ何もできないけど、皆を、この世界を守りたい気持ちは君よりあるって思ってる」

 

「………私は、君を尊敬してる」

 

「え?」

 

勇者が、自分を尊敬?とハジメは疑問に思う。

 

「君が行く先々で無能と言われているのは知っている。ステータスを見れば、そう言われてもおかしくない。けど、私は、君が誰よりも勇敢で、明るくて、どれだけ皆を励ましているかを知ってる。私なら、きっと折れてた」

 

「勇者………」

 

「本当は迷ってる。君や皆を戦いに巻き込む事を………同じ世界で育った君達を、死なせるかもしれないと」

 

勇者は、ずっと言わなかった事を彼にだけ話した。初めて見せた弱さだった。

 

「勇者失格だな」

 

「………そんなこと、言わないでくれ‼︎」

 

「!」

 

胸ぐらを掴まれ、勇者は今まで物静かな彼が怒鳴ってきたことに驚く。

 

「僕が、今まで悔しいって思った事がないとでも⁉︎君みたいになりたい!君のように強く戦いたい!皆を守りたいって何度思ったかわかるか‼︎」

 

「…ハジメ」

 

「けどそれは僕に与えられたものじゃない!君が持つものだ………勇者って肩書きに押しつぶされてしまいそうなのもわかるよ。どれだけ強くても、期待をそれだけ受けていれば、心が弱くなってもおかしくない。けど!僕の前だけでも良いから、そんな弱い所は見せないでよ」

 

勇者は、ずっと彼が心の強い人物だと思っていたけど、わかった。彼もまた同じだった。自分の立ち位置に悩み、苦しみ、吐き出したかったのだ。

 

「勇者、僕にはこれしかできないけど、使ってくれないか?」

 

それはガントレットだ。

 

「君が、こんな立派なものを?」

 

「アーティファクトに比べたら全然ダメだけどね」

 

「ありがとう。使わせてもらう」

 

無能と言われるだけあって、今日この日までろくなものが作れなかった彼が、ようやく納得できる物を作る事に成功し、それを勇者が使ってくれることがちょっとだけ嬉しかった。

 

「ところで、いつまで私を勇者と言うんだ?」

 

召喚された当初はトータスの人々が呼び、彼の同郷の仲間もからかい半分でそう呼んでいたが、今はもう名前で呼んでいる。

 

「うーん。なんか今更言い直せないし、それに前の世界じゃ、あんまり接点がなかったし」

 

「…この世界に来て、色々忙しいけど、1番は君の訓練を見た時かな」

 

「本当に弱いからね」

 

自慢して言うな、と勇者はツッコミを入れた。

 

「でも、おかげで最低限の戦いはできるし、ちょっとした技もできたし、期待しててよ」

 

「はいはい」

 

いずれ最強になる勇者と最弱の錬成師は、共に語りあった。

 

「明日はオルクス大迷宮での実戦訓練だ。早く寝てしまおう」

 

「ああ。………勇者」

 

「ん?」

 

「オルクス大迷宮を攻略したら、その時は奢らせてくれ。1人の友として」

 

「……その時に、勇者って堅苦しい言い方をやめてくれるならな」

 

「約束する」

 

 

そうしてオルクス大迷宮へ挑んだ。

 

「ハジメ凄いな」

 

「今まで馬鹿にしてたけど、結構戦えてるし」

 

仲間達の中でも最弱と言われたハジメが善戦している姿に驚き、そして同時にそれが己を鼓舞させる。1番弱い奴に負けてたまるかと。

 

「君に焚き付けられてるな?」

 

「うらやましい?」

 

「からかわないでくれ」

 

そうからかっているがハジメはだいぶ感謝していた。勇者のおかげで今の自分はここにいる。勇者があの時自分に声をかけてくれなければ、きっと自分は今も無能だった。

 

一方で勇者も勇者で感謝していた。彼らが違う世界に来て不安だった時、1番弱いと言う理由で皆を励ましていたことを思い出す。

 

(負けていられないな)

 

勇者は気合を入れて聖剣を振るった。

 

 

「今日は、こんなものかな。騎士団の方々もいるからか、わりと楽だった」

 

初めての遠征で20階層はいい調子といえる。しかし、ここで終わりではない。100階層までの先は長い。

 

「みんな、今日はこれくらいにして戻ろうか」

 

「はやくないか?もう少し探索してもいいだろ?」

 

「そうだよ、せっかくいい調子なんだし、早く強くなって魔人族と戦えるようにならないと」

 

勇者としてはもっと慎重に行動したいが、彼らの言うことも、もっともである。

 

「…わかった、じゃあもうちょっとだけな」

 

その判断を勇者は後悔した。

 

 

(どうして、どうしてこんなことに)

 

聖剣を構え、目の前にいる最恐の魔物の恐怖を無理矢理振り払う。

 

ベヒモス、それが魔物の名だ。かつて最強と呼ばれた冒険者が手も足もでず敗北した存在。探索中、1人の仲間が調子に乗りすぎて罠を起動させてしまい、65階層まで転移してしまった。

 

今の勇者達は未熟。勝てるはずもない。すぐにでも撤退すべきだができない。周りの友達は恐怖で動けず、後方にトラウムソルジャーの群れが進行を妨害しているからだ。騎士団が分かれてトラウムソルジャーとベヒモスをどうにかしているが時間の問題。

 

「うぉぉぉぉぉぉ!」

 

勇者は生き残るべきと騎士団から言われるが、後方のトラウムソルジャーの群れをどうにかするにはベヒモスを足止めしなければならない。強さ的にもできるのは勇者くらいで、他の友人達のフォローをしなくてもならず、膠着状態になる。

 

「動ける人は後方のトラウムソルジャーの方を頼む‼︎こっちは俺が時間を稼ぐ!その隙に突破口を…」

 

「はいそこまで」

 

ガッと肩を掴まれ、勇者はその人物を見る。

 

「ハジメ?何してる、動ける奴は後方のトラウムソルジャーの方にって」

 

「選手交代だよ。あっち多いし、1匹だけの方がやりやすい。ここは僕に任せて」

 

「ふ、ふざけたこと言うな‼︎お前1人で」

 

「いい加減にしろ!」

 

「!」

 

「わかってるんだろ?1人も犠牲者なしでここを突破なんて無理だって」

 

「‼︎」

 

勇者は犠牲者を容認などしたくない。だが出てしまうのも理解していた。だからより多くを助ける手立てを考えていた。

 

「足止めだけならどうにかなる……頼む」

 

この場で出る犠牲者が彼だけになるならそれは戦力的にはいい。だが、気持ち的には良くはない。それでも、決断しなければならない場面だった。

 

そしてハジメの判断は正しい。勇者である彼が他の者達を鼓舞すれば動き出すだろう。そうすればトラウムソルジャーの群れくらいならどうにか突破できる。後は、決断だけ。

 

「任せた………あえて言うぞ、死ぬなよ」

 

「もともと弱いし、死にたくない臆病者なんだ、わかってる」

 

勇者はわかっている。彼がウソを言ってることも、本当は彼は臆病ではなく、勇敢な人物だと。それでも他の人達を助ける為、進む。

 

トラウムソルジャーの群れは、勇者が鼓舞してようやく動き出した者達の活躍もあって突破した。後はハジメだけだ。

 

「おい、あれ見ろ!ハジメの奴、錬成で土をいじってベヒモスを拘束してる‼︎」

 

「あいつ、あんなことできたのか!スゲー!」

 

最弱が最強に挑む姿は、彼らの目に焼き付く。そして、

 

「おい、ハジメお前も早く…」

 

その時は、

 

「ごめん、約束破る」

 

来てしまう。

 

「ハジメ、やっぱりダメだ!行くな‼︎戻ってこい‼︎」

 

「勇者、元気でな」

 

ハジメは錬成で岩の橋の強度を緩める。重量のあるベヒモスが動いた瞬間、橋は崩壊を始め、ハジメとベヒモスは奈落に落ちていく。

 

「道連れだ‼︎最恐の魔物‼︎」

 

それは必要なことではあった。トラウムソルジャーの群れを突破しても、ベヒモスがいてはそう簡単に逃げられない。ハジメは最初からこうするつもりだったのだ。そして、勇者も、そうすることはわかってた。彼らはただ、落ちていく姿を見つめる事しかできなかった。

 

 

 

 

1ヶ月後、勇者は墓地に居た。なんでもない墓の前にいた。そこには『英雄ハジメ、ここに眠る』と書かれている。

 

「と言っても、遺体はないけどな」

 

誰に言うでもなく勇者は呟く。

 

「調子のいい奴で、弱い事を自慢するみたいにして、正直言って苦手だったよ。けど、嫌いではなかった」

 

勇者は花を置き、つらつらと彼の墓に告げる。

 

「泣かないぞ、俺は。それは、お前が認めてくれた強い俺がすべき事じゃないからな」

 

泣きはしない。だが、腕に力が入りすぎて血が出る。

 

「あれから、皆強くなってきたよ。お前に生かされた事を、胸に刻んでな」

 

もちろん全員ではない。あの恐怖で戦えなくなった者もいる。だが、今力をつけてきた者も、そうでない者も、誰もが感謝し、理解している。ハジメという最弱の英雄を。

 

「今度は俺の番だ。そっちに行くまでに英雄伝をいくつも作っていくからな。……またな、親友」

 

流れていく風のなか、一筋の水滴が落ちていった。

 

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ってな感じの物語なんですけどね、いやー売れる売れる!特に子供達に大ヒット!錬成師達の希望の星って言われてますわ――ってお客さん、どうしました」

 

いや、別に

 

枯れ果てたような声で眼帯の白髪の少年は言う。

 

(これ、作った奴、殺す)

 

気持ち悪い物を見て胃もたれを起こしそうな気持ちで彼はそう思った。ちなみに1巻で完結だが、その内容は全て彼に大ダメージを与えた。尚、勇者に視点をつけた続編も考えられているとの事。

 

「へーこんなクサイセリフ言ってたんですねぇ」

 

「ちょっとかわいい」

 

ウサ耳が特徴の兎人族の少女と、金髪の少女はニヤニヤしながら言う。その日、1日中ネタにされたのは、言うまでもない。

 

 

 




前回の話でガハルドが言っていたお伽噺の事が今回のこれです。

本当はもっと長くできたけど書いてる自分がもうお腹いっぱいになっていきやめました

次回は23日か25日に出します
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