ありふれたやり甲斐と生き甲斐を探して   作:戦鬼

25 / 107
初の漢字オンリーじゃないタイトルです
理由は後書きで




呪術廻戦2期、不安になってきた

せめて渋谷事変まではそのまんまに……できないかなぁ〜、死滅回遊からは完全別人として見れるんで
無理かなぁ〜やっぱりぃ


何度でも

「別の世界の地球から来た、呪術師ぃ?」

 

「えぇ。まぁ信じられないのは当然で」

「つまり、七海先生は異世界転生者ってことか!」

 

「…………は?」

 

ハジメの顔に驚きと多少のワクワク感が出ていた。

 

「まぁ、確かに。元の世界でも中型車を素手で移動させたりしてどう考えても普通じゃなかったしな」

 

(あぁ、見てたの南雲君でしたか)

 

視線は感じていたが何事もなかったので七海も忘れかけていた。

 

「こっちに来てステータスもありえない数字だったから何かしら秘密はありそうだと思ったし、俺等とも違う世界から来たんじゃねーかとは思ったが、まさか転生者とは思わなかったぜ。微妙な転生の仕方だけどよ!」

 

少しずつ饒舌になって興奮してきているハジメを隣で見ている七海も、後部座席にいるウィルもぽかーんとしている。シアとユエもいつもと違うハジメの表情に新鮮さと驚きを感じていたが、それが見れたことが嬉しいのか、にっこりと笑っていた。

 

「あの、南雲君」

 

「ん?」

 

「異世界から誰かが来る、もしくは行くというのは君の世界ではよくあることなんですか?」

 

「んなわけあるか!って…あぁそっか、七海先生そういうのは読まないだろうしな」

 

結構衝撃的で荒唐無稽なことを言ったのにあっさりと受け入れられる事に、七海は困惑を隠せない。

 

「というか、君は信じるんですか?こんな荒唐無稽な話を」

 

「なんだ、嘘なのか?」

 

「いや、嘘ではないんですが…そうあっさりと受け入れられると逆に困るというか、困惑するというか…私がおかしいんですかこれ?」

 

「いえ、建人殿。多分感覚はおかしくないと思います。私も驚きと疑念の方が多いですし」

 

黙っていたウィルがツッコミを入れ、七海はそれが普通だろうなと思っていると、ハジメが声を出す。

 

「七海先生がそんなくだらないこというわけないし、そもそも異世界転移してる事も荒唐無稽だろ?」

 

「それは…まぁそうですね」

 

七海はどうにか納得するが、同時に『普通どうにか納得するのは相手の方では』とも思っていた。

 

「んで、先生がマジで呪術師なんだとして、なんで俺含めて誰にも言わなかったんだ?畑山先生にすら言ってないみたいだし」

 

「いくつか理由がありますがその前に、現状このことを知っているのは君達を除けばメルドさんだけです。話さなければいけない状況になったので」

 

「ふーん。で、それで理由ってのは?」

 

そこはあまり興味がないのか素っ気なく言い、理由を聞く。

 

「全部言わなければいけませんか?」

 

「全部だ。先生が別世界から来たのを信じても、信用できる奴かはまだわからないからな」

 

七海はわかってたこととはいえ『面倒だな』と思いつつ、質問に全て答えると言ったのだからそれを実行する。

 

「まずひとつ目、これはメルドさんにも言いましたが、君達の世界でそんな話をすれば変人と思われますし、別世界に来て混乱してる状況で言って余計に混乱させたくもなかったんです」

 

「それはまぁ確かにだが…今日この日まで黙ってた理由にしては弱いな」

 

「2つ目は教会の存在ですね。呪力というこの世界にない力を持っているというだけで異端者認定される危険があるので」

 

初めてイシュタルと話をした時、恍惚とした表情と神が全てという思想を見せた彼が、神聖さとかけ離れた呪力を認めるなど到底ありえない事を、七海に確信させた。

 

「それでも俺等に教えてもよかったんじゃないか?せめて畑山先生とか」

 

「漏れる可能性は少ない方がいいですし、彼女は隠すのがあまり得意ではない。どこかで表情に現れる。特にそれが原因で天之河君に知られたらどうなると思いますか?」

 

「そりゃあ…」

 

ハジメが行き着いた考えを七海に言う前に、七海はその答えを出す。

 

「きっと彼はこう言う。『呪いの力だって⁉︎そんな危ない力を持つ人の言う事なんて信用できない。皆を危険に晒す力だ!』そうなれば私は1発で異端者認定されて皆を守る為の訓練もできなくなる」

 

「…納得だ」

 

まさに光輝が言いそうな事を的確に言ったのを聞き、ハジメは納得する。

 

「んじゃ、次の質問。そもそも先生の言う呪術師って何をしてたんだ?」

 

「それを説明するには、まず私の世界の呪いと呪霊について説明しなければなりませんね」

 

そこから先、さまざまな事を世間話をするかのように七海は自分の世界のことを語る。

 

「日本の変死者、行方不明者の年平均は1万人を越えると言われています。そのほとんど……私のいた地球の日本での原因は人間の肉体から出た負の感情、呪い…それらが集まり形となって生まれる異形の存在、呪霊。君にわかりやすく言うなら、怨霊や昔話に出てくる妖怪などが良いかもしれませんね。その為、普通の人には見えません」

 

呪霊について、呪術師について。

 

「呪いに対抗できるのは同じく呪いのみ。私は呪術高専で呪いとそれに対抗する勉学を通常の授業と共に学びました。卒業後には大抵が呪術師として活動しますが、私は1度一般企業で働き、4年ほど経って呪術師として出戻りました」

 

古今東西、知らないことを知るのはだいたい楽しい。それが別世界の地球人からのこととなると尚更だ。こんな姿になってもオタクに属するハジメには本当に楽しいものだった。特に彼にウケたのはこの話だった。

 

「高専卒業後はサラリーマンやってたって?なんですぐに呪術師にならなかったんだ?」

 

「私は高専で学び、気付いたことは…呪術師はクソだということです!」

 

「えぇぇ」

 

「そして一般企業で働いて気付いた事は、労働はクソだということです!」

 

「あんた今は教師だよな!」

 

とはいえハジメも否定はしない。家族の手伝いで締切が近い日などまさに地獄。他の仕事がどうかは知らないが大抵労働はそんなものだろうと考えていた。だがそれを教師である七海がいうのは間違ってないかと思ってのツッコミである。

 

「まさか教師がそんな事を生徒の前で言えるわけないでしょう。しかし、今は状況が違いますし、君の質問には全て答えると言いましたから。まぁ、そんなわけで、同じクソならより自分の適正に合った方を選んだだけです」

 

(くれぇ)

 

(暗い)

 

(暗いですぅ)

 

(暗いのじゃ…)

 

(労働って…)

 

先程、呪術師はある程度イカレていなければ務まらない仕事だと聞いていたハジメ達は、それを理解する。

 

「なるほど、イカレてるな。命懸けの仕事ってか、本当に死ぬような仕事をそんな理由でできるくらいなんだからな」

 

「それを言うなら君や他の皆もそうですよ。一応言っておきますがその身体になる前からです」

 

「ハァ⁉︎」

 

心外だとハジメは思う。確かに今は色々と規格外になって考え方も変わった。だがそうなる前からイカレていると言われても、ハジメはそんな事ないと言える。

 

「いやイカレてますよ。自分が弱者だとわかっているのに、帰るという理由があったとしても、戦う選択肢を選ぶ。死ぬ可能性があると理解した上でだ。あの時理解して戦うのを放棄した人もいたのにですよ」

 

「う、うぐ」

 

だがそれを七海はバッサリと否定する。

 

「ちなみに、皆さんの訓練をする上で、訓練から戦闘に移っても良いと私が認めた人はあの時点で例外を除いて7人ですが、その中で最もイカレていたのはその例外の天之河君です」

 

「あ、それはなんとなくわかる」

 

すぐに納得できる答えが七海から出るたびに、ハジメは『この人はやっぱり人をよく見ているな』と思っていた。

 

「他にも聞きたい事はありますか?」

 

「…正直あるがいまはあとひとつくらいかな」

 

「なら、それを答えれば同行を許可していただけるのですか?」

 

「いや、それとこれとは話が違う。なにせあんたは俺の邪魔をしたんだ」

 

「邪魔?」

 

「なんであの時、俺が清水にトドメを刺すのを止めた」

 

敵は殺す。その意志の元で行動する今のハジメにとって自身の行為を邪魔する存在も敵だ。故に、七海がこれからついてくるにあたって前回のように邪魔をしてくるなら、敵になる可能性もあると考えた。しかし七海は「そんな事ですか」と呟きため息を出す。

 

「その答えはあの時言った筈ですよ」

 

「………あの言葉か」

 

それは、七海がハジメを止めた時に言われた事。

 

「それは、余計なお世話ですよ。だったな」

 

「ええ。その通りです。それはおそらく後ろにいる方も数人は理解しているのでは?」

 

七海の言葉にウィルが反応する。ユエは小さく「まぁ」と呟くあたりわかっているだろう。シアとティオは違和感を感じていたがその理由まではわからない。

 

「あの時、清水君は既に致命傷を負って、どうやっても死ぬしかない状況でした。それを、敵だからという理由で殺すのは不自然だ。となれば、理由は畑山先生でしょう?」

 

「…ちっ!」

 

図星の為舌打ちをするが、ユエ以外はよくわかってないのか頭の上に「?」が出ていた。

 

「魔人族の狙いが畑山先生で、その為に清水君を利用していたのだったら、あの状況は魔人族にとって千載一遇のチャンス。清水君ごと殺しても魔人族側に痛手はないんですから。…清水君の死に彼女には責任はない。だが、畑山先生がもしその事に気付けば、自分のせいで彼が死んだと思えば、彼女の矜持が崩れて、心が壊れてしまうかもしれないと思った。だからそうならないように気を逸らすのが目的だった」

 

「そこまでわかってんならなんで止めた。もし畑山先生が…」

 

「それが、余計なお世話なんですよ」

 

七海は知っている。彼女がどういう人物かを。

 

「むしろ自分の生徒が自分のせいでそのような選択をしてしまったのだと、自問自答してしまう可能性もある。そんな事をしても結局彼女は気付きます。きっと1度は心が折れるでしょう」

 

「だから、なんで⁉︎」

 

「それでも、彼女は立ち上がりますよ。何度でも」

 

静かに、しかし強い声で七海は言う。

 

「大人を舐めすぎですよ南雲君。確かに、彼女は見た目が他の生徒より幼く見えますし、考えも甘い部分が多い。しかし理想だけではなくちゃんと現実も見れる人だ。そして、彼女も私と同じ…… いくつもの小さな絶望を積み重ね、酸いも甘いも乗り越えてきた、1人の大人です」

 

「「「「「…………」」」」」

 

「もう1度いいますよ。たとえ君がああしなくても彼女は立ち上がる。何度でもね」

 

七海は他者に対して過小評価も過大評価もしない。それをハジメはわかっている。だからこそ、その言葉に深みを感じた。

 

「私も、その意見に賛成」

 

「ユエ?」

 

「たとえあの時ハジメが殺しても愛子は気付く。けど大丈夫…ハジメの心に残る言葉を贈れるなら、それは自身が強い心を持ってないとできない。だから、どうなってもハジメが望む結果にはならない」

 

またも甘い雰囲気になり、シアは羨ましそうな顔をし、ウィルは惚気を見て赤くなり、ティオは「こういうのも悪くないのぅ」と身体をくねらせる。

 

「甘い雰囲気になるなら、この銃を下ろしてくれてもいいんじゃないですか?」

 

そしてそんな状況でも、ハジメはしっかりと銃を向けておりいつでも発砲できる状態だ。

 

「……話はわかったが、それでもまだ一緒に行くのはなぁ」

 

「私があなたの邪魔をするのを恐れているのですか?なら、こうしましょう。私はあなた方の旅に同行しますが、反対意見を言っても最終的な行動は南雲君の判断に必ず寄ると誓いましょう」

 

「口約束じゃ信じられないな」

 

「もちろんただの約束ではないです、これは〝縛り〟です」

 

「縛り?」

 

「ししししし、縛りぃ!何という甘美なひ、び、きなのじゃぁぁ」

 

「………」←こめかみに青筋が出ている

 

(やばい、七海先生がキレかけてる⁉︎)

 

ハジメは『このままではまずい」と思い話を戻すことにした。

 

「縛りとは、呪術における重要な因子の1つであり誓約です。なんらかのリスクや制限を自身に掛けることで、引き換えに術式の性能の底上げや、呪力の増加など、メリットを得ます。既に君にも見せていますよ」

 

七海の言葉に、いつだとハジメは考えると、2つほど可能性が挙がった。

 

「自分の能力、手の内を明かすのと……時間外労働って言ってたやつか?」

 

「そうです。自身の手の内を明かす、即ち術式の開示は術師にとって最もポピュラーな縛りです。もうひとつの方は時間による縛り。私は呪力を普段から50%〜60%ほど抑えています。それを一定時間行い続けて、その一定時間本気を出さないという縛りによって、1日の行動時間が8時間過ぎると抑えていた分だけ呪力量と出力がしばらくの間上がります。ちなみに、この世界に来た影響なのか、私の呪力量と出力が上がっており、以前は20%しか落としていませんでした」

 

「なるほどね。ちなみに約束を破るとどうなるんだ?」

 

「個人で結んだ縛りは、破っても自身の能力が低下する程度ですが、他者間で結ぶ場合はそうはいきません。命に関わるだけでなく、自分以外の周囲にすら影響が出る可能性がある。君の場合ユエさん達にね」

 

その為これは相手が裏切らないように行動を縛るために用いられることが多いと、七海は付け加える。

 

「俺がこの場で七海先生の命を人質に、厄介な縛りを課す事もできるし、逆もまた然りじゃないか?」

 

七海が何かしらの人質をとる事はないだろうが、その可能性も考え質問する。

 

「それはできません。これは性質上、互いが縛りだと理解して結ぶ必要があり、しかも利害の一致が必要となるので、人質などで脅して無理矢理他者との縛りを結ばせるという事はできません。この世界に来てイシュタルさんにそれをしなかったのは、そもそも私が呪術師である事を教えられないのもあって、できなかったからです」

 

逆にそれが、今回七海がこうして行動に移ることができた理由でもある。

 

「さ、どうしますか?」

 

「……条件の追加だ。俺とシアはどういうわけか呪力が見える。なら、呪力が使える可能性もあるって事だよな?」

 

「正直わかりません。呪霊や呪力が見えても、呪力の使えない人の方が多い。おそらく清水君はそのタイプか、もしくは彼の脳が私の世界の一般人に近い脳だったのでしょう。脳と呪力の関係は未だわかってませんが、一般人でも死に際や命の危機、帳を下ろした時など、特殊な状況なら見えますから」

 

「なら、もし使えるならその扱いを教える、これが2つ目だ。そのかわり、他の奴らも元の世界に帰すと約束する。ただし、自分から帰りたいって言う奴だけな」

 

これからの事を考えると力は多い方が良いという考えだが、七海的にも賛成だった。もうひとつの可能性……呪力と魔力を両方使った身体強化の可能性も考えて許可した。

 

「かまいません。天之河君が駄々をこねた場合は無理矢理帰すので。それと、もうひとつ条件を出して良いですか?」

 

「…なんだよ?」

 

七海の出す条件を聞いたが、ハジメにとって都合の良い部分が多かったので了承し、無事縛りを結び、ようやく銃を下ろして出発をした。

 

そして、条件とは別に七海はあるお願いをした。

 

「つけ心地どう?あと、本当になんの能力もないただのグラサンだけどいいのか?」

 

「かまいません。それに魔力のない私ではアーティファクトなんて使えないですからね」

 

七海がハジメに頼んで錬成してもらったそれは、メガネのつるの部分がないサングラス。以前七海がつけていたものと同じデザインだった。

 

 

 

その後もしばらく走行する途中でもハジメは質問してくる。

 

「じゃあさ、先生が思う1番強い術師って誰?」

 

それはハジメが「先生より強い術師っている?」と聞いて、「いる」と七海がハッキリと即座に言ったことで興味が出て聞いた質問だ。

 

「五条……五条悟さんですね。私の高専時代の先輩の1人で、4人しかいない私の1級より上の等級、特級術師の1人でもあります」

 

「そいつと俺、いま戦ったらどうなる?」

 

「そうですね……彼の切り札はそうそう使うものではないですし、君は私より圧倒的に強く充分特級に値する実力です。それも踏まえるとまぁ、3分戦えればいいなと言ったところでしょうね」

 

「ふーんそんなもんか」

 

しばらく無言になって3分ほど経ったくらいだろうか、七海が切りだす。

 

「南雲君」

 

「んー?」

 

「勘違いしてるようなので一応言っておきますが、君が3分で負けると言っています」

 

「ハァァ⁉︎」

 

「しかしそんな調子では過大評価かもしれないですね。1分で負けると思います。それも本気を出すまでもなく」

 

「なんでだよ⁉︎」

 

「なんでもなにも、彼、五条さんが真の最強だからですよ。無下限呪術と呼ばれ、収束する《無限》を現実にする術式です。あの人の周りには術式によって現実化させた《無限》があり、近づく物は無限に遅くなっていき、距離は決して0にならない。すなわち攻撃は一切当たらない」

 

「けど、それなら持久戦に持ち込めばいいんじゃない?魔力と呪力の関係はわからないけど、そんな力をずっと維持しておくなんてできるはずがない」

 

ユエは魔法の観点で見るがその考えは間違ってない。………本来なら

 

「それに関しても、彼は《六眼》と呼ばれる特殊な眼を持っており、これによって緻密な呪力操作を可能となり、呪力消費のロスがほぼ無い。さらにこの術は長時間使うと脳にダメージがありますが、反転術式と呼ばれるこの世界でいう回復魔法を常に行っているので、それも問題になりません」

 

「なんだその規格外(チート)

 

つまり常時最強の防御を展開して常時回復するが一切MPを消費しない。常にHPもMPもマックスということ。

 

「遠距離から攻撃しても術式の応用で瞬間移動もできる。彼と相手との距離は常に0にして無限なんです。当然攻撃力は今の私以上です」

 

「なるほど、勝てるわけないな」

 

そこでようやくハジメは認めた。

 

「建人殿の世界は、そんな恐ろしい存在が多いのですか?」

 

「一部の人間ですよ」

 

「でもそれレベルがまだ3人もいるんですよね、話を聞く限り」

 

「その五条とやらは、たとえ妾達全員でかかってもどうにもならなさそうじゃしな」

 

「あとそんなのが先輩っていうのが同情するしかない」

 

「ついでに、性格は最悪です」

 

「「「「「うわぁ」」」」」

 

今彼らは本気で七海に同情していた。

 

そんなこんなで進んでいたが、七海の話を聞いていたのもあって今日はフューレンに着くことができず、野宿する事になった。錬成で機材一式が揃っていたので、とあるひと悶着があったものの充実した野宿だった。

 

そして、食事のあと早速呪力について教えることとなった。

 

「まず、最初に言います。知っているでしょうが、呪力とは読んで字の通り、呪いの力、負の感情の力です。それを扱うということは、呪術師になると同じです。呪術師には、悔いのない死はないと言われるほどです。それを扱い続けて潰れる人も多い。それでもやりますか?」

 

と七海は問うが、ハジメの方は問題ないと思っている。ある程度のイカレ具合が必要でもあるがそれは合格点だからだ。故に、心配なのはシアだが

 

「問題なしです!というか、これから先のこと考えて色々と教わりたいです!」

 

そう言うシアを七海は少し観察し、何か思ったのか小さく頷いて承諾した。今のハジメと行動するという意味をシアは理解していると判断したからだ。

 

「余計な心配でしたね。……では、始めましょう。まずは呪力を捻出するところから。先程も言いましたが呪力は負の感情から生まれるエネルギー…怒りや恐怖などですね」

 

「つまり、使う時は常に泣いてたり、怒ってたりしないといけないってことですね、なるほどぉ(だからいつも怖い顔なんですねぇ)」

 

とシアが七海を見て言う。

 

「失礼な事を考えてそうですが、違います」

 

と七海が言うと見学していたユエとウィルも『え、そうなの⁉︎』という顔になり、ティオに至っては常にハジメがあの眼差しになる良いチャンスだと思っていたのでがっくしとする。

 

七海はその光景にちょっとイラァとなるが、無視して続ける。

 

「全ての術師は僅かな感情の火種で呪力を捻出する訓練をしています。感情が大きく振れた時に呪力を無駄遣いしないように」

 

「魔力も確かに感情によって出力が変化する……本当に似てるな」

 

「エネルギーとしてはね。とりあえずその訓練は後にしてまず、ちゃんと呪力を捻出できるかどうかです。自身がもっとも感じた怒り、恐怖、それを思い出してそれを拳に乗せてみてください」

 

「それなら簡単だな。あの奈落に落ちた時に、それは充分に感じた。それを込めるだけだろう」

 

さっそくハジメはその時の絶望感、怒り、悲しみ、恐怖を思い返してグッと拳に力を込める。

 

「ってまったく出ないんだけど」

 

「まぁ、そう簡単に出るなら苦労は」

「あ、ちょっと待ってくれ、出たぜ!」

 

苦労はしないと七海が告げる前に、ハジメの言う通り水色のエネルギー(・・・・・・・・)、呪力が拳に現れる。

 

「えーハジメさんすごいですぅ。私全然出ないのにぃ」

 

「さすがハジメ…私には見えないけど」

 

「僕にも見えません」

 

「妾もじゃ。見えんとなるとどう感想を送ればいいかもわからんのぉ」

 

「へへ。どうだ七海先生……先生?」

 

その呪力を目の当たりにした七海は、サングラス越しに目を見開いて、隠せないほどの驚きを見せる。

 

「ありえない」

 

「え?」

 

「ありえないんですよ。呪力のじゅの字も知らない人が、いきなり、しかもそれほど安定した呪力を捻出するなんてありえないんです。いったいなにをしたんですか?」

 

「って言われてもなぁ…なんかできたとしか」

 

七海は考える。これは七海から見ても、呪術師的にもおかしな現象だ。

 

(変化の理由は、必ず何かしらのきっかけがある。虎杖君が呪物を取り込んで呪力を扱えるように何かしらの。となると、1番の彼の変化は)

 

ハジメの変化など、火を見るよりも明らか…

 

「南雲君、正直私は君がその身体になった事に対してそこまで興味はなかったのですが、君がいきなり呪力を安定して使える事の理由として思いつくのはそれくらいです。教えてもらっていいですか?」

 

「別にいいけどよ」

 

ハジメは奈落に落ちてからの経緯を教えた。そして生きる為に、出来ることを全てやった事、その為に自身の術についてさらに深く考察した事。腕が完全にちぎれなかったのは七海が持たせた回復薬が1本余り、そのおかげで錬成をして魔物から逃れられた事。深層の最深部の魔物に当時つけていた装備ごと腕を焼かれた事、その傷を隠し、腕を理想的に動かす為に今このガントレットをつけている事、そして。

 

「魔物の肉を食べた、ですって」

 

「その結果、魔物が持ってる技能をいくつも手に入れて、神代魔法の1つ、生成魔法で物質に固有魔法を乗せることができるんだ」

 

「食べたら身体が崩壊する事は知ってたでしょう?色々本を読んでいたんですから」

 

「そこはさっきも言っただろ?神水があったからだ。それに」

 

「わかってますよ。背に腹など変えれませんからね。それと、君が呪力を使える理由もわかりました」

 

全ての説明を聞き、そこから導かれた七海の仮説。それは。

 

「魔物を食べて肉体が変貌したのと同時に、脳にもある程度の変化があったのでしょう。私の世界でも、脳に影響があって呪力を使えるようになった事例はありますからね」

 

七海は改造人間の事を思い出す。

 

「使っていて、違和感は?身体は問題ないですか?」

 

「あ、あぁ。問題ないけどどうした?」

 

七海は改造人間と同じ事例なのだとしたら、身体に悪い変化があるかと考えたが、杞憂のようだ。あるいはそれも神水とやらで克服したのかもしれない。

 

「なら、南雲君も修行方法は変えましょう。……君の実力を見ますので、とりあえず呪力込みで私と戦ってください」

 

新たな力の使い方を教わる為、ハジメはよっしゃと気合いを入れた。




ちなみに
今回のタイトルに関してですが、呪術廻戦でもひらがなもしくはカタカナがつく回はなんか自分の中で全部ではないですが、特別な回が多いという印象があります
例、「もしも」「バイバイ」「裁き」
ここからこの小説の第二章と自分の中で思ってるので、その意味としてもでこうしましたが……話の中で七海が言ったセリフがなんかあの歌の歌詞っぽくなったと後で気付いた

ちなみに2
ウィルの七海の呼び方がパーンズ達と同じになっている=そういう意味ですが、時折前と戻ったり違ったりしてたらそれは自分のミスですのでどんどんお願いします

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。