ありふれたやり甲斐と生き甲斐を探して   作:戦鬼

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年末が近づいてきましたねぇ。というわけでさぁ、清掃です。
汚物は消毒だー‼︎



あと1年(多分)かぁ、寂しくなるなぁ。


商業都市・清

商業都市の賑わいは常に聞こえてくる。この日のハジメの予定はシアとのデートだ。ウルで愛子を守ろうとしてくれたことが理由だ。

 

そして別行動をしているティオとユエは買い出しなのだが、そこには七海もいた。

 

「意外だった」

 

「意外、とは?」

 

「あなたはシアとハジメのデートを反対するかと思ってた」

 

それに対し「心外ですね」と七海は言う。

 

「彼の恋愛観について特に私から言うことはないです。お互いに納得しているなら尚更に。もちろん、今も不純異性交遊はやめてほしいですが、彼の方針には逆らえませんから」

 

七海は縛りをこんな形で使われることは少々複雑だが、自分で決めたことだと納得する。

 

「それに私も驚きました」

 

「?」

 

「ユエがシアとご主人様のデートを認めたことじゃろう?」

 

ティオにとっても七海にとっても、3人の関係には興味と疑問があった。が、それではなかった。

 

「違います。いや、それもですが……私と同行して買い出しをしていることです」

 

「誘ったのはそっち」

 

「それを拒否しないことがですよ」

 

現在のハジメの一行の中で七海はさまざまな意味で異色だ。さらにこれまでの関わりの中で、正直ユエには特に嫌われていると七海は考えていた。シアに呪術師としての心構えを踏まえた訓練の時にユエが見せた表情はまさにそれだ。

 

「話したいことがあるって誘ってそんな調子?」

 

「嫌われている自覚くらいはありますよ、私にだって」

 

「正直、嫌いかと言われたら嫌いに割合が多い。けど、シアのことも、今までのことも、全部意味があってやってることくらいはわかるし、否定できない部分の方が多い。それに、真剣に話したい事があるのなら別」

 

より正確に言うなら、七海が色々とわきまえている大人でもあるからだ。これまでの旅でユエとシアの美貌目当てで近寄ってくる男はガキもいたが、大人もいた。しかし短い付き合いとはいえ、七海がそんな調子で自分に言い寄る姿などありえないなと思えるくらいには、人を見る目はあるつもりだ。

 

「とりあえず、落ち着ける場所まで移動しましょう。買い出しも終わったことですし」

 

そうして3人は近場のオープンテラスのあるカフェに寄り、注文をしてから席に着いた。

 

「それで、何の用?」

 

聞く気はあるが少々棘がある。そんなユエに対して――

 

「まずは改めて………南雲君のことを。彼の側にいてくださり、ありがとうございます」

 

七海は深々と頭を下げてそう言った。

 

「………そ、そんなことを言うためにわざわざ?」

 

「ずいぶんとまぁ、ウィルと同じかそれ以上に律儀じゃの」

 

だがこのような内容なら別にわざわざ呼び出す必要はなく、理由としては不充分だ。他にも理由があるとは考えるが、少なくともこれは今ここでわざわざ言うことなのかというのがユエの考えだ。

 

「…あの日、私の犯した判断ミスが、彼を奈落へと追いやった。結果として生き残り、あなたと会えたとはいえ、その過程で死んでいてもおかしくなく、もし生き残っても人として壊れていてもおかしくなかった。私は彼に何もしてあげられなかった。教師としての職務を放棄したと言っていい」

 

「…………」

 

「加えて、今の南雲君に寄り添ってくれた。だから彼は今も人間性を保っている」

 

ハジメの話を聞いて、七海はハジメが壊れていない要因に間違いなくユエが関わっていると理解していた。

 

「このようなこと、彼の教師である私が言うのは間違っていて、言える立場でないことも理解してます。それでも、これからも、彼に付き添ってください。彼にはユエさん、あなたが必要だ。少なくとも私よりも」

 

ユエにとって七海はハジメを迷わせる警戒すべき存在だった。だが、こうして生真面目と言えるほどの対応を彼が見せたことに好感を持った。

 

「言われなくても、ハジメは私の特別で、私はハジメの特別。ずっとそれは変わらない」

 

そして、冷淡で冷酷な人間かと思っていたが、ウィルの件もそうだが、シアの時も呪術師としての心構えの為にああしたのであって、実際はこうしてハジメのことを心配し、修行も厳しいがそれにどこか優しさも見えていた。だから、七海と会う前にハジメから聞いていた話もわかる。

 

「けど、あなたがハジメに不必要ということはない。ハジメは言ってた。『今の俺があるのは、俺を自分なりに鍛えてくれた人のおかげだ』って。それが、七海なのはもうわかってる」

 

「……どのような評価をされているかはともかくとして、彼が感謝すべきなのは私ではないですよ」

 

その言葉にユエもティオもやれやれといった表情になる。

 

「…七海、本当におぬしもウィルと同じく…いや、それ以上かもしれぬほどの生真面目じゃの」

 

「ん。もう少し自由でも良いと思う」

 

「性分ですからね。それと、これは警告……というより気に留めてほしいことです」

 

おそらく本題であろうことを七海が語りだした。

 

「彼は人間性を完全に捨てることはなく、徐々に失った物、捨てた物を取り戻していくと私は判断していますが、その過程と理由にはユエさんという存在があって成り立っている。もし、なんらかの原因であなたがいなくなれば、今度こそ彼は壊れてしまう」

 

「…ハジメはそんなに弱くはない」

 

「強い弱いの問題ではないんです。そのくらい今の彼は丈夫に見えて不安定なんです」

 

良くも悪くも様々なきっかけが今のハジメを形成しているが、肉体と精神は繋がっている。見た目が変わるだけの行動をした、考えが変わるだけの行動をしてきた。それらは南雲ハジメという人間性を捨て去るには充分すぎる理由だ。ただ一つ、ユエとの出会いと、それによるこれまでを除いて。

 

「あなたが、ハジメとの関わりが多いのはわかってる。そして今までの経験、呪術師として、教師として見て言っているのもわかってる。それでも、私はハジメを信じてるし、何より私も死ぬ気は全くない」

 

「それでも言わせてください。私が言うのもなんですが、どうか死なないでください」

 

自分以上の強者に言うには間違っているが、それでも心配をしている七海にユエはついに吹きだす。

 

「ほんと、七海は生真面目」

 

これからのことなどわからない。だが少なくとも、ユエの中で、七海は仲間と認めていいかなと思える人物となっていた。

 

 

 

頼んだ紅茶に似た茶が来た。その頃には話題も変わり、3人はユエとハジメのデートについて話していた。

 

「ユエさんは独占欲が強い方だと私は思っていました。君達の関係性はまだよくわかっていませんが、今回の件は、私よりあなたの方が反対すると思ってましたよ」

 

「うむ。妾の方は少し違うがおおまかなところは同じじゃな。今頃色々と進展している可能性もある」

 

ティオは面白そうに言うが七海の方は純粋に疑問だった。

 

「もしそうなら、嬉しい」

 

そしてその質問に対するユエの答えにも疑問が湧く。

 

「惚れた男が他の女と親密になるというのにか?」

 

「シアだから」

 

ティオが首を傾げるのも無理ないだろうと七海は考えていた。だがユエも最初の頃であれば拒否していただろうと語る。

 

「最初はハジメにベタベタするし、いろいろと下心も透けて見えて煩わしかった。でもあの子を見ていて分かった」

 

「…あの真っ直ぐな性格ですか?」

 

七海の問いに、コクリとユエは頷く。

 

「どこまでも純粋で、一生懸命で、常に全力。良くも悪くも真っ直ぐ。それに絆されたのが半分」

 

「ふむ、では残りの半分はなんじゃ?」

 

質問したにもかかわらず至って真顔な七海と違い、興味津々にティオは聞く。

 

「シアは、私のことも好き。ハジメと同じくらい」

 

「…よくわからないですね。南雲君の事が好きなのと、ユエさんの事を好き。言葉にすれば同じですが意味はまったく違います」

 

異性としての好きと、親友や妹分としての好きは全然違う。

 

「意味は違っても想いの大きさは同じ……可愛いでしょ?」

 

「なるほどの、あの子にはご主人様もユエもどちらも必要ということなんじゃな……混じりけのない好意を邪険に出来る者は少ない。あの子の人徳というものかの」

 

「混じりけのない好意、どこまでも真っ直ぐで、純粋で全力…ですか」

 

「七海?」

 

「いえ、なんでもないですよ。昔、彼女と同じように、真っ直ぐで全力な明るい人を見ただけですよ」

 

七海はある程度自分のことを話しているが、それは呪術師として生きてきた彼の末端の部分に過ぎない。それはユエもティオもわかっている。だが人の思い出や記憶に土足で踏み入るようなマネをするつもりはないし、なにより興味はない。所詮は別世界の話だからだ。それも踏まえてティオは話を戻す。

 

「ふむ。じゃが、ご主人様の方はどうじゃ?そこまであの子の魅力がわかっているなら、心を奪われるとは思わんのか?」

 

「私から見ても、彼女には良くも悪くも人を惹きつけるだけの魅力がある。既にこうしている間に奪われている可能性すらありますよ。そもそも、彼になぜ他の女性を隣に立つことを許すかがわかりま…」

 

七海ですらその先を言えなくなるほどの妖艶な笑みを見せて、ユエは答える。

 

「それこそ、最初に七海が心配したことに対する心配はいらないっていう理由。ハジメには『大切』を増やして欲しいと思う。大切があればあるほど、万が一にも七海のいう壊れることがなくなるから」

 

無論誰でも良いわけではない。ユエが認め、ハジメ自身も認めることができる相手のみだ。

 

「けど、《特別》は私だけ。それを奪えるなら、やってみるといい。何時でも何処でも相手になる」

 

その視線は、ティオにも向けられる。『できるはずもないけど』と言葉にしなくともわかるオーラ。絶対の自信を感じる。

 

「喧嘩を売る気はない。妾は、ご主人様に罵ってもらえればそれでいいのじゃ」

 

呆れた声で「変態」と呟くユエだがティオは快活に笑う。一方七海は何か考え、一瞬悩むような表情をした後こう聞いた。

 

「その《大切》は、君が認められる相手ならいいんですか?」

 

「?ハジメの意思も重要」

 

「それはわかってます。第一の条件として、あなたの認める相手である事ですね?」

 

なおも言う七海にユエは少々驚きつつコクリと頷く。

 

「なら、そこに私の生徒の1人を加えてもらうことはできますか?」

 

「!…………その子は、ハジメの何?」

 

急にユエの言葉が棘のある物となる。

 

「クラスメイトです。今は………ただ、見てわかるほど、南雲君に好意を持っている。今も、彼がいると信じて迷宮攻略をしているでしょう」

 

正直ハジメがユエと付き合うことに関して七海は言うことはないが、香織の今の行動原理も理解している。基本的に他人の恋愛に立ち入るつもりはないが、このままではあまりにも彼女が不憫でならなかったのだ。

 

「同情?」

 

「…まったくないと言えば嘘になりますね。手ほどきをして育てた者として、その理由を知るものとしての、単なる感情論です」

 

ユエはまじまじと七海を見る。サングラス越しにも、七海が真剣に言っているのはわかる。

 

「……………そいつ次第」

 

だから「チャンスくらいはあげる」と言う。

 

「けど、そいつは今のハジメも、そうなった経緯も知らない。今と前のハジメを比べて、どう思うかわからない。そもそも私達についてこれる?」

 

聞く限りでは正直言って足手纏いだ。それに対して七海は……

 

 

 

 

「もう1回言うけどそいつ次第」

 

「わかってます」

 

「話はまとまったかの?」

 

ティオが指を向けて言うとそこには皿を持った店員がいた。ユエの圧と七海の真剣な表情を見て、声がかけづらかったらしく怯んでいた。

 

「すいません、仕事を止めてしまって」

 

「い、いえいえ。こちら、ご注文の品です」

 

七海の謝罪に店員は頭を軽く下げつつ、それをテーブルに置いた。

 

「こちら、生ハムとチーズ、水切りしたレタスを表面が少し硬めのパンで挟んでます」

 

「………………どうも」

 

その表情はまったく変わってないように見える。だが2人は以前似た顔を見たことがある。

 

「前にカレーパンを食べてた時もそうだけど、七海はパンが好きなの?」

 

「それなりにですよ。ただ、ここのパンは地球で言うカスクートというパンに似ていると思い頼んだのですが、正解でしたね」

 

(それなり、か)

(それなり、のぅ)

 

もうだいたいわかる。それなりではないくらい好きだろう。そして間違いなく今嬉しそうだと2人は感じていた。

 

「では、さっそく」

 

手を伸ばした瞬間、ドガァァン‼︎と隣の建物の壁が爆散し、ガタイのいい男が数人ほど瓦礫と共に吹っ飛んできた。

 

「お、やっぱり3人の気配だったか」

 

「あれ?ユエさんとティオさんにそれに七海さんも、どうしてこんな所に?」

 

壁の大穴からはデート中のはずのハジメとシアが武器を持って出てきた。

 

「それはこっちのセリフ……デートにしては過激す…ハッ‼︎」

 

ユエは気付く。そしてティオも気付き、そちらを見る。既に瓦礫の一部となったテーブルとそこに乗せられた物達の無惨な光景。手を伸ばしたまま動かない七海だったが、スッと静かに立ち上がって2人に声をかけた。

 

「………………………南雲君、シアさん」

 

「ん、なんだよ七海せん…せいぃ⁉︎」

 

「ヒィぃぃ⁉︎」

 

いつも通りの表情だ。だが、なぜかハジメとシアはそれに恐怖を感じる。

 

「この旅の先々で問題が起こることは想定してますが、率先して問題をこう何度も起こされるのは流石にどうかと思いますね」

 

「え、いや、別に起こしたくて起こしてるわけじゃ」

「ハジメ、シア、謝って」

 

「ユエさん⁉︎」

 

必死な表情でユエは言う。ティオも「うむうむ」と頷いている。

 

「謝った方がいい。これは流石に擁護できない」

 

「いやでもな」

 

まだハジメが何か言おうとするものの、ユエは圧をかけて再度言う。

 

「謝って」

 

ハジメとシアにはわからないが、ここまで圧をかけられながら言われたら従うしかない。

 

「「…………すいませんでした」」

 

「………別に怒ってませんよ」

 

((((絶ッッッッッッッッ対、嘘だ〔なのじゃ〕‼︎))))

 

「それで、いったいどうしたんですか?シアさんや君にちょっかい出すくらいじゃ、ここまではしないでしょ?」

 

と七海が聞いた所でハジメは我に返り説明を始める。

 

 

ハジメが言うにはデート中、この町の地下に子供の気配を感じて下水道へ向かったところ、そこには海人族の少女が流されていたそうだ。海人族は亜人族の中では唯一国からの保護を受けている種族。その特性を活かして、水産業を支えるために海上の町エリセンに住む者たちだ。故に彼らを奴隷などにすることは禁じられている。

 

もっとも、それでも差別はある。今回の原因も元を辿るとそこに行き着く。公的には禁止されているが、非公式となると話は別だ。

 

「それで、その海人族の…ミュウさんでしたか?海人族の子供が下水道にいたのなら、間違いなく」

 

「ああ、誘拐されてきて、オークションに出すつもりなんだろう。当然、裏のな」

 

その後ミュウの身体を綺麗にし、食事をして元気を取り戻したのを見て、地球でいう警察組織、保安署に預けた。だいぶ駄々をこねられたそうだが。

 

シアとしてはこれから先に西の海に向かうので、せめてミュウだけでも連れて行きたかったらしい。だが、子供を共に危険の伴う旅に同行させることはできないことと、誘拐されている海人族を連れていてはこちらも誘拐犯になるという理由で却下された。

 

「で、保安署に届けたんだが、どうやらミュウを拐ったやつらが見てたらしくてな。人質にしてシアも連れて来いって言われた」

 

「なるほど」

 

七海は誘拐犯の連中の狙いが読めた。ミュウを人質にさらに奴隷としてレアに扱われている兎人族のシアも手に入れる魂胆だろう。

 

(おそらく、以前の彼なら放っておいたかもしれない。…畑山先生の教えが行き届いているようですね)

 

寂しい生き方をしない。それがハジメに大きな影響を与えていた。

 

「で、指摘された場所に行ってみたんだが、ミュウがいない代わりに武装したチンピラがうじゃうじゃいた」

 

「まぁ、聞くだけで罠というか、誘っているのが丸わかりですからね」

 

どうもハジメだけ殺してシアを奪う気だったらしい。当然返り討ちに遭い、生き残っていた者に聞くもミュウの居場所は知らず、他のアジトに行って聞き出しては拷問するを繰り返していたらしい。おまけにユエとティオにも誘拐計画があったそうだ。当然だが七海は殺すつもりだったそうだ。というより…

 

「七海先生が俺らのボディーガードと思ってたらしく、ガラの悪そうないかにもな冒険者も雇ってやがったんで、そっちも適当に処理しといた」

 

「お互い、安く見られたものですね」

 

「………殺す事にはやっぱり何も言わないんだな」

 

「今回の相手は殺されても文句のない自業自得です。何より大人は責任を取るべき存在だと私は思ってます。それに、私が人を1度も殺していないと思いますか?」

 

呪術師のことは、ある程度とはいえ聞いているハジメ達はその可能性は0と確信している。

 

「それよりも、この都市には相当大きな闇組織があるようですね。来た時からあるとは思ってましたが」

 

「どの世界でもおんなじだなそこは……だから、3人にも手伝って欲しい」

 

3人とも即座に了承する。

 

「二手に分かれるなら、ミュウさんの顔を知っているシアさんと南雲君で分けるべきですね」

 

そうしてハジメとユエ、シアとティオと七海に分けて捜索と組織潰しにかかる。とりあえず1つ目に着き、シアが門番を吹っ飛ばして侵入したのだが…

 

「!これは」

 

「酷いものじゃ」

 

「………………」

 

異臭がした時点で気づいた。鞭打たれ、汚され、瀕死の子供、息絶えた子供、嗚咽すら忘れた絶望の表情を見せる子供。

 

「………」

 

「む、七海?」

 

「七海さん?」

 

このような光景はこの世界では普通なのかもしれない。この光景は奴隷制度があるとわかった時点で考えていたことのひとつに過ぎないし、これより酷い光景すら、元の世界で七海は知っているので別段取り乱しもしない。だが。

 

(それでも、この光景を)

 

不条理な絶望を、それを幼い子供に与える存在を……

 

「ふざけやがって」

 

「「⁉︎」」

 

七海が言ったとは思えない呟きを聞き、2人は驚いていると

 

「おい、おまえらだな‼︎例の襲撃者の一味は‼︎」

 

「ここが何処だかわかってんのか⁉︎フリートホーフの支部だぞ!」

 

ここの構成員であろう者達が数名そこに現れ、武器を取り出し構えた。だが…

 

「あれ?」

 

先頭にいた男は不思議に思った。武器を持っている感覚がなくなる。というより手の感覚もない。だがその理由に気づく前に眼前に来ていた七海に驚き下がる。

 

「………おぁ⁉︎」

 

グチャリと音を立てて男は横の壁にぶつかる。七海が殴った結果だ。瞬時に残りの者達が斬りつけたが…

 

「切れてな…ごぇ!」

 

「ゲゴォ!」

 

斬りつけたにもかかわらず、血を出すどころか傷もつかない。七海はあっという間に3人を殴り殺し、残った3人中、2人の首を大鉈で落とす。

 

「あ、ぁぁ、ヒィぃぃぃ!」

 

逃げようとした最後の1人は転んでしまいすぐ立ちあがろうとするもできない。その為の足が、もうなかった。

 

「海人族の子は?」

 

「………」

 

ガクガクと震える。見た目だけなら七海より身体も筋肉も大きな男が、圧倒的な恐怖と強さに怯える……暇もなく蹴られる。質問に答えないからだ。壁に当たり、全身の骨と内臓が破損したのを男は感じた。

 

「海人族の子は?」

 

「じ、じらない、ここにはいな…」

 

言いきる前に顔面を蹴りで壁ごと粉砕されて絶命した。

 

「ここは本拠地ではないらしいですし、次へ……どうしました?」

 

「いえ、何というか」

 

「うむ、思っていたより熱い男と思うておってな。以前の拳といい、きっかけが違っておったら、妾、惚れていたぞ七海」

「結構です」

 

「即答⁉︎でもなんかいいのじゃぁぁ」

 

悶えるティオを心底辟易した眼で見る七海とシア。

 

「ここの子供は全て人族ですね。おおかた、売り残りの子で、買い手が見つからなければ、彼らのストレスの発散とされていたのでしょうね」

 

七海は檻を壊して、子供達に近付く。子供達は一瞬怯えるも、七海はその子達を通り過ぎて死んでいる子供の開いた目を、スッと手をかざして閉じさせる。

 

「ここを出ましょう。親御さんが心配してるでしょうから」

 

次に近くの子にそう告げて頭を撫でると、周囲の子供も理解した。『あぁ、この人は味方で、助かるんだ』と。そう判った瞬間、枯れた涙が溢れていた。

 

「近くに預けてすぐに次へ向かいましょう。大きな組織ですし、気張っていきましょう」

 

「当然じゃな」

 

「はいですぅ‼︎」

 

あらためて七海の事を彼女達は知った。感情的にはならずとも、自分達と同じかそれ以上に怒りを感じて行動していると。それに2人は好感を抱き、すぐさま次へと向かう。

 

 

次の施設は先程よりも大きかった。どうやら本拠地らしくそこもスイスイと進んでいく。邪魔する者は3人の容赦ない攻撃で殲滅されていき、怒号が飛び交う部屋にシアが侵入し、その部屋の護衛などを瞬時に片付けて、フリートホーフの頭の男の肥えた腹に重たい一撃を与えた。

 

「シアさん、拷問する相手を殺してはいけませんよ」

 

「大丈夫です!まだ喋れそうです!」

 

「死なないように痛めつけて、情報を吐かせましょう。こちらは私とティオさんが」

 

「いや、妾1人に任せてよい。先程はおぬしに全部持っていかれたからの。……それに、子供を食い物にしてきたこやつらに、些か妾も苛立っておるのでな」

 

ボスの部屋に来た残りの構成員をブレスでチリも残すことなく消滅させる。

 

「死体の焼却には困らないですね………さて」

 

こちらも必要なさそうだと思いつつ、七海が部屋に入ると、シアはドリュッケンに付与された重力魔法で少しずつ重さを増やして内臓を潰しながら尋問し、情報を引き出していた。

 

「助け、助けげで、ぐれぇ‼︎何が欲じぃ、金も奴隷も、全部やる、だがら、だずげで」

 

「すべてはあなたが子供を誘拐して売ったのが発端、庇うつもりは毛頭ないです」

 

「そもそも子供の人生をさんざん弄んだのに、自分だけ助かろうなんて都合が良いにも程がありすぎです。それになにより、あなたは私達に敵対しました。そんな人間を生かしたらハジメさんとユエさんに怒られてしまいます」

 

「大人なら黙って自分の犯した責任を負いなさい」

 

シアがグンと振りかぶって即振り落とした。ドリュッケンはそれを潰してトマトのような物を作り出した。

 

「シアさん、いけませんよ」

 

「む、七海さんらしくないですね、その言い方」

 

「?………あぁ、違いますよ」

 

殺した事を咎めたのかと思ったのか、七海はシアに違うと言う。

 

「顔に血がついてます。こんな血をあなたが浴びるのはいけない。なるべく血を浴びない殺し方をしてください。あなたがそれで汚れていては、私が後で南雲君に怒られる」

 

シアはぽかーんとした表情になるが、それも一瞬で笑みに変わる。

 

「この武器だと難しいので、やり方があるなら、教えてほしいですぅ」

 

「ご主人様もじゃが、おぬしら容赦ないの」

 

その言葉に七海は冷徹に、シアは疑問の顔になって言う。

 

「何度も言うようですが、自業自得ですしね」

 

「必要ありますか?こんなのに?」




ちなみに
最初は七海はフリートホーフの連中を殺さないかなぁ?と思いましたが、この世界にいる限りどこかで人は必ず殺すことは理解してるでしょうし、今回みたいに子供を食い物にしてきた連中プラス襲ってくる相手を誰も殺さずに…というのは無いかなと思い、それプラスの理由として、今回の描写をつけました。

ちなみに2
シアとティオから今回の子供への酷い仕打ちをした連中への罰と子供への対応はユエにも伝わり更に好感度アップです


今月中にもう1話出せると思う
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