ありふれたやり甲斐と生き甲斐を探して   作:戦鬼

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愛ほど歪んだ呪いはない

呪いの王だけに、それも知っているのでしょうか……あと、相手はまさかと思うけど伏黒じゃないよね?


好事多魔⑤

その魔物は黒だった。

 

「黒い、球体?」

 

さほど大きくない。6本足の亀の魔物、アブソドより少し小さい。どうやって移動してきたかわからないが、土煙が消えて姿を現した黒い球体は静止していた。

 

「っ!うおぉぉぉぉ!」

 

龍太郎は他の魔物が同じように動きが止まったのを見て、操っていた魔人族が死んだことによって、魔物が一時的に動揺していると考え、今現れた魔物に直感で脅威を感じ、突貫する。龍太郎のその考えは間違ってはいない。

 

………この魔物が現れるまでは

 

「⁉︎」

 

眼前側の黒い球体のほぼ中央部分。そこがモゾモゾと動き出し、それが文字通り開眼する。巨大な目玉がそこにあった。それを見た瞬間――

 

「‼︎‼︎⁉︎」

 

得体の知れない悪寒を感じ、龍太郎の足が止まり、両膝をつく。何が起こったかはわからない。だが動かなければと下を向いた顔を上げる。

 

「……………ぁ」

 

再び目玉を見た瞬間、恐怖が身体を硬直させたが、そんなことに気づく前に、自分の身体に何かがぶち当たるのを感じ、意識はそこで一時的に消える。

 

「ガァ!…ゴボッ」

 

黒い球体から触手のようなものが出て、それが龍太郎をふっ飛ばした。触手の先端は手のような形をしていた。おそらくそれを使って移動したのだろう。衝撃で意識を戻すがそのまま壁にぶつけられ、完全に意識を失った。

 

「オオオオオオオオオン!」

 

魔物の眼球の下の部分が口のように開き、そこから悲鳴をあげるように叫ぶとそれまで止まっていた魔物達が動き出して再び襲いかかる。

 

「ひぃぃぃぃぃ!」

 

檜山は頭を抱えて閉じこもるようにしゃがむ。結界は張られているが、大勢の魔物が一斉に攻撃してくる。少しずつだがヒビが入ってきている。

 

「うずくまる暇があったら攻撃くらいして!」

 

吉野が声を上げて叫ぶ。

 

「で、でもよぉ!なんなんだよあの魔物、他の魔物を操って!これじゃ、さっきと同じ……いやそれ以上に悪いだろ!」

 

「泣き言を言う前に攻撃して!威力弱くても恵理のサポートくらいして!」

 

檜山は正直なところ、ここに来ず、他の者達と共に逃げる選択をしたかった。しかし、攻撃ができる者で、鈴を背負って運べる者以外に数を割きすぎるわけにもいかず、そして、

 

(クソ、クソ、クソ!なんでこっちにいなきゃいけねーんだ!)

 

そうせざるをえない状況にされた。目線で『協力しろ』、と命令されたから。

 

「香織、そのまま防御を、グッ、…継続して!」

 

雫は魔物の爪を防いでそのまま押し込むように斬り裂き、膝を落としてぶつぶつと何かをつぶやいている光輝に近寄る。

 

「光輝、光輝!大丈夫⁉︎」

 

「おれは、違う、俺は、殺したいわけじゃ」

 

「っ!」

 

パンっと平手打ちする。顔に手の跡ができるほど赤くなった頬を光輝は触り、雫がいる事に気付いた。

 

「し、雫」

 

「しっかりしなさい!今の状況が…ちっ」

 

接近してきた魔物の対処をするために、雫は一旦立ち上がり、一度納刀する。

 

周囲から迫りくる魔物の動きを気にしすぎてはいけない。

 

(脅威が迫っているからこそ、冷静になる)

 

紛れもない死線。数秒先には自分が殺されるだろう。だが、だからこそ冷静になる。相手の動きを1つ1つ確認するのではなく、自分の動きを、相手の動きに合わせる。

 

「〝絶断〟〝水月・漣〟‼︎」

 

既に〝絶断〟は無詠唱でできるが、まだ未完成だ。詠唱しないで発動した場合少しだけ出力が落ちる。だがそんな暇はない。切れ味を上げて抜刀と同時に回転して迫りくる魔物を切り裂く。八重樫流剣術の1つ、〝水月・漣〟だ。

 

確かに、無詠唱では威力は落ちるが、10割が8割になる程度。そして、それを補う技術と技量が、既に彼女にはある。

 

「光輝!しっかりして!今あんたが、どうしようもない精神状態なのはわかる!けど、あれを見て、龍太郎はもう戦えない!他のみんなもそう!貴方が動かなかったら皆死ぬの、だから!」

 

雫は立ち上がり、黒い球体の魔物に向かう準備をする。

 

「〝覇潰〟の影響で動けないでしょ?これ飲んで、少しは動けるようにしなさい。あれは私がどうにかする」

 

回復薬を渡して、雫は駆ける。

 

「シッ、ハァァ‼︎」

 

迫りくる魔物の攻撃を回避して、すれ違いざまに胴や四肢を斬りつつ向かう。その最中、黒い球体の魔物は目を見開く。

 

「!」

 

その前に雫は視線を落として視界に入らないようにした。

 

(おそらく、あの魔物の目を見ることで何かしら固有魔法が発動する。なら、視線を合わせず…)

 

気配だけで斬り裂く。戦術面では正解だ。

 

「え?」

 

相手の固有魔法が何かを、ちゃんと理解してない点を除いて。

 

「あ、あぁぁ、あっ」

 

全身に寒気が走る。寒さを感じたからではない。得体の知れない恐怖が彼女を襲ったからだ。

 

「いや、いや、取れない血が、血が取れな」

 

それは、初めて魔物を殺した夜の記憶。何度も何度も手を洗っても、汚れが落ちても、ついていた魔物の血の温度を感じていたあの夜。

 

あの夜、七海の言った言葉の意味を改めて感じた、あの夜の記憶が、雫の頭にフラッシュバックする。

 

「雫ちゃん!前!」

 

「っあ」

 

迫りくる魔物の触手は刃のようで、一瞬、雫は何が起こったかわからなかった。

 

「………ぁ……グっっぼあ」

 

腹に触れて、手についた血を見た瞬間、自分の腹を貫かれたと認識し、口から血を噴き出す。

 

「か、おり、逃げ」

 

ぶんと触手を振り、腹から無理矢理引き抜き、その勢いで雫の身体は宙を飛んで、光輝の目の前でドサリと止まる。

 

「あ、あ、ああ…し、しず」

 

ドクドクと腹から流れだす“ソレ”を、光輝は見た。雫のその顔を、命が失われていく瞳を、見た。

 

「ア”ア“ア“ア”ア“ア”ア“ァァァ‼︎」

 

発狂した声を上げたのは、光輝ではなく香織。

 

「〝斬光刃〟ォォ‼︎」

 

この時香織は、理性も理屈もかなぐり捨て、親友を傷つけた魔物へ向かう。それは、あまりに無謀な特攻。

 

「お、おい白崎!」

 

「白崎さん⁉︎」

 

「香織ちゃん⁉︎」

 

恵里の結界は鈴ほど得意ではないがどうにか展開した。虚な眼をした香織が頼んできて、咄嗟に詠唱したのだ。そして彼らは、その瞬間に突撃した香織を、止められなかった。

 

「!」

 

魔物は眼球を香織に向け、ギンと見開く。その瞬間――

 

「〝天絶〟!」

 

香織は理性も理屈もかなぐり捨てたが、思考は捨てていない。〝天絶〟の盾を、上半身だけではなく、全体を覆い隠すような長い盾へと変換させる。

 

(やっぱり。この魔物の固有魔法は精神に働きかけるもの。そして、魔法で防げる)

 

香織は瞬時に考えた。あの魔物の視界にあった他の魔物達も恐怖で体が震えて硬直した。眼を見なくても見られただけで雫は動きを止めた。なら、なぜ視界にあったはずの光輝と自分達には何もなかったか。

 

(たぶん、あの魔物の固有魔法は自身が見た対象の精神に、強い恐怖心を強制的に引き起こすものだ)

 

香織の考えは当たっている。この魔物の名はキュプラス。ありとあらゆる生物に、恐怖を与える固有魔法を持っている。その範囲は自身の視界に入る者全てであり、相手とのレベルの差が抜かれていても、強制的に恐怖心を与える。

 

恐怖は、思考能力を持つ生物であれば、必ず持っているのもの。それを増幅させ、精神を恐怖に染めてしまえば、いかなる生物でも、動きは落ちてしまい、硬直する。まるでそれは、蛇に睨まれた蛙の如く。さらに確率でその対象となった相手のもっとも恐怖した体験やトラウマを引き起こす。

 

また、ある程度ではあるが、格下の魔物を恐怖による支配で操ることができる。

 

「よくも、雫ちゃんをぉぉぉ‼︎」

 

しかし、弱点はある。まず視界に入ってなければいけないので、壁などで全体が視界に入らない状態では効果を成さない。光輝は突撃する雫が光輝を遮っていたことで効果を受けなかった。さらに視界に映っても、魔法で塞げば阻害される。だからこそ、香織は影響なく動ける。また、魔物の支配も無理矢理に近く、その魔物の本来の実力を出せない。

 

「!」

 

ただし、この魔物の特に厄介なところは、その固有魔法もさることながら、この魔物自身が七海の言う、特級呪霊並みに強いということにもある。

 

「うっ、ぐっっ」

 

身体から無数の触手を鋭い形状にしたもの、棍のように打撃と衝撃を与える形状にしたものが一斉に香織に襲いかかる。

 

「〝天絶《群》〟」

 

複数展開した小さな〝天絶〟を自身の周囲に蜂の巣を思わせるように置く新しい結界魔法。しかし鈴と違い、制御が難しいので発動後は他の魔法を使用できない。

 

(このまま防御しつつ、あの目を貫く!あの目が潰れれば、固有魔法も使えない………!まずい)

 

キュプラスは固有魔法と触手による攻撃が香織に対してなかなか決定打にならないと判断し、触手の攻撃を雫へと向けた。

 

「間に…」

 

合わない。瞬時にそれを感じた香織は賭けに出た。

 

「ショイ!」

 

触手が雫を狙ったということは、自分への攻撃は緩み、相手の防御手段も減ったということ。

 

グシャリと音を出して香織が投擲した光の槍が目を貫いた。瞬間、キュプラスは悶えながら暴れだした。

 

「やった……っ雫ちゃん!」

 

キュプラスが大きなダメージを負ったのが原因か、他の魔物の動きも止まった。この隙にと急いで雫の方へ行く。

 

(酷い…けどまだ息がある!)

 

香織は残り少ない魔力の全てを使い治療する。

 

「死なせない!もう絶対に、私の大切な人を、死なせない‼︎」

 

魔力が足りない為か、いつもよりその回復速度は遅い。

 

「お願い!お願い!お願い‼︎」

 

「………か、おり」

 

「雫ちゃん、まだ喋っちゃ…」

「後ろ、逃げ」

 

その時、香織は背筋から何かを感じる。身体を、恐怖が支配する。

 

「……っ……ぐ、……!」

 

キュプラスの目は1つではなかった。触手から無数の眼が出ており、その目はまるで、笑っているように見える。

 

「………はぁ、はぁ、はぁ」

 

恐怖によって思うように動けない。武器もない。魔力もない。そんな中でも、香織は雫へよりかかり、守る体制になる。

 

「ごめんね、雫ちゃん。守れなくて、ごめんね」

 

「………」

 

目が虚になり、声を出すことができない。それでも最後の瞬間くらいは、親友に笑顔でいてほしいと思い、フッと笑みを見せる。どこで間違ったのか、どうすればよかったのか、やはり七海の言う通り、危険に対してもっと敏感に動くべきだったのか。後悔しても仕方ないことなのに、雫は思ってしまう。

 

(あぁ、これが走馬灯ってものなのかな)

 

多数の触手が迫り来る。これまでの人生が香織の中で駆け巡る。

 

「………ハジメ君」

 

最期に、最期くらいは、彼を、大好きな人を名前で呼びたかった。

 

『このまま戦争に行くことを決めれば、生還しようとできなかろうとあなた方に悔いのない死は訪れない』

 

「「!」」

 

2人に芽生えたのは、受け入れたくないという思い。

 

(ほんと、七海先生は、よくわかってた)

 

(そう、あの時から、こうなるかもしれなかった)

 

瞬間、香織は魔法を雫に付与した。それは、痛みを和らげる魔法。次は魔力を帯びた連斬撃を雫が繰り出す。

 

「グボっ……はぁ、はぁ」

 

「雫ちゃん!」

 

「大丈夫………どうせ悔いが残るくらいなら、最期まで足掻きたいだけ。そうでしょ?」

 

香織は「うん!」と答え、どうにか立つ。後ろから恵里達の「逃げて!」という声がとんでくるが、2人には聞こえない。聞き届けるだけの体力もない。

 

「「!」」

 

またも触手の攻撃が来る。今度は防ぎようもない。

 

「ウァァァァァァ!」

 

眼前に光輝が飛び出す。その光景に香織と雫は決まっていた覚悟以上に驚く。

 

光輝が動けたのは、1つは雫の回復薬のおかげ。2つ目が、幼馴染が死にかけているという状況で火事場力が働いたこと。そして。もうひとつ……七海の教えを無意識に行い、途中から魔力の出力を一時的に一気に落としていたこと。

 

「ふっ!ぐお、がぁ!」

 

それでも、落ちた数値はこれまでの比ではない。あっという間になぶられる。固有魔法を使うまでもないというところか。大きく触手を振りかぶり、横なぎして光輝を吹っ飛ばした。それを確認したキュプラスは今度こそ2人に狙いを定める。

 

瞬間、雷でも落ちたかのような轟音が天井から響き、崩壊して瓦礫となって降りそそぐ。それを起こした理由である巨大な杭が地面に突き刺さる。バチリバチリと紅い雷光を放っている。何が起こったのか理解できず、全員が呆然となっていると、崩落した天井から人が降りてきた。地面に足がついた瞬間、再び轟音をだし、ひび割れと揺れを起こす。

 

「……遅れて申し訳ありません」

 

その声に、聞き覚えがあった。

 

「助けに来ました」

 

以前見た時と違い、つるのないサングラスをつけてはいるが、自分達の師であり恩人の七海であった。

 

 

 

 

この少し前、68階層

 

「ベヒモスがあんなあっさり」

 

走りながら移動しつつ、現れた魔物を銃、ドンナーのみで撃ち殺していくハジメの姿に、遠藤は頼もしさと恐ろしさを感じていた。

 

「ベヒモス程度なら君達、特に前衛の3人は今なら1人でも倒せるでしょう?」

 

移動用の魔法陣が見つかって以降は65階層に寄ることもなく、70階層以下ではベヒモスに遭遇してないのでここ最近では戦ってないが、それでも今までの研鑽があればいけるであろうという、七海なりの信頼である。

 

「でも、あんな一瞬は無理ですって」

 

「ごちゃごちゃうっせーな!護衛もしてやってんだから黙ってろ!」

 

「キャラも変わってるし」

 

「そうならざるをえない状況にいたのですから、仕方が無いです。それに、言うほど変わってませんよ。規格外に強くなったところと見た目と言動を除けば」

 

それはだいぶ変わっているのでは、と思うが遠藤は考えないことにした。

 

「というか、七海先生もちっとは手伝ってくれてもいいんじゃねーか⁉︎」

 

「君がやるほうが効率的でしょう?」

 

あとそんなヤバいくらいに強いハジメに対しても普通に会話をしてる七海も相当なのではと思っていた。そんなこんなで70階層を迎えた。

 

「…………むごいな」

 

「……っぐ…クソ」

 

「………」

 

転移陣のある場所までたどり着いたのだが、夥しい血と肉片を撒き散らした王国の兵士の死骸だらけであった。七海は何も言わないが、思う所があるのか、目を伏せていると、

 

「待て。………そこに何かいるな」

 

ハジメが指した場所にはただの土壁がある。……ように見える。七海も残穢で気付く。

 

「私が行きます。君だと警戒してしまう可能性があるので………私の声が聞こえますね?野村君」

 

「……もしかしてって思ったけど、七海先生?」

 

「無事…と言えるかわからないですが、生きているようですね。他の皆さんもそこに?」

 

「それが、その」

 

全員ではないようだが、どうにも歯切れが悪い。罠を警戒していると判断し、七海は告げる。

 

「疲弊してる君たちを見つけた時点で、罠を張る必要性などありませんよ。壁を退けてください」

 

数秒して、土壁が崩れて空洞ができた。数名の生徒が身を寄せ合っていたが、主戦力と言える人物達がいないのと、寝たままで意識のない鈴の姿が印象的だった。

 

「マジかよ、助かるのか?俺等?」

 

「よ、よしゃあ!」

 

真っ先に檜山グループの3人が喜び出すが、他の生徒達の表情は暗い。

 

「色々と聞きたいですが、まず、天之河君達は?」

 

「まだ、下の階層で魔人族やその魔物達と……たぶん、あの戦力じゃ………俺達は、谷口が魔法の使いすぎで、目を覚まさないから、分断で避難することにして、それで…」

 

「…わかりました。よく頑張りましたね……南雲君、更に下ですが行きますか?」

 

「白崎はまだ見つけてねぇ。それに、その表情だと、まだ生きているって思ってんだろ?」

 

南雲と聞いて先程の遠藤と同じように、生徒達の表情に驚きと疑心がでる。

 

「間違いでもなんでもないよ。あいつは、南雲だよ」

 

「「浩介!いたのか!」」

 

「うん…いや、うんいたけどさ」

 

永山と野村は『あ、しまった』と思うが遅い。いつものこととはいえ、やはりショックはショックなのである。

 

「色々と聞きたいことがあるのはわかりますが、後にしま……ユエさん?」

 

「あの子、後でちゃんと診てあげた方がいい」

 

ユエの言うあの子とは、寝たままの鈴のことだろう。ここ最近、呪力の扱いの訓練の過程を見ていく上で、ハジメとシアに残穢の事を教えていたが、この2人よりも早くに魔力の残穢を見る事ができるようになったのがユエだ。しかも一瞬で技能の魔力感知、おまけに七海と同じ〔+視認(極)〕を手に入れた。

 

技能としては同じだが、ユエは魔法の天才にして、幼い時から触れてきたもの。七海以上に見えるものがある。それを詳しく言葉に出すことができない理由があるのだが、ここでは割愛する。

 

ともかく、七海には見えない鈴の変化をユエは感じとっていた。

 

「このまま彼らを放置するわけにもいけないですがその前に…野村君、いま天之河君達はどこの階層にいるかわかりますか?」

 

「最後に別れたのは87階層です」

 

「まだ遠いですね」

 

この先は光輝達が魔物を蹴散らしているので、インターバルを考えてもそこまで魔物はいないだろう。だが、それでも距離はある。その間にどうなっているかはわからない。

 

「居場所がわかりゃ、あとはこっちのもんだ」

 

宝物庫から以前ティオに使ったパイルバンカーを取り出す。

 

「待ってください南雲君。君の狙いはここから一気に87階層までの直通路をつくることなのでしょうが、場所がわからなければどうする事も…」

 

スッとハジメは指をさす。

 

「忘れたかよ七海先生?俺は先生以上に感知能力がある。あんたのおかげで、ある程度遠くの濃い残穢もわかんだよ。おそらくこれは、天之河のもんだろうけど……な‼︎」

 

そしてそれを抱えて加速する。巨大なパイルバンカーを出した事に驚いていた生徒は、それを無能と言われていた男が軽々と抱えて走る姿に空いた口が塞がらない。

 

少し距離をあけて、その地点についた瞬間ドンとパイルバンカーを高速でセットすると紅い電流が流れ出す。いつでも行けると言った感じだろう。目線で『早くこっちに来い』とハジメは告げる。

 

「………皆さん、つらいでしょうが、もう一度下の階層へ移動します」

 

「ちょ、ちょ、ちょっと待てって!俺は嫌だぜ!またあんなとこに戻るの!」

 

「……ここで君達を置いて行けば、後から他の魔物が来た時の対処ができませんし、彼らと一緒の方が、より安全と思いますが?」

 

皆が目線を合わせる。数名反対する生徒もいたが、どちらが安全かを考え、賛同した。

 

「辻さん、まだ動けるなら回復魔法の準備をお願いします。南雲君、穴を開けたら、まず私が先行します。万が一に備えて」

 

「まだガキ扱いかよ」

 

「まだ言いたりませんか?君は子供で、私は大人です」

 

一応仲間なのだがバチバチと火花をたてている。そして今更だが、勇者組は七海に偉そうな口を出せる事に、ハジメ組は同様に今更ではあるが、ハジメにここまで言える七海にそれぞれ驚いていた。

 

「ま、ここで言い争いしてる場合でもねーしな。いいぜ、行けよ」

 

「ありがとうございます」

 

放電は限界値に達して、杭が地面を轟音と共に貫通する。

 

「では行きます。ユエさん、シアさん、南雲君、彼らの方をお願いします。君達と違って、着地は上手くできないでしょうから」

 

その言葉にハジメは「へいへい」と適当に答えたが、フォローくらいはするつもりであった。自分の大切以外どうでもいい彼からすれば、大きな変化だなと七海は思いつつ、その穴へと飛び込んだ。

 




ちなみに
オリジナル魔物:キュプラス
固有魔法:精神支配(恐怖)、形状変化
作中書きませんでしたが触手の形を変えていたのも固有魔法です。触手の硬度は形状によってわずかに変化します。ただし複雑な形には変化できない。精神支配は相手に恐怖を植えつけて行動を制限する。対象の強さ関係なく強制的に与えるのでどんだけ相手が強くても効果ありです。
魔人族カトレアが死ぬ間際に呼び、人間を殺せと命令したので殺る気マックスです

今回いつもより短くてすんません。OTL
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