ありふれたやり甲斐と生き甲斐を探して   作:戦鬼

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やっぱいるかなと思いさんぽシリーズです
七海の本気(笑)が見れます


ありふれさんぽ:お食事パン(数量限定編)

教師、七海建人の朝は早い。セットした目覚ましを止めてすぐさま支度する。

 

(今日の予定は1限目から授業。3限目と5限目にもあり。書類よし……)

 

準備物を確かめ、テキパキと進める。職場へは電車を使う。車の免許はあるし持ってる。だがそれは遠出の時だ。二駅分の距離を考えるとガソリン代の方が長期的に高くなる。

 

(今日こそ、今日こそは)

 

だが理由はそれだけでない。そもそも出るにしても早すぎる。真の理由とは…

 

(開店まであと40分…よしこの人数ならいける)

 

多くの人がそこにいる。七海と同じく、通勤者もいる。その場所の名は

 

 

 

 

 

 

 

 

『ベーカリーしまくらパン』

天然酵母と知人である農家と契約して安く良質な小麦粉を仕入れ、主にバゲット系のパンに力を入れているパン屋。この地域一帯の年間パン屋ランキングでは常に上位を維持。取材も何度かあるほどの有名店。だが、取材があって嬉しいのは店だ。そこを使う者としては複雑な時もある。

 

(前回、あとひとつだった。あれは私が買えていた。だが、テレビ局の取材用として、買えなかった……あの時のようなことは、もう起こさない)

 

しまくらパンは本来は取り置きはしていない。前回のはテレビ局の為の例外的なものだ。今回の七海はそこは徹底した。臨時休業しないか、テレビの取材はあるか、最も焼き上がってから美味しい時間はどのくらいか、そしてそうする為の程良い並ぶタイミングも、徹底的に調べた。

 

(この位置、まさしくベストな位置。校内での昼食用もですが今すぐ食べる朝食用…必ず買える。ここの1番人気のサーモンとクリームチーズのカスクート‼︎)

 

七海の中ではロースハムとカマンベールチーズのカスクートが定番だが、バゲット系に力を入れている店の1番人気でしかもカスクートとなれば一度は食べなくてはいけない。それは七海のある意味で使命だ。

 

開店し、ぞくぞくと入っていく。カスクートがあるのは会計をする場所のショーケースの中。限定40個。ケースの中にはおよそ10個置き、なくなった時に新たに取り出して置く。出来上がり、保存室に入って取り出される時間、そこに生まれる温度差の最もうまい瞬間。それがここだ。

 

(前に並んでいる人達がほぼ必ず買っていくがこのぶんであればいける)

 

そして、あと2人。丁度入れ替えが起こる。最後の10個のうち最初に1人目がひとつ買う。

 

(会計時間を考えても、いける。もらった)

 

そして2人目。

 

「すいません、このカスクート9個ください」

 

「かしこまりましたー」

 

景気の良い声が店内に響いた。

 

(…………)

 

 

 

 

「あの、すいません畑山先生」

 

「はい?」

 

「七海先生、どうしたんでしょうか?」

 

「何がで…あぁ、確かに。いつものように黙々と食べてますけどなんか、いつも以上に黙々というか、残念そうというか」

 

(カスクートを食べる前提のパンのラインナップにしてしまった。不味くはないが、全部を食べた時のクオリティが…クオリティが下がってしまった…!)

 

「思ったより、美味しくなかったとか?」

 

「うーん表情がわかりにくいですよね」

 

(次こそは、次こそは‼︎)

 

そう考えていたがこの翌日は定休日。そして次の日に彼は異世界に行くことになる。

 

 




おまけだから短いです。

次は1月中には多分出せる出来なかったら2月上旬です
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