ありふれたやり甲斐と生き甲斐を探して   作:戦鬼

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くそう、最近宿儺がかっこよく見えてしまう……
というか、呪術廻戦の敵キャラの言うことって基本的に全否定できないものが多い気がする。芥見先生の言葉の使い方と表現力に脱帽です



あと、死ぬな、日車


海内紛擾・跋

エリセンに戻り、ミュウとレミアから帰還の喜びを聞き、しばらくはここで神代魔法の試行錯誤と装備品の充実をする為に居座っていた。

 

「今日は私が1番……と思ってたんですが」

 

「あら、七海さんおはようございます」

 

レミアはまだ朝早いという時間に起きて、朝食の準備をしていた。こういうところを見るたびに、七海は彼女が一児の母だなと思っていた。

 

「あの、レミアさん。まだ足が回復して間がないんですから、私達がここにいる時くらいは休んでいただいてもいいんですよ?」

 

再生魔法の力で回復魔法に更なる力を得た香織はあっという間にレミアの後遺症をも治し、足は今まで不自由だったのが信じられないくらいに動くようになったレミアに七海は言うが

 

「いえ、お客様にそういうのは…それに、私がやりたいんです」

 

「なら、手伝いくらいはいいのでは?正直、ちょっと思うところくらいはありますよ」

 

「あらあら、うふふ」

 

レミアはやんわりと笑みを返して拒否をしてくる。

 

(なんというか、掴みづらい)

 

これまで関わってきた人物にこのような人はいなかった七海にとって、レミアはいい人だが多少の苦手意識があった。

 

「ママーおはようなの〜」

 

少し時間が経つと次にミュウが起きてきた。少し眠そうに、目を擦る。レミアに言われて顔を洗いにいく。そこから戻って来た時とほぼ同じタイミングで、起きて来た香織、シア、ティオが入ってくる。

 

「おはようございます、皆さん」

 

「ナナミン、おはようなの」

 

元気に挨拶をするミュウは完全に目が覚めて、七海の存在に気づく。

 

「ミュウ、ハジメさんとユエさんを起こして来て」

 

「はーいなの」

 

るんるん気分でハジメの部屋に向かう。遅れる形で、私達も言うように香織達も向かう。それをわざとスルーして七海は思考する。

 

「…………」

 

「七海さん、なに悩んでるんですか?」

 

「いえ、今日で6日目だなと思いまして」

 

エリセンは、良い所だ。海鮮料理が充実し、波風が気持ち良く、住んでいるレミアの家は快適そのもの。ぶっちゃけリゾートに来ているのかと思うほどだ。しかし、今ハジメ達は大迷宮攻略の為の旅の真っ最中。いつまでも留まるわけにはいかない。新たな神代魔法の習熟も、装備の充実も、とっくにできている。それでも尚、ここを離れないのは

 

(ミュウさんとどう別れるか、考えがまとまらないからでしょうね)

 

あえて七海は黙っているが、もし今日もハジメが動きを見せないようなら一言くらいは言おうと思っている。おそらくそう思っているメンバーは他にもいるだろう。

 

(ミュウさんが甘えて来ているから南雲君は言い出しづらいようですが、気付いてないんですかね?彼女は1度も)

 

その考えが頭に浮かぶ前に、ハジメの部屋から数人の大声が上がる。

 

「またですか」

 

ちょっと前、エリセンに来る前にもあったことだ。ハジメがなかなか起きてこないから誰かが呼びに行き、ユエとハジメがそういう事をした夜の後がわかり、ギャーギャーいう香織達。当初は七海はそれに対して多少の注意をしていたが、もう慣れたというより、縛りありなしでも意味ないというか、関わってとばっちりを受けないようある程度の無視を決めたのだ。

 

「お、このドリンクおいしいですね」

 

エリセンの騒がしい朝が始まった。

 

 

海猫の声が上から聞こえる。小さな波を立てる音と混ざり、心地が良い。少し離れた所で女性陣が水着で遊んでいるのをよそに、ハジメは桟橋に腰掛けて、錬成で作った弾丸に呪力と魔力をそれぞれ込める。銃弾の補充プラス、呪力と魔力の同時使用の訓練だ。とはいえ、その数はすでに充分以上である。6日もあったのだから当然だが。

 

「いい加減、出発しないとな……ミュウになんて言うべきか」

 

とりあえずハジメは別れの言葉を想像してみた。

 

「泣かれるか?いや、泣かれるよなぁ……はぁ」

 

独り言を呟き、ため息を吐く。奈落から出て、この世界の全てをどうでもいいと思っていた頃なら、ここまで悩む事はなかっただろう。否、同じなら、ミュウとこうして過ごすこともなかった。だからそれは良かったと言えるが、何もかもを切り捨て、目的の為にあらゆる犠牲を厭わないという考えをもてなくなっている。

 

「恨むぞ、畑山先生」

 

ハジメがこの現状となるきっかけの言葉をもらった恩師の1人に悪態を吐いていると、

 

「君が人のせいにするなんて、よっぽどですね」

 

後ろから声がしたので見る。もう1人の恩師である七海がハジメに近づき、彼の真後ろに立つ。

 

「うっせぇ」

 

ハジメは弱々しく七海に言うが、正直それが精一杯の抵抗だった。

 

「あの笑顔を作ったのは君だ。今更そのことに後悔してはいないんでしょう?」

 

七海の視線の先にはミュウと鬼ごっこをする4人の女性陣。海人族の特性で、水中戦ではもはや無敵になったミュウを捕まえようと必死になる鬼役の女性達。

 

仮にミュウを見捨てても、彼女達を曇らせる未来は無かったが、今ほどのものはなかっただろう。

 

「それは君が所謂、寂しい生き方をしなかったから」

 

「わかってるよ、そんな事」

 

「……紡いだものを解くのが辛いのだと考えているなら、少なくともその考えは今は間違ってます」

 

「?」

 

「気がつきませんか?ミュウさん、今日まで君に甘えてますが、一度もどこにも行かないで、置いてかないでとは言ってませんよ」

 

「!」

 

ミュウとてわかっている。この日々がずっと続かないことが。幼いながらも、わかってる。

 

「…幼女に気を使われてどうするんですか」

 

「まったくだ……けどなぁ、はぁぁ」

 

またもため息を出していると桟橋から両足を出しているハジメの間から、ザバっと音を立ててレミアが現れる。彼女も水着を着て、ティオと同等の色気のある身体を垂れていく水がより一層の色気を出す。並大抵の男ならこれで落ちるか、前屈みになるだろう。

 

「レミアさん、いつの間に…というか、怪我治って間もないのに」

 

「うふふ。せっかく足が治ったからこそ、娘と泳ぎたくもなりますよ。………ハジメさん、ありがとうございます」

 

「いきなりなんだ?」

 

お礼を言われたことにハジメは疑問がでて問う。

 

「娘のためにこんなにも悩んで下さるのですもの……母親としては、お礼の1つも言いたくなります」

 

「………バレバレか。一応は隠してたつもりなんだが」

 

「あれで隠してたとは………とっくに皆さんも知ってますよ」

 

「えぇ。ユエさん達もそれぞれ考えて下さっているようですし、七海さんに関しては、今日の夜にも出発をすることを促すつもりだとも」

 

「…レミアさん」

 

言わなくていいのにと言葉に出さず、困ったような口調で七海は言う。

 

「ミュウに泣かれるなら、きっかけは自分がってところか?相変わらずアンタは…」

 

「別に悪役になりたいわけじゃないですよ。君がウジウジしてるくらいなら、そうでもしないと動かないなと思ったからです」

 

いつもの七海に、ハジメはやれやれと言った感じでため息を出し、レミアは嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

「もういいんです、ハジメさん。充分すぎるほどに、皆さんにはしていただきました。ですから、もう悩まずに、すべきことのためにお進みください」

 

「南雲君、正直私は、ミュウさんとの情が深くなることに少し不安がありました。しかし、ミュウさんを連れて尚進んでいく君を見て、私は少なくとも君は大丈夫だと思ったんです。だが、幼いミュウさんがちゃんと受け入れることができるか、それが不安でした。ただ、それも杞憂になった。むしろ、この面では君よりもしっかりしている」

 

「ええ。ミュウがあんなにも大きく成長したのは、本当に驚きました。甘えてばかりだったのに、自分より他の誰かを気遣えるようになった。多くの出会いが、あの子を変えてくれた」

 

レミアはチラリと七海を見て、次にユエ達を見る。

 

「私ができたことなど、微々たるものですよ」

 

「あらあら、うふふ」

 

何がそんなに面白いのか、柔らかな笑みを見せるレミア。それを不思議そうに見るハジメにもう一度見つめて言う。

 

「七海さんも言ったんでしょうが、あの子も、これ以上ハジメさん達を引き止めていてはいけないと分かっているのです。だから……」

 

「…わかった」

 

ハジメは今ハッキリと決めた。ミュウの気持ちに気付いた今、自分がこうしていることが、逆にミュウを余計に悲しませるのなら、お別れを告げようと決意した。

 

「では、今晩はご馳走にしましょう。ハジメさん達のお別れ会ですからね」

 

「そうですね。お願いします、レミアさん」

 

「期待してるよ」

 

「はい。期待していてくださいね、あ、な、た?」

 

「いや、その呼び方は」

 

「…レミアさん、わざとですか?」

 

ハジメは別の方向を見て言う七海が気になり、そちらを向くと、絶対零度の表情の女子達がいた。

 

「私はちょっと、外しますので、あとは頑張ってください」

 

「おい待て先…」

 

七海は完全に止められる前に逃げる。他人のハーレムという名の修羅場を鎮める程の器量は流石にない。あってもしないだろうが…

 

「お夕飯時には戻ってくださいね」

 

「そういう発言は、旦那(南雲君)にでもどうぞ」

 

「おい!今の南雲君はいつもの南雲君とは違う気がしたぞ!」

 

揉みくちゃにされるハジメをスルーして、七海は席を外した。

 

 

その日の晩、夕食前にミュウにお別れを告げた。ミュウは着ているワンピースの裾を両手でギュッと握り締める。わかっていた事だと彼女は理解して、泣くのを懸命に堪える。沈黙が続くが、ミュウ自身でその沈黙を破る。

 

「……もう会えないの?」

 

ミュウの答えに窮する質問に、ハジメ含めて誰も答えられない。帰還方法はまだ具体的にわかってはいないが、仮に判明したとして、その瞬間に帰るかもしれない。どうなるかわからない答えを、希望的観測を、安易にミュウに伝える事はできない。

 

「……パパは、ずっとミュウのパパでいてくれる?」

 

答えに悩むハジメを見て、ミュウは質問を変える。その質問は、今のハジメなら、しっかりと言えるだろう。ミュウの両肩をしっかり掴むと、真っ直ぐ視線を合わせた。

 

「……ミュウが、それを望むなら」

 

ハジメの答えに、ミュウは少し目を擦り、ニッと笑みを作り、決意ある瞳を見せる。その表情はまるで――

 

(まるで、南雲君のようだ)

 

ずっと近くで見ていたからか、本当に親子のようになっていた。

 

「なら、いってらっしゃいするの。それで、今度はミュウがパパを迎えに行くの」

 

「迎えに?」

 

その言葉の意味を、ミュウが理解してないと思い、ハジメはおうむ返ししてしまう。

 

「ミュウ、俺はすごい遠いところに行くつもりなんだ。だから」

 

「でも、パパが行けるなら、ミュウも行けるの。だって、ミュウはパパの娘だから」

 

自信満々にミュウは元気に告げる。幼い子供の夢物語のような宣言なのに、七海はそこにハジメの姿が重なって見えた。

 

「ほんと、そっくりになってしまいましたね」

 

「先生、今笑うところじゃないぞ」

 

「失笑でした」

 

少し詫びるように七海は言う。幼女とはいえ、ミュウの決意を七海は評価していた。ハジメも、自分の背を見て成長していた愛しい娘を、今更手放すまいと、改めて決意した。

 

「ミュウ、待っていてくれ」

 

ハジメの雰囲気が変わり、ミュウは不思議そうな顔になって首を傾げる。悩み全てを吹っ切り、真っ直ぐな瞳をミュウに見せる。ミュウがもっとも憧れている瞳に。

 

「全部終わらせたら、必ず、ミュウのところに戻ってくる。みんなを連れて、ミュウに会いにくる」

 

「………ほんとう?」

 

「ああ、本当だ。俺がミュウに嘘をついたことがあったか?」

 

ミュウがふるふると首を振ると、ハジメはミュウの髪を優しく撫でる。

 

「戻ってきたら、今度はミュウも連れて行ってやる。それで、俺の故郷、生まれたところをみせてやるよ。きっとビックリするぞ。俺の故郷はびっくり箱みたいな場所だからな」

 

「パパの生まれたところ?見たいの!」

 

飛び跳ねて喜びを表しているミュウ。先程の不安そうな表情はどこかに吹っ飛んでいた。

 

「なら、いい子でママと待っていろよ?危ないことはするな。ママのいうことをよく聞いて、お手伝いを頑張るんだぞ」

 

「はいなの!」

 

「ミュウさんなら大丈夫でしょう。無邪気でも、物事の理解は早いですし、なんなら旅をした女性陣の中である意味1番女子力高いですし」

 

「おい、七海、失礼」

 

「ですです。そんなことないでしょう?ね、ハジメさん?」

 

「……………」

 

「ちょっと、目を逸らさないでくださいよぉ!」

 

そう訴えるシアを横に、目線を逸らした先にいたレミアと目が合い、ハジメは勝手に決めてしまった事を視線で謝罪したが、「ウフフ」と温かい笑みを浮かべており、責める気はないようだ。

 

「パパ、ママも一緒?」

 

そんな視線の会話を読み取ったわけでもないが、一瞬見せていたハジメの表情に不安を感じ、ミュウは問いかける。

 

「あ、あぁ〜それは…」

 

「そこ考えてなかったんですか?」

 

「あ、いや、考えてなかったわけじゃなくて、後で言おうかと」

 

七海は頭に手を置いて呆れつつ、レミアを見て問う。

 

「で、レミアさん的にはどうなんですか?」

 

「もちろん、どこまでもついて行きますよ。まさか、私だけ仲間外れなんて言いませんよね?あなた?」

 

レミアはハジメの方を見て言う。周囲の女性陣によって冷気が出ているような気がしつつ、ハジメはレミアにたずねる。

 

「いや、それはそうだが……マジでこことは文字通り別世界だぞ?」

 

「あらあら、娘と旦那様が行く場所に、付いて行かないわけないじゃないですか。うふふ」

 

ミュウを抱っこするハジメと、それに寄り添うレミア。誰が見ても夫婦である。既に女性陣はピリピリしている。ケンカが始まる前に、七海はレミアに一応言っておく。

 

「レミアさん、もしかしたらここに戻れなくなる可能性もありますが、それでも?」

 

「はい」

 

ハッキリと言ったのを見て、やはり聞くまでもなかったなと、七海は肩をすくめた。

 

「夫に寄り添ってこその妻ですからね」

 

柔らかな笑みにハジメはタジタジになり、女性陣は「させるかぁー!」と言わんばりに割り込んで喧騒が広がる。それを横目に、

 

「南雲君、ちょっといいですか?」

 

七海は外を指差し、ハジメを呼ぶ。ハジメは何を言われるかはわかるが、ついていく。

 

「で、本気で連れて行くんですね?」

 

「ああ。つか、会話の途中で反対意見でも言ってくるかと思ってた」

 

「そんな空気の読めないことなどしませんよ、私は」

 

波音は静かに、2人を落ちかせるように響く。

 

「むしろ、私はミュウさんと完全な別れを告げる可能性もあるなと考えてました。もちろん、一緒に連れて行くと言うことも視野に有りましたが、前者の方が、今の君にはあり得そうだとね」

 

「……まぁ、確かにな」

 

「……ミュウさんの言葉に、絆されましたか?」

 

「そんなんじゃねぇ…って、言えないな、こりゃ」

 

ミュウとの出会いと関わりが、ハジメを大きく変えているのは間違いない。

 

「もう、迷いはないようで」

 

「ああ。どうとでもするさ。絶対ミュウのところに戻って、日本も見せる。ミュウを置いて世界を超えたら、そん時はまたこの世界に来ればいい。何度だって世界を越える。それに、七海先生との縛りもあるしな」

 

(それがなくても、そうするでしょうに)

 

正直、ハジメの考えは甘いと言っていいのだが、決意は本物だ。

 

「大人の階段を、正式に(・・・)一歩進んだというところですかね」

 

「何だそりゃ?」

 

「いえ、別に」

 

そんな話しをしていると、レミアの呼ぶ声がし、2人は皆のところに戻った。余談だが、レミアの「はい、あなた、アーン」から始まった女性陣のハジメへの「アーン」合戦が起こったのだが、勝者はミュウだったということは言っておく。

 

「南雲君、これからその手はもう使えないことは考えておいた方がいいですよ」

 

先程の大人の階段を登ったことを撤回しようかなと、わりと本気で考えながら言っていた七海がいたことも付け加えておく。

 

 

 

 

「さて」

 

時間を潰すため、七海は小さなバーに来ていた。明日のこともあるので、アルコールの少ない酒を飲むのだが、それなりに飲める七海にとってはジュースに近い。

 

「甘っ」

 

と口に出してしまう。

 

「お客さん、珍しいものを飲むと思ったら、甘いの苦手なんですか?」

 

店主が呆れたような口調で言う。

 

「ええ、まぁ。飲めない事はないんですがね」

 

ちなみに、6日間ほぼ毎日来ているので店主ともよく話す仲になっていた。ちなみに、店主は七海の事は知っているが、今までの人達とは違い騒がない。バーテンダーとして優秀である。

 

パキン

 

「ん」

 

「失礼しました!」

 

近くで店員がグラスを落としてしまったらしく、ガラス片が散らばる。

 

「手伝います」

 

「いえ、そのような…」

 

「まぁ、ついでみたいな…っつ」

 

気をつけていたが、つい切ってしまう。

 

「大丈夫です、このてい…」

 

「あ、ほんとですね!傷がない、よかったぁ〜」

 

「…………」

 

「お客様?」

 

「いえ、べつに」

 

内心、七海は驚きを隠せない。今、自分は何をしたかわかる。頭で考えたわけではなく、急にだ。

 

(これは……)

 

ガラスが刺さっていた指。血が出ていたはずなのに、既に治っていた(・・・・・)

 

「何だ、回復魔法が使えるんですね、お客さん」

 

「え、いや私は魔法は使えないんですが」

 

バーテンダーに急に言われて、七海は困惑しつつ、そう答えたが、

 

「そうかい?そのわりには魔力を出してたし」

 

「はい?あの、見えたんですか?」

 

「見えたというか、そんな出してら、いくらなんでも見えるよ。まぁ、さすがに今はもう見えないけど」

 

「……………」

 

どういうことだと、七海は急いでステータスプレートを見るが、やはり魔力、魔耐共に0であった。

 

「私は、どうなって……」

 

誰に問うわけでもない呟きに、答えてくれる者はいない。

 

 

 

王国、とある薄暗い部屋。それなりに広い部屋に、無数の人影があるが、まるで人形のように微動だにもしない。それを眺めるように、2人の影があった。

 

「おい、準備はできたんだろう?どうなんだ、おい」

 

1人は檜山。狂気に染まっている目は少しだけ焦りのある表情でもう1人に問うが、その人物は何も言うことなく、片手をグーパー、グーパーして、どうにも何かおかしいなと言わんばかりの表情になっている。

 

「おい!聞いて」

 

その先を言えない。蛇に睨まれたカエルの如く、黙ってしまう。

 

「ちょっと、黙ってて」

 

そう言ってその人物は再びグーパーを繰り返す。

 

「いったい、どうしたんだよ」

 

「いや、この魔法使ってから、何か違和感があるっていうか、どうにも言えないんだけど、こう、掴めそうなのに掴めないというか」

 

なに言ってんだと檜山は思いつつも、声に出さず見るだけである。

 

「妙な感じなんだ、この魔力、久々に見たし。いや、全然違うんだけど」

 

「何のことだ?」

 

「…………いや、いいよ。そのうちわかりそうだし」

 

そうして、その人物は目の前にいる人影達を見て、邪悪に笑う。

 

「ようやく準備が整った。残穢を見られないように必死だったけど、うまくいってよかった」

 

残穢が見える者が増えたなか、残さないように時間をかけた。それでも、()()()()()()()の成果をあげた。

 

「あぁ、本当にワクワクするよ。あの時からずっと想い焦がれた瞬間が、もうすぐやってくる。僕はいま、とっても幸せだよ!」

 

自分以上の狂気と異常性を見せる協力者に、檜山は絶句するが、邪悪な笑みだけは、同じだった。

 

「彼女は?」

 

「もうどっか行ったよ。詰めが甘いって毒吐いてな」

 

「………ふーん彼女も言ってたけど、詰めが甘いね」

 

「ハッ、でもコレで大丈夫だろ。メルドを殺したんだからよ」

 

「ん?ああぁ、そうじゃなくて」

 

檜山の方を向いて言う。

 

「君と僕のことを言ったんだよ。お互い詰めが甘いってね」

 

 

 

「どうしてあなたがここに!」

 

フードを被った少女は騎士達に見つからないようにしてようやくここまで来たのに、とある騎士に捕まってしまい、こんなところに来ていたが、そこにいた人物に驚いた。

 

「この国を脱出するなら、お供します」

 

「それは、嬉しいのですが、本当にいいんですか?」

 

少女の前で跪き、そう言う大柄の男に、少女は問う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「メルド団長」

 

 

 

 




ちなみに
もうわかっていると思うので最後に七海がやったのは反転術式です。ただし、いつでも自分の意思でできるわけではなく、唐突にできたりできなかったりです。ただし、ある条件を満たせば一定の間は意識して使えます。

ちなみに2
メルドを生かすか、それとも殺すかは正直悩んでます。とりあえず今は原作と違い生かしてますが、やっぱ殺そうかなぁと悩み中。次回までに考えておきます

跋、もう一回使えた(^ ^)
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