ありふれたやり甲斐と生き甲斐を探して   作:戦鬼

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今回は色々途中の理由付けや、原作キャラの描写が難しかった
そしてさっぱり進まないし…次回でシアの術式出したい


魂飛魄散①

ことのきっかけは旅の途中、ユエと香織のハジメの取り合いによる喧騒を呆れと諦めを持ちつつも、それが原因で前を見て運転できてないハジメにきちんと注意をしようとした七海と、それとほぼ同時にシアが気付いたことだった。

 

「なにか……隊商でしょうか?襲われているみたいですね」

 

遠くではあるが、七海がそれがわかる理由として、横転している馬車、おそらく隊商側であろう方が防御結界を展開しているのが見えたからだ。なかなかの結界で内側から攻撃して来るため賊も手をこまねいている。とはいえ、数の差があるなら、時間の問題だろうが――

 

ハジメは〝遠見〟ではっきりと事態の詳細を見ていた。

 

「相手は賊みたいだな。小汚い格好した男が……約40人。対して隊商側は15人くらいか?あの戦力差で……」

 

途端、ハジメは急に加速させた。

 

「は、ハジメ?」

 

「ハジメくん?」

 

ユエは急にこのような行動をしたことに、香織は最初から助けを求めるつもりであったが、それよりも早く行動するハジメに、それぞれ驚く。七海も気になり、とりあえず聞くことにした。

 

「何かありましたか?」

 

「………よくわからないが、あそこにメルドがいた」

 

それが理由だと判断したと同時に、七海は嫌な予感を感じた。それはどうやらハジメも同じようだ。仮にも王国の騎士団長が、このような所に来ているなどおかしい。何より、王国にいる他の生徒たちの様子を見ていた彼がここにいるのなら、何かあったと考えて間違いない。

 

(アンカジでの一件といい、やはり何かが起こっている)

 

この場所に到達する前、エリセンからアンカジにもう一度寄り、再生魔法でオアシスと土壌の毒を浄化したのだが、そこでアンカジの聖教教会関係者から聞いた。ハジメ達と七海が異端者認定されたと。その場はランズィとアンカジの住民達の抗議で収まってくれたおかげで、余計な血も流れずにすんだ。

 

だが、ハジメは来るべき時が来たな程度であったが、七海からしたら、されるのは当然でも、あまりにも早いという感想だった。ハジメ達の強さも、してきたことも、全てわかっているはずだ。悪行と呼べることもせず、圧倒的な強さで魔物大群や魔人族の襲撃から勇者達を救出。これだけしていれば、そんなにすぐ認定はされないだろうと。だが、メルジーネ海底遺跡で見たあの光景を思い出し、七海はアンカジを早く出発するのをハジメに促した。

 

そして今。ハジメはブリーゼをかっ飛ばし、とりあえず賊の数人を跳ね飛ばしたの開始に、次々と鏖殺していった。

 

「ふぅ、これで一通りですね。息のある者は?」

 

「あれで生きてる奴がいたら、それこそ人間どころか生物ですらないだろ」

 

必要はないだろうが、一応香織の護衛としてついていた七海が、誰に言うでもない言葉に対して反応したのはメルドだった。返り血を浴びているが五体満足で大丈夫そうである。

 

「しかし、なぜあなたがこんなところに?」

 

「俺だけじゃない」

 

「七海様、香織!」

 

茶色の薄汚れたヨレヨレのフードを目深に被った少女が近付く。先程まで結界を展開していたのは彼女だろうと、七海は残穢から判断した。というより、その声の人物も、メルド以上になぜここにいると言いたくなる人物だった。

 

「結界を見た時からそうだとほぼ確信してはいましたが…」

 

「リリィ!やっぱりリリィ!結界の魔力から見てもそうだと思ってたけど、こんな所にいるなんて」

 

ハイリヒ王国の王女、リリアーナ・S・Bハイリヒ。王族の彼女がこんな僻地にいる事は驚きでしかない。

 

「リリアーナさん、お久しぶりですね」

 

「七海様も、お元気そうで、何よりです。……こんな所で、皆さんに会えるとは、思いませんでした。僥倖です。私の運もまだまだ尽きてはいないようですね」

 

「リリィ?それって?」

 

「王都で……いや、他の皆さんに何かあったんですね?」

 

「より正確にいうなら、一部生徒も加害者側だ」

 

メルドの言葉を聞き、相当厄介な事態になっていると分かり、七海が続けて聞こうとした時――

 

「香織、治療は終わったか?」

 

「ひゃ!」

 

いつの間にかハジメが側に来ていたことに気付かず、リリアーナはいつもの凛々しい感じとは違う、可愛らしい声を上げるが、すぐに落ち着いて話しだす。

 

「…南雲さん、ですね?お久しぶりです。雫達から、あなたの生存は聞いていました。あなたの生き抜く強さに、心から敬意を。本当に無事でよかった。………あなたのいない間の香織は、見ていられませんでしたよ?」

 

「確かに、何度注意しても、どこかで無茶をしようとしてましたしね」

 

「うっ!…………その節は、すいませんでした」

 

七海の言葉に萎縮しつつ反省する香織に小さく笑いつつ、ハジメに笑みを向ける。国民から絶大な人気を誇る王女の笑顔をむけられているにもかかわらず、ハジメは何か感じた様子もない。まぁ、ユエ含めて何人もの女性に好かれ、連れていれば、この程度では赤くもならないだろうが、それにしても、胡乱な眼差しを向けることはないはずだ。が、その理由はその直後のハジメの空気を読まない一言で分かる。

 

「…っていうか、誰だお前?」

 

「へっ?」

 

心からの本心を堂々と言うハジメ。確かにハジメは《無能》の烙印をつけられていたのと、七海の訓練とこの世界の情報の収集をしていたのもあり、リリアーナと話した回数は他の生徒たちに比べて圧倒的に少なく、せいぜい2、3回。それもほとんど挨拶くらいなものだ。とはいえ、彼女は王女で、人当たりの良い性格と王族故のカリスマもあり、一度でも会えば忘れられるということはない。それなのに、目の前の男に完全に存在を忘れられ、初対面同様な態度を取られたら、それは傷つく。

 

「リリアーナさん、リリアーナさん。………ショックで呆然としてますね」

 

「おいハジメ!リリアーナ王女を忘れるのは流石に擁護できんぞ!」

 

「リリィ!リリィ!しっかりして!ハジメ君は、その、ちょっとアレなの!ハジメ君が特殊なだけで、リリィを忘れる人なんて普通はいないから!」

 

「おい、なんか俺さりげなく罵倒されてないか?」

 

「ハジメ君は黙ってて!」

 

「自業自得ですよ」

 

「いいえ、いいのです、香織、七海様。私少し自惚れていたのです」

 

「…南雲君、これを聞いても尚文句がありますか?」

 

健気なことを言うリリィを見て、七海の言う通り流石にちょっとだけ、俺が悪いなとハジメが思っていると、ユエ達と行商人らしき人物がこちらに寄って来る。

 

「お久しぶりですな、息災……どころか随分とご活躍のようで」

 

「どちら様でしょう?」

 

ハジメと違い、本当に会った覚えのない七海が聞くと、ハジメが横から言う。

 

「あ、栄養ドリンクの人」

 

「?………そういう商売を?」

 

「え?えぇまぁ、一応我が商会でも取り扱ってますが、代名詞になるほどでは」

 

ならなんでハジメがそう言ったのか、なのだが、

 

「あ、いや、なんでもない。えーと、七海先生、こいつはモットーっていってな。先生と再会する前にちょっとした縁があってな」

 

「やはり、七海建人様ですか。はじめまして、ユンケル商会の、モットー・ユンケルです」

 

(あぁ、だから栄養ドリンクですか)

 

その名前からなぜハジメが栄養ドリンクの人と言ったのか、そしてリリィよりも会った回数の少ない彼を覚えているかがわかった。その理由を知らないリリアーナが余計に落ち込んでいるが、七海は今は無視した。

 

モットーが言うには、ホルアドを経由してアンカジ公国に向かうつもりだったようだ。アンカジはオアシスと土壌が回復したとはいえ、つい最近まで滅んでもおかしくないくらいの窮状であった。それは商人間にも知れ渡っており、今が稼ぎ時だと、こぞって商人が集まっているらしい。アンカジとしても経済再生には商人の行き来と商売による金の動きは必須。どちらも利があるが、やはり利が多いのは商人側だろう。現にモットーのホクホク顔を見れば、かなり儲けたのがわかる。

 

説明が終わったのを見計らい、リリアーナがモットーに話しかけてくる。

 

「あの、商人様申し訳ありません。彼等の時間は、私が頂きたいのです。ホルアドまでの同乗を許して頂いたにもかかわらず身勝手とは分かっているのですが……」

 

「おや、もうホルアドまで行かなくても宜しいので?」

 

「はい、ここまでで結構です。もちろん、ホルアドまでの料金を支払わせて頂きます」

 

(やはり、我々に会うために商人に同行していたのか)

 

これまでの事、先ほどのリリィとメルドの言葉から、七海は嫌な予感がさらに加速する。

 

「そうですか……いえ、お役に立てたなら何より。しかし、お金は結構ですよ」

 

「えっ?いえ、そういうわけには……」

 

お金を受け取ることを固辞するモットーに、リリアーナは困惑する。ここに来るまで全面的に世話になっていたのだろう。正直なところ、後払いでいくらか請求されるのだろうと考えていたのもある。だがそれ以上に、礼には礼を返さないといけない思いもあり、お金を渡したいと思うが、モットーは困った笑みを向けて言う。

 

「2度とこういう事をなさるとは思いませんが、一応忠告をしておきましょう。普通、乗合馬車にしろ、同乗にしろ、料金は先払いです。それを出発前に請求されないというのは、相手は何か良からぬ事を企んでいるか、または、お金を受け取れない相手という事です。とはいえ」

 

スッとメルドを見る。

 

「今回の場合、既に料金は受け取らないと申していたのですがね」

 

メルドはふんと言いつつも笑みを浮かべている。

 

「いつのまに、というかそれは、まさか……」

 

「どのような事情かは存じませんが、王国騎士団長が内密金を渡そうとしてまで、あなた様と忍ばなければならない程の重大事なのでしょう?そんな危急の時に、役の1つにも立てないなら、今後は商人どころか、胸を張ってこの国の人間を名乗れますまい」

 

モットーは最初から正体に気がついていた。当然メルドも。だからこそメルドも1度は金を渡そうしたのだ。

 

「姫様は、自身がどれ程の存在かわからないのですか?そのような格好では、隠していないのと同義ですぞ」

 

メルドはやや呆れたように言う。ハジメのような対応が異常であって、本来は隠せるようなカリスマではないのである。そして、それでも尚モットーが無償で手を貸したのは、彼女の人柄と、そのカリスマあってのものなのだ。

 

「ならば尚更、感謝の印にお受け取り下さい。あなた方のおかげで私は、王都を出ることが出来たのです」

 

「………突然ですが、商人にとってもっとも仕入れ難く、同時に喉から手が出るほど欲しいものが何かご存知ですか?」

 

「え?……いいえ、わかりません」

 

「それはですな」

「信頼ですね」

 

「え?」

 

答えたのはリリィではなく、七海であった。

 

「おや?よくおわかりなようで。勇者一行最強と言うからには、武に力を入れている方かと思っていましたが、もしやそういう経験でも?」

 

「まぁ、似たようなものですが、私の場合は、伸びしろも売れしろもないクズを口八丁に買わせることが多かったですがね」

 

自嘲して七海が言うのを見たが、モットーはそれを嘲笑うことも貶すこともしない。商人をやっていればそのようなことしなければならないこともあることなどわかっているからだ。

 

「そう商売は信頼が無くては始まりませんし、続きません。そして、儲かりません。逆にそれさえあれば、大抵の状況は何とかなり、七海殿の言う通りの事も時としてできてしまうのです。……さて、果たして貴女様にとって、我がユンケル商会は信頼に値するものでしたかな?もしそうだというのなら、既に、これ以上ない報酬を受け取っていることになりますが?」

 

「リリアーナさん、お金を預かるとはその人の人生を預かると同義。しかしお金以上に大切な信頼をいただくとは、商売をする者にとっての未来そのものを表します。いまの状況であなたがお金を渡せば、私の人生を預けるから、それで信頼しましょうと言うようなものですよ」

 

リリアーナはモットーと七海の言葉に納得し、モットーにお辞儀をして礼を言う。

 

「モットー商会は真に信頼に値する商会です。ハイリヒ王国王女リリアーナは、あなた方の厚意と献身を決して忘れません。……ありがとう」

 

「……勿体無いお言葉です」

 

王女としての言葉を賜ったモットーは、部下共々、その場に傅き深々と頭を垂れ、リリィ達とハジメ達をその場に残し、モットー達は予定通りホルアドへと続く街道を進む。その際、七海は1度モットーを呼び止め、聞きたいことを聞く。

 

「そういえば、あなたが商人なら、我々の今の立場もわかっていると思いますが?」

 

「ええ、まぁ。…しかし、あまりにも浅はかだと思いますね」

 

「それを知って尚、我々にも関係を持つのですか?」

 

「当然です。我々商人にとって信頼の次に大切なことは、どれだけの利益を得るかですから」

 

要するに、ハジメ側についていた方が後々利になると考えているのだ。当然だが、言葉からして万が一の保険も用意してるだろう。

 

「ところで、アンカジから来たようですが、現状のアンカジは……」

 

「完全に回復したぜ」

 

七海が答える前に、会話を聞いていたハジメが答えた。

 

「ふむ、なるほど。最後に、今の王都は随分と雰囲気が悪く、あそこは今商売をするには向きません。それでは今後も縁があれば是非ご贔屓に」

 

どうやらアンカジの復興にハジメ達が関わっているのが分かるのだろう。最後に王都の情報を渡してきたのはお礼と贔屓にしてくれという意味。やはりモットーは本当に生粋の商人のようだ。その彼を見送った後、リリアーナとメルドの話を聞く事にしたのだが――

 

「まず単刀直入に、お二人に言っておきたい情報ですが………愛子さんが、さらわれました」

 

「「!」」

 

その情報は、まさしく最悪なものだった。リリアーナは掻い摘んで話す。王都で彼女の父であるエリヒド国王と、その取巻きたる宰相の重鎮がこれまで以上に聖教教会…というよりエヒト神に傾倒し、崇めていたのだが、リリィから見ても異常な程に心酔しているように見えて、それとほぼ同時期に生気のない騎士と兵士、メルド曰く、虚ろ状態の者が増えて来たこと、愛子がウルから帰ってきてすぐに国王含めて重鎮たちの会議の中で、ハジメ達が異端者認定を受けたこと、しかもその際に豊穣の女神と言われ、知名度と人気のある愛子の言葉も全て無視されたこと。

 

「あり得ない裁決に、私も異論を父に訴えてみたのですが……あの時の父は、まるで強迫観念に囚われているようで、むしろ、娘である私を、敵を見るような目で見ていました」

 

恐ろしくなったリリィはその時は理解したふりをして逃れた。そして、悄然と出て行った愛子を追いかけ、自らの懸念を伝えたところ、愛子がハジメが奈落の底で知った神のこと、七海がついて行く理由、すなわち旅の目的を夕食時に話すから同席してほしいと頼まれたのだが――

 

「見たんです、愛子さんが、銀髪の修道服を着た女性に気絶させられて、連れて行かれようとするところを」

 

その銀髪の女にリリアーナは底知れぬ恐怖を感じ、近くの客室にある王族のみが知る隠し通路に潜り込んだ。幸い、隠し通路には気配遮断系のアーティファクトが使われていたので、見つからずにすんだ。銀髪の女には。

 

「それで、どうしても香織を、ハジメさん達を頼るしかないと、お恥ずかしい限りですが、そう思い行動しようと思ったのですが、別の人に見つかってしまい」

 

「別の人?」

 

「騎士の1人、パーンズという方です」

 

「パーンズさんが?」

 

「そのあと、王都のスラム街に連れて行かれて。そしてそこに、彼が……メルド団長。あなたも少し前に行方不明になっていたのに、どうして?」

 

「まぁ、それを話す前に、私に起こったことを伝えておきます」

 

そしてメルドの話を聞いていたが、リリアーナもハジメや七海同様に話しを続けるように言う。

 

「俺があの一撃死ななかったのは、お前の託してくれた物と、健太郎と浩介のおかげだ」

 

「野村君だけでなく、遠藤君も?」

 

「どうも健太郎の奴、何かあった時の為に、心が折れたフリをして訓練に来ず、ずっと脱出用の穴を作ってんだ。聞いた時は驚いたぞ。まるで蟻の巣みたいになってたからな。…とにかく、あの場には健太郎と浩介がいた。隠密を活かし、更にわかりにくくする為に地中で魔力を視認しつつな。聞いた話だと、2人も〔+視認(上)〕になったらしいし、気配遮断も、2人くらいならあいつと密着していれば、共有できるようにもなっていた」

 

メルドは死を覚悟した瞬間、自分が落ちていくのを感じ、巨大な爆発音の後、気付いたら地面の中だったそうだ。そこで、ジッと息を潜めていた。相手が気付かなかったのは、極光によって一時的に相手の視界も塞がれたのと、強い攻撃で穴を塞いでしまったこと、まさか地面に蟻の巣のごとく道があるなど思わなかったこと、強くなった遠藤がいたこと、呪力、魔力の残穢が周囲に飛散していたこと、相手が残穢を深く見なかったこと。まぁ、とにかく、さまざまな偶然によるものだろう。

 

「あと、なんとなくだが、それ以外にどうも相手の様子がおかしい感じがしていたな」

 

「おかしい?」

 

「ああ。圧倒的に優位な状況なのに、妙に焦ってるような、そんな感じだ。ともかく、しばらくしてから城の外に出て、スラム街に身を潜めていた。定期的にスラムの子供や仲間達を見に来るパーンズを待ちながらな」

 

あとは彼に諸事情を簡単に話し、城の中で動きがあったら知らせるように伝え、その帰りに城の抜け道の出口からでたリリアーナと出会ったとのことだ。

 

「………話しは変わりますけど、空洞ができすぎて、城が崩壊しないか心配です」

 

「まぁ、そのおかげでこうして私達の前に来る事ができたんですから。ところで、メルドさん、2人は?」

 

「今も王都にいる。居なくなって怪しまれないようにする為と、大介の監視としてな」

 

「…………」

 

「しょげてんのか、先生?」

 

「揶揄わないでください。南雲君、君とてわかるでしょう?彼にそんな度胸はないし、ましてここまで計画的に動けると思えない」

 

「魔人族か」

 

ウルで清水に協力を持ちかけたのと同じように、檜山にも協力を持ちかけて来たのだとして、いつ持ちかけて来たか。それに騎士団に起こった〝虚ろ〟の正体。これも魔人族のものとしても、どうやって王都の結界を無視して侵入したか。

 

(王都の結界は、見た限りで相当強固だった。それをどうやって………いや、まさか、檜山君以外に内部に)

 

考えを巡らせていくなかで、ハジメは七海に問う。

 

「色々考えるのはわかるけどさ、七海先生はどうすんだ?」

 

「……私の判断は、最終的に君に委ねられている。それに私が言う前に君も」

「そうじゃない」

 

ハジメは七海の言葉を遮る。

 

「あんたがどうしたいか聞いてんだ。あの縛りが無くとも、あんたはどうする?」

 

「………南雲君、ハルツィナ樹海に行く前に、この問題を解決しておきたいと思ってますが、君はどうしますか?」

 

ハジメはその問いに呆れと、仕方ないなと言うような感じで「ハッ」と言い、答える。

 

「いいぜ。こうなった原因は、俺にもあるからな」

 

ウルで愛子にも神の真実と旅の目的を話してしまったのは間違いだったかもしれない。愛子を利用する為にとはいえ、そうしてしまった責任がハジメにはある。何より、今の自分がより良くなる為に助言をくれたもう1人の恩師を、放っておくことは、できそうにない。

 

「そうと決まれば、行動開始だな」

 

「よろしいのですか?」

 

リリアーナが聞いたことはメルドも同じくの疑問。ハジメはクラスメイトはもちろん、この世界のことも無関心だ。七海はそうではないが、ハジメと行動しているなら、はいわかりましたと素直に助けるようなこともしないだろうと。

 

「勘違いしないでくれ。王国のためじゃない。畑山先生のためだ。あの人がさらわれた原因は、俺にもあるし、放っておくわけにはいかない」

 

「私も、多くは救うつもりはないです。優先は畑山先生の救出、そして生徒たちの安全確保です」

 

と七海がハジメに続いて言って、更に続ける。

 

「とはいえ、ついでに王国も救われると思いますよ。その異変の原因は十中八九、私を含めた彼らに、何かしらの敵対行動をすると思うので」

 

「おう。立ちはだかる敵は、全部ぶっ飛ばしてやるよ」

 

ついで。もののついでに救われるということに、リリアーナは感謝すればいいのかわからないが…

 

「では、私はそうであることを期待しましょう。よろしくお願いします」

 

「…国を預かる身である王女が、軽々しく頭を下げるべきではないですよ」

 

「下げてどうにかなるなら、こんなのいくらでも下げますよ。…そのくらいの覚悟はあります」

 

リリアーナの言う覚悟を、七海は疑うわけではないが、どうしても聞くべきことがあり、七海は聞く。

 

「………もうひとつ、もし、教会や、王国の上層部と争うとして、我々があなたの父親を殺す可能性がありますが、それはいいんですか?」

 

「!」

 

リリアーナとて、わかっていないわけでない。今の自分がしている行為は、父を、王国を裏切っていると見られてもおかしくない。だからと言っても…

 

「やめろ建人。それを聞くのは、流石に酷だろ」

 

メルドから聞いた話と、リリアーナから聞いた話、今七海達が持っている情報。それらを合わせるなら、おそらく今の国王はすでに――

 

「もし、そうする以外で、国を守れないなら…………お願いします」

 

一瞬、声が止まり、震えていたが、決意を目に出して、リリィは言う。

 

「わかりました」

 

その決意を受け止めて、七海は出発する準備を手伝う。

 

「なぁ、先生。王女様がいってた銀髪女のことなんだが……」

 

「君もですか?私も、見覚えがあります」

 

メルジーネ海底遺跡で見せられた光景に、それに似た人物がいた。時代も、場所も、それぞれ違うというのに、その女が、2人の脳裏に浮かび上がる。

 

「なんであれ、挑んでくるなら、道を阻むなら、ぶっ殺してやるよ」

 

「……気をつけてください。相手はまず間違いなく特級だと思うので」

 

「わーってるって。けど、五条悟じゃなきゃ、やりようはあるさ」

 

話しの中でしか聞いたことない絶対強者の名前をだしつつ、獰猛な狼のような眼差しになるハジメ。

 

「…ハジメ、素敵」

 

「はぅ、ハジメさんが、またあの顔をしてますぅ。なんだかキュンキュンしますぅ」

 

「むぅ、ご主人様よ、そんな凶悪な表情を見せられたら……妾、濡れてしまうじゃろ?」

 

「…………あっちもどうにかしてくれませんか?」

 

七海はこんな女性陣と共に行動することに慣れてきたとはいえ、やはり同族に思われるのは苦である。

 

「それに関しては、すんません」

 

ハジメの情けない声で締められて、2人してため息が響いていた。

 

 

 

 




ちなみに
遠藤が前回名前すら出さなかったのはわざと。もはや存在感をいつでも消せます。戻す方法は、かなり難しい、本人の体質もあって
野村が地下通路を作ると考える前に技能が強化され、気配を消して見回り→野村がウロウロしてた。縛りで何するか聞けないのでついていく→いい場所見つけた→声かけて、共に行動
こんな感じ

ちなみに2
でも実はあいつは気づいている
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