ありふれたやり甲斐と生き甲斐を探して   作:戦鬼

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感想の所で書きましたが、前の話を出した時点でこの話は6割以上はできてました。シア術式説明にかなり苦労しました。理解できる能力を作るのって難しい。
ちゃんとできているか正直心配……なんか毎回心配ばかりですね


魂飛魄散③

七海がノイントへの確信を得る少し前。別行動をすると言ったメルドと別れた後、ユエとシアは香織とリリアーナと夜陰に紛れて行動していた。

 

ユエからすれば、ハジメと行動を共にしたいところであったが、愛子の届け先である光輝達が洗脳の類を受けていないかの確認が必要だったのと、神山が聖教教会の総本山でもあるため、愛子の救出まではできるだけ騒動を起こさない方がいいとし、ハジメ1人に行かせる……予定だった。

 

(愛子は、ハジメの為の言葉をくれた。お礼にはいいかも)

 

ユエは遠からず愛子が七海を想っていると感じたのと、七海自身にも話をさせるのにいい機会として、彼も向かわせた。その為に、いつか使うからとハジメは製作していた呪具、暗路(あんろ)を渡した。七海は少しだけ渋ったような顔をしていたが、すぐにハジメについて行った。

 

ティオは万が一に備えて王都のどこかで待機していたが、大結界が破られたのがわかり、念話石で状況を説明した。魔人族と魔物の大軍が近付いて来ていることを告げられ、ユエはそのことに動揺しているリリアーナを横目に告げる。

 

「ここで別れる。あなたは先に行って。香織、護衛してあげて」

 

「え、こ、ここで、ですか?」

 

一刻も早く光輝達と合流して態勢を整える必要があるのに何を言い出すのかと、リリアーナは訝しそうに眉をひそめるが、それを無視してユエは窓を開けて、瞳は彼方にいるであろう敵を見つめ、一段と低い声で言う。

 

「ティオの連絡にあった白竜の使い手の魔人族は、ハジメを傷付けた。……泣くまでボコる」

 

「怒ってますね、ユエさん。…まぁ、私もなんですけどね。泣いて謝ってもボコりましょう」

 

ユエに同意して言うシア。見た目と違った物騒な言葉にリリアーナは引いていたが――

 

「私も、正直なぶり殺したいんだけど」

 

(香織⁉︎)

 

隣にいる友人まで怖いことを言い出して驚愕してしまう。

 

「今の私が行っても、足手纏いだしね。今回は、2人に譲る。けど、絶対に」

 

「殲滅ですぅ!」

 

「ん」

 

楽しそうに怖いことを言う3人の女性に、リリアーナはドン引きしていた。

 

「でも、香織さん、1つだけ訂正です」

 

「?」

 

「香織は強い。足手纏いではない」

 

「!」

 

つい最近、1級という七海と同程度の実力と認められても、未だ遠い段階(ステージ)にいるユエ。メルジーネ攻略後、己の術式を完全なものとして、七海から特級の称号を得たシア。その2人からの賞賛は、

 

「うん。こっちは任せて!」

 

感極まるものであった。2人が窓から飛び出して行ったのを少しの間無言で見つめていたが、すぐに残った2人も進みだす。

 

「…南雲さん、愛されてますね」

 

「うん。狂的…じゃない、強敵なんだよ。………私も、すぐに追いつくけどね」

 

王国側に利になる面があるが、そんな意識などないであろうユエとシアにあっさり後回しにされ、この場にいる唯一の友人も、実力があれば置いて行かれていた事実に、

 

(私、王女なのに、扱いがどんどん雑に…)

 

リリアーナはドーンと気落ちしつつ、光輝達の元へ向かった。

 

 

大結界消失と魔人族襲撃に、王都は大混乱に陥っていた。大結界が破られたのを呆然と眺める人々を、警邏隊の隊員達が「家から出るな!」と怒号を上げながら駆ける。王都からいち早く逃げようと試みる者から、王宮内に避難しようとする者まで、様々だ。夜中だったのでまだこの程度で済んでいるが、次第に暴徒と化す者達もでてくるだろう。

 

迫り来る魔物と魔人族の軍団相手では、王都の兵士達だけではどうにもならない。そんな様子を王都の大時計の天辺で眺めていたティオのもとに、王宮から飛び出してきたユエとシアが合流した。

 

「ティオ、あのゴミ野郎は見つけた?」

 

「ティオさん、あのふざけた事してくれたクソ野郎はどこですか?」

 

「……お主等。いや、まぁ、気持ちはわかるがの?『皆さんが一緒に来てくれて心強いです!』と言っとったリリアーナ姫が少々不憫じゃ……あっさり放り出して来おって」

 

だからこそ、メルドも別行動ができたというのにだ。

 

「……細かいこと」

 

「小さいことです」

 

呆れたような表情をしてティオは言うが、2人は全く気にしていない。

 

「それに、まだ香織もいる」

 

「ですですぅ」

 

「まぁ、そうじゃがな。あやつも強くなった。もう治癒師なんて呼べんの」

 

ティオは治癒師という枠から外れた強さを得た香織を評価していた。実際、彼女の成長は目を見張るものがある。その理由は、

 

「七海と毎回1対1をして、魔力操作訓練をして、シアとスパーリングとかされて、それでも生きてるんだから、強くならないと困る」

 

「毎度見てて思うが、七海は鬼じゃな」

 

自分の生徒で、女性だというのに、本当に容赦がない。まぁ、それだけ香織が実力を上げている証拠でもあるが。

 

【おい!ティオ!今すぐこっちに来てくれ!】

 

【ぬおっ!ご主人様?どうしたのじゃ?】

 

念話石から思いのほか強い声音が響き、名を呼ばれたティオが思わず驚きの声を上げた。

 

【単刀直入に言う。やばいのが出て七海先生が重傷!畑山先生と一緒に預かって欲しい】

 

【!?…相分かった!直ぐに向かうのじゃ!】

 

怪我人がいては全力を出せない相手と相対していると即座に判断したティオは一瞬で〝竜化〟すると咆哮一発、標高八千メートルの本山目指して一気にその場を飛び立った。

 

【…ハジメ、気を付けて】

 

【ハジメさん!あの魔物使いは私とユエさんが殺っちまいますから安心して下さい!】

 

【って、お前ら姫さん達といるんじゃ……まぁ、香織が一緒にいれば充分か。何するつもりか知らないが、そっちも気を付けてな】

 

正直、ハジメは2人が何をしようとしているかはわからないが、自分の戦いに集中したいのと、自分について来る者たちへの信頼からそう言って通信を切る。

 

「さて、ユエさん。ちょっと提案というか、質問なんですけど、いいですか?」

 

「?」

 

「どっちがあのクソ野郎をぶちのめします?私が」

「ダメ、私」

 

即答されてシアは「ですよねぇ」と呟く。

 

「完成した私の術式も早く使いたいですし、できるならそれなりに強い相手の方がいいのですけど」

 

なんて怖い取り合いがなされる中、体長3〜4メートル級の黒い鷲のような魔物に乗る魔人族が左右から挟撃するように急降下してきた。

 

「いや、お話中に邪魔しないでくださいよ」

 

2人の魔人族が聞いたのは、その声が最後だった。

 

ほぼ同時(・・・・)に、シアの取り出したハンマー、ドリュッケンを後ろ(・・)から叩きつけられ、勢いをつけて地上に落下していき、ぐちゃりという音を出した。

 

「あー今ので完全に、王国側の戦力と思われたかもしれないです」

 

「ん。でも関係ない」

 

ユエはシアのもとに移動し、フィンガースナップをする。瞬間、無数の風の刃と、膨大な熱を持つ火炎が、鋭い槍の如き水が、眼前にいた魔人族を一掃していく。

 

「そう思うなら勝手にそう思ってればいい。……というか、シア、あんなザコ相手にもその術式使っていいの(・・・・・・・・)?」

 

「問題なしです!術式解放だけならそんなに呪力は使わないのでまだまだ余裕ですし、今の私なら、5秒(・・)はいけますので!というか、ユエさんもなんか魔法の使い方がヤバくないですか?」

 

「事前詠唱との併用。どうやら実戦でも活かせそう。七海には感謝………ちょっと複雑だけど」

 

(まだ認めたくないんですねぇ、教師力で負けてるの)

 

シアもそうだが、ユエも魔法の使い方に更なる進化があった。呪術的な理論を、自身の知る魔法の知識と照らし合わせ、魔力の流れの基本調整から、蓄積された魔力の意識的な分割と、それの維持。魔法威力の調整と、詠唱による威力の拡大化など、広がっていく知識は彼女をもって身震いさせた。だが、それが魔力のない人物の講義のおかげというのが、ちょっとばかし不満であった。

 

「! ユエさん、大きいのが来ます!」

 

「!」

 

シアが言った直後、ないもない空間から楕円形の膜が出現し、そこから特大の極光が迸る。極光が当たった周囲の建物を根こそぎ吹き飛ばした。

 

「やはり予知の類か。忌々しい」

 

男の声が響くと同時に、楕円形の膜から白竜に乗った赤髪の魔人族、フリード・バグアーが現れ、続くように先程の黒鷲や灰竜に乗った魔人族が数100単位で集まり、ユエとシアを包囲した。

 

「まさか、あの状況から生還するとはな。やはり、あの男に垣間見たおぞましいほどの生への執念は、危険すぎる。まずは、奴の仲間である貴様らを……いや、まて。お前達が生還しているということは、奴も、あの男も生きているな。どこにいる?」

 

最初に言ったあの男はハジメだとすると、次に言ったのは七海のことだろう。弱者に傷をつけられた事実は、フリードのプライドが許さない。否、神の使徒として認められた彼からすれば、亜人族同等の存在に負けた事実は、あってはならないことなのだ。だが、

 

「……聞きましたユエさん?あの野郎私達を見て眼中になしですよ」

 

「……殺す理由がまたできた」

 

それは彼女達の怒りに触れるものでもあった。自分達はお前をぶっ潰しに来たというのに、眼中になし。

 

「「ブッコロス」」

 

それがゴングのように、一斉に周囲の魔物と魔人族が魔法を放った。炎が、水のレーザーが、風の刃が、氷の砲弾が、岩石の散弾が、鞭のような雷が、ダメ押しとばかりにフリードが極光を上空から、ユエとシアの全方位から襲い掛かる。

 

「ふん…お返し」

 

何もせず、逃げ場のないことに絶望して諦めたのかと思うが、それが大きな間違いであると、フリードは気付く。

 

「〝界穿〟」

 

神代魔法のトリガーを、無詠唱で引いた。だが、それは以前のクリオネもどきに見せたものとは比べものにならない精度。ユエは自分達の正面と、上空から来る極光に合わせてゲートを作り出す。普通なら、これでは上空からの攻撃が正面から来る攻撃に変わるだけだが、それは、フリードの常識内での話。

 

「しまっ⁉︎回避を!」

 

ユエ達が正面のゲートに飛び込んだ瞬間に理解して、回避を告げるが、極光を吸い込むゲートの周り、先程までユエ達がいた地点とは別に、更に複数のゲートが出現した。どうにか来る極光を含めた自分達の魔法に反応できたのは、ごく僅かだった。

 

「おのれっ私の部下を、私に殺させたな!」

 

ユエは既に、空間を1対だけでなく、複数の展開を可能にしている。1対はユエとシアが移動する為に、残りは全て魔法を敵の後方につける為のもの。圧倒的な魔法のセンスと、〔+視認(極)〕による魔力の流れを読み解き、〝魔力操作〟はより効率的に、自己範疇に収まるように、更に香織もしてきた、使う魔力を決めたら分割し、それに合った魔法の同時使用。

 

「まぁまぁかな」

 

ユエ本人的には、100点満点とはまだ言えないようであるが、常識外が更なる常識外と成ったことは、まず間違いない。

 

「小娘ごときがぁ!」

 

「穢らわしい獣がぁぁ!」

 

民間人の家のある場所から離れ、外壁の外に移動した彼女らを見つけ、来いよと挑発をされて、再び攻撃を仕掛けて来る。ユエの魔法を警戒し、未だ100以上はいるであろう魔物を先行させ、地上からも大軍の一部がユエ達を狙って砲撃する。

 

「ユエさんばっかりずるいです!」

 

シアは敵の数など、最初から関係ないとばかりに特攻をする。魔人族は「バカが」と無防備な彼女に攻撃を仕掛けるが、ユエが止めてない時点で気付くべきだった。無意味なのだと。

 

「こ、攻撃が、すり抜け」

 

「いや、消え」

 

突如姿を消したシアに困惑するが、彼女は既に自分達の眼前にいた。ハンマーでそこにいた魔人族を殴殺し、炸裂スラッグ弾で狙い撃つ。敵に囲まれているはずなのに、攻撃が当たる前に消え、時に正面、時に真後ろ、時に距離を取って狙い撃ち。ただの移動ではなく、ワープに近い。

 

(空間魔法によるもの?いや違う!なんだ、何をしている⁉︎)

 

「私だけに集中していいんですか?」

 

瞬間、ユエの重力魔法で地上まで一気に落とされ、そのまま地上の軍にまで被害が及ぶ。

 

「ええぃ!あの2人を分断する!金髪の術師は私が殺る!残りは兎人族を殺せ!妙な技を使う、気をつけ」

「言われなくても、そうするつもり」

 

ユエはフリードの言葉を遮り、空間魔法で近付いてそのまま魔法で吹き飛ばし、吹き飛ばされたフリードは後方に更にゲートを作り、ユエもそこに入って移動した。

 

「あぁぁ!取られちゃいましたぁーユエさんずるいですぅー」

 

ブーブーとブーイングを言うシアに、自分達が全く相手にされてないことを悟った魔人族は攻撃を再開するが、シアは術式など使うまでもないと回避する。

 

「貴様らは殺す!必ずだ!」

 

雄叫びを上げる金髪の魔人族はどうやらそれなりに地位があるのか、他の魔人族を指揮しつつ、シアに攻撃して来る。

 

「貴様のような獣など、さっさと殺してやる!そして、カトレアの仇を!」

 

「また、私は眼中になしですか?」

 

ここまで来るともう呆れの方が強くなる。さっきから圧倒されてる相手を眼中になしなど、ふざけるなもいいところだ。

 

「貴様には分からんだろう!愛する者を失い、焦燥とした、この俺の気持ちなど!」

 

「いや、あなたの恋人のこととか聞かされても、知りませんし」

 

シアは本当にどうでもいいとばかりに、冷めた目をして言う。

 

「だいたい、死ぬ覚悟の1つや2つ、常に持っておくのは当たり前でしょう?それに、相手にとってはどうでもいいことをわざわざ言うなんて、同情でもされたいんですか?」

 

それが魔人族の逆鱗に触れた。

 

「殺してやる。狂うまで痛ぶり尽くして、殺してや」

 

もう聞くのも嫌だったのか、最後まで言わせることなく、シアは殴殺した。統率する者がいなくなっても、彼らは攻撃を仕掛けるが、まるで当たらない。

 

「なぜだ、回避などできないはずだ!攻撃を予測できても、この攻撃の雨の中を!なぜ!」

 

「怯むな!神代魔法の力だ!それがなければただの獣に、我々が負ける道理などない!」

 

「…魔法かそうでないかも理解できないなんて、ダメですね」

 

ため息まじりに言うシアの周囲を、距離をとりつつ増援として来た魔人族と、魔物が取り囲む。

 

「殺せ!数では勝っている!距離をとりつつ、物量で押しつぶせ!」

 

一斉砲撃。逃げ場はない。シアのいた地点が爆散する。

 

「いくらなんでも、これなら」

 

「殺せるとでも」

 

瞬間、「は?」と間抜けな声を出して、魔人族の1人は叩き落とされた。

 

「なぜだ、魔法を使ったようには見えなかった、お前は、何をしてるんだ⁉︎」

 

「だから、魔法じゃなくて、呪術で、これは私の術式ですよ(少し使いすぎたでしょうか?一気に決めましょうか)」

 

そう考えて、シアは術式の開示をする判断をした。

 

「私の術式は」

 

 

『・・の跳躍ですね』

 

試験という意味も込めて、七海はシアとの1対1の模擬戦をし、完敗した。メルジーネでも映像としてだが見ていた。だからわかっていたが、シアの術式は特級に等しい能力。と言っても、シアだから使いこなして、特級レベルの術式になるのだが。

 

『名前はわかってますか』

 

『もちろん!』

 

 

「私の術式、月兎跳躍(ラピットラビット)は、時間の跳躍ができるんですよ」

 

「時間の、跳躍だと?」

 

「ええ。時間跳躍中の私は、存在してるけど、時間軸上にはいない。文字通り、この世界から消えてるに等しいんです」

 

こいつは何を言っているんだと魔人族は思い、攻撃をする。あえてシアは動かず、甘んじて攻撃を受けるが、すり抜ける。

 

「私は術式発動後、5分という時間を与えられ、与えられた時間を使うことで時間の跳躍が可能です。この跳躍にもいくつか種類があって、今みたいに動かない状態なら攻撃に合わせて上手いこと時間を使用すると、まるで私の身体をすり抜けたように見えるくらいに一瞬で消えて、戻ってくるという感じにできますし」

 

グッと足に力を入れて動く姿勢を見せたが、魔人族が警戒する前に、後ろを取っていた。

 

「⁉︎」

 

「使用した時間以内で動ける範囲なら、私は一瞬で移動できます。これは時間跳躍とは少し違うかもしれませんけどね」

 

後ろからの攻撃に反応出来きれず、数人が落とされた。

 

「は、はは、ははは、バカが!自分から手の内を明かして!今5分と言ったか?どれだけ時間を使った?後どれくらい残ってる!」

 

「そうですね、あと、2分30秒切ったとこでしょうね。けど、安心してください」

 

シアは七海から教わっている。

 

『シアさん、覚えていて下さい。術式の開示が使えるのはその相手に1度のみ。ですから、術師が術式の開示をするというのは、その術師が本気を出すという意味でもあり、同時に相手の』

 

「絶対殲滅ですから」

 

瞬間、シアの姿が消え、ドゴぉという鈍い音が一斉に、ほぼ同時に響く。

 

「なぁ⁉︎」

 

「ごうぅ⁉︎」

 

「ぐえぇ!」

 

シアの姿は見えないまま。だというのに、次々に魔人族が、魔物が落とされていく。実際は移動できる範囲内を、術式を使って攻撃しながら移動してるだけだ。

 

術式、月兎跳躍(ラピットラビット):術式発動後、術者は5分の時間を与えられる。術者はこの5分を使う事で時間跳躍が可能。使用した秒数は一度術式を解くことで戻るが、1度術式を解除すると12時間は使えなくなる。また、全ての時間を使用しても自動的に術式は解かれて次の発動に12時間かかる。

 

「ぜりゃあああああ!」

 

時間跳躍中、術者はその時間軸から一時的に消える為、攻撃は当たらない。移動せずに使うと最大1分のただの時間跳躍だが、移動しながら使うと術者の移動距離に応じて、呪力、術式によって与えられた時間の1秒以内の対価使用(この対価の使用時間は術者のコントロールで変化する)、移動できる距離を分の時間を使って移動できる。例えば虎杖悠仁がこの術式時間3秒を使用ながら移動すると彼が3秒でつける位置、50メートル以内であれば、どこにでも瞬間移動ができる。

 

しかし、術者はそのたどり着いた未来の場所、3秒後の未来も、3秒でつける地点で何が起こるかも、術式によってわかるわけではない。3秒後の未来でなにが待ち受けるのか、仮に時間跳躍した場所に別の敵が現れて攻撃してきてもそれに対処するのは難しい。だが、

 

「なぜだ!なぜ、こちらが移動しても、すぐに対応できる!」

 

シアの固有魔法〝未来視〟、その新たな派生〔+天啓視〕、その更に上位の〔+確定視〕、最大5秒先の未来を任意で見ることが出来るのだが、その未来はどこまでも細かく見れる。相手の微妙な動き、声、目線。それらから読み解き、完全な未来を見て、良い未来を掴み取る。魔力消費はそれなりにあるが、高い魔力と、ハジメから貰った魔力貯蔵用の指輪でカバーし、さらに七海の指導によって得た魔力の視認能力で、運用する魔力量を超細やかに廻すことで、ほどほどの魔力で絶対的な未来を掴み取る。おまけに連発できる。これにより、シアは術式のカバーが可能である。

 

「くそ、クソォぉ、正面から戦ったらどうなんだ!この卑怯者!」

 

時間跳躍のラグはほぼないに等しく、1秒分の移動をしても、次の移動場所を、明確にしているなら、コンマ0秒以内に使用可能である。まぁ、これも、未来を見て相手の動きを把握しておく必要があるのだが。

 

「それこそ、くだらないでしょ?」

 

時間の跳躍の最中、シアの声が魔人族達にとどく。

 

また術者はこの術式の副次効果で、発動中は時間が正確に読み取れる。そして、最大のポイントは月兎跳躍(ラピットラビット)の1度にできる使用時間。最大1分。だが

 

 

『『黒閃?』』

 

修行の際、ウルで見せた空間が歪んだ拳の攻撃についての質問を受けた七海は、黒閃について説明していた。

 

『呪力を帯びた打撃のクリティカルヒットとでもいいましょうか。打撃との誤差、0.000001秒以内に呪力がぶつかった時に起きる、空間の歪みの現象を言います』

 

『0.000001秒って、どんだけ…つか、無理じゃね?』

 

『できる人はできますよ。ただ、その条件がある為、狙って出す術師はいません。…まぁ、五条さんなら別かもしれません。あの人は私が必死に出すクリティカルヒットを、ジャブ感覚で出せる人ですから』

 

『………ほんと、なんなんだよ五条悟って」

 

『考えるだけ無駄です。まぁ、例外はあります。1つが、黒閃を1度放った直後の連続攻撃、もしくはその日の内です。黒閃を放った術師は、一時的に、アスリートで言うゾーンに入った状態になり、普段意図的にしている呪力操作が、呼吸のように自然にめぐる。自分以外の全てが自分中心に立ち回っているような全能感に身体が満たされる状態。これなら、ある程度は狙って出せる可能性が上がります』

 

『でも、結局はそれって1度は黒閃を決めておく必要があるってことですよね?』

 

シアが言う通り。それが必須だ。

 

『だからこそ、黒閃を決めた術師と、そうでない者とでは、呪力の確信に天と地の差がでます。続けましょう。もう1つの例外は、術式です。私の術式も、その特性上、黒閃が出やすい。こういったように術式によっては、黒閃の発生に大きく利用できるものもあります』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月兎跳躍(ラピットラビット) の最低跳躍時間は、0.000001秒。当然だが、これだけで決めれるほど甘くはない。だがシアの未来視と、術式によってヒット時に細やかな跳躍で、僅かなズレをカバーする事でき、

 

「黒閃‼︎」

 

シアは黒閃を狙って出せる。黒閃が、空間の歪みと共に、打ち付けた魔物とその後ろに乗る魔人族、更にアーティファクトによる衝撃で、周囲にも影響を及ぼす。

 

「ば、化け物」

 

魔人族の誰がそう言ったかはわからない。だが今のシアにとってそれは、とても心地良い言葉だった。

 

「うふ、あは、あはははぁ!」

 

余談だが、自分の意思で黒閃を決めた感覚は通常の黒閃以上に味わえる感覚が強く。更に1度黒閃を決めたことで、術式の使用の効率は更に上昇し、ここから先の攻撃は常に黒閃となる。

 

「ハッハぁ!」

 

ドンドン訪れる全能感によって、シアはハイになる。

 

「ヒャッハァアアアアアデスゥぅぅ‼︎」

 

シアが周囲の魔人族を殲滅するのに、あまり時間はいらなかった。

 




ちなみに
シアの術式の拡張部分と欠点は実はまだあります。あと、ハイになるのは術式使用中のみで、解除すると素にもどる。当然戦ってた記憶もありで

ちなみに2
原作と違い、ミハイルはあっさりと殺しました。ハジメ達がやったって思うのもありかなと思いましたが、かなり鬱陶しいし、どっちにしてもシアがイラァってしたら瞬殺だからカットしました。

前書きでも言いましたが、6割作ってたので、次回も結構できてます。うまくいけば今週中に出せます

………勤労感謝の日にでもだそうかな
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