ありふれたやり甲斐と生き甲斐を探して   作:戦鬼

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わかってたよ。俺達が読んでる作品の作者が、芥見下々特級呪霊(並のエグさ)だってことは

それでも、推しキャラの死は辛い、マジで辛い。
読んでてマジで叫んだのは七海の死以来ですわ


魂飛魄散⑥

再び時間は遡る。

 

王都の結界が破壊され、ガラスが砕けたような不快な騒音が聞こえ、就寝中の雫は即座にシーツを撥ね除け、枕元に置いてあった黒刀を握り、臨戦態勢となった。ちなみに小太刀の方が枕元に置く武器としては最適であるが、1番使い慣れた長刀の方が即座の戦闘には良いのと、先日、試し切りとして王都の外の魔物に使った際、とんでもない事になってからは、残りの使用回数がわからないのもあって、使用の制限をしていた。

 

「…………」

 

この世界に来てから、普段から気を抜くことはなく、警戒をしていたが、七海からの指導後は更に反応が上がっていた。しばらく抜刀状態でいつでも攻撃に対処ができるようにし、息を潜めていたが、室内に異常がないと分かり、僅かだが安堵するも、警戒は解かない。

 

(愛ちゃんとリリィがいなくなって、まだ3日。王国内の兵達や貴族、国王の不穏な動き。やっぱり、何かが起こってる)

 

愛子の方は総本山でハジメ達と七海の異端審問について協議していると、もっともらしい説明を受けたが、いなくなる前に重要な話があると言った彼女が、なにも言わずに姿を消すなどあり得ないと思い、直接会わせてほしいとも頼むも拒否され、神山のリフトも停止されていた。リリィの父である国王に直談判するも、3日もすれば戻ると言われて、その時は引き下がった。

 

3日経って、リリィも愛子も戻らなかった時、雫はそれをひどく後悔した。

 

しかも王宮内にいたイシュタル達教会関係者の姿は消え、国王、宰相、側近、更にメルドとも面会できなくなった。頼れる大人がいないなか、雫は決断した。愛ちゃん親衛隊の園部優花達の6人と相談し、今晩愛子が戻らないのなら、自分達だけで神山へ物理的に、要するに8000メートル級の登山という無茶をしてでも愛子のもとへ行くと決めた。

 

光輝にも相談しようかと思うが、今の彼の精神状態ではまともな判断はできないと踏んだ。現に、この状況下でも光輝は違和感はあれど、自分に課せられた問題、離れていった香織に対する気持ち、ハジメと七海に対する複雑な気持ち、そして、人を殺した事実と、これから先もその問題が来るという不安感が、彼の中での優先事項になっていた。とはいえ

 

「もし、このままリリィや畑山先生が戻らないなら、無理矢理でも国王に直談判する」

 

今日の訓練の後にそう言い、少しは変化があるなと雫は思った。だが、逆にそれが多くのクラスメイト達を不安にしていた。あの光輝でも不安になっていると。これも、光輝を神山への強行登山へ誘わなかった理由の1つ。

 

「とはいえ、もうそんな状況下でもなさそうね」

 

雫はすぐに装備を整える。元々早朝に8000メートル級の登山+総本山の強行をできるよう、ある程度の準備をした状態で就寝していたので、ものの数秒で整えることができた。

 

(一応、コレも持っていこう)

 

1回使用して以降、ずっと使わずにいた小太刀を腰につけ、そして部屋の扉を少しだけ開けて、見える範囲に怪しい人物がいないのを確認し、静かに部屋を出た瞬間、

 

「あ、雫っち!」

 

「⁉︎」

 

雫は最初の「あ」が聞こえた瞬間に黒刀に手をかけて身構えた。が、すぐにその声の主が愛ちゃん親衛隊の宮崎奈々であるとわかり、構えを解く。

 

「馬鹿!」

 

「無用心!」

 

「何のために静かに行動してるんだよ」

 

と園部含めた親衛隊のメンバーから注意をうけつつ、宮崎は頭をペシペシとはたかれた。雫は良い意味で緊張感を削がれたので大丈夫という意味を込めて手をパタパタと手をふり、向かいの光輝達の部屋をノックした。

 

「誰だ?」

 

「私よ、光輝。開けてくれる」

 

問いかけの後、光輝は扉を静かに、僅かだけ開ける。以前までの光輝なら、確認もせずに無用心に扉を開けていただろう。この変化を喜ぶべきか、そうでないのか。考えたくなるが、それを置いて、雫は話をしようとしたが、

 

「あなた、また寝れてないの?」

 

光輝の目元はわかりやすいくらいに隈ができていた。ここ最近の光輝は就寝してもほぼ毎回同じような夢を見る。魔人族の最後の姿と言葉が出たり、自分の知る人物達の屍が転がっている光景を見たり、どちらも最後に七海が出てて、ホルアドを出る前夜の問いをかけて、汗まみれで起きる。これの繰り返しで、まともに寝れていなかった。

 

「……大丈夫だ。明日には、マッドさんが手配してくれた睡眠薬が来るから」

 

マッド曰く、夢を見ないで眠れる睡眠薬だそうだ。ただ、薬であるので副作用として、タバコや麻薬ほどにないにしろ、ある程度の依存性があるようだが。

 

「そんなことより、今の、何かが割れたような音はなんだ?」

 

「……分からないわ。とにかく、皆を起こして、情報をもらいましょう。なんだか、嫌な予感がするのよ……」

 

「ん〜〜一応、警戒するけどよ、雫の考え過ぎじゃねぇか?ここ、王宮内だぜ」

 

龍太郎が部屋の奥から少し眠そうな様子で姿を見せる。先程の大音響で目が覚めたのだろう。

 

「正直、俺もそう思うが、何かあってからじゃ遅い。雫の言う通り、皆を起こしに行こう」

 

龍太郎ほどでないにしろ、光輝も王宮内の安全性を疑うことはしてない。だが、警戒心と緊張感があれ以降やはり上がっており、光輝はそう判断していた。光輝の言葉に部屋の外にいた優花達は頷き、手分けしてクラスメイトを起こしに行った。

 

大迷宮攻略をしていた勇者パーティーと檜山パーティーはすぐさま装備を整えて廊下に集まった。ただ、やはりというか、居残り組…要するに心が折れていた者達は未だ眠っていたり、怯えて部屋から出るのを拒んだりと、集合させるのに少し手間取ってしまった。

 

「皆、寝ている所すまない!だが、先程何かが壊れる大きな音が響いたんだ。王宮内は安全だと思いたいが、何が起こったのか確認する必要がある。万が一に備えて、一緒に行動しよう!」

 

光輝の活を入れる為の声で皆「ハッ」とする。『もし部屋に残って、光輝達がいない間に何かあったら』と。

 

顔を青くし、ざわつきつつ、全員がコクリと頷いた。

 

「ニア!」

 

パタパタと軽い足音がした廊下の方を雫が見ると、雫と懇意にしている専属侍女のニアが駆け込んで来た。

 

「雫様………」

 

ニアはどこか覇気が欠けるような表情で雫の傍に歩み寄る。騎士の家系で、剣も嗜み、いつもの凛とした空気を纏う彼女を見てきた雫は違和感を感じた。何か魔法の影響がと思うが、残穢が見えない(・・・・)のと、ニアの口から飛び出た情報に度肝を抜かれて、違和感も吹き飛ぶ。

 

「大結界の1つが、破られました」

 

「な、なんですって?」

 

思わず雫は聞き返し、それに対してニアは淡々と事実を告げる。

 

「魔人族の侵攻です。大軍が王都近郊に展開されており、彼等の攻撃で大結界が破られました」

 

その情報は、あまりにも現実離れしていた。遥か北の大陸の更に奥にある王都に、関所、領、町をこちらに情報を与えないまま通過して来るなどありえない。しかも何百年も王都の守りを絶対たらしめてきた守りの要を、あっさりと破壊された。

 

「本当、なのか?」

 

光輝は冷や汗を出す。冷静でいられないのも無理はない。

 

「今のところ、破壊されたのは第3障壁のみです。しかし、第3障壁は一撃で破られました。全て突破されるのは時間の問題かと」

 

ニアの言葉に光輝は少し考え、自分達の方から打って出ようと提案した。

 

「俺達で、少しでも時間を稼ぐんだ。その間に王都の人達を避難させて、兵士団や騎士団が臨戦態勢を整えてくれれば…」

 

光輝の考えに決然とした表情を見せたのはほんの僅か。心の折れたクラスメイト達は目を逸らして暗い表情をする。それを察した光輝は俺達だけでもと号令をかけようとしたが

 

「天之河、ちょっと待ってくれ。戦える連中だけで挑むのは良いけど、他の奴らと、まだ起きない谷口はどうする?」

 

「っ!それは」

 

野村が声を上げ、光輝は考えだすが、更に野村は告げる。

 

「実は、こんなこともあろうかと、脱出用の穴を作ったんだ。王都の外まで繋がってる。戦えない奴は、そこから脱出させよう」

 

「い、いつの間に」

 

「それで訓練に来なかったのに、いつもやつれ気味だったのか」

 

七海との縛り、秘密裏の行動についてだが、万が一話さなければいけない事態ならば発言は許可するとしていた。野村はこの状況でなら、その制限を突破できると考えた。実際言えたことが、何よりの証拠である。

 

「本当なの?それ?」

 

「ああ。ただ、そんなことしてたら、王宮の、特に教会関係者からなんて言われるかわからないから、秘密にしてたごめん」

 

より正確に言うなら、七海の指示のもと、自分で考えて行動した結果なのだが、そこは言えない。聞いた辻もそうなのだろうなと感じたが、彼女も縛りをしているので話せない。

 

「………わかった」

 

驚きつつ、その内容を確認した光輝は、元々自分達だけで時間稼ぎをしようと思っていたので、納得し、声をかける。

 

「なら、ここからは別れて行動しよう。時間稼ぎ組は俺と一緒に。逃走組は、穴を作った野村と行動してくれ。ただ、野村、安全が確保できたなら、こっちの支援に回れるか?」

 

野村は「ああ」と頷く。が、そこに再び待ったをかける人物が出た。それは恵里だ。

 

「待って、光輝君。勝手に戦うより、騎士団の人達と合流するべきだと思う」

 

「恵里…だけど」

 

「ニアさん、大軍って…どれくらいか分かりますか?」

 

逡巡する光輝から視線を外し、恵里はニアに尋ねる。

 

「………ざっとですが、10万ほどかと」

 

その場にいた全員が息を呑む。もはやこれは襲撃ではない。侵攻である。

 

「光輝君、そんな数、七海先生でも抑えらえない。私達だけじゃ、尚更抑えられないよ。数には数で対抗しないと。私達は普通の人より強いから、1番必要な時に必要な場所にいるべきだと思う。それには、メルドさん達ときちんと連携をとって動くべきじゃないかな?」

 

普段は大人しい眼鏡っ子の恵里だが、ここぞという時は、控えめな性格の瞳に強い光が宿る。彼女も勇者パーティーの1人。光輝達にも決して引けを取らない。なにより、その意見はもっともなものだ。

 

ちなみにだが、メルドが行方不明の件は生徒達に伏せられている。余計な混乱を与えない為だ。

 

「ふぅ……私も恵里に賛成するわ。少し、冷静さを欠いてたみたい。光輝は?」

 

「…そうだな。焦って動いたら、何があるかわからない。連携をとって対処するのが、最も効果的だ」

 

光輝は一瞬、七海の冷静な顔が浮かんで黙ったが、恵里のここぞという時の判断力はかなり信頼していたので、それに賛同した。

 

「じゃあ、野村。そっちは任せる。あと、城内の非戦闘員も出来るだけ避難させてくれないか」

 

「わかった。でも、とりあえずはクラス連中……特に、谷口を優先する」

 

野村は恵里の部屋の隣、個室で眠り続ける鈴を担ぎ、戦闘を望まない生徒達と鈴と共に避難しに向かった。

 

「俺達も急ごう。メルドさん達と合流するんだ」

 

勇者パーティー、檜山グループ、園部達の各パーティーのリーダーは頷き、兵士や騎士達の集合場所に向けて走りだす。また、野村とついて行くよりも、光輝含めた実力者のもとにいる方が安全と思った居残り組の生徒もそれに肯定した。

 

そこにいた1人は、ほんの一瞬苦い顔をし、すぐに黒く、三日月のような邪悪な笑みを見せていたが、気づく者はいなかった

 

 

緊急時に指定されている集合場所は、これまでも何度か七海との訓練や模擬戦でも使った屋外訓練場だった。すでに多くの兵士と騎士が整然と並び、壇上で騎士団副団長のホセが状況説明を行っている。ただ、その兵士や騎士達は誰もが青ざめた表情で呆然と立ち尽くして、覇気はなく、お世辞にも士気が高いと言えるものではない。その状況を見ていた光輝達に気づいたホセは状況説明を中断して、声をかけてきた。

 

「……よく来てくれた。状況は理解しているか?」

 

「はい。ニアから聞きました。それで…メルドさんは?」

 

「……団長は、数日前に、行方不明になっている」

 

「え⁉︎」

 

ホセの言葉に光輝が驚き、それに続くように他の者達も動揺した。

 

「すまない。今話すのは、お前達に余計な心配をかけてしまうと思い、兵士を含めて緘口令を出していた」

 

「そんな!メルドさんは無事なんですか⁉︎」

 

「わからない。だが、今は、他にすべき事がある。我々は、この未曾有の事態への、対処をしなければならない」

 

ホセは拳を握りしめ、光輝を見る

 

「今こそ、勇者の力がいる。さぁ、我らの中心へ。あなたが、我々のリーダーなのだから……」

 

ホセは光輝の手を取り、整列している兵士達の中央へ案内した。さらに、居残り組の生徒達も中央へ案内しだす。戸惑いはあるが、無言の兵士がひしめく場所で何か言えるはずもなく、流されるまま光輝達について行く。

 

(何か、この感じ……気持ち、悪い?)

 

周囲の兵士と騎士は表情は全く変わらない。その違和感と、ここについてから感じる妙な感触。ザラリと、砂のついた手で皮膚を軽く撫でられるような、不快感。無意識に雫は黒刀を持つ手に力が入る。

 

「ねぇ、雫。なんだか」

 

不安を押し殺した表情で小さな声で問いかける園部に、雫は「分かってる。気を抜かないで」と同じく小さく呟く。しかし、この状況では拒否もできない。何かがおかしい。そう感じている。それは光輝ですらそうだが、この違和感の正体がわからず、流されるまま光輝達は兵士と騎士の中心へ辿る着く。

 

ホセが演説を再開する

 

(なに?違和感が、増したような)

 

雫と同じく、それに気付いたのは、この場にいる中では雫と原因含めて5人(・・・・・・・)

 

「みな、状況は切迫している。しかし、恐れることは何もない。我々に敵はいない。我々に敗北はない。死が我々を襲うことはありなどしない。さぁ、みな、我等が勇者を歓迎しよう。今日、この日の為に、我々は存在するのだ。さぁ、剣をとれ」

 

ホセの言葉と共に、兵士と騎士が一斉に抜剣し、掲げる。それと同時に、周囲から戸惑う声がしたので、雫を含めた幾人がそちらを見ると前衛の生徒がいつの間にか生徒達の間に入ってきた兵士や騎士達によって、互いに距離を取らされ、囲まれていた。

 

「⁉︎みんな、逃げ…」

「始まりの狼煙だーー注視せよ!」

 

雫は総毛立つ。今度はハッキリと見えた。周囲の兵士と騎士達から、ほんの僅かだが残穢が見えた。それに反応し、逃げるよう告げる前に、ホセ懐から何かを出し、頭上に掲げ、その怒号のようなホセの声に誘導され、殆どの者がそちらを見た。

 

刹那、カッ!と光が爆ぜる。ホセの持つ何かが閃光弾のように強い光を放ち、そこに注視していた光輝達は咄嗟に目を逸らす、目を覆うなどしたが、一瞬でも直視したことで、視覚が光に塗りつぶされ、次に聞こえたのは肉を突き破る生々しい音と、くぐもった悲鳴。苦痛に耐えられず、ドサドサと倒れて行く者いる中で、その強行を防ぐ、金属音も聞こえた

 

「何⁉︎」

 

「わかんないけど!間に合った」

 

「防御を強化するわ」

 

それは発光前に感じた魔力を咄嗟に感じ取り、そして即座に目を隠したことで、目をあまり灼かれることもなく、襲いくる凶刃を防いだ雫を筆頭に、彼女ほど反応ができずに目を灼かれつつも、〝聖絶〟を簡易詠唱をした辻と、その内部にいた吉野。そして雫の近くにいた恵里だ

 

「こんな……」

 

閃光が収まって周囲を見ると4人以外の生徒が全員、背後から兵士や騎士達の剣に貫かれ、地面に組み伏せられた光景。特に前衛組の筆頭の光輝や龍太郎は酷く血まみれで凄惨な状況下だが、辛うじて生きている。それに僅かながら安心して見ていると、

 

「遠藤君⁉︎」

 

「うぐ、あぁぁ」

 

いつのまにか、というより気付かなかった。両足を切断され、全身を滅多刺しにされて倒れた彼を見つけるまで。あまりの痛みに痙攣していた。そこに更に、魔力封じの枷をつけていく。他の組み伏せられている者も同様にだ

 

「遠藤く」

 

ゾクリと、先程以上の感覚に、咄嗟に雫は回避を選択した。魔力の刃が通り過ぎていく

 

「あらら〜、流石というべきかな?…ねぇ、雫?」

 

その生徒は、既に防御を解いているにもかかわらず、兵士達に襲われず、平然としていたが、それ以上に、普段とまるで異なっていた。

 

「ぇ、なん、ぇ?何を言って…⁉︎」

 

あまりに雰囲気が変わり、言葉を詰まらせるも、反射的に背後から斬りつけようとした騎士の攻撃をかわす。

 

「これも避けるとか…ホント、雫って面倒だよね」

 

その生徒は呆れているかのように言う。それに問いを言おうとしたが、更に激しく雫に剣が突き出される。他の兵士や騎士も加わり、力がいつもより上がっているかのような一撃一撃を凌いでいたが、

 

「雫様!助けて……」

 

騎士に押し倒され、馬乗りの状態から、今まさに剣を突き立てられようとしているニアの姿があった。

 

「ニア!」

 

身体強化を足に集中。更に〝無拍子〟からの〝縮地〟による超高速移動で振り下ろさせれる剣を掻い潜り、ニアのもとへ到達し、勢いそのまま馬乗りになっていた騎士の腹を蹴りつけて吹っ飛ばし、巻き込まれる形で数人の兵士と騎士が吹っ飛ぶ。

 

「ニア、無事?」

 

「雫様……」

 

倒れ込んでいるニアを支え起こしながら、周囲に警戒の眼差しを向ける雫。ニアはポツリと雫の名を呟き、両手を回して縋りつき、

 

「え?」

 

雫の背中に懐剣を突き立てた。

 

「ニ、ニア?ど、どうして……」

 

背中に奔る激痛に顔を歪めながら雫は自分に抱きつくニアを見下ろし、気付いた。彼女から、魔力の残穢が見えていた。

 

「………」

 

何も語ることもないニアは、普段の親しみのこもった眼差しも快活な表情もなく、ただ無表情に〝虚ろな瞳〟雫を見返す。

 

(あぁ、どうして)

 

気付かなかったのかと後悔する。最初からニアの様子がおかしかった。だが何か魔法を受けたにしては残穢は見えなかったので、原因は王都侵攻のせいだろうと思っていた。

 

何より、彼女を信頼していた。だから、彼女の様子が自分の周囲を無表情で取り囲む兵士や騎士と雰囲気が全く同じであると、気付かなかった。ニアは、そのまま雫の腕を取って捻りあげると地面に組み伏せて拘束し、魔力封じの枷を付けた。

 

「アハハハハッ、流石の雫でも、まさかその子に刺されるとは思わなかかった?うんうん、そうだろうね?何せ七海先生でも気付けないように残穢を隠したんだし、直前まで待ってから用意したんだし?」

 

その生徒は嘲笑いながら告げる。

 

「ただ、やっぱり動作や言動が複雑になったり、攻撃的な行動をさせようとすると、反応は強くなるみたいだね。実験はしといて正解だった」

 

雫は背中に感じる灼熱の痛みと頬に感じる地面の冷たさに歯を食いしばる。この異常は、この生徒が原因だと、ハッキリと悟る。

 

「どう、いうこと?」

 

認めたくない。普段一緒に笑いあっていた彼女が、このような兇行をするなど。だが、認めざるをえない。そこにいるのは、紛れもなく

 

「どういうことなの、恵里っ!」

 

中村恵里。控えめで大人しく、気配り上手の心優しい仲間だった、彼女だった

 

 




ちなみに
実は最初は神代魔法をゲットするとこの描写はできており、そこを投稿しようと思いましたが、ちょっと順序を変えました。あと、この話で香織も出すつもりでしたが、これ以上やると2万文字いく可能性があるので、分けます。

ちなみに2
遠藤は現段階で強くしすぎたなと思い、ここで一時戦線離脱にする為、こうしました。もうわかると思いますが、恵里も七海と同じ〝魂知覚〟を習得してます。でも(弱)ではなく普通の〝魂知覚〟ですので性能は上です
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