ありふれたやり甲斐と生き甲斐を探して   作:戦鬼

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乙骨のこの主人公感、たまらん!と同時に次回不安



変貌汚染

『白崎さん、ちょっといいですか?』

 

『はい?なんですか?』

 

これから王都に向かうというとき、七海は香織に警告をしていた。

 

『現状、この事態の黒幕が誰かは、ハッキリとはわかりませんが、少なくとも、檜山君は最低でも敵にまわります。メルドさんが死んだと思っているなら、おそらく味方のふりをしてしかけてきてもおかしくない』

 

『それは、わかってますし、今の私なら、檜山君くらいなら、余裕で対処できると思うんですけど』

 

『まぁ、最後まで聞いてください。メルドさんの話を聞くに、バックにまだ他の生徒がいると私は踏んでいます。そして、その生徒も、檜山君も、もう戻れない位置にいると思います』

 

騎士や兵士、一部貴族含めた王国の重鎮達。これら全てが一斉に裏切ったというのはあり得ない。すなわち、なんらかの魔法を受けて操られているか、すでに死亡して傀儡になっているかだ。それらを行ってなお、平然と、何食わぬ顔で他の者達の側にいるなど、狂気そのものだ。

 

『この世界で、君はまだ人を殺していない。もう一度聞きます。君は、人は殺せますか?』

 

『………私は、そうなる覚悟で、ハジメ君に着いていく選択をしました。だから、その質問は今更ですよ』

 

七海の問いに対し、落ち着いた表情と声で香織は言う。

 

『本当は、別に言いたいことがあるんじゃないですか?』

 

『…………』

 

香織は、聡明だ。七海が遠回しに言おうとしていることもわかっている。そして七海も、今から言うことが、とてつもないほど愚かなことだとわかっている。

 

『………白崎さん、檜山君を、恨んでますか?』

 

 

 

魔力石にストックしてあった魔法、〝聖絶〟で檜山の凶行を防ぎ、香織はそのまま攻撃した。

 

「ご、え?」

 

リリアーナは、魔法の刃で手足を串刺しにされた檜山の絶望した顔と、それを見る冷ややかな目をした香織が、恐ろしく見えていた。

 

「〝聖典〟」

 

光が香織を中心に、水面に落ちた波紋のように広がる。香織がしていたのは、〝聖典〟の詠唱…だけではない。〝縛光斬刃〟。相手を捕らえる〝縛光刃〟と、相手を切り裂く〝斬光刃〟の合わせ技。相手に攻撃しつつ、その動きを止める。

 

七海は香織にも訓練を積ませていたが、シアや七海のような近接戦闘能力差を埋める為、ユエからの教え(香織以外理解不能)によって、魔法の技術も同時に上げていた。香織は自身の戦い方を、これまでのものを、更に昇華させた。

 

(これは、まずいな)

 

恵里は内心で『役立たずがっ』と檜山に対して毒づくが、それ以上に焦っていた。今の回復魔法で、突き刺された剣が癒しの光で押されて抜け落ち、どういうわけかわからないが傀儡兵達の動きも鈍くなった。

 

「うおぉぉぉぉ!」

 

光輝の身体から、魔力を抑える枷をつけているにも関わらず、魔力が溢れている。それが少しずつ大きくなると同時に、癒された身体に力を入れて、枷を破壊した。更に魔力の出力が上がる。〝限界突破〟の光の輝きだ。その魔力で押さえつけていた騎士達を跳ね飛ばし、怯んでいるところに、自分を突き刺していた剣を取り、両断…

 

「こう、き、さまぁぁ」

 

「!………ふぅぅぅ、がぁ!」

 

できなかった。

 

「そうだよね、光輝君。たとえ死んでても、今の光輝君じゃ無理だよね」

 

すでに死んでいる。そんなこと光輝もわかっているのに、傀儡の騎士が声を出した瞬間、振るった腕が止まってしまい、逆に殴られた。

 

そのまま光輝が手放してしまった剣を傀儡騎士が取り、光輝へ攻撃したが、スッと光輝が手をあげると、拘束されていた時に奪われた聖剣が空中を回転しながら飛んできて、光輝の手の中に収まり、そのまま斬り裂く。

 

「うっっ!グッ!」

 

吐きそうな気分になるが、どうにか我慢して、傀儡兵達を斬り伏せる。そこにはいつもの技術はなく、がむしゃらだ。だが、運のいいことに、飛び出した光の刃が生徒の数人を解放した。

 

「皆!武器を取って!」

 

香織は再び〝縛光斬刃〟で傀儡兵を拘束し、全員が動く機会をつくった。

 

(遠藤君は足が両断されてる。足が残ってるなら完全回復させることはできるけど、そんな暇はない)

 

故に香織は彼には〝天絶〟をし、結界の展開と同時に周囲の騎士を吹っ飛ばし、痛みを和らげる魔法と、簡易な回復魔法をして命を留める。拘束をしつつ、全員の回復をし、1人の命を留める為の回復、これらの作業を全て同時にしている為、今の香織はしばらくは動くことができない。

 

(ハジメ君のビットみたいなのがあればいいけど、ないものねだりはいけない。ここですべきことをするしかない)

 

だが、充分役立った。解放された玉井淳史は他の者たちがしている魔力を武器に込める行為をし、更に自身の天職、曲刀師の能力を使って騎士の剣を使い、寸分の狂いなく枷のみを切って園部を解放した。彼らも愛子を守る為、努力していた。勇者グループに比べたら、ぐだぐだな魔力の使い方だが、一時的な武器強化はできた。

 

「助かった。ここからは、私の出番!」

 

園部は靴下の中に隠していたナイフを取り出す。それは、彼女の専用アーティファクト。1本でも手元にある限り、残り11本の投擲ナイフは何度でも呼び戻せる。彼女は1本を隠し持ち、12本中1本はダミーを混ぜていた。ダミーのナイフ以外が彼女の元にくる。それによって進路上にいた拘束していた騎士達を吹き飛ばす。

 

「シャァ!」

 

龍太郎と永山も動きだし、光輝の援護をし始め、雫も解放されて、武器を手に取り、周囲の傀儡兵を切り倒す。

 

雫も光輝ほどではないが斬りつけた時に不快感を覚えるが、そんなことを言ってる場合ではない。気を入れて次々と傀儡兵を両断して、捉えられている生徒達を解放させる。

 

「恵里ぃぃぃ!」

 

恵里に光輝が迫り来る。死んでいるとはいえ、人を斬り裂く度に、吐き出そうな顔は更にぐちゃぐちゃに歪んできている。これでは傀儡兵の声にも反応しないだろう。

 

「(まだ効果が出ないのか⁉︎)…っっこれ、使うかな」

 

恵里は先程雫から奪った小太刀を取り出す。彼女は試し斬りに雫が使った所を見ていた。それ故に、使うのを躊躇う。なぜなら、雫曰く、威力が強すぎて前方にいる敵味方が関係なく巻き込んでしまうから。だが、

 

「!」

 

恵里が鞘から取り出した瞬間。いや、もっと言うなら見た時から、恵里はこれはアーティファクトではないと、気付いていた。いま、鞘から出して気付いたのは……

 

「もしかして……!」

 

そしてその時、この場にいる者では恵里しか感じない、膨大な力の奔流。神山の方角から感じたそれに彼女は、

 

「あ、はぁぁぁぁ、気持ち、いい」

 

どこまでも、うっとりと、心地よく感じていた。恵里は不利な状況だというのに、落ち着き、息を小さく吐きだし、ニマリと笑みを浮かべる。

 

(⁉︎まさか、あれを、使うの⁉︎)

 

雫はどれだけ馬鹿な行為か分かっているかという問いを、投げかけることはせず、

 

「皆、避けてぇぇぇぇぇ‼︎」

 

大きく叫ぶ。それに反応できたのは、勇者グループと優花達のグループ。反応したわけではないが、居残り組は解放された者も含めて恐怖で地に伏しているおかげで、射程範囲外。残りの、今立っているのは、檜山グループの3人。それらの身体が、周囲の傀儡騎士達と共に、バラバラになった。その直後、暴風の如き音が響き、訓練所の一部を斬り裂き、そのまま大小の瓦礫になって落ちてくる。

 

「ぐっ!〝天絶《群》〟!」

 

香織は反応できてないリリアーナを庇うように伏せ、そのまま落ちてくる瓦礫から皆を守る為魔法を発動した。本来なら自身の周囲に蜂の巣を思わせるように結界を置くのだが、それを頭上に広域展開した。正直かなり無理をした使い方だ。自身とは違う位置に展開しているから、魔力もかなり使う。

 

ハジメ製作、小太刀型呪具、『凄風(せいふう)』。呪具化によって〝風爪〟が変化したもの。込めた呪力で威力が決まるのだが、初めて雫が使った時、一振りで目の前にいた魔物も、その先の大地、おおよそ30メートルが斬り刻まれ、何もなくなった。その壮絶な威力の為、使用を控えた。だが、雫には別の驚きがあった。

 

(どういうこと?威力が、あの時と違って、抑えられて、ある程度だけど、コントロールしてる?)

 

避けろと言ったが、正直、雫は死を覚悟した。だが、自分が最初に使った時より、あまりに威力が低い。

 

(南雲君は回数制限があるって言ってたけど、それが原因?)

 

「な、なんなんだ、ありゃ?」

 

「ハジメ君のアーティファクト……ううん。呪具」

 

「じゅ、じゅぐ?」

 

龍太郎が「何だそれ」と言うが、今香織には説明する暇はない。

 

「もうちょっと威力を落とせばよかったかなぁ、あんなバラバラじゃ、傀儡にもできない」

 

まだまだだなぁと言うように、呟く恵里は、いつの間にか檜山のもとへ移動していた。

 

(いつの間に!)

 

集中していた筈の香織も含め、速すぎて誰もが気づかなかった。

 

凄風(せいふう)の真価は威力調整の幅。最大は雫がしたように更地にするほどの威力だが、威力を絞るだけ絞って自身にかけることで、攻撃時の速度そのままに、風に乗った高速移動をも可能にする。

 

「けど、わかったよ。この力が何なのか。多分、魔力と魔法と同じなんだ」

 

「お、おい、何、する」

 

香織が〝天絶《群》〟を遠隔で使用したのもあり、檜山の拘束が解除された。だが、檜山は四肢を貫かれていたので、立ち上がることができない。そんな彼に恵里は近づき、その背に触れる。

 

「動けるようにしてあげる」

 

「!えぉ、えぁぁ、ああぁぁぁぁ‼︎⁉︎」

 

身体に雷のような電撃を受けた痛みが檜山を襲うが、それは一瞬。すぐに収まる。

 

「⁉︎⁉︎」

 

檜山は何がおきたかわからない。だが、

 

「なんだ、なんだこれ、なんだコレ!あひ、あひひひ、力だ、力が漲ってくる」

 

伏せていた者達の中で、真っ先に動いたのは、光輝だった。檜山に何があったかはわからないが、香織に危害を加えようとした時点で、恵里と同じく敵に回ったのは明確だ。だから、動きだす前に、叩き潰す(・・・・)と決めた。

 

「え?」

 

間の抜けた声を出して、光輝の身体が吹っ飛ぶ。腹に檜山の攻撃を受けたからだが、今の光輝は〝限界突破〟をしている。本来なら、檜山が勝てるはずがない。だというのに、あっさりと、光輝は吹っ飛び、訓練所の端の壁にぶち当たる。

 

「ごぉあ!」

 

光輝は口から血を流し、そのままばたりと倒れた。

 

「さぁ、行きな、欲しいんだろ?香織が」

 

「………」

 

恵里の言葉に檜山はコクリと、静かに頷く。

 

「香織!気をつけ…グッこの!」

 

雫は香織の援護をしようとしたが、傀儡兵に阻まれる。他の者達も同じようで、すぐに動けない。

 

「リリィ、下がって防御魔法をしてて」

 

香織は警戒心を上げて、まず戦闘能力的に低いリリアーナを下げ、〝斬光刃〟を出して構える。

 

(何をしたのかわからない(・・・・・・・・・・・)けど、〝限界突破〟をしてる光輝君に勝ったなら、油断はできない)

 

「ふふ、ひひ、香織…かーおーりぃー」

 

気持ちの悪い声を低く出しつつ、檜山が迫る。その速度は異常に速くなっている。おまけに、四肢の傷が癒えている。

 

(速い!)

 

油断していたとはいえ、光輝を吹っ飛ばしただけはある速度。だが

 

「こっちは、毎回それ以上を相手にしてるんだから!」

 

香織はここ最近、常に訓練で七海とシアの相手をしている。この程度の相手に、負けるわけにはいかない。檜山は迫り来る最中で拾った剣を2本持ち、それをがむしゃらに、なんの戦術もなく、甘い技術で振るう。香織はそれら全てを回避し、

 

「そこ!」

 

完全に空いた胴に槍を突き刺すように光の刃が刺さる。

 

「ごぇぇ!」

 

醜い声を出す檜山。そのまま香織は身体強化の出力を上げ、力任せにぶん投げる。刃から抜けドサっと倒れ、回転するが、途中で姿勢を整え、獣のような瞳と、よだれを流して檜山は自分の香織(獲物)を視界に入れる。

 

「えぁぁぁぁ‼︎」

 

「〝聖絶〟」

 

無詠唱ながら、足し引きを意識した〝聖絶〟の壁にぶつかる。結界は砕かれたが、その間を許すことなく、〝縛光斬刃〟で再びダメージを与えつつ、動きを封じた。先程よりも数は多く、完全に動きを封殺するためだ。

 

「!」

 

「ひひ、ああああああ!」

 

檜山は光の刃で拘束されているにも関わらず、無理矢理前進する。進むたび自身の傷を広げつて迫り来る。拳を振り上げ、振るって来るのだが、

 

(檜山君の、身体が、変貌していく)

 

〝聖絶〟によって防がれたその拳は肥大化していた。拳だけではない。足を含めた脚部はまるで象のようになり、胴部は筋肉が膨張し、衣服を破く。腕は拳が巨大な岩石のようになったのに合わせるように、大きくなる。檜山である証拠は、顔だけだ。

 

「ふむふむ、肉体変化…いや変貌か。そういう制約か、あるいは…」

 

恵里はその様を観察しつつ凄風(せいふう)を振り上げ、

 

(まずい!また来る!)

 

香織は咄嗟に〝聖絶〟を展開する。先程の攻撃を見たのもあり、自分の後ろ全てを守るだけの広範囲展開。維持力にはあえて力を入れず、〝聖絶〟のどんな攻撃も1度は防ぐ能力を利用し、防ぐつもりだ。

 

「⁉︎」

 

「ふふ、引っかかったぁ」

 

だが、香織は知らない。凄風(せいふう)は、威力の調整の幅がとてつもなく広いのだ。放たれた風の刃はかすり傷ができる程度の威力。だが、〝聖絶〟の効果を発動させるには充分。間髪入れずに変貌した檜山が迫り来る。

 

「〝天絶〟」

 

だが、香織の戦闘スタイルはまだ完成してない。〝天絶〟を空いた片手に出して盾にして、檜山を止める。だが、それが悪手だったのに気付いたのは、

 

「っっっ!」

 

「「香織ぃぃぃ!」」

 

彼女の足元から生えてきた荊のような黒い触手に、巻き付かれ、足に刺さった瞬間だった。

 

(バカだ、私は!何をしたのかわからないってことは、それは魔法じゃなくて…)

 

動きを封じられ、痛みを知覚してしまい、〝聖絶〟は破壊されて間もない。腕の〝天絶〟で防ぐタイミングも失った。その香織の胴に、肥大化した檜山の拳が放たれた。

 

「ゴッ!」

 

鈍い音が香織の腹部からし、そのまま吹っ飛ぶ…ことはなく、檜山の腕から香織の足に巻き付いた物と違い、荊のような針がない触手が香織に巻きつき、引き寄せられてそのまま肥大化している手で香織を握る。

 

(どう、いう、ことか、わからない。けどこれは、魔力の動きも起こりが見えない。つまり、これは)

 

「か、かお、り、香織ぃ。やぁと手に入れた。やっぱり南雲よりも俺の方がいいよな?でもダメじゃないか、あんなことしたらよぉ。ひひ、ひひ、ひひひ……おい、なか、村ぁ!さっさとしろよぉ!契約だろうがよ」

 

(呪術…そして、術式。でも、なんで、檜山君が…)

 

「はいはい。でも殺しちゃダメだよ。少し試してからだ。今の僕なら〝縛魂〟を生きたままでもできるかもしれない」

 

それはまるで、理科の実習の一環として生き物の解剖をするような目で、純粋に、それを知りたいという感情で、意識が落ちかけている香織に恵里は近づく。

 

「あぁぁぁ‼︎お前らぁぁぁ‼︎‼︎」

 

怒髪天を衝くという様子で、先程の攻撃を受けたダメージも残るなか、光輝は向かっていく。〝限界突破〔+覇潰〕〟を発動し、己の感情も無視して、傀儡兵を八つ裂きにしながら向かって来るその姿は、まるで鬼のようである。だが

 

「っ⁉︎な、なん、だ、身体が、」

 

光輝の身体に異変が起こる。〔+覇潰〕のタイムリミットによるものではない。膝をつき、盛大に吐血する。

 

「ふぅー、やっと効いてきたみたいだね。結構強力な毒なんだけど、流石は光輝君。団長さんは用意出来なかったし、香織も予想以上に強くて、檜山も役に立たないから、正直もうおしまいかと思ったけど、僕は本当に運がいい。七海先生に聞こうにも、この力のことをはぐらかされそうだし、何より自分にもあるなら黙ってたほうが、都合がいいと思ったけど、ここまで強力なんてね」

 

「何をっ言って…ごぁ」

 

光輝はまた吐血して、今度は全身が地に伏してしまう。

 

「くふふ、王子様がお姫様をキスで起こすなら、お姫様は王子様をキスで眠りに誘う、もしくは殺して自分のものにする……なんて展開もありだよね。あぁ、安心して!身体が動かなくなる後遺症が残るだけだから!光輝君は、後でちゃ〜んと僕の手で殺してあげるから!」

 

「あの、ときのっ……ぐっ、ごっ」

 

血反吐を吐きつつ、先程のキスの時に毒薬を飲まされていたのだと理解した。恵里に効かないのは先に解毒薬を飲んでいたのもわかる。その出所も。なぜなら、

 

「マッド、さん」

 

光輝を押さえつけた新たな騎士。そこに〝虚ろ〟の目をし、傀儡となったマッドがいたから。

 

「恵里、君はっ、本当に」

 

光輝は、信じたくない事実を、改めて理解した。自分達の知っていた恵里は、何もかも虚構で、存在していなかったのだと。

 

「もうちょっと待っててね、光輝君」

 

毒が全身を回り、四肢が痺れて動けない。光輝はそれでも動かそうとするが、まるで言うことを聞かない。

 

「う、ぅぅ」

 

抵抗の意思を絶やさず、香織は必死で檜山の腕から逃げようとする。

 

「っと、檜山、死なない程度で捻って」

 

「…命令すんなぁ」

 

と言いつつ、檜山は力を入れる。バキバキと、香織の肉体が崩壊していく音がする。

 

「ひひ、もう、すぐ。香織、は俺のものだ。嬉しいか?嬉しいよな?香織ぃ」

 

変貌した身体でも、変わらない顔にある狂気の笑みを見せて、香織に言うが

 

「………っ‼︎」

 

檜山は恐怖した。香織は一切目を背けない。その瞳は…

 

「その目をやめろぉぉぉ!」

 

檜山が恐怖し、嫌悪し、憎悪の象徴の1人たる、南雲ハジメと同じ目だった。今度は殺すつもりで握ろうとするが、恵里が止める。

 

「はい、ストップ。殺すのは、まず僕の魔法が使えるかどうかの実験の後」

 

イラァとするが、檜山は抑える。どちらにしても、香織が自分のものになるならそれでいいからだ。

 

「やめっ、どいて!…香織、香織ぃぃ‼︎」

 

雫を含めた生徒達は、どうにかして向かおうとするが、傀儡兵に阻まれては間に合わない。恵里は無邪気に、無情に、香織に手をかざし、詠唱を開始する。雫が、龍太郎が、園部達が、居残り組の生徒も、怒号を上げて静止するが、詠唱は止まらない。

 

「あ、ぁ」

 

香織の片目が〝虚ろ〟になる。彼女の強さ故の抵抗か、いまだ恵里が完全覚醒していないからか、どちらにしても、完全には香織を傀儡にはできなかった。

 

「ふむ、今はこんなもんか。でも、コレならそのうち生きたままでもできる。本音を言うなら香織もコレの実験に使いたいけど、仕方ないよね、約束だし。僕って超優しい!」

 

傀儡にできなかったものの、実験の検証ができたことと、自身の力に更なる向上の目処があることが嬉しいのか、恵里はウキウキとしている。

 

「さて、もう1回すれば、完全に傀儡にできるかな」

 

恵里は追加で詠唱する。完全に香織を傀儡にするためだろう。香織が、汚される。生きているが、このまま恵里の魔法を受けてしまえば、それは死んだと同じになるのは、誰でもわかる。だが、それを止めたのは、絶望渦巻くこの惨劇に、蹴りを入れにきたのは

 

「……いったい、どうなってやがる」

 

白髪眼帯の少年、南雲ハジメ

 

「あれは、彼は」

 

この状況を冷静に受け止めつつ、

 

「まさか、それは」

 

驚きと、静かな怒り、そして殺意を見せる七海建人だった。

 




メルドが生きる代わりに、その他大勢が死ぬ。良かったのか、悪かったのか…
ていうわけで、あとでタグに原作キャラ1部死亡&生存をつけておきます

ちなみに
今回からのタイトル『変貌汚染』これは今回からのタイトルどうしようと思ってた時、久しぶりにとあるアニメ映画を見た時にモブの1人が変貌汚染と言っていたのでこれにしようと思いました。
ちなみに2
凄風の真価は実は作った当初ハジメは気付いてませんでした。あとで気付いて、「ヤバいもん作ったなぁ」と思ったものの、呪力を扱える人がいないと思ってたのもあり、問題を軽視してました。
ちなみに3
オリキャラは最初の段階でどっちも殺すか、どっちか片方殺すかで少し悩み、どっちが七海を少しでも心にダメージを与えるかを考え、こうしました
ちなみに4
最初から檜山が呪力&術式使えるってわかってたら香織が勝ってました

檜山が術式と呪力を使える理由ですが、見ての通り、恵里が原因です。身体こうなっているのは、次の話の後書きで
次の話はほぼできてるので、月曜日に出します
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