ありふれたやり甲斐と生き甲斐を探して   作:戦鬼

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素直に祝えない……乙骨、無事だよな、無事だと言ってくれぇ


変貌汚染③

「ミィィィィィアアァアァァ‼︎‼︎」

 

生物の声とは思えないソレの正体を、ハジメと七海は察する。

 

「言葉すら失いましたか、檜山君……」

 

哀れな姿に成り果てた檜山に、七海はそう呟く。

 

ハジメが粉砕した檜山の肉体はさらに変貌しているが、それだけではない。自身の術式によって肉体から出した触手を使い、いくつのもの魔物の身体をツギハギ状にして無理矢理繋げている。特に下半身は魔物の顔が繋がっており、見る者全てが吐きそうな程、悍ましいものに成り果てていた。

 

「南雲君、白崎さんを連れて下がって。ユエさん、ゲートを使って移動してください。十中八九、アレの狙いは南雲君、白崎さん、そして…私です」

 

そう言った七海はバッと駆け出し、隙だらけの腹に蹴りを入れた。当然、術式で弱点を作ってだ。檜山の身体がズドォォと音を出して下がる。

 

「全員、聞いて下さい!この場は私が!あとは撤退を!ユエさん!可能なら、他の方々も」

 

指示途中で、檜山はその肥大化した剛腕を振るい、七海ごと壁にぶつけ、さらにラッシュをはじめる

 

「ヴォオ”オ“オ“ォォォォ‼︎」

 

咆哮をあげたラッシュに、生徒や愛子は七海の名を叫ぶ。

 

「ヴァ⁉︎」

 

檜山の両腕が斬り裂かられ、ズドンと落ち、次の瞬間、強烈な蹴りで吹っ飛ぶ。それを見た後、七海はユエの方を見て言う。

 

「ユエさん、よろしいですか?」

 

「………七海は、平気なの?」

 

今の七海が弱っているのは、ユエもわかる。だからこそ心配するが、

 

「今は、白崎さんの処置を。南雲君、君も、一度引きなさい。援護は不要です」

 

「………わかった。勝手に死ぬなよ、七海先生」

 

七海はヒュっと手を上げて答えた。ハジメはユエがゲートを開くと、怒鳴りながら言う。

 

「死にたい奴はここにいろ!そうじゃない奴は、そのゲートに入れ!」

 

数人が一瞬戸惑っていたが、誰も彼もがここは危険だと察して、よろめきながら動きだす。呆然としていたパーンズや、怪我をしていたり気絶した者なども、騎士や残りの生徒達が動かし、ゲートに入っていく。ほぼ全員がそこに入った時、壁にぶつかって意識が混乱していた怪物になった檜山が、再び咆哮をあげる。

 

「…先生、あんま背負い過ぎんなよ」

 

ハジメは、何故七海がこの行動をしているかわかる。そして

 

「七海、先生」

 

愛子は、もうどうすることもできない檜山に対し、涙を浮かべ、それをまた押し付けてしまうことに、また悲しみに満たされてしまいそうな心を、必死に振り払い、

 

「死なないで」

 

そう言って、ゲートに入っていく。途端、檜山がゲートに向かい走りだすが、

 

「遅いです」

 

ただでさえ変貌していた肉体に、無理矢理魔物の肉を繋げて作った為、そのスピードは鈍足だ。すぐに七海が前に出て進行を阻止する。

 

「⁉︎」

 

なくなった腕の片方が生えて七海を殴る。突然斬り落とした腕が出てきたことに一瞬驚くが七海は冷静に考察していた。

 

(やはり、反転術式ではない。下半身の魔物の肉が少し落ちている。繋がっているなら、使えるということですか)

 

ズザァァァとブレーキをかけ、軸足で再び駆ける。ゲートが消えたことで、完全に檜山の標的は七海になった。

 

「ヴォォォォォォォォォ‼︎」

 

声すらもう檜山でない。否、ここまでくれば意志すらあるのかもわからない。

 

「もはや魔物と同等ですね」

 

叫びを上げた瞬間、地面から荊のような触手が七海を貫こうと次々と襲いかかるが、出てくるスピードは遅い。

 

(っ!………そうか)

 

それらを避ける、もしくは斬っている際に七海は気付く。檜山の肉体が少しずつ崩壊していることに。

 

(肉体変貌によるものかもしれないですが、もっとも可能性があるのは、魔物を取り込んで自身の肉体にしてしまったことでしょうね)

 

現在の檜山の肉体は、魔物を食べた状態にかなり近い。ハジメのように神水がないのでは、崩壊もする。それが遅いのは、恵里の術式による副産物たる肉体変貌が原因である。

 

恵里の術式、生転霊(せいていこん)によって術式を顕現した者は、それが使えるような身体に進化し、変化する。まずは脳から次に肉体が。だが、恵里の術式の使い方はいまだ不完全であること、檜山自身に呪術師としての才能が皆無だったこと、檜山自身の強さがさほどなかったこと、肉体がその変化に耐えれるほど丈夫でなかったこと。これらの要因により、最も使える身体へと変貌していった。

 

そして、それは術式が身体に残っている限り続く。いかに身体を損傷しても、残っている肉体を使って無理矢理使えるように変貌し、身体自体も生命をどうにか維持をしようと檜山の意志とは関係なく動くことで、崩壊を遅くする。

 

(このまま放置しても、そのうち死ぬでしょうが……しかし)

 

今度は檜山は口をグパァと開き、そこから魔力が溢れ、放出された。

 

「っ!」

 

衝撃を受けて少しひるむが、お構いなしに檜山は攻撃し続ける。すでにその顔も、口の部分は大きく、ワニのように伸び、下半身は上半身の損傷を補うために使われて、両足が繋がって蛇のような尾となり、そこには魔物の顔もいくつかついている。その姿はさながら、ナーガのようだ。

 

口から〝風撃〟〝火球〟といった下級の魔法を出すのだが、それら全ての威力が上がっている。さらに身体全身にある魔物の顔。その口の部分からも、その魔物の固有魔法もあるだろうが、攻撃系の魔法を発射してくる。

 

(厄介ですね)

 

肉体の維持度、攻撃方法。これだけなら特級レベルだろう。肝心の戦闘技術や攻撃の命中率、崩壊する肉体を除けばだが。

 

「檜山君、その身体になった事に、私は同情しないこともありませんが、情けはかけません」

 

檜山がこれまでにしてきた行為は、決して許されない。誰も許さない。いや、

 

(畑山先生なら、どうでしょうね)

 

彼女がゲートに入る前に見せた涙。その気持ちは、推測しかできないが、彼女なら、こんな檜山にすら、同情と愛情を持って、最後まで接するかもしれない。

 

そんな、考えても意味ないことを考えていたが、すぐにその思考を除外し、檜山を屠りに駆け出す。

 

「ヴォォォォォォォォォ‼︎」

 

叫び声をあげた瞬間、地面から荊型の攻撃系の触手が七海に襲いかかるが、どれも強度、速度、展開力は微妙なもの。正直回避も破壊も七海なら余裕で対処できる。だが、

 

「くそ」

 

この攻撃により、檜山が身体からだす魔法の回避を狭められ、ついに魔法が命中する。

 

「近づくのは少々困難………いや」

 

そこで七海は気付く。檜山の戦い方が、格段に良くなっていることに。

 

元の姿からの大きな変貌は、すでに脳にも達し、思考能力は落ちているにもかかわらずの戦闘能力向上。ほぼ獣に堕ちたからこそ、獣ならではの本能的な戦いが、皮肉にも檜山の戦闘スタイルの向上に繋がっていた。

 

(今命中したのは炎魔法だったからよかったものの、他の魔法を受けたら正直今の私ではまずいかもしれないですね)

 

距離を取れば地面からの攻撃はより雑になる。

 

(あの術式の効果範囲は約3m。攻撃に転用すると、強度や展開力は落ち、その状態の有効度は実質1m弱。捉えるタイプなら、強度と展開力にさほど問題はなく、近づくほど強靭なものになる)

 

七海は檜山の術式の考察をしながら回避を続ける。

 

(このままでは、いたずらに体力も、残りの呪力も消費してしまう。お互いに、だ)

 

故に七海は、賭けにでる。

 

「ふぅぅぅ…シッ」

 

距離を一気に詰める。魔法は自身の技能である程度軽減出来るものは呪力強化のみで無理矢理防ぎながら、それ以外の魔法と地面の触手は剣で切り、強行突破を試みる。

 

(手数が足りない。拳では、この触手に対応するのは難しい)

 

しかし七海はすでに賭けにでた。ここで決める為には前進するしかない。そこに、

 

(⁉︎)

 

上空から、呪力を感じる。それが、降下してくる。

 

「……感謝します、南雲君」

 

七海はバッと空いた片腕を上に挙げ、落ちてきたそれを掴む。

 

上空では、ハジメのクロスビットが2機浮遊していた。移動したハジメが、それを通して、この戦いを見ていた。そして、急遽向かわせた3機目のクロスビットには、ハジメが残る呪力を使って作りあげた、呪具を搭載し、それを落とした。

 

「遠慮なく使わせてもらいます」

 

その形は、これまでハジメが作ってきた大鉈だが、七海専用に作りあげた呪具、ハジメ命名、《凱劃(がいかく)》そこに付与された技能は、〝金剛〟。手にとって七海が呪力を流した瞬間、全身を何かに包まれたかのような感覚を得る。《黒帝》と同じく、呪具化によって〔+部分強化〕が更に跳ね上がるが、最大の違いは、組み立て式でない分、能力に広がりがでるということ。……否、見方によっては狭まり(・・・)かもしれない。

 

「なるほど、私専用ということですか…随分扱いにくいものを」

 

斬撃系の武器が両手に、二刀流となって防御力と攻撃力が上がり、七海は更に前進する。その度に魔法の砲撃、触手の攻撃が激しくなるが、命中した魔法は効果なく、触手に絡まれてもそのまま引きちぎって前進していく

 

「ヴァ⁉︎」

 

ここで檜山は焦りだしたような声を出し、魔法を中断して術式の触手に集中する。近づいたこともあって、数で一気に包囲し絡めとる。

 

「ハァァ‼︎」

 

七海は一時停止し、停止するために使った足を軸にした回転で囲い込む触手全てを斬り裂き、すぐさま檜山に近づく。

 

「⁉︎」

 

檜山が下がるが、ここは訓練所。檜山が入ってきた場所以外は、壁によって逃げ道を塞がれている。だが、取り込んでいる魔物の中には、防御系の固有魔法を持つものがあり、檜山はそれを身体に付与し、強度を上げるが、

 

「エぁ?」

 

袈裟斬りで左肩から斜めに斬られ、ずるりと落ちてくる。

 

凱劃(がいかく)の最大の特徴。それは、〔+部分強化〕をする範囲を狭めるという縛りを行うことで、その部分の強度や斬れ味を極限まで強化する。例えば指1本に絞り込めば、その部分はどんなものすら貫く槍となる。そして、 凱劃(がいかく)の刃の部分の一部のみに絞れば、並大抵の防御も、強化も斬り裂く、無双の刃となる。七海の十劃呪法との相性は、言うまでもなく良い、術式の行使の際に見える7:3の比率の点の部分を強化し、その部分に合わさるように相手を斬り裂く。使いこなすには、点と点を繋げる技量が必要であり、まさしく七海専用の呪具である

 

七海は斬ったことで落ちてくるその身体をそのまま蹴りで吹っ飛ばし、壁に当たって破壊音を轟かせる。

 

「やはりその触手、身体から出るものを使わなかったのは、魔物を縫い付けるのに使った為ですね。そして、もう縫い付けるものはない」

 

既に斬り離された檜山の下半身の肉は砂のように崩壊していた。

 

「終わりですね」

 

「ダ」

 

と檜山が何か声を出すが、もはやそれは意味のない言葉…

 

「ダ、ず、げて」

 

の、はずだった。死の淵で一時的に意識が戻ったのかと七海は考える。

 

「………」

 

「だ、ず、だ…なみ、せ、せぇ」

 

すっと七海の手が下がる。

 

「ミァァァァア‼︎」

 

瞬間、檜山の口から太さと強度もある尖った触手が七海の胴体を…貫けなかった。

 

「わかりやすい攻撃ですね」

 

凱劃(がいかく)の部分強化……だけではない。

 

「術式反転。初めてですが、これも黒閃を使ってる状態でなければ、できてなかったでしょうね」

 

術式反転:反転術式によって正のエネルギーとなった呪力を術式に流し込んで発動し、術式の効果を反転…文字通り逆にさせる。

 

十劃呪法の7:3の比率の点を強制的に弱点と化すその能力を反転し、檜山の攻撃に合わせて少しだけ身体を動かして自分自身に術式を付与して、威力を更に半減させた。

 

(呪力消費が多いのに、決めれるのは今みたいにわかりやすい物のみ。正直言って使えないにも程がありますね)

 

心底、使えないなと思いつつ、すぐさまその触手を斬った。

 

「あ、あ、アア、ア“ア“ア”ァァァァ!、いあ、だ!じに、たく、だい!いだい、いだい、いだいぃぃ!さっきから、ずっと痛いんだぁ!だす、だすけでぇ」

 

元々術式を使えない者に使えるようにする為の肉体の変貌は、常に痛みがあり、変貌するたびにその痛みは何十倍にも肥大していく。

 

「それはできません」

 

七海は檜山の願いを一蹴する。七海は覚悟はとっくにできている。

 

 

 

 

 

『檜山君を、恨んでますか?』

 

『……はい。殺したいくらいに』

 

香織はこれを聞くということは、自分が殺すことを止めるつもりなのかとほんの一瞬だけ考えたが、すぐ違うと判断する。確かに七海は意外と情に熱い。だが、しっかりとした意志と判断ができることを知っているからだ。

 

『なら、その殺意は隠しなさい。強い殺意は人を強くしますが、冷静な判断も狂わせる。檜山君程度に気付かれる可能性すらある。殺意はその瞬間まで抑えて、できるなら抑えたままことを成して下さい』

 

七海は冷静にアドバイスをしてくる。そこには容赦のない言葉が羅列するが、同時にどこか優しさと、悔しさが出ているようにも香織には見えいた。

 

『七海先生、もし私より先に檜山君と会ったら、どうしますか?』

 

何気なく、香織は聞いた。清水の一件は香織も知っている。とはいえ、それとはもう比べようもないほどの残虐な行為をした檜山は、

 

『場合によっては殺します』

 

許されなどしない。場合によってはと言うが、九分九厘殺しにかかるだろう。というより、

 

『出来ることなら、七海先生自身が殺したいんですか?私達の世界の人を私達が殺さないように』

 

『………』

 

沈黙が答えだった。この世界の人を殺すのと、元の世界の人を殺すのでは、背負う物が違う。七海はハジメとの縛りによって、罪の全てを背負う気はあるが、実際に行った者にかかる罪に対しては何もできない。

 

『それは、先生が私達の世界の人とも違うからですか?それとも、呪術師としてですか?』

 

『両方なのと、背負うのは大人の仕事だからというのもありますね』

 

子供に率先して毒を取り込んでほしいと思うほど、七海は落ちぶれていない。この世界にいる限り、必ず貯まる毒を、取り除くなら、それは少ない方が良い。光輝がいい例だ。取り込んでしまった呪いという名の毒に今も彼は苦しんでいる。

 

『……私は、生徒殺しを、七海先生に背負って欲しくないって思っててもですか?』

 

『その気持ちは、ありがたいです。しかし、結局は平行線ですよ』

 

七海が自分の生徒が元の世界の人を殺して欲しくないように、香織も恩師である七海が自分の生徒を殺して欲しくない。七海の言う通り、意見はどうしても、平行線だ。

 

『じゃあ、早い物勝ちにしましょう』

 

『……ゲームじゃないんです。その言葉はどうかと思いますよ』

 

『でも、1番わかりやすいじゃないですか』

 

ふかーくため息を出して、七海は言う。

 

『わかりました』

 

 

諦観の目線が、檜山に絶望を告げる

 

「中村さんが元凶とはいえ、元はと言えば、君の行動によってそうなってしまった。浅はかな判断と行動、己の欲望に呑まれてしまったのが全ての原因です」

 

「なっ、まっ、で。ないを、するん、だ」

 

「もうその身体は手遅れです。どうやっても治せません」

 

「まで、ぜいとを、じぶんの、ぜいとを、ころ、ころ、ごろず、のか?」

 

七海は沈黙のまま、1歩1歩進む。その無言こそが、答えだった。

 

「イヤダァぁぁあぁ!じ、にだくなぃ!なんなんだぁ!オマエぇ!なんで、そん、ナァ!かん、たんにぃ!」

 

「あまり動かないでください。手元が狂う」

 

しっかりと、苦しまないように殺す。それが、唯一の檜山の救いだ。

 

「だん、でだぁ⁉︎、おでは、ただ、ほじかっただげなのにぃ!のぞんでぇ、ない、が、わどぅい‼︎」

 

言語がおかしく、呂律がおかしいが、何を言っているかはわかる。

 

「おばぇ、がぁ!オマエがぁ!、お、ばぇらぁ、がぁ‼︎、ぜんぶぅ、な、な、みぃぃぃ‼︎」

 

「君がそうなったのは、全て君のせい……なんて言いませんよ。君に溜まった毒を、処理しなかった私にも原因がある」

 

ハジメのように、全てが檜山のせいと言う権利は、大人であり、彼の教師である七海はできない。絶対にそれだけはしてならない。だから

 

「君のしてきた事も、全部、私が背負いましょう」

 

「じねぇぇぇ‼︎」

 

「責任は、私が」

 

檜山は命の炎を、全力で燃やし、最後に目の前の七海だけはと、無理矢理腕を生やしてその腕を伸ばす。それが届くこともなく、

 

「ぁ」

 

頭から真っ二つに一刀両断された。最後に檜山が何か言おうとしていたが、もうどうしようもない。それよりも七海は今

 

「つかれ、た、な」

 

とりあえず、休みたかった。呪力はスッカラカン、ダメージも受けすぎた。ばたりと倒れ、そのまま意識を持っていかれそうになっていると、上空にいたクロスビットの1機が降りてくる。

 

【よぉ、七海先生。まだ生きてるか?】

 

「生きてますが、疲れました」

 

クロスビットからのハジメの通信に、弱弱しく答える。が、すぐに落ちそうになる意識を戻す。

 

「他の皆さん……いや、白崎さんは、今、どうなってますか?」

 

【落ち着けって言って落ち着けるわけないか……順を追って話す】

 

ハジメはそこから現状を説明する。

 

香織は正直今もユエとティオが魂魄魔法で繋ぎ止めているのだが、問題が1つあった。未完成とはいえ、恵里の魔法の影響を受けていたことで、魂を定着させようとすると、恵里の魔法に侵食されようとされる。その為、まずはそれを解除する必要がある。同じく魂に干渉する魂魄魔法なら、どうにかなるが、それまで保つかは香織の生命力次第。

 

愛子と光輝達は別の場所で待機している。光輝は毒でかなり危険だったが、神水を飲んだんことで解毒し、傷も癒えた。ただ、気を失ってはいるそうだ。それと、メルドも合流した。どうやら、野村達の方に向かったらしく、襲われていた彼らを助けていたそうだ。合流後、一部の騎士達は王都の救助、怪我人の手当てにあたり、辻が目を覚ましたのもあり、そちらは順調なようだ。

 

「君に、任せることしかできませんが、白崎さんを、お願いします」

 

【あたりまえだ。死なせねぇよ】

 

「それと、メルドさんとも連絡を取りたいのですが、映像は、畑山先生たちが避難しているところにも?」

 

【そう言うと思ってたよ。そっちに通信を繋ぐ。畑山先生とかマジで心配してるだろうからな。あぁ、通信を終えたらクロスビットをコンコンって叩いてくれ】

 

それじゃと言い、ハジメは通信を切る。香織に集中する為だろう。もう1機のクロスビットが降りてきて、通信が入るような音がしたので、七海は声を出す

 

「そちらに、誰かいますか?」

 

【っウオ!コレ話せるのか⁉︎…というか、その声、建人か?】

 

メルドの驚いた声がした。どうやら映像は見えないらしい。

 

「メルドさんですか……状況は?」

 

【お、おぉ!現在だが、怪我人や、王都内の国民の救援中。生徒達の中にも、何人か救助をしてる……それと、聞いた。恵里の件、他の騎士達…マッド件も】

 

「……パーンズさんは?」

 

【少しは落ち着いてきたが、もう少し時間が必要かもな。だが、あいつの指示で動いていたスラムの連中が良い仕事をしてくれてる】

 

七海は正直、この後彼にかける言葉が見つからない。だが、それでも話さなくていけない。

 

「畑山先生は?」

 

【それの前になんだが】

【な、七海先生⁉︎、大丈夫ですか!その、檜山、君は】

 

どうやら近くにいたのか愛子の声がした。悲壮感のある声が変わる。どうなったかなど、聞くまでもなくわかっているのに、その答えを問う。

 

「殺しました」

 

【っ!】

 

向こうにはこちらの映像が見えてないだろう。それでも、間髪入れずにはっきりと言ったことに後悔はなかった。取り繕ったところで、事実は変わらないのだから。

 

【そう、です、か】

 

わかっていた。それでも、愛子は涙を止めることが、できなかった。

 

「救えなかった……私の責任です。あなたは、悲しまなくてもいい。なんて、言ってもそうはいかないでしょうね。…謝るつもりはないです。そんなもの、なんの意味もないでしょうからね」

 

少しだけ、七海は愛子の涙声を聞くかと思ったが

 

【それは、いまは、後にしましょう。……七海先生】

 

先に言うべきことがあるのか、愛子は一息ついて、告げた。

 

【谷口さんが、目を覚ましました】

 

やるべきことが更に増えた。鈴の心を折らなくてはいけないという、新たな罪ということが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ちなみに
檜山とは実は面談ができてますが、親からの七海の印象は最悪で、面談のときは理不尽なクレームが殆どでした
というか、『転生転移』で出ていたクレーマーがそう。面談が不快だったという電話をしています
檜山もいちいち突っかかる七海に辟易しており、まっとうな注意を親へは別の解釈になるようにわざと説明したりもしておりました。七海はそのことを理解しおり、教職がクソと思い始めたキッカケでもあります。
でも完全にクソになることはありませんでした

ちなみに2
次にも書きますが、鈴は起きてすぐに居残り組の生徒達から詰め寄られ、「恵里がああいう奴だという事を知ってたんだろ」などの心ない言葉を浴びせられてます
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