ありふれたやり甲斐と生き甲斐を探して   作:戦鬼

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今回の話は正直言うと、ちょっと微妙なとこで切ってしまいました。

でもこれ以上詰め込むとまた1万5000文字以上、2万近くまで行くなと感じ、切りました。
次の話は現状5割から6割完成しました。このままいけば来週には出せるかもしれませんが、黒閃の新情報の件もありますので、本誌の呪術廻戦を見てから出そうかと考え中。とりあえず完成させてから考えます





仁義多責②

「本当に、香織、なの?」

 

「香織だよ。雫ちゃんの親友の白崎香織。見た目は変わっちゃったけど……ちゃんと生きてるよ!」

 

「香織…香織ぃ!」

 

雫は、どうして香織がこんな事態になったかわからなかった。七海が気付いて声をかけ、呆然としてしまうほど。だが、ノイントの身体になった香織が声をかけて「ハッ」とし、会話して、その声を聞いて、ようやく理解した。

 

「生きてる…よかった……香織が、生きてるぅ」

 

親友が生きている。話せている。その事実は、張り詰め過ぎて壊れそうだった雫の心をゆっくりと、優しく溶かす。溢れでる涙を我慢も堪えることもなく、新たな身体になった香織に思いっきり抱きついて泣き、つられるように香織も泣きながら、子供をあやすように抱きしめて言う。

 

「心配かけてゴメンね?…大丈夫だよ…大丈夫」

 

「よかったぁ、よがっだよぉ~」

 

晴れ渡った練兵場に温かさと優しさに満ちた泣き声が響き渡るなか、

 

「で、何か言いたいことは?」

 

「「「「正座がそろそろ辛い[です][のじゃ]」」」」

 

ハジメ達は戻って来て早々に、香織以外は正座し、七海のお説教を受けていた。強さで言えば、正座している全員が七海を上回っているというのに、逆らえない大人オブ大人の圧を受け、正座させられていた。ただ、そんな七海も、雫と香織の様子を説教しつつも横目で見て、ほんの僅か、誰にも分からないレベルに、穏やかな笑みを浮かべていた。

 

 

「それで、最初から聞きましょうか?一体なぜ白崎さんの魂をあの身体に?きちんと説明しないと、今度はこちらが怒りだしますので」

 

七海が指差す方にいる雫は、普段の雫とはかけ離れた剣呑とした表情と光のない目をし、ハジメをしてビクゥっと一瞬なってしまうレベルであった。

 

一旦落ち着くため、リリアーナに促されて訓練所から移動し、光輝達が普段食事をしている大部屋に移動し、七海はある程度は説教中に聞いていた事を、きちんと説明する様に求めていた。

 

「そうだな……簡潔にいうと」

「簡潔な説明はさっき聞きましたが、それでは私はわかっても彼らには理解できないので、しっかりとお願いします」

 

めんどくさいなぁという表情を隠すことなく堂々と出すハジメに、七海は若干イラァとするが、ここは我慢する。

 

「じゃあ七海先生が説明してくれよ」

 

「……そこまでいくと、最早怒る気にもなりませんね。まぁ、いいでしょう」

 

ハジメを含めて周囲の者は『いいんだ』と思っていた。五条悟の相手をしてきた七海には、この程度は苦でもない……こともないが、慣れていた。慣れたくもないだろうが、慣れていた。

 

「まず、以前オルクスで魔人族に襲われた君達を助けだした後言ったことですが、君達を帰す手段が見つかる可能性、それが今回白崎さんを救った魔法、神代魔法の1つ、魂魄魔法です。神代魔法については、八重樫さんも勉強してますよね?」

 

「は、はい。七海先生に言われたのもあって、知識を深める為にこの世界の歴史も少しは勉強しましたから。今、私達が使ってる魔法が神代と呼ばれる時代の魔法の劣化版で、神代魔法は今の属性魔法と異なってもっと根本的な理に作用でき」

 

会話の途中、ここで雫は気付いた。

 

「そう、なんですね?南雲君達は神代魔法を持っていて、さっき言った魂魄魔法は、人の魂というものに干渉できる力。それで、死んだ香織の魂魄を保護して、別の体に定着させたってことですか?」

 

「そう!流石、雫ちゃんだね」

 

七海が「正解です」と言う前に、香織がそう言う。

 

「魂魄魔法で白崎さんの魂を保護しノイントの残骸に定着させた。ここからは私も聞いてないので一応聞きますが、白崎さんの元の身体は大丈夫なんですか?まさか再生魔法でも再生できないレベルだったと?」

 

香織が受けていたダメージは致命傷をゆうに超えていた。骨が身体から出て、血を大量に失っているのは見た目でわかるが、目に見えてない内臓など細かい部分も、普通の回復魔法ではどうにもならない程に損傷はしていると七海は考えていた。

 

「あ、そっちは大丈夫です。この身体になっても再生魔法も回復魔法も使えましたし、むしろ精度が上がって一瞬で治しちゃいました」

 

「それよりも問題だったのは、魂の〝固定〟と〝定着〟じゃ」

 

「正直そっちの方が大変だった。あの恵里って女がだいぶ香織の魂に干渉してたせいで、3日もかかった」

 

魂魄魔法の〝固定〟は、死ぬことで霧散してしまう魂魄に干渉して霧散・劣化しないよう保存する。最初にティオ、あとから愛子も香織に施していたのはこれで、その後回収したノイントの残骸を修復し、〝定着〟…文字通り、固定した魂魄を有機物・無機物を問わず定着させる魔法で、欠損して生存に適さない香織の身体の代わりにした。ハジメはミレディ・ライセンがゴーレムに己の魂を定着させて肉体の衰えという楔を離れて不老不死となっていたのを、魂魄魔法を手にしていた時から気付いていた。出来る確信があった。というより、あの場で香織を救うにはそれしかなかった。

 

これらは全て死亡から数分以内でないと効果がないのもあり、ティオとユエが間に合ったのは幸運だったが、

 

「もう魔法は受けてないはずなのに、しつこいくらいにこっちの魔法に抵抗してた。魂に混ざったあいつの魔法を完全に除去するのに時間がかかった。……神代魔法クラスの魔法を自分で引き出してた。七海、どんな教えをしたの?」

 

ユエは七海に文句を言ってくる。ティオも声に出さないが同じなのか、目線でユエと同意見を告げていた。

 

香織の魂は恵里の〝縛魂〟の影響を生きたまま受けた。その結果、魂は本来の形だと言うのに、別の色に染まっていこうとしていた。それを、複雑に絡みついた糸を切るように分離させ、尚且つ香織の魂が霧散しないようにする。複雑に絡まった糸の全ては間違って切ったら香織の命が危ない、僅かに残していても、いずれまた干渉されるか、再び香織の魂を染められる。まさに爆弾の解体に等しい作業だったのだ。

 

「私も、中村さんを見縊っていました。それほどまで、魂への干渉をした降霊術を行使できるなど。彼女もユエさんと同じで、呪術的な知識を活かせたということでしょうかね」

 

七海がしたのは単なるアドバイスというよりも、彼が聞いてきた魂についての知識。見方によっては偏っている知識にも等しい。それを活かせたのは、単に恵里の成長力、応用力、魂への興味が故。…彼女はまだ、自分なりの魂の答えを出してはいない。それも、恵里の更なる成長の1つになるのは間違いない。

 

「……責めたわけじゃない」

 

「責めていいんですよ。そうされる理由が、私にはあります」

 

七海の心情を理解したわけではないが、ユエは謝罪するように言い、それに対して七海は毅然とした態度で言い、ユエは「相変わらず」と呟く。

 

「まぁ、それよりも、白崎さんがその身体のままな方が私は気になるんですが…身体は問題なく治ったなら、そっちに戻ってもいいんじゃないですか?」

 

「まぁ、そうなんだけどさ」

 

「それに、今ユエさんは3日かかったと言いましたね。戻って来たのはあれから4日目。まさかと思いますが残り1日は、その身体になるのを説得していたとか言いませんよね?」

 

それにハジメ含めた5人はビクぅと身体が震えた。特にユエは(しまったぁ、迂闊だった)と心の中で叫ぶ。

 

「なんで私には報告も、連絡も、相談もしないんですか?」

 

4人が目を逸らすなか、香織だけが七海の目を見て言う。

 

「言ったら、先生どうしました?」

 

「反対しますね。だからといって黙ってすることではないです。どれだけ皆さんが君を心配してたか、考えてたんですか?」

 

一瞬香織が下を向きそうになるが、すぐに反論する。

 

「七海先生、メルジーネで言いましよね、1級呪術師と同等だって」

 

「ええ言いました。その身体になった理由は、檜山君程度に負けたからでしょう?一応言っておきますが、呪力の見えない君に、不意打ち且つ初見の術式に対応しろだなんて無茶は言いませんし、君なら特級術師同等にもなれるセンスはあると私は思ってますよ」

 

七海は香織が言い出しそうなことを先回りするように言い、ちゃんと寄り添いながら香織と話しを続ける。

 

「君が未だに、ユエさん達に追いつけてない事に、納得はしてないこともわかってます。ですが、簡単に人を捨てていい理由にはなりません」

 

顔はいつものままだが確実に怒っている七海は、ある意味、恵里に向けていた時よりも怖い…というよりも真剣だった。本気で心配し、本気で想っている。だからこその言葉だ。故に、

 

「でも」

 

香織も、その目から、言葉から逃げも引くこともしない。

 

「それでも、私は早く追いつきたいんです」

 

相手の本気にはこちらも本気でいく。そうでなければ、七海を納得させらない。というよりも、ここまでは言われることは香織も想定内だ。

 

「七海先生の言う特級って、どれくらいでなれますか?半月、1ヶ月では無理なんですよね」

 

「………」

 

香織の言う通りだ。七海の見立てはどれだけ甘く見積もっても、1年以上は絶対だ。

 

「そんな時間を使ってる間、ずっと足手纏いなんてごめんです。先生だって、1級呪術師だけど、ハジメ君達の足手纏いにならないように常に必死なんでしょう?戦闘経験値、判断経験値が私達の倍以上の先生でそれなら、私じゃいつになるかわからない。私は、後ろをついて行きたいんじゃないんです!一緒に並んで歩んでいきたいんです!」

 

こうだ!と決意した香織の覚悟も、その頑固さも、七海は何度も見ている。それに、七海が反対をしてくるのはハジメもわかっていた。だからこそ、1日かけて説得していたのだ。だがそれ以上に、香織の決意が強かった。

 

仮に、その場に七海がいたとしても、こうなっていただろうなと思わずにいられない程に。

 

「……納得は、正直してませんが、わかりました。ただ、1ついいですか?これは、南雲君達にも言いますが」

 

わかりましたと言われて、香織は一瞬顔が綻びかけていたのを直す。ハジメ達にもと言われて、4人は七海を見て聞く。

 

「ぶっちゃけ、私が心配しているのは別です」

 

もう元の身体戻れないのならいざしらず、いつでも戻れる。香織本来の身体はいま氷漬けにして腐らないようにし、〝宝物庫〟に保管している。倫理的に良いかは別として、元の世界に戻るまでの間なら、認めて良いはず。だからハジメ達はここまで七海が反対する理由が別にあると思っていた。

 

「その身体は、元々はエヒトが作り出した物です。なんらかの干渉を受けてもおかしくない」

 

「「「「「!」」」」」

 

「その辺を、考えて、なにか対策をしましたか?」

 

「……して、ねぇ」

 

ハジメは少し悔しさを滲ませ呟くと、七海は怒りはせず、続けて香織に言う。

 

「白崎さん、その身体をまだ自分の物として、完全なコントロールはできてないんでしょ?私が戦った時のような、絶対的な実力差を感じませんから」

 

「ううっ」

 

香織が言い淀む。七海の言う通り、ノイントの身体を完全に彼女は使いこなせてはいない。

 

「逆を言えば、完全にコントロールが出来れば、エヒトからの干渉にも耐えれるかもしれません。そして、できないことも視野に入れて、南雲君は対策をしておいてください。……さて、お説教ばかりでしたので、ここからは本音としましょうか」

 

と、七海が言った瞬間、張り詰めていた顔が、一気に緩み、普段あまり見せない笑みを見せ

 

「南雲君、それと、皆さんも、白崎さんを救ってくださり、ありがとうございます」

 

頭を下げた。

 

「お、おいやめてくれって七海先生。俺達は俺達の仲間を助けただけで」

 

「感謝をすべき所で感謝を伝えるのは、社会人のマナーですので」

 

どうにもハジメは七海からこういった事をされるのはむず痒いのか、つい目を逸らすと、そんなハジメを見れて嬉しいのか、ユエ達がニヤニヤしている。

 

「……フン!」

 

「アフン!なぜ妾だけ⁉︎」

 

ただ1人思いっきりビンタされたにも関わらず、なぜかとても嬉しそうなティオに周囲はドン引きしていた。

 

「あの、私からもいいですか?」

 

そんな中で恐る恐る手を挙げて雫が会話に入ってくる。というより、入りたかったが説教中の七海を邪魔できなかったと言うべきだろう。「どうぞ」と七海は言って場所を譲る。

 

「色々聞いてて、よくわからない話もあったり、聞き捨てならない情報とかもあったけど、それは一旦置いといて、とにかくこれだけは言わせてもらいます。南雲君、ユエさん、シアさん、ティオさん。私の親友を救ってくれてありがとうございました」

 

と、正座から足を崩して少しだけふらつきながら立つハジメ達に向かって雫は七海と同じか、それ以上に深々と頭を下げた。

 

「七海先生の言うことは、正直もっともだとも思いますけど、私はどんな形でも、香織が生きていてくれたなら、それだけで、こんなに嬉しいことはないんです」

 

「…… 色々勝手に決めたり、心配かけたりしてごめんね、雫ちゃん」

 

「いいわよ。香織が突拍子もないこと仕出かすなんて、昔からあったことだしね」

 

雫は「今回は群を抜いているけど」と続けて言う。ちなみに以前18禁のアダルトゲームコーナーに香織が入った際、そこに雫もついて行っていたので一緒に七海に怒られているのだが、その時の七海の顔は忘れない。あれ以来トータスに来るまで七海は雫の中で怖い先生のイメージがついたくらいなのだから。

 

「借りは増える一方だし、返せるアテもないのだけど……この恩は一生忘れない。私にできることなら何でも言ってちょうだい。全力で応えてみせるから」

 

「七海先生とはまた違うが、八重樫も相変わらず律儀な奴だな。さっきも言ったが俺達は俺達の仲間を助けただけだ」

 

七海の時とは打って変わり、非常に軽い対応に雫は「フッ」とつい吹き出す。

 

「って、笑うな!」

 

「ご、ごめんなさい。あまりにも、さっきと違うから」

 

キッとハジメは七海を睨む。

 

「なんで私を睨んでるんですか?」

 

「別にぃ」

 

ハジメの不貞腐れたような言葉使いに、雫は追撃の如く言う。

 

「それに、前と違って私のことも気遣ってくれたし、光輝のために貴重な秘薬もくれたわね?」

 

「あれは、八重樫に壊れられたら、香織が面倒なことになるだろうが……」

 

「め、面倒って……酷いよ、ハジメくん」

 

ほんの少しだけ面倒な顔して言いつつ、ハジメは愛子の方を見る。

 

「………ただ、そうだな…どこかの先生曰く、『寂しい生き方』はするべきじゃないらしいしな。何もかもってわけにはいかないが、あれくらいのことはな」

 

「!……南雲君」

 

黙って七海と雫、ハジメ達の話を聞いていた愛子が、ハジメのその言葉に何か救われたような、そんな顔をしていた。

 

大多数の生徒達は、不遜なハジメも愛子の教えが届いたことに感心し、愛子がそれに喜んでいると思っていたが、雫やユエ、七海といった数人はそれだけではないと感じていた。

 

「それじゃあ七海先生、それと愛ちゃん先生、色々教えてくれますか?」

 

愛子がさらわれた日に話そうとしたこと。七海が訓練所で話そうとしたこと、その全てを聞きたいと雫は問う。

 

「どちらから、話しましょうか」

 

愛子は七海に問う。

 

「私から話しましょう。南雲君だと端折るでしょうし、畑山先生に話した私のことは少々抜けている部分もあるので。攫われた後の神山であったことなどはお願いします」

 

そこから、七海は語った。ハジメから聞いた狂った神エヒトのこと、帰還する為に必要な神代魔法を集めていること、愛子は攫われた時にあったことや総本山であったこと、そして七海は語れるだけ、呪術師である自分のことを語った。

 

「ほ、他の世界から来た、本物の呪術師?」

 

「そんなこと、あんのか、つか本当なのか?」

 

「私達も、最初は驚いたけど、七海先生がこんな真剣な顔で冗談なんか言うわけないからね」

 

驚く雫、龍太郎に辻が合わせるように言っていると、何を考えたのか、ハジメが笑いつつ話しに入る

 

「しかも、元の世界では1回サラリーマンだったってさ」

 

「その話は今はいいです」

 

余計なこと言うハジメにキッパリと七海はその話題を遮断した。

 

「…………」

 

「畑山先生?」

 

「あ、いえ、なんでもないです」

 

七海はどうしたのかと聞くが、愛子がはぐらかすように言ったので、再び聞こうとした時、光輝が声を張り上げた。

 

「なんですかそれ…俺達は、ずっとその神の掌の上で踊ってだけってことですか?南雲!、七海先生!なんでもっと早く教えてくれなかったんですか!それに、七海先生の身の上も、呪術師のことも…教えてくれてもよかったでしょう!せめて神のことは、オルクスで再会した時に!」

 

その言葉にハジメは心底『めんどくせぇ』と言葉になくとも顔に惜しみもなくだし、その態度に腹が立った光輝は「なんとか言ったらどうだ!」と詰め寄ろうとし、雫が止めていると、めんどくさそうにハジメは言う。

 

「俺や七海先生がそれを言って、お前、信じたのかよ?」

 

「なんだと?」

 

「どうせ、思い込みとご都合解釈大好きなお前のことだ。大多数の人間が信じている神を『狂っている』と言われた挙句、お前のしていることは無意味だって言われれば、信じないどころか、非難したんじゃないか?加えて、自分達にもない『呪いの力』をもつ七海先生に関して言えば、それこそ教会の連中に言われたら、あっさり敵対してたろ」

 

ハジメは「その光景が目に浮かぶよ」と吐き捨てるように言う。

 

「だ、だけど、何度もきちんと説明してくれれば……」

 

「アホか。なんで俺がわざわざお前等のために骨を折らなけりゃならないんだよ?まさか、俺がクラスメイトだから、自分達に力を貸すのは当然とか思ってないよな?」

 

常人なら誰もが目を逸らしたくなるハジメに視線と厳しい言葉に、ほとんどのクラスメイト達は目を逸らした。

 

「でも、これから一緒に神と戦うなら……」

 

「君は戦えませんよ、天之河君」

 

「っな、なにを」

 

会話に入って来た七海に、光輝は反論しようとしていたが、割り込むようにハジメは言う

 

「つか、俺がいつ神と戦うと言ったよ?あんま舐めたこと言うなよ勇者(笑)。向こうからやって来れば当然殺すが、自分からわざわざ探し出すつもりはないぞ?大迷宮を攻略して、さっさと日本に帰りたいからな」

 

光輝は目を大きく見開き、キッと睨みを強くした

 

「まさか、この世界の人達がどうなってもいいっていうのか⁉︎神をどうにかしないと、これからも人々が弄ばれるんだぞ!放っておけるのか!」

 

「顔も知らない誰かのために振える力は持ち合わせちゃいないな……」

 

「なんでだよ‼︎お前は、俺よりも、七海先生よりも強い!それだけじゃない、俺にないものをいくらでも持ち合わせている!それこそ、なんだってできる力が‼︎なんで、力があるなら、正しいことのために使うべきじゃないか!」

 

 光輝が正義感のある言葉で吠える。だが、そこには

 

「天之河……お前自分で言っててなんも思わないのか?中身がないんだよ」

 

「⁉︎」

 

「いや正直、ちょっと前よりマシなってるかと思ってたが、変わらないどころか別方向に悪化してんな」

 

ハジメの心の奥底を覗くような瞳に、光輝はジリっと僅かに下がる。

 

「大体、力があるならだと?そんなだから、いつもお前は肝心なところで地面に這いつくばることになるんだよ」

 

「なんだと‼︎」

 

「力があるから何かを為すんじゃない。何かを為したいから力を求め使うんだ。『力がある』から意志に関係なくやらなきゃならないって言うのはな、それこそ七海先生の世界の、お前が否定したいもの、檜山とはまた違った形の『呪い』だ」

 

七海は否定しない。というかできない。呪いの形はさまざまだ。だが、

 

 

【七海、私はね、弱者生存、それが世界のあるべき姿だと思っている。その弱者の中には否定できない悪意も混ざっているだろう。それでも呪術師は、非術師を守る為にあるんだ】

 

 

だが天之河光輝には

 

「力は明確な意志のもと振るわれるべきだ。お前は、その意志ってのが薄弱すぎるんだよ」

 

意志がない。からっぽなのだ。そしてそれに気付いてない。

 

「そもそもお前と俺の行く道について議論する気はないんだ。これ以上食って掛かるなら」

 

「そこまでです。南雲君、天之河君もです」

 

「あ?俺もか?」

 

ハジメはなにか言われる筋合いはないと目線で七海に告げる。だが、七海はその目線を受けて尚言う。

 

「ええ。君はその辺は無視するか、警告や苦言を言わずに黙らせると思ってました」

 

「……チッ!」

 

そこでハジメは気付き、舌打ちする。七海の言う通りだと。

 

「随分と天之河君には言うんですね。まぁ、なんとなく理由はわかりますが。それよりも、天之河君、私は基本的にどちらにも肩入れはしませんが、今回は南雲君に概ね同意です」

 

「っ先生!あなたもなんとも思わないんですか?それが、呪術師ってやつなんですか⁉︎」

 

天之河のその言葉に対して

 

「天之河君。それは、言っちゃダメです」

 

愛子が静かに、怒りが漏れだすように言った。




ちなみに
ユエの技量は原作よりも高い状態。だから原作よりも早く香織を救えましたが、同時に恵里の技量も原作よりも数段高いです。もし恵里の技量が原作と同じの場合、3日もいらなかった。逆にユエが原作と同じ技量だった場合、助けることはできても原作よりも長い日数が必要でした。
日数を短くしたのは、この後ついて来る光輝達の強化訓練(2日のみ)をする為です。
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