やっぱ呪術廻戦はゴリラをしててこその呪術廻戦ですね。
そして、今回ついにあのキャラが…
愛子のことを知る大半の生徒は驚く。七海を庇ったことでなく、その強い視線と僅とはいえ、怒気を含んだ声にだ。
「疑心に満ちて、感情的に、相手について何も知らない状態で物事を決めつけちゃダメです。私も、少し前の私も、七海先生に、疑心を抱いて、勝手に失望してましたから」
愛子もまだ、七海について全てを知っているわけではない。だが、彼女には確信に近いものがあった。呪術師としての七海建人と、教師としての七海建人の両方を間近で見た彼女は、先程の会話の中で感じた違和感と、呪術師という存在とは何かを。
「いいですよ、畑山先生。彼の言うことにも正論はある」
その上で告げる。そう決めて、七海は光輝に言う。
「まず、天之河君。君に、いや君達に言わなかったことは謝罪します。ただでさえ混乱している中で、こんな話をしては、余計な混乱を生むだけでしたから」
七海は謝罪しつつ、その理由を告げる。
「それを前提で言いますが、オルクスで全てを告げたとして、あの時の君の精神状況で受け止められる自信はありますか?」
「あ、ありますよ!そのくらい」
「本当に、心の底から言えますか?南雲君が言うようなことはないと」
七海は詰め寄るように聞くが、答えなど決まっている。光輝の目線は動き、焦点が合わないのがいい証拠だろう。
「それとその目の隈。まともに寝れてないんでしょう?」
恵里の毒で倒れ、消耗した体力も神水で回復し、気絶とはいえ眠っていた。それでも尚、光輝はうまく寝つけていなかった。
「今ですらその状態で、まともな判断など、できないでしょう。何より、大事な所で君は決断ができない。決断する為の経験も覚悟もない」
「そん、な…そんなことは……ない!」
「なら聞きますが、君は、これから先、中村さんの傀儡人間や魔人族といった人を殺せますか?」
「‼︎……やってみせま」
「無理ですね。即答できてない。そんな調子では、直前で迷う」
悔しさと、隠しきれない光輝の本音がギリっと歯を食いしばさせる。
「天之河君、どうしようもない人というのは存在します。ここで言うどうしようもないとは、悪意ある存在だけではない。殺す以外どうすることもできない人のことです。君に、あの傀儡兵達を、感情を抑えて戦える自信はありますか?」
ついに天之河は膝をつき、荒息を立てる。あの時、すでに死んでいるとはいえ、多くの人を斬り裂いた。その感覚が光輝の脳に、次に手へと思いだされていく。
「そして同時に言いますが、私は君の言うことが間違ってないとも思ってますし、私はこの世界の人がどうでもいいとは思ってません。ただ、今回救ったことに関して、南雲君は少々違うでしょうが、大体私と同じです。力があるからではなくて、そうするべき事柄があるから、必要だからやってるにすぎない」
「それって、要するに、必要でないなら救わないってことですか」
「そうではない……とも言えませんね。私にとっての優先順位は、君達の命ですからね。君達が元の世界に戻れるように全力を尽くす、その過程に王国を救う必要性があった」
七海は普段しない自分について語りだす。
「呪術師の仕事は主に人助けです。だが、全てを救うなんてできない。そしてここで言う人助けには、常に善人とは限らない上に、秩序を守る為に必要とならば君の想像する悪と言えることすらしますし、私はどちらかといえばそういうのを肯定してます」
肯定してます。つまり、それは今でもそう思っているということに、光輝や居残り組の生徒の数人は戦慄する。
「やっぱり、俺は、あなたを、呪術師を認めない。そんなことを平気でできる人を、信用なんてできない!俺達に言わなかったのも、南雲について行ったのも、全部俺達を貶める為ですか⁉︎」
ユエ含めたハジメグループの女性陣は(なんでそうなんだよ)と引いており、雫や龍太郎も「ちょっと落ち着け」と諭す。が、七海はそれをあえて否定しないまま、話を進める。
「ですが、全ては結果です。君の言うことは間違ってないですが、中身も筋もなく、覚悟もない。そんなことで、誰かを本当の意味で助けることはできません。必要なこと、そうでないこと、善悪の判別と、己のエゴと、自他の命。それらを天秤にかけることを、君はしていない」
七海が責めたてる言葉は、全て光輝が無視して、見なかったものそのもの。
「以前言いましたね?意味を見つけなさいと。答えは、でたんですか?」
「!………」
「私を非難してもいい。そのかわり悩み続けてください。戦うなら、覚悟と、その答えを得る為に、足掻き続けなさい。みっともなくても、どれだけ南雲君に劣っていても、それを認めた上で、もがいて、苦しみぬいてください」
七海は「それと、」と間を置いて言う。
「私には勇者というものがわからないですが、少なくとも君は1度、勇者という肩書きを捨てなさい。見せかけのこけおどしと、ハリボテの意志と肩書きでは、何もできない」
七海はそう言うと、これ以上の会話はもうないとばかりに口を閉ざす。光輝は一瞬口を開けて「なにを」と続けて言おうとするが、意志なき無意味な言葉になろうとしていることを無意識のうちに察し、自分がこれ以上傷ついてしまわぬよう、口をつぐむ
ハジメのほうも光輝には興味がないということを示すように視線を戻してしまった。
自分達やこの世界に対して、嫌悪も恨みもなく、唯ひたすら興味がないハジメ。己を律し、決断し、他者を、生徒達を守る為に行動する七海。相反するように見えるこの2人が、縛りによる制約があっても、行動を共にする意味が理解できない者達が多く、さらにほんの一端とはいえ七海の、呪術師としての彼を知った生徒達は、感謝する者が大抵だが、内に疑心を持つ者も僅かだがいた。
そのうちの1人の光輝は、ハジメには自分の敗北原因について言及され、七海には意志のないことをハッキリと自覚させられた。自分には強い意志があると思っていた。だがそれは何の価値もないものだと、言い切られた。それに対して反論できず、七海の考えていた通り、呪術師である七海を否定するしかできなかった時点で、もう光輝の言葉に意味は持たない。
七海とハジメが戻ってきて自分達とまた一緒に行動するのだと思っていた者達も、七海からの説明でそれは無理だと理解した。縛りによる制約は絶対。破棄もまた絶対ならば、仮にここでハジメと七海が縛りを破棄してしまえば、帰れる手段としてもっとも可能性があるものを捨てなければならず、複雑になっている制約を破棄した場合のどうなるかわからないペナルティも考えた時、自分達にも降りかかる可能性もあり、何も言えない。
さらに、居残り組の生徒達に関して言うなら、ハジメは顔見知り[注:ハジメは特に記憶になし]の傀儡となった騎士達を肉片にし、七海は裏切って、人外ではない存在になったとはいえ檜山を容赦も躊躇いもなく殺した。そのことは彼らに大きな恐怖を与えていた。
だだっ広い食堂が静寂に包まれるなか、リリアーナがスッと小さく手を挙げて問いかける
「あの、やはり、残ってはもらえないのでしょうか?せめて、王都の防衛体制が整うまで滞在して欲しいのですが」
あれだけの戦力的な損失をだし、大規模転移用魔法陣は撤去したから今すぐにまたここまで攻め込むということはないだろうが、それでもいつ魔人族の軍が攻めてくるかわからない。
「あのフリードという魔人族は、相当な傷を負っていましたが、あれが総大将だったとしても、別の者が立てば指揮は戻るでしょうね」
「ええ。あの時撤退したのは、魔物含めた軍隊が壊滅に近い損失を受けて撤退しただけではなく、南雲さん、あなた達の存在があったからだと思ってます」
七海言葉を肯定しつつ、リリアーナはハジメの方を向いて言う。あの時のハジメはかなり弱体化していた。それでもハジメがいるから撤退した。ただそこにいるだけで抑止力になる存在を、手放したいと思うようなリリアーナではない。
「図々しいとは思ってます。それでも、お願いできませんか?」
「悪りぃが、神の使徒と本格的に事を構えた以上、先を急ぎたい」
「リリアーナさん、敵は魔人族だけでなく、神の軍勢もいるでしょう。それを鑑みれば、最悪我々がここにいる事の方が王都を危険に晒す可能性もあります」
「しかし、魔人族にとってはここを落とすことには意味があります。今の話が真実なら、どちらかが滅ぶまで、この神の遊戯は続くのですから」
七海の言うことも間違ってないが、魔人族が取って返さない保証もない。リリアーナはこの国を今、任されている王女として、譲れない想いをぶつける。
「せめて、あの光の柱……あれも南雲さんのアーティファクトですよね?あれを目に見える形で王都の守護に回せは…」
「いえ、無理でしょう。そうですよね、南雲君」
「ああ。つか、なんでわかるんだよ」
「以前、あれを作った際、試作品だと言っていたのと、あれほど高出力な物を、連射などできないと思ったのと、これまであるのに使わなかった点、これらを考えてのものです」
簡単にとはいえ説明をしていた七海には流石に隠せないなとハジメは思いつつ、答える。
「まぁ、試作品だからってのもあるが、あれには解放者が作った擬似太陽を搭載してんだが、どうも今俺が持っているのとは別の神代魔法が関わっているみたいでな。流石に今の俺じゃ、擬似太陽なんてできない。最初の一撃でぶっ壊れたから強度的にもまだまだ改良点多い。てなわけで、アレをもう一度出すのは、現状無理だ」
が、大量破壊兵器はまだあり、その中には七海も知らない物もあるのだが、ハジメはこの場では黙っておくことにした。
七海も多分あるだろうなとは思っているが、1つの国家が持つべき物でないことと、この世界の戦争のあり方を変えてしまう可能性もあり、あえて黙っておく。
「そう……ですか」
「けど、まぁ、出発前に、大結界くらいは直してやる」
わかりやすく肩落としたリリアーナ。だが、香織に雫、それに愛子の無言の視線がハジメを動かし、ぽつりと、「しかたねぇな」とでも言うように、つぶやいた
「南雲さん、有難うございます!このお礼は、できる限りのことをしますので!」
リリアーナのそれまで暗い表情が一気に明るくなる。こういうころころと表情が変化しやすい所だけをみれば、彼女はまだ子供なのだなと七海が思っていると、ハジメが七海の方を見て言う。
「俺も、どっかの誰かさんみたいに甘くなっちまったもんだよ」
「なんで私を見るんですか」
「さぁな」
次に香織達の方を見て「これでいいだろ?」目線で言うと3人ともリリアーナと同じく嬉しそうな笑顔をハジメに返す。それに合わせたように、ユエ達も笑顔がうかんでいた。
「甘くなったが、まぁ、悪くない」
ハジメは苦笑いをしつつ、誰に言うでもなくそう呟いた。
「それで、南雲君達はどこへ向かうの?神代魔法を求めているなら大迷宮を目指すのよね?西から帰って来たなら……大樹海かしら?」
雫が問うとハジメが「そのつもりだ」と肯定する。
「本来ならフューレン経由で向かうつもりだったんだが、一端南下するのも面倒いからこのまま東に向かおうと思ってる」
「あの、それでは、帝国領を通るのですか?」
ハジメの予定を聞いて、リリアーナが何か思いついたような表情をする。
「そうなるな……」
「でしたら、私もついて行ってよろしいでしょうか?」
「…帝国との会談ですか?」
七海の問いに対し、リリアーナは肯定して言う。
「はい。今回の王都侵攻で帝国とも話し合わねばならない事が山ほどありますので」
「失礼ですが、現在のところリリアーナさんはこの国の王……代表代理で、しかも復興もまだまだです。それでも、あなた自身が行くのですか?」
「だからこそです。会談は早ければ早いほうがいいというのもありますが、この状況で人間族がすべきことは、団結していくことです。たとえ仮初でも、皆さんになるべく頼らず国を守るには必須です。その為なら、私はこの身体を委ねることも厭いません。復興の方は、母に、それとメルド団長が生きていたので、騎士達の指示もすぐにできていたので、予測よりも順調です。私がここを離れても、問題はありません」
その言葉を聞き、七海はなんとなく理解した。リリアーナがしようとしていることを。
「昨日既に使者と大使の方が帝国に向かわれましたが、南雲さんの移動用アーティファクトがあれば彼らよりも早く帝国へ行けるでしょう?直接私が乗り込んで向こうで話し合ったほうがより確実ですしね」
「事実上の護衛兼護送というわけですね」
現状これ以上の守りはないだろう。当の本人のハジメにその気はなくとも、そうなる。しかもハジメにしてみても、通り道に降ろしていくだけなので手間にもならない。だから提案は
「別にいいぜ」
了承される。ただし、ハジメは釘を刺すのは忘れない。
「ただし、送るのはいいが、帝都には入らないぞ?皇帝との会談なんて絶対付き添わないからな?」
この発言も最初から想定済みなのか、リリアーナは「ふふっ」と笑い、
「そこまで図々しいこと言いませんよ。送って下さるだけでいいんです」
とやんわりと返された。
(まったく)
これからのリリアーナのことを思うと、七海は不憫に感じる。以前会ったあの皇帝の事を考えるなら、こんな状況下でもただで王国と同盟はしない。否、こんな状況の王国だからこそ、取り込む為に躍起になってもおかしくない。そして先程、リリアーナは身体を委ねると言った。それは言葉そのものの意味だろう。
「だったら」
そこへ、黙らされた光輝が再び発言する。
「だったら、俺達もついて行くぞ。この世界の事をどうでもいいなんていう奴にリリィは任せられない。道中の護衛は俺達がする。南雲や七海先生が何もしないなら、俺がこの世界を救う!」
「………天之河君、君はここに残りなさい」
「七海先生!」
「力を求めたい気持ちは理解できなくもないですが、ハッキリ言いましょう。足手纏いです」
「⁉︎」
これまで力をつけ、着実に実力が上がっている光輝は、足手纏いと言われ、はらわたが煮えくりかえる。そこに、愛子が以前のハジメの言葉を思い出して指摘する。
「南雲君、ウルで言ってましたよね?今の私達では大迷宮に挑んでも返り討ちだって」
目線を逸らしつつ、ハジメは
「まぁ、無能だった俺でもなんとかなったし、絶対とは言わないがな」
「南雲君、下手に希望を持たせるようなことは言わないでください。無責任ですよ」
七海はハジメの言葉に釘を刺す。話を聞くに、ハジメが生きているのは様々な奇跡と偶然の重なりだ。あの時に戻ってリトライしても、同じになるとは限らない程に。
「それに天之河君、世界を越える手段を手に入れたら、他の方々が戻れるように私と南雲君との間で縛りを結んでいる。効率的にするなら、南雲君が神代魔法を全て集めるのを待つのが最適です」
ハジメとしても、七海の言うことは正しく、効率的だ。光輝達が一から神代魔法を手に入れる為に、既に攻略済みの大迷宮に同行するのも、新たな神代魔法がある場所で手伝いをすることも時間のロス以外の何ものでもない。
「七海先生、南雲君や七海先生からの話を聞くと、エヒトや魔人族との交戦は避けられないんですよね?」
「そうですね」
おそるおそる聞いた雫の質問に七海は肯定した。
ハジメは向こうから来れば相手にする。つまり、来なければ相手をしないということだが、確実に来る。今度は総力をかけてくるだろう。七海は正直なところを言えば、万が一を考えて戦力を増やしておきたい気持ちはあった。
「それに、神のことを置いておくとしても、帰りたいと思う気持ちは私達も一緒なんです。 1度でいいんです。この世界にいる限りは、自分の身と、みんなを守れるようにしておきたいんです。1つでも神代魔法を持っているかいないかで、他の大迷宮の攻略に決定的な差ができるなら、1度だけついて行かせてください」
「先生、俺からも頼む。せめて、自分と仲間がくらいは守れるようになりてぇ。もう、幼馴染みが死にそうになってんのを見てるだけなのは、耐えられねぇ」
雫と龍太郎が立ち上がり、頭を下げて言っており、それについて七海が苦言を含めて言おうとしていると、扉が開く音がし、皆がそちらを思わず見る
「私からも、お願いします、七海先生、南雲君」
静かに、だがよく通る声で、鈴が言いながら入って来た。
「鈴⁉︎」
「お、おい!もう大丈夫なのか?」
その体型に合う小さな足音を響かせ、こちらに来る鈴に、雫と龍太郎は心配そうに聞くが、他の数名、居残り組の生徒は怪訝な表情をしており、中には睨む者すらいた。それらを無視し、鈴は2人に言う
「大丈夫だよ、龍太郎君、
「「!」」
それだけ言って2人の間を通り、鈴は七海を見る
「先生、私はもっと強くなりたいです。強くなって、恵里を
「まず、ハッキリと言っておきます。谷口さんには言いましたが、今度私が中村さんと会った際は、確実に殺しにいきます」
七海は彼女にはもう話し合いの余地はないと判断している。話し合いが通用するような相手ではないからだ。自分の生徒に対しての言葉に、居残り組の生徒と、雫達は戦慄するが、鈴は
「大丈夫です」
まるでそんなこと当然だろと言いたげな、無表情で返した。そう、無表情なのだ。あの鈴が、恵里の事に対してというのも鑑みても悲壮感や、必死さも、当然以前のような笑みもない。
「す、鈴?」
「なに?」
「あなた、本当に鈴なの?」
あまりの変化に雫はついそう聞いていた。
「私の顔は変わってないよ。あっ、恵里に既に殺されて傀儡になってるわけでもないからね」
そこでようやく見せた鈴の笑顔と冗談に、雫は驚く。いつも見せていた笑顔とは違う。鈴の小さな身体には似合わない、大人っぽいというか、どこか冷たさを含んだ笑みだった。
「なるほど。皆さんの意見はわかりましたが、私は反対です。しかし、縛りの影響で、私は南雲君の最終の意見には逆らえません。説得するなら、南雲君にまずは頼むべきです」
と、七海はハジメの方にふる。どうせ無理だろうと踏んだからだ。
「………次の、ハルツィナ樹海に限ってなら同行してもいいぞ」
「⁉︎」
まさかの発言に、七海は思わず驚きを隠せずにいた。
「ただ、寄生したところで、魔法は手に入らないからな。迷宮に攻略したと認められるだけの行動と結果が必要だ」
「もちろんよ。死に物狂い、不退転の意志で挑むわ」
「おうよ!やってやらぁ‼︎」
「必ず、攻略してみせる!」
喜ぶ光輝達3人とは別に、特に感情が動くこともなく、鈴がハジメ方に向いて会釈した。
「南雲君、ありがとう。足手纏いにはならないようにするから」
「お、おい鈴!」
「鈴!」
「なに?」
それだけ言ってその場を去ろうとする鈴を、光輝と龍太郎が止めるが、用がないなら止めるなと言わんばりの冷たさを感じる。
「その、えと、せっかく起きたんだもの、一緒に食事でも」
「軽く食べたから、必要ないよ。それに、私がいたら嫌な人もいるみたいだし」
雫の誘いをバッサリと断り、ちらりと居残り組の生徒達を見ると、目線を外す。それらを光のない瞳で横目にし、入って来た扉に向かうとする。
「谷口さん、少し待ってもらっていいですか。今の現状と、これからについて、どうしても聞いてほしいことがあります」
鈴は何も言わず、七海を見るが、それを聞いておく必要性があると判断し、皆から少し離れた席に座って聞く姿勢になる。
「まず、南雲君、彼らの同行を許したのは力をつけさせて、我々が戦った神の使徒ノイントのような存在とぶつけさせる為でしょう?」
ギクっとハジメは身体を震わせる。それを聞いた雫達はサァーと顔が蒼ざめる。
(やっぱりわかるよな、この人)
「先生!俺は問題ありません!元々神とも戦う気はあります!南雲の計略なんて関係ない、それすら利用してやる!」
この性格を利用されているのだがなと、周囲の者達は思うが、あえてスルーした。
「それでもついて行きたいというなら、止めません」
「ん、意外だな。縛りで最終決定権は俺にあるが、反対意見は言えるだろ?」
「南雲君も気付いているでしょうが、ノイントは明らかに作られた存在でした。なら、他にもいないなんてあり得ない。アレと同程度の戦力が、数多くいるなら、正直なところ厄介です。確実に奴らが君や私達に仕掛けてくるなら、その時に備えて、戦力を増やしておきたい気持ちは、私にもありましたから」
しかしながら、明らかに現状戦力としては足手纏いの彼らを、『危険な場所で力をつけよう!』なんて言えるはずもない。
「だからこそ、確認です。今の南雲君の考えを聞いて尚、ついて行きたいなら、もう止めません。ただし、そこの4人以外はダメです。あまりにも場違いですからね」
七海は光輝、雫、龍太郎、鈴を指して言うが、他の者達はそもそも行く気はなかったが、今の話を聞いて余計に行く気がなくなった。
「一応、遠藤君は来るに値する実力はありますが、彼は足を再生して間もない」
斬り落とされた足は、戻って来た香織が完全回復させた。実はもう以前と同じように動けるのだが、彼自身に、ついて行きたいという勇気がなくなっていた。
「さて、もう一度聴きますが、自分達が囮役にされる可能性があっても、行きますか?」
「先生、確認不要です」
光輝よりも早く言ったのは鈴だった
「囮役だろうが肉壁役だろうが、関係ないです。私は、行きますよ。止めるなら、七海先生でも容赦しません」
おそらく七海が止めるなら、本当に殺してでも行こうしている鈴の言動に、光輝達勇者組と、居残り組は身が震える。その言葉を言っているのが、鈴だからというのが大きな理由だが。
「七海先生、行きます。行かせてください」
次に声を出したのは雫だ。ずっと一緒にいた鈴の変化に、思うところがあり、その危うさもあって、彼女は同行を決意した。
「俺も、行くぜ」
龍太郎も同じく、見ていられない鈴の近くにいようと思った。
「天之河君は、先程聴きましたね」
答えなど分かりきってる。光輝は「ハイ!」と大きな声を出して肯定した。
「……南雲君、この件を許す代わりに、出発を1日延ばしてもらってもいいですか?」
ハジメはなんだか猛烈に嫌な予感がした。が、拒否しても良いが、なんだかんだと生徒想いな七海が、ハジメの考えを読んだ上で彼らの同行を認めたのだからと、
「まぁ、1日くらいなら」
と言った。
「ありがとうございます。今日は一日羽を伸ばしてください。明日、それとさらに翌日の出発のギリギリの時間まで、彼らの訓練をします。時間はあまりないので即席にはなりますが、良いトレーニングになるでしょう。それを、あなた達も手伝ってください」
ハジメ達を見て、七海はそう言った。
というわけで、キャラ崩壊したのは鈴でした。とはいえ、かなり彼女は無理をしています。精神的にもですが、これから肉体的にも無理をします。
前のように戻れるかは、これから次第ですね。少なくとも、ここでは戻れません。
あと1人か2人がキャラ崩壊しそうなんだよなー。鈴含め、それを永続するか、それとも戻すか、悩ましい。