ありふれたやり甲斐と生き甲斐を探して   作:戦鬼

69 / 107
髙羽のpvが出てたので見たんですが、明日解禁ってマジ言ってる?
27巻がそれってわけでなく?そしてスタッフに愛されている髙羽に笑ったw


事上磨錬

朝日が登り、朝食を終えた光輝達と、ハジメ達、そして七海が、訓練所にいる。ちなみに檜山によって破壊された所だ。

 

「さて、それでは訓練について説明します」

 

光輝達だけでなく、ハジメも妙に張り詰めた雰囲気に飲まれていた。手伝いとは何をさせるつもりなのかと全員が思った。

 

「与えられた期間は出発の日を含めた2日です。故に、君達には私と南雲君達に協力してもらい、教練を個別で受けていただきます」

 

つまり、光輝達はハジメ達の中から、それぞれ1対1での戦闘訓練を受けてもらうという事だ。自分達では到底敵わないであろう者達からの教示はしんどい上に辛いだろうが、とてもいい励みにもなるだろう。ただ――

 

「七海先生、いいですか?」

 

スッとノイントの身体になった香織が、手を上げる。

 

「なんでしょうか、白崎さん」

 

「あの、なんで私も光輝君(こっち)側なんでしょう?」

 

現在、光輝達とハジメ達で別れて並び、向き合うように立っているのだが、光輝達の方に香織もいた。

 

「別に問題はない。むしろそのままそっちにいればいい。昔の男がヨリを戻したそうだし」

 

「ユエ!誤解されること言わないで!」

 

「まぁまぁ、私は気にしないから、もうそのまま戻って来なくてもいいから、どうぞどうぞ」

 

「むきぃぃー‼︎ユエの意地悪‼︎ぜぇぇったい‼︎ハジメ君の隣はぶんどるんだからぁ‼︎」

 

いつも通りの2人の言い争いが始まり、

 

「はい、2人ともそこまで」

 

パンパンと手を叩いて七海は止め、

 

「「だって香織[ユエ]が!」」

 

「もう一度言いますよ、そこまで」

 

サングラスも相まって、迫力ある七海の声と表情で今回こそ止まる。強者たるユエがちょっと縮みあがる程の迫力だった。そんな光景に光輝達は驚くが、もはやこの光景に見慣れたハジメ達からしてみれば、『あーあ。またこうなったよ』的な呆れの顔になる。

 

「さて、白崎さんの質問に答えるとしましょう。昨日も言いましたが、その身体をまだ自分の物として、完全なコントロールはできてない。僅かな時間しかありませんが、少しでもその身体に馴染む為にも、あなたにはしっかりとした知識を持った方からの訓練と教鞭を受けていただきます。…というわけでユエさん、その役目をお願いしていいですか?」

 

「ん?私?」

 

「ええ。あなたと相性もいいですし、白崎さんへの魔法の教鞭に関しては私よりも良いと思いますので」

 

「む!むむぅ……香織との相性がいいって言葉は…まぁ、置いとくとしてぇ、七海がそんなに私の方が魔法の教えがいいって言うくらいだしぃ…まぁ、香織が私の教えについて来れるかだけど」

 

「まぁ、ユエと相性がいいっていうのは置いとくとしても、七海先生と同じかそれ以上に魔法の教えが上手いユエなら、良いかも。せっかくだから、そのままユエを追い越してもいいですよね?」

 

バチバチと火花がユエと香織の間で発生し、2人の後ろには般若と龍が見えていた。

 

「では、良いということで?」

 

「ん!任せろ」

 

「ドンと来いです」

 

「納得してくれたなら、それでいいです」

 

七海の少々ホッとした表情を見て、ハジメ達は悟った。

 

(あ、これユエに任せたというより、香織に投げたと言うべきだな)

 

(ユエさんのド下手すぎる教えに対応ができるのが香織さんだけだからですね)

 

(しかもそれでちゃんと成長できるのも香織のみじゃからか。七海よ、エグいのじゃ)

 

適材適所。それは間違いないだろう。だがユエが聞けば釈然としないのも間違いない。3人はユエの気持ちを考え、黙っておこうと決め込んだ。

 

「では、残りのメンバーのそれぞれの相手を伝えます。まず、八重樫さんはシアさんに」

 

「はっ、ハイ!ってシアさんに?」

 

「私ですか?」

 

「八重樫さんの技能の〔+見切り〕の完全上位互換は、現在のシアさんです。自分の上位互換と戦い、かつ接近戦に対応しているのはシアさんですからね」

 

言っていることはわかるが、1つ問題がある。それは――

 

「あの、七海さん…正直私は教えるのに向かないというか、何をどう教えればいいか」

 

シアはユエとはまた別の意味で教えるには向かないという事だ。そんな経験もないので当たり前と言えば当たり前ではあるが。

 

七海はシアがそう言ってのくるのも織り込み済みなようで、ちゃんと説明する。

 

「方法は私から教えます。…シアさん、加減してもらいますが、術式の使用は許可しますので八重樫さんと戦って下さい。他の方々もですが、ある程度の怪我は辻さん含めた回復担当が治します。治しては戦い、治しては戦いを続け、少しでも戦闘の腕を上げてもらいます」

 

「え、と…それってつまり」

 

雫の顔が蒼ざめる。

 

「八重樫さん、君は頭もよく、戦い方も良いですが、少々考えすぎる部分があります。故に、シアさんとの戦いの中で、直感力とそれに伴った手数を増やす事を目標としてもらいます。それと、これも他の方にも言えますが、自分よりも圧倒的に強い相手をしていれば、この先の大迷宮の魔物との戦いでも、ある程度の余裕を持てるでしょうからね」

 

要するに、ボコボコにやられてもいいから食らいつけというものだ。この時、ほぼ全員が思った。(やっぱりスパルタだ)と。

 

「次に、谷口さん、あなたにはティオさんです」

 

「む、妾か」

 

言われたティオが鈴を見る。

 

「‥‥よろしくお願いします」

 

それに対して特に何も言うことなく、無表情でお辞儀をして、鈴は構える。いつでもどうぞと言ったところか。

 

「ここではないですし、まだ説明の途中です。訓練所はここ含めて3つ。それぞれ別れてもらいますが、ユエさんと白崎さん、ティオさんと谷口さんは王都の外、距離を離してお願いします。強力な魔法を使うでしょうからね。王都内では危険すぎる」

 

「はい」

 

「ん。わかった。私達の方はもう始めてもいい?」

 

「いえ、とりあえず全員の説明が終わるまでで」

 

香織とユエが承諾し、ユエがそのままゲートを開くことを提案してきたが、七海は全員への説明を優先した。

 

「それで七海先生、私は何をすれば?」

 

鈴は静かに、されど急かすように問いかける。

 

「…君には、まず現状の立ち位置を理解してもらうのと、何日も寝ていたので魔法の使用のテスト、それを済み次第、とにかくティオさんの攻撃を凌いでください。やり方は、ティオさんにまかせますが……よろしくお願いします」

 

「まかせよ」

 

七海とティオのそのやりとりに、何か違和感をハジメは感じた。

 

(たぶんティオに、今の谷口のケアも頼んでんだろうな)

 

強者、大人、同じ女性。そういった部分でティオに任せたのだろう。変態という部分を除けば、ハジメ達の中ではもっともデキる大人なのだから。

 

「しかし、わずかとはいえご主人様からの目線も、罵倒もないのは、少々寂しく味気ないのじゃ」

 

ほんと、変態でなければ。

 

「時間がないのでサクサク行きましょう。次、坂上君は、南雲君に任せます」

 

「「ちょっ⁉︎」」

 

「なぁ⁉︎」

 

「…………」

 

雫と香織、光輝が「マジか⁉︎」と言うように声をあげ、龍太郎は死んだような目になる。

 

「いや、残ってるのは教わる側が坂上君と天之河君で、教える側は私と南雲君しかいないんですから」

 

「「そうですけど!そうですけど!」」

 

香織と雫はそれがスパルタの域を超えてると考え、声を張り上げていた。

 

「あの、七海さん。七海さんにはまだ言ってなかったんですけど、その、ハジメさんの教えはスパルタな上に、その、大変なことになりかねないかと」

 

「おいシア待て、誤解されるような言い方すんな!前みたいには流石にならない!坂上は違うし!俺もアレはやりすぎたと思ってるし!」

 

七海はシアとハジメの会話で気になる事が色々とあったが、また別の機会に聞こうと思い、今は説明を続けることにした。

 

「はっきり言って、坂上君の戦い方を変えるのは難しいです。無理に変えてしまえば、改悪になりかねないんですよね」

 

良くも悪くもわかりやすい。鍛えた分力を上げられるが、単調な戦い方なのは変わらない。

 

「そりゃ、まぁ、先生の言う通りだけどよ。それでも南雲って……」

 

龍太郎は正直、「俺大丈夫か⁉︎」と本気で自分の命を心配している。うっかり殺られないかと。

 

「故に、坂上君には搦手にも対応できるようになってもらうため、そういう狡い手数の多い南雲君を相手してもらいます」

 

「おい、言い方」

 

「当然ですが、手加減はしてもらいます。南雲君、銃火器を含めた武器……というかアーティファクトと呪具の使用は、禁止。錬成は良いので、それを使いながらの接近戦をメインにしてください。2日しかないですが、もしも君がそれで対応できないとき、もしくは坂上君が搦手にも対応したと思ったとき、死なないようにするなら、武器使用を許可します」

 

無視されつつ、説明を続ける七海に、ハジメはちょっとイラっとしたが、不満を飲み込んで言った。

 

「…引き受けてやるが、1つ約束しろ」

 

「なんでしょうか?」

 

「俺等にも秘密は無しにしろ。好き勝手に色々と被ろうとすんな」

 

「それは、縛りですか?」

 

「もうこれ以上あんたと縛りを結んだら、余計ややこしくなんだろ」

 

「……できる限り、お約束しますが、私にも、話したくないことはあると思ってください」

 

ハジメは「フン」と言いつつ、龍太郎の襟を掴んでズルズルと引っ張る。

 

「おら、とっととはじめるぞ。もう残りも決まったんだ。正直面倒だから早いとこ終わらせるぞ」

 

「かまいません。時間もないですからね。ユエさん、ゲートの方をお願いします」

 

納得いき、早速とばかりにユエはゲートを出して、8人は移動して行った。8人が移動した後、七海は残る人物、光輝と向かい合う。

 

「さて、残るはあなたですね、天之河君」

 

「…………」

 

「一応言っておきますが、先程彼らに言っていたことは全て真実ですし、もっとも効率的に育てあげることのできる采配にしたつもりです」

 

七海はネクタイを緩め、スーツのボタンを外し、戦闘の為のルーティーンを行う。

 

「君の場合、成長性がとても高い。ハッキリ言いますけど、私程度を超えていないのが驚きですよ」

 

「それは、嫌味で言ってるんですか」

 

「事実を言っているだけです。もうひとつ言うなら、私が教えられるところは、ほとんどないんですよ」

 

「なっ⁉︎」

 

光輝は七海のその発言に怒りが突き抜け、言葉がでなくなる。

 

「君の問題は、君の性格と、決断できてない覚悟が、成長を止めている事です。それらは私では助言はできても解決には至らない。自分でどうにかするしかない(まぁ、無理矢理させる方法もありますが、色んな意味で危険なのでやりませんが)」

 

「じゃあ、どうして俺の担当になったんですか?別に、ユエさんや、シアさん、ティオさんでもよかったんじゃないですか?」

 

「………南雲君は、入ってないんですか?」

 

「‼︎」

 

「なんというか、君も、南雲君も、なんでそんなにお互いに張り合ってないフリをしてるんだか」

 

七海が呆れながら言っているのが光輝は気に食わないのか、

 

「俺は別に、南雲と張り合ってなんて」

 

「南雲君を認めたくないなら別にいいですが、君も、君を押し付けるのもやめた方がいい」

 

「だから、俺は!」

 

「話しが長くなります。ここからは、君に集中します。君も私に集中してください。あまりぼうっとしていると、怪我ではすみませんよ」

 

グッと片方の拳を握り、七海は構える。その闘気に気圧されぬように、天之河は聖剣を構える――

 

「ごえぇぇぇ!」

 

――前に大鉈の峰部分で殴打された。ちなみに凱劃(がいかく)ではなく、これまで彼らの訓練に使っていた鈍だ。思わず光輝は無様な声を出して、無様な格好で倒れた。

 

「い、いきなりなんですか⁉︎」

 

「行動が遅すぎです。拳でくると思い込んで対応もできてない。おまけに正面に私が立っているのに距離を離そうともしない。総じて言うなら、0点です」

 

「せ、説明の為に前にいたのに、それはないんじゃないですか?」

 

理不尽な攻撃に反論するが、七海は「はぁ」と小さくため息を出して、

 

「なにを言ってるんですか今更。卑怯や姑息が通用しないのは武術の試合のみ。君がしているのは戦闘です。いい加減、その正々堂々といった精神は捨てて下さい。……先程も言いましたが、私が君に教えられることはもうほとんどない。あと今君に教えられるのは、所謂、狡い戦い方です」

 

「狡い、戦い方?」

 

「坂上君とは違い、君はそういう戦い方を覚えていた方がいい。戦い方の幅が広がりますし、君自身にとってもいい。これから教えるのは、私が教えられる、呪術師らしい戦い方も交えたものです。やり方を覚えておけば、君ならそれなりに使えるような工夫はできるでしょう」

 

「俺は、呪術師なんて最低な人達のような戦い方はしない」

 

「………」

 

一瞬、光輝は七海の口元と、眉が動いた気がした。その瞬間、天地が入れ替わり――

 

「ゴハっ!」

 

地面に背をついた。

 

「いま、私が多少たりとも動いたのを認識してましたね?なら、その瞬間、もしくはその前に対応をしてください。狡い戦い方を教えますが、それの対応も視野に入れてください」

 

七海の説明を聞きつつ、光輝はどうにか立ち上がろうとしたが、

 

「グハっ!」

 

流石に本気ではないが、七海は鎧の胴の部分を蹴り、光輝を吹っ飛ばす。

 

「立ち上がりが遅いです。今の君のように倒れたら、すぐに起き上がり反撃か、回避、防御を相手に合わせて瞬時に判断してください」

 

荒い息を出しつつ、光輝は七海の動きを見つつ、今度こそ立ち上がり、聖剣を構えた。

 

「ようやく構えましたか」

 

七海のその呆れたような口調に光輝は腹が立ち、今度はこっちの番と剣戟のラッシュを放つ。

 

「………成長はしているようで何よりです」

 

「いつまでも、余裕な態度を!」

 

光輝は持っている大鉈を弾き飛ばすつもりで聖剣を横凪で振るう。だが、

 

「⁉︎」

 

七海のとった行動によって、咄嗟に攻撃を止めてしまい、寸止めした瞬間、逆に七海は聖剣を大鉈で上に跳ね上げ、胴体がガラ空きになった光輝に蹴りを入れた。

 

「ぐあぁぁ!」

 

鎧の上だというのにその衝撃が鎧の内側まできて、下がると同時に吐き出してしまいそうになる。

 

「いま、私が腕で君の攻撃を防ごうとした瞬間、焦りましたね。斬りつけてしまう、腕を斬り落としてしまうと」

 

「……わかってて、やったんですか?」

 

光輝は口からこぼれた涎を拭きつつ、睨みながら七海に言う。

 

「もちろん。今の君は、他者を傷つけることの抵抗感が、以前よりも強くなっていることなど、見ても、見なくても分かりますよ」

 

七海は騎士、雫含めた他の生徒達から、現状の光輝の状態を細かく聞いていた。その時点でそうだろうと推測はできたが、今の光輝の対応で確信に至った。

 

「他人を傷付ける覚悟も、自分も傷付く覚悟もない。それなのに、自分にはできない事を平然と、自分を傷付くこともなく成す南雲君を否定するから、君は戦えないとあの時言ったんです」

 

と七海は言いつつ、実際はハジメも傷付いている部分があるが、ユエという存在が救いになっているなとも考えていた。

 

「続けますよ、天之河君。南雲君が認めた時点で、君を連れて行かないという選択肢はもうないです。ですから、『まずは私に勝つ』というその思い上がりごとへし折ります。それでもついて来るのか、それともやめるのかは、君次第です」

 

七海のサングラス越しの冷たい目から、逃げだしたい気持ちになっていることに、光輝は今はまだ気付けない。というより、気付くよりも、戦うことに集中しなければ、すぐにやられてしまうと考え――

 

「おっ、え⁉︎」

 

――る前に脇腹を蹴られ、吹っ飛び、気絶した。

 

「……前途多難というやつですかね。辻さん、回復をお願いします」

 

七海に声をかけられ、訓練をずっと見ていた辻は、今まで見せてなかった七海の本気に多少の恐怖を覚えたが、言葉の全てが、光輝のことを考えたものであると理解していた。

 

ちなみに、回復担当の配置だが、七海の場所には辻と数名の王国の騎士。ハジメとシアの場所には大勢の騎士が配置され、使う魔法の強大な威力による危うさもあり、ティオとユエにはつけなかった。それを理解した上での訓練をしてくれるだろうという信頼もあるが。

 

・ユエと香織の場合

 

王都外の荒野で、2つの光が空中で輝く。1つは流星のように動き、もう1つは動く者の中心で静止し、攻撃を防ぐ。

 

「うわぁ!」

 

防いだと同時に強大な魔法をぶつけ、咄嗟の防御をするも、対応できずに墜落し、土煙を上げていた。

 

「香織、今の感じでいいと思う」

 

「え、そうなの?」

 

空中に浮いていたユエは地上に着地し、墜落して痛そうにしていた香織に告げるが、「ただ」と続ける。

 

「ハジメから聞いた話だけどその身体は、魔力の制限というか、そもそもの魔力の底っていうものが本来ならない。自立した魔力精製装置であると同時に、魔法の使用の際の詠唱をすっ飛ばした上での高威力。私やハジメみたいな〝魔力操作〟と同じか、それと同等の技能も持ち合わせていた可能性がある」

 

「私も聞いたよ。しかも、〝限界突破〟同等の出力上昇手段もあるって」

 

「これは私の考察だけど、ノイントの力を引き出せてないのは、香織のレベルが低いのが原因だと思う。話を聞く限り、ノイントは最低でもレベル80以上はある。その元来の差が、引き出せてない最大の理由」

 

とユエから聞かされて、香織は考える。

 

「じゃあ、さっきの今の感じでいいっていうのは?」

 

「それは戦い方の話。七海が接近戦の戦い方も仕込んでたから、技能の〝双大剣術〟ありきでも、あの勇者(笑)を越えてる。だからあとは、魔法の問題。まずは最低限、その身体を使えるように、必要なものを発現させる」

 

「それって」

 

「私達と同じく、〝魔力操作〟を持ってもらう」

 

ゴクリと香織は唾を飲み込む。

 

「まず、魔力を操作するっていうのは、イメージでいうなら〈当たり前〉かな。河は水があるから河。火は燃えているから火。なら魔力は?血と同じく、あって当たり前の物。それを阻害してるのは、そもそも魔力を流す為の、河で言うなら流れを塞き止めているものがあるから」

 

「それって…逆にいいんじゃ?」

 

「逆。香織、河の流れは、一定じゃない。時に激しく、時に緩やかになる。つまりは自然。そこに塞きを入れる行為そのものが、矛盾」

 

「!」

 

「香織は他の、魔力のない世界から来たから、余計にそれが表れてる。魔力は、当たり前にあるもの。だから、操作する=自分は河そのもの、自然の一部だと思うこと」

 

「自然が、操作している」

 

「そう。魔力は自然。塞きを作るんじゃなくて、その時の自分を、魔力を、感じて、流れを読み解き、使用する。イメージを大切にして、魔力と共に身体が動くような、そんな感じで」

 

「イメージを大切にして、魔力と共に身体が動く……」

 

「実戦の中で、それを感じとる。その身体なら、たぶんそれがやりやすいはず」

 

「うん」

 

再び2人は動き出す。香織は、魔力の本質を知る為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、それとは別に、先程からの会話でアレ?と思われている人。その感覚は正しい。これは翻訳である。

 

実際は

(一部です)

 

 

 

 

「まず、魔力を操作するっていうのは、ボワーってなったり、ズアーってなる。香織達の場合は、いつだってスースーなの。わかる?スーなの」

 

「スーって…そっちの方がいいんじゃない?ボワーよりもいい感じだけど?」

 

「逆。ボワーは1番安定してる。なぜなら河もボワーってなるから。香織達のスーは無理やりの方法。矛盾してるの」

 

「!」

 

「香織は他の世界から来たから、これをまだ理解してない。ボワーになるのもズアーになるのも普通なの」

 

「むぅ、じゃ、私がボワーやズアーになるの?」

 

「そう。ズアー、ボワー、ズガー、時にはスーってなってサーでギャンシャンしていく」

 

「ズアー、ボワー、ズガー、時にはスーってなってサーでギャンシャンしていく」

 

「あとは実戦の中で、覚えればいい。その身体ならできる」

 

「うん!」

 

こんなんでわかるのは世界広しといえども、香織とユエだけだろう。

 

・シアと雫の場合

 

「え、あれ?あの、シアさん?」

 

正直言って雫はシアに勝てる気はしていなかった。良くて一撃でやられなければいいというものだった。それなのに、

 

「あの、シアさん?大丈夫ですか?」

 

「いえ、はい、大丈夫です」

 

峰打ちとはいえ、おもいっきり黒刀が頭にあたり、シアは悶えていた。咄嗟に雫が刃の向きを変えて峰打ちにしなければ危なかったかもしれない。

 

「シアさん、体調でも悪いんですか?」

 

さぁ、訓練を始めようと2人が駆け出した瞬間、シアのウサミミがピンっと立って、大きな隙ができたのだ。

 

「いえ、なんだか、父様達がヒャッハーしてる気がしたので」

 

「?」

 

シアの言うことがよくわからなかった雫は首を傾げる。

 

「なんでもないです。それより、雫さんでしたよね?完全に油断と隙ができたとはいえ、私に攻撃を当てるなんてすごいです!」

 

「あ、えと、ありがとうございます」

 

「でも、峰だと痛いですねー。刃だったらよかったのに」

 

シアのその言葉に、雫は「はい?」と間抜けな声を出す。

 

「命や身体に害がある攻撃は、もう反射的に呪力と魔力の同時強化をするようにしているんです。だから、刃だったら、たぶん呪力と魔力に阻まれて、頭上で止めれてたんですよ」

 

「…………」

 

マジなのか?冗談だろ?そんな言葉が雫の脳内を駆け巡るが、シアが冗談を言っているようには見えなかった。

 

「では、続けましょう、雫さん。大丈夫です!手加減するので、死なないように頑張りましょう」

 

「!……はい!」

 

雫は黒刀を構える。ほぼ同じ瞬間に、目の前にハンマーがあった。

 

「!」

 

「!(これを防いだ)」

 

術式の瞬間移動による、完全な不意打ち。雫は回避こそできなかったが、黒刀で防いで最低限のダメージにした。

 

(なに?今の動き。速い……だけじゃない。何をしたの)

 

雫は神代魔法か何かと思うが、違うと瞬時に分析する。

 

(シアさんは亜人族には珍しい魔力持ちで、しかも〝魔力操作〟を保有してるらしいけど、オルクスで魔法を使っている感じはなかった。おそらく)

 

「魔法適正はないですよー」

 

シアは雫が何を考えているかをなんとなく察して言う。ちょっとしょんぼりしたようにウサ耳が垂れ下がる。

 

「ただ、身体強化に特化してるんです。七海さん曰く、全ての攻撃を最小限にして、全ての攻撃は致命傷にしかねないものになる。まぁ、七海さんの世界にいる、乙骨って人の魔力版みたいなものだそうです」

 

さらにそこに少なくない呪力による強化をした場合、シアの身体機能向上は通常の術師はおろか、白兵戦になれば五条悟ですら凌駕する。(注:ただし術式を使わないのを前提とする)

 

「それに、呪術師としての才能はあったみたいで、術式は持ってるので問題はないです。…雫さん、正直ちょっと舐めてました。ここからギアを少しずつ上げていきますので、しがみつく感じでついてきてくださいね」

 

雫は戦慄した。ちょっと防げただけなのに、これから本格的にヤバい訓練になることに。

 

 

・ティオと鈴の場合

 

「〝聖絶〟」

 

業火の炎を防御し、受け流す。鈴の周囲が受け切れていない炎に包まれて、その中心で立つ鈴は、以前と違い、堂々として、ティオを見つめていた。

 

(こやつ……今のも防ぐのか。かなりの期間昏睡しておったようじゃが、魔法の使い方も、その精度、他の者と一線を画す。まぁ、防御と結界魔法のみでの話じゃが)

 

「次、お願いします」

 

それはそれとしてと、ティオは鈴に近付く。

 

「一旦休憩せよ。鈴よ、ここまでできる時点で、お主は充分に」

「私は!……強くならないといけないんです。弱い人は、誰も守れない。弱い人は、簡単に利用される。弱い人は、自分を肯定する言い訳しかできない」

 

鈴は目覚めてこの数日、七海の見ていないところで、虐めを受けていた。もちろん大抵は七海も愛子も気付き、すぐさま厳重注意と鈴のケアを徹底したが、王都復興の手伝いや、他生徒のケアと他にもある事があり、1人だけを見ておくことなどできなかった。

 

直接的な暴力はないが、言葉の暴力は全て鈴を抉っていた。だが、その中でも特に効いていたのは、

 

「ヘラヘラと笑っていた私は、本当にバカで愚かだった。誰かを笑顔にしたいなんて、こんな世界で通用するはずがないなんて、考えたらわかることなのに、そんなだから、恵里の本質にも……」

 

ぶつぶつと、ティオにも聞こえる声で言いつつ、鈴は己の頬を引っ掻く。血が出てきたところで、我にかえるように、冷淡な表情になる。

 

「全部を捨てる。今までの私の全て。そうすれば」

 

「強くなれる…かの?確かにお主の成長性は大きく、才能はある。なりふり構わないやり方でやれば、確実に強くなるじゃろう。じゃが、お主、そのままでは死ぬぞ」

 

別にティオは鈴を心配して言っているわけではないが、七海に頼まれた身として、しっかりと警告する。その目はいつものふざけたようなものでなく、真剣だった。

 

「死にませんよ。死ぬのは恵里を止めてからです」

 

(それが、いかんというのに)

 

今の鈴は言葉で止まるような者ではない。

 

「………七海から言われた訓練から離れるが、お主なら大丈夫じゃろう。鈴よ、全力で攻撃をする。耐えてみよ」

 

ティオが抑えていた魔力を解放し、それを視認できる鈴は、さすがに冷や汗がでる。

 

「竜人族のブレス、これを耐えることができた時、お主は間違いなく強くなるじゃろう。安心せい、殺しはせぬ。じゃが、死ぬ気で気張ったほうがよいぞ」

 

その数時間後。

 

周囲が七海の危惧した通り、王都で使っていたらとんでもないことになっていたと言うべき、地獄の荒野とも言える場所になり、その場にはフラフラになったが、意識を保って、息を切らす鈴がいた。

 

「はぁはぁ、んぶぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 

少しだけ吐いて、それでも鈴は立つ。頭痛がするのか、頭を抑え、ギリっと歯を軋ませつつ、ティオに向かって言う。

 

「もう、一度、お願い」

 

そこでドサリと倒れた。

 

「七海が心配する理由がわかるの。あの勇者よりも、こっちの方が厄介じゃな」

 

倒れた鈴を抱き上げる。既に今は夕刻だ。

 

「手加減しておるとはいえ、この時間まで妾と戦った事といい、どうなって…?」

 

抱き上げた時に何かが鈴から落ちる。

 

「ステータスプレート………!(こやつ、もしかしたらと思っておったが、やはり)」

 

見たくて見たわけではない。だが、そこにある技能を見た。

 

「これは……七海風に言うなら、ご主人様と違った形の脳の変化かの」

 

そこにはハッキリと〝魔力操作(◾️)〟という技能があった。

 

 

・ハジメと龍太郎の場合

 

ハジメ、七海、シアが担当している訓練所にはそれぞれ回復役の騎士達がいる。彼らはそれぞれそこで行われている訓練に引いていたが、その中でも1番酷いのはここだろう。

 

「オラどしたぁ!んなもんかぁ⁉︎あぁ⁉︎」

 

「な、なんの…ゴハァ‼︎」

 

七海がハジメに制限したのは、銃火器を含めた武器とアーティファクトと呪具の使用禁止。錬成は禁止してない。ハジメに近付こうにも、彼の周囲には錬成でできた拳型の岩。それがハジメの身体の一部のように動き、近付く龍太郎を吹っ飛ばし、そのままラッシュをしていた。魔力による身体強化と、身体強化魔法を使っていなければ、もっと酷いことになっているだろう。気絶する直前まで痛ぶったら、

 

「おい!回復だ!」

 

ドスの効いた声と目で言ってくるハジメに怯えつつ、回復役の騎士達は「ハイぃ!」と一斉に龍太郎を回復させ、戦えるようにする。

 

「立て、坂上!これで終わりかぁ⁉︎」

 

「はぁ、はぁ、はぁ、あークソっ!………なぁ、南雲、いいか?」

 

「あ?」

 

「七海先生のこと聞いてさ、どう思った?」

 

仰向けになり、息を切らしながら龍太郎は尋ねた。

 

「別に。正直言ってどうでもいいっていうか、それであの人に対する何かが変わるわけじゃねーし。そもそも俺らにも話してない事もあるだろうしな。興味が全くないと言ったらウソだが、積極的に聞きたいわけでもないし、聞いてもたぶん、だから何だとしか思わないだろうな」

 

「……そうか」

 

龍太郎は自分の目を腕で隠し、つぶやいた。

 

「俺はさ、結構衝撃だった。俺達に話してくれなかったことってか、俺に話してくれなかったことも、呪術師でやってきた事も。だけど、それ以上にショックなのは、それで一瞬でもあの人に嫌悪感を抱いちまった事だ」

 

七海が話したのは本当に一部分のみだが、それでも、七海がどういう事をしてきたかを、想像できないほど龍太郎はバカではない。

 

「あの人みたいになりたいって思ってた。俺らを助けてくれたみたいにって。それが、ブレちまったのが」

 

「今は、どうなんだ?」

 

「色々考えちまうが、それでも、俺は…俺らにとってあの人が恩人なのは変わんねぇ。だから、この先に七海先生のことをさらに知っても大丈夫って言えるように、強くなりてぇ」

 

「………」

 

と、その瞬間なにを思ったのか、ハジメは錬成で作りあげた土の拳を解除した。

 

「?」

 

「坂上、こい」

 

そしてファイティングポーズで構える。それに合わせるよう、龍太郎も立ち上がり、構えた。

 

「一応いうが、錬成も使うからな」

 

「へっ、上等だ…」

 

と龍太郎が思っていたら、

 

「ゴヘェ⁉︎」

 

龍太郎の後ろから土の拳が出てきて殴られた。

 

「バカか。七海先生に言われたろ。搦手…狡い手に対応しろってな。大体、そんなくだらないこと考える暇、あると思ってんのか?俺を相手にして」

 

サァーと龍太郎の顔色が蒼くなる。

 

「今決めた。そういう余計な事を考えられないくらい、徹底的にシゴく‼︎覚悟しろよ、坂上ぃ‼︎」

 

その瞬間、龍太郎は

 

(あ、やっぱ俺死ぬかも)

 

とそう思いつつ、頭に走馬灯が流れていた。

 

 

そして翌日。出発の為、全員が七海が担当していた場所に来ていた。

 

「さて、約1日と少しほどなので、完璧に仕上がってなどいないでしょうが、いい経験にはなりましたかね」

 

「………正直言って、なったと思ってません」

 

光輝はこの数日、七海にいいようにされっぱなしだった。本人的には成長はしてないと思っている。

 

「私に一撃でも当てることができたんです。あとは、これからの君次第ですよ」

 

実は光輝はこの訓練中、1度だけ七海に攻撃を当てることができた。七海はそれをかなり評価していた。何せ、今までの天之河光輝なら絶対しないだろう一撃だったのだから。

 

(とはいえ、実戦で使えるのかと言えば微妙ですし、しかも、もう一度できるかと言われても、まぁ無理でしょうね)

 

だが、それをしたという事は、光輝が1つの変化を見せたということでもある。そちらの方が七海的には大事だった。半ばヤケクソで小さなものだったのだとしても、変化は変化だ。

 

「だいぶ仕上がった。香織はもう、シアとティオにも勝るとも劣らない」

 

「ユエのおかげだよ。あ、でも、ハジメ君の隣を譲る気はないから、奪ってみせるから」

 

カチンという音がした気がした。

 

「いい度胸。ちょぉぉっと私に近付いたぐらいで喜んでるようじゃ、ぜっっったいに無理だろうけど」

 

「うふふふふふ」

 

「ふふふふふふ」

 

双方背後に龍と般若の幻影を出しつつ、身構えているが、両者とも以前よりも凶悪な見た目になっており、数名が引いていた。

 

「雫さん、本当すごいです!本気の私にあそこまでついて来れるなんて!」

 

「あはは、でも、常に吹っ飛ばされてましたけどね」

 

術式を使ったシアの対応に雫はかなり肝を冷やす瞬間が多く、ハジメ達でも苦労する大迷宮の恐ろしさを、行く前から感じていたが、シアからすれば、雫には驚くことが多かった。

 

「最後に見せたアレ、正直なところぶっつけ本番ですよね?」

 

「ええ、まぁ、シアさんの動きに対応する為と、いつか七海先生より強い人とあった時のものとして、考えてたものなんですけど」

 

「大丈夫ですよ。雫さんなら、もっと強くなれます。七海さんに数十回吹っ飛ばされてきた私が保証します」

 

それはどんな保証だと、七海はツッコミを入れそうになるが、あえて無視した。

 

「それと、さんはなくていいですよ。雫さんなら、呼び捨てでもいいですぅ」

 

「えと、じゃあ…シア、これからもよろしく」

 

呼び捨てを許した事に、ハジメは小さく「お」と呟く。シアが仲間内以外で呼び捨てを認めるなど、そこまで雫を信頼したのか、それとも実力を認めたのか。どちらにしても、驚く事であった。

 

「ティオさん、谷口さんは?」

 

「うむ、少し野暮用があってな。そろそろ来るじゃろうが……七海よ」

 

「はい?」

 

「あの者にどんな修行をさせておったのじゃ?」

 

「どんなと言われても、結界術の基礎を中心にですかね」

 

七海が告げると、ティオは「むぅ」と考えこむような仕草をとる。

 

「正直言うが、あの者があそこまで強くなる事に疑問があっての。異世界から来たとしても、いや、異世界から来たからこそ、とても不思議じゃった。眠りにつく前、どんなことをしておったか、詳しくわかる者はおるかの?」

 

「それは、どういう」

「お待たせしました」

 

変態的な言動の目立つティオだからこそ、少々それが気掛りになり、七海が聞こうとした時、鈴が現れたのだが、

 

「す、鈴⁉︎」

 

「ちょ、鈴、あなた⁉︎」

 

「す、鈴、そ、それ」

 

香織、雫、辻が驚くのも無理はない。彼女の特徴の1つであるツーサイドアップの髪は、バッサリ切ってショートボブになっていた。

 

「あぁ、これ?修行中に髪が焦げちゃったから、ちょうどいいから切ろうと思って」

 

「そ、それもだけど、その顔⁉︎」

 

これだけならまだイメチェンで済んだだろうが、頬は引っ掻き傷で痛々しい顔になっていた。

 

「い、今治すね!」

 

香織はすぐさま動き、更に上がった回復魔法を駆使し、あっという間に治した。

 

「あぁ、ごめんね香織(・・)。気付かなかったよ」

 

「う、うん」

 

「…鈴よ、おぬし、またやったのか?」

 

ティオの『また』という言葉に、雫達はまさかと考えた。

 

「ごめんなさい。気付いたら、ひっ掻いてるんです。特に色々と考えてる時は。でもまぁ、いいでしょ、顔なんてどうでも」

 

「そ」

「そんな言い方はないだろう鈴!香織や雫達が気にしてるのに、そんな言い方!」

 

雫が何か言う前に、光輝が怒って言った。瞬間、ハジメや雫は『まずい』と思うが、もう遅い。というより、すでに(・・・)遅かった。

 

「いらないでしょ?傷なんてどうせつくのに。強くなれるならいくらでも傷をつけるよ」

 

「そうじゃない!前にも言ったけど、皆なんだかんだで君を心配してたんだ!それなのに、そうやって君を蔑ろにするなんて!」

 

「………光輝君は、私を心配してたの?」

 

「と、当然だろ」

 

「なら、どうして私に来る罵詈雑言に対して、そんな態度が取れるの?」

 

((遅かった、色々と))

 

ハジメと雫は王都のメインストリートで光輝が余計な事を言わせないようにしようと思っていたが、どうやら遅かったようだ。

 

「君を責めてるんじゃない!皆、行き詰まってるから」

「責任を私の所為にした。随分綺麗な事だね」

 

一息、呆れるように吐いて、鈴は告げる。

 

「光輝君はさ、頭がいいけど、そんな単純だから恵里にも、教会にも、いいように利用されてるのがわからないんだよ。バカ丸出しなんだよ、光輝君」

 

「なっ⁉︎」

 

鈴が言ったとは思えない言葉に、光輝はたじろぐ。

 

「私はさ、全部捨ててでも強くなって、恵里を止める気でいるけど、光輝君は?この世界を救う?それ、最初にイシュタルさん達に言われた時と何にも変わってないじゃん。いい加減、子供みたいな態度はやめなよ。こんな世界で、光輝君の優しさなんて、なんの価値もないんだから」

 

「す、鈴‼︎」

 

あっという間に我慢の限界が来て、鈴に向かおうとした光輝を、剣を前に出して七海が止める。

 

「そこまでです。…谷口さんもその辺で。そんな言葉を吐けば、天之河君がどういう行動をするかなんてわかるでしょう?」

 

「私は、間違ってますか?七海先生?」

 

鈴の光のない瞳が、恐ろしく見える者がいるなか、七海は怖気づくこともなく言う。

 

「半分くらいですかね。優しさのない強さなど、ただの暴力だと、私は思います。それは、君もそうなんじゃないですか?」

 

「…………………まさか」

 

少しの間をあけて、鈴は吐き捨てた。

 

「早く行きませんか?正直、さっきから私を見る目線が気になるんで」

 

周囲には居残り組の生徒や騎士、回復した永山達もいるが、鈴を罵倒していた生徒達はいない。だが、変わってしまった鈴に、恐れを抱いている者が殆どだ。

 

「南雲君、いいですか?」

 

「ああ」

 

鈴の姿に、何か思うところがあるのか、ハジメは短く鈴の瞳を見た後、前に立つ。

 

「しかし、結構な大人数ですが、どうします?バスでも錬成しますか?」

 

これだけ大人数では、もうブリーゼではどうにも狭いだろうと思い、七海はそう提案するが、

 

「ああ、それなら任せてくれ」

 

そう言いハジメは錬成をした。後に、それをたまたま見た王都の一般人は、また魔人族の襲撃かと右往左往したとか。

 

 

出発して、しばらくしたのち、全員がとりあえず用意してある部屋に行く前に、七海は呼び止めた。

 

「今のうちに、話しておきたいんです。これは南雲君、君達にも話しておきたい。内容は2つ、両方とも単なる私の見解ですが片方は注意……ではないですね、要警戒してほしいことです」

 

いったい何だと感じつつ、ハジメ達はそれを聞く姿勢になる。1つ目の内容を聞いたが、そちらはハジメ達にとってはあまり深く考えることでもなかったが、2つ目の内容は別だった。

 

「では、次に先ほど言った警戒すべき事ですが、中村さんの、術式についてです」

 

その内容は、

 

「んなバカな話しがあるか」

 

ハジメをして、信じられないと、事実であるなら、戦慄せざるを得ない内容だった。




ちなみに
事上磨錬:実際に行動や実践を通じて、知識や精神を磨き修養すること
あれ、龍太郎は?と思った方。次回でわかりますが、まぁ、大丈夫。生きてます

?「自分は大丈夫であります!」

ちなみに2
最後に語った七海の考察内容の1つ目はすぐに出て、2つ目はだいぶ先にでますが、1つ目は極々多少当たり、2つ目は8〜9割正解してます
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。