ありふれたやり甲斐と生き甲斐を探して   作:戦鬼

71 / 107
本誌、ついに来た!

名前は、まさかネットで流行った『エネルギー…』ってやつじゃないだろうけど、今回のコレはコレでコラ画像っぽいのがww
芥見先生もしかしてアニメ1期の時のOP見てからこういうのしようと思ったのか?それともアニメスタッフはこうすることを知っていたのか…どっちにしろ、ようやく主人公が主人公してる!興奮して、一気に書きました!



狡兎三窟

「なぜ、このような事態に」

 

周囲を囲まれた。逃げることは、なんとか可能だ。が、それをしてしまえば後々が更に面倒になる。

 

敵味方関係なく実力者に囲まれることや、呪霊に囲まれることは多々あった七海ではあるが、この事態は流石に想定してなかった。

 

「はぁ〜」

 

こんなことでため息が出るとは思わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「ビッグボス!こちらへどうぞ!」

 

「ビッグボスナナミ!我々にもどうかご教授を‼︎」

 

「わかりましたから、その呼び方はどうにかなりませんか?」

 

「申し訳ない。ボスの2つ名は絞れていましたが、ビッグボスのような方がいらっしゃるとは思いもよらず……近々、今回の件が済み次第、族長含めて会議の後、厳正に決めますので、ご了承下さい!」

 

そういうことを言ってるのではないと言っても、まるで聞く気がない。

 

(誰に怒ればいいのだろう。やはり南雲君ですかね)

 

こうなった経緯を、考え、やっぱり原因を引っ叩くかと真面目に考える。

 

 

 

 

 

ディスプレイとして機能している水晶は、高く狭い谷間を兎人族の女性2人が追われている映像をだす。2人の兎人族の女性は疲弊しているのか、ふらついた様子だ。一方その彼女達を追っているのは

 

「帝国兵ですね」

 

馬に乗った者達は以前王都に来たガハルド皇帝の親衛隊と思われる兵士が着けていた装備と同じであったため、七海はすぐにそう判断した。その馬に乗った帝国兵から離れた後ろの位置には、輸送用の馬車もあった。

 

「逃げられたか、もしくは見つけたのか、どちらにしろ、彼女達を奴隷として捕獲しようとしてるみたいですね」

 

もしこれが兎人族でなければ、ハジメであれば無視してだろうが、シアの同族ともなれば、流石に放置するわけにもいかず、様子見として接近したのだろうが

 

(しかし、彼らの足取り、しかも周囲を囲まれている場所。帝国兵が追いつめてここに来たのだとしたら、とっくに捕まっていてもおかしくない)

 

帝国兵が弱者相手に遊んでいるというなら納得は一応できるが、何か違和感を七海は感じた。

 

「南雲君、ズームはできますか?できれば顔が見えるように」

 

「わかった」

 

「ちょっ、そんな事してる場合ですか⁉︎今すぐ助けに行った方がいいでしょ!南雲!まさかと思うが、彼女達を見捨てるつもりじゃないだろうな⁉︎お前がいかないなら、俺が行くぞ!」

 

光輝の訴えは正しい。正直言って七海も同意見だ。だが、兎人族の動きが、どうしても気になる。下手に手を出してしまえば、危険のような、危険な呪物を発見した時のような、そんな悪寒を感じた。

 

「天之河君、落ち着いてください」

 

「落ち着けって…この状態で落ち着けって⁉︎」

 

「彼女達を見て、何も思いませんか?この場所を逃げているという状況に、何も思いませんか?」

 

「だから!そんな、こと………?」

 

(天之河が、止まった、だと?)

 

先程まで騒がしい光輝が、急に静かになった事に、ハジメは驚愕したが、それが顔に出ないように必死に我慢していた。

 

「こんな状況になってるのに、まだ捕まってない?」

 

相手も遊んでいるのだろうが、それでも馬と徒歩では、大きな差など出ない馬を走らせているなら、こうして見ている段階…否、その前に捕まっていてもおかしくない。

 

(少しは経験が活きてますね)

 

 

七海が光輝に教えた事は、狡い手を使う相手の行動をどう察知するか。

 

『それは、違和感を探す事です』

 

『違和感?』

 

少しだけ休息として、戦闘の動きを止めて、七海は光輝に伝える。

 

『相手の動きだけでなく、言葉、周囲の状況、相手と自身の能力の有無とその情報、癖、これまでの相手との照らし合わせ。これらを瞬時に頭の中で計算、考察し、その違和感を感じとること。君は真っ直ぐすぎる。性格も戦い方も。元来君は手数を多く持っているのですから、相手の戦略をごり押しなんてせず、もっとその手数を利用することが大切です。その為にも相手の違和感を、多少でもいいので見極められるようになってもらいます』

 

その先は、七海は様々な手段で光輝の訓練をした。時に武器を競合いの際に投げて動揺させて渾身の拳で、時に事前にハジメに言って作らせていた落とし穴に誘い込んでと。そうして、光輝に相手の違和感を探す事を覚えさせた。

 

『呪術師は、相手を騙してこそ、欺いてこそです』

 

『騙す、なんて』

 

『悪いことだと?それで負けて、命を失った後も、そんなセリフは言えますか?呪術師でなくても、これらはいつ、誰がやってきてもおかしくないんです。それに順応できないなら、死ぬだけです。それに、大迷宮は、その製作者の精神を疑うものばかりでしたからね』

 

 

そうして半ば無理矢理つけたものは、言われるまで気付こうともしなかったが、言われたら多少は気付くレベルにはなっていた。

 

そんな様子に驚きつつも、映像をズームすると、シアが「あ!」と声をだす。

 

「ハジメさん、間違いないです。ラナさんとミナさんです!」

 

「やっぱりか。…豹変具合が凄かったから、俺も覚えちまったんだよな」

 

そう言いつつ、ハジメもその表情や動きを観察する。

 

「お知り合いですか?まぁ、シアさんと関わってるなら、兎人族の知り合いなど、いくらでもいそうですが…それだけではなさそうですね」

 

「まぁ、な」

 

なんかしたなお前と言われた気がして、ハジメは眼を七海に向けようとしない。だが、一言だけ言える確信がある。

 

「多分あいつらは、この世界で最もヤベェ集団、ハウリアだ」

 

そう言ったのが合図だったかのように、殺戮が始まった。

 

「転び方が芝居に見えませんね。大抵の人は近付いていく。相手が兎人族と知っているなら尚のこと」

 

まず最初の1人が矢で射抜かれて殺された。どこからの攻撃だと動揺した瞬間倒れたふりをした2人が即座に飛びつき、その首を刈り取る。残りの兵が動揺した瞬間、周囲の横穴に潜んでいた者からの矢が、正確に鎧で守られない額に命中し、絶命する。

 

「死体を集めてますね……なるほど、誘き出すつもりですね」

 

隠れていた兎人族が死体を集めて山にしていく。首を持って歩くその様は、映画にでる殺人鬼のようだ。そうして追った部隊がなかなか戻らないことを変だと思ったのか、斥候部隊が送られて、その死体の山を発見し、中央にいる追っていた2人の兎人族が肩を寄せ合い震えているのを見つけ、血相を変えて詰めよる。

 

「彼女達が兎人族であるということを鑑みるなら、正常ですが、慎重さが足りてませんね。この状況下で生きていてかつ、返り血のある彼女達に近付くなど」

 

七海が警戒した通り、近付いた斥候の頭部に矢が刺さる。痙攣を起こして倒れた音で、周囲を警戒していた者達が振り返るが、先程まで怯えていた兎人族の女性が音もなく男に近づき、気付いた時には首を切られ、その姿を確認してしまった兵は、一瞬動揺し、動きにガタつきが見られた。それを見逃すこともなく、もう1人の兎人族の女性が一気に駆け、首を切り落とした。

 

「ウッぇ」

 

光輝達が口を押さえ、顔面蒼白になっていた。特に光輝は少しだけトラウマを思い出しているのか、震えている。リリアーナとその近衛はあり得ない状況に、常識が覆る状況に、シアを凝視していた。

 

「そんな目で見ないでくださいぃ⁉︎まぎれもなく特殊なのは認めますけど、ラナさん達は訓練の賜物ですからね?ハジメさんが施した地獄というの生温い、魔改造というべき訓練で」

「おいシア」

 

「なるほど、王都で言っていたのはこういうことですか」

 

「い、いや、先生、これは、その、仕方なくだなぁ」

 

「いいですよ別に。後で色々と聞くことはありますが………それより、そろそろ終わりそうですね」

 

七海が言うと映像には輸送馬車と後続部隊が殺戮現場に来て、惨劇の状況に動揺したところを襲撃された。戦力差は倍以上だったのにも関わらず、最初の襲撃で数を減らされ、それにまた動揺した事により、次から次へと首がとんでいく。縦横無尽に動き、帝国兵に隙を与えず、的確に殺していく。

 

(ほぼ全員が天与呪縛を受けた真希さん並の動き。それでいて感じ取る為の気配を消すのもうまく、魔力はないからそれで動きを察知することもできない。やられる方は厄介この上ないでしょうね)

 

この場にいる兎人族、というよりハウリア族を知らない者達の殆どが戦慄し、リリアーナは涙目になって近衛達に心配されている中で、七海は冷静に彼らを見て、その動きを観察し、考察していた。

 

その後、馬車に潜んでいた帝国兵の伏兵がいたが、魔法を使おうとしていたので七海やハジメといった〔+視認(極)〕を持つ者は気付いた。そこで真っ先にハジメが動き、ドンナーでその頭を吹き飛ばした後、それに驚くハウリア達がこちらを見て、歓喜して、敬礼をしていた映像を見つつ、そこに着陸した。

 

「ハジメさん、早く、降りましょうよ。樹海の外で、こんな事をしているなんて……もしかしたらまた暴走しているんじゃ」

 

「なんにせよ、彼らとコンタクトはとっておくべきでしょうね。何があったか、君が何をしたかも含めて…ね」

 

「はい」

 

シアと七海の言葉に、がっくしと頭を抱えてハジメは言う。声を出してない者達、光輝や雫もジト目をしていた。

 

着陸して、目に入って来たのは兎人族だけではない。別の種族の亜人族もいた。着ている衣服はボロボロで、身体は傷だらけで、手には頑丈そうな枷をつけらている。光輝達勇者グループもそうだが、七海も感情を表に出さないが、それに不快感があった。

 

そんな彼らを迎えたのはクロスボウを持った10代前半くらいの少年の兎人族だった

 

「お久しぶりです、ボス!再びお会いできる日を心待ちにしておりました!まさか、このようなものに乗って登場するとは……改めて感服致しました‼︎それと先程のご助力、感謝致しますっ!」

 

ビシっと綺麗な敬礼をして、軍隊さながらの言動をする。先程の戦い方といい、子供なのかと思うほどである。

 

「久しぶりだな。まぁ、さっきのは気にするな。お前等なら、多少のダメージを食らう程度でどうにでもできただろうしな」

 

ハジメはニヤっと口に笑みを浮かべ、ハウリア達を見て「中々、腕を上げたじゃないか」と言っていると、残りの兎人族も集まって敬礼をし、賞賛を受けたことが嬉しいのか、瞳が潤んでいる。が、即座にその表情を直し、ダッと足をそろえて再び敬礼し

 

「「「「「「恐縮でありますっ、Sir‼︎」」」」」」

 

一斉に叫ぶ。感動を感情には出さず言葉にして。谷間に木霊し、大気や周囲が震えた気がした。力が入りすぎて、目が血走っている者までいる。もはや見慣れたハジメ、ユエ、シアは(シアは若干の落ち込みありだが)平然としているが、残りの者たちはドン引きしている。あのティオも、変化した鈴ですら。

 

「まるでレンジャー部隊ですね」

 

「ちょっとだけそれは意識してた。あと、有名な軍曹みたいな感じでも指導しました」

 

ジト目から黒いオーラすら見える七海に、ハジメは告げた。兎人族の情報は、七海も頭に入れていた。温厚で、争いを好まず、非力だが、気配を感じとるのに長けていて、逃げるのに徹した種族だと。それをまぁ、ここまで魔改造できるもんだと、呆れを通り越して感心していた。

 

「えっと、みんな、久しぶりです!元気そうでなによりですぅ。ところで、父様達はどこですか?パル君達だけですか?あと、なんでこんなところで、帝国兵なんて相手に……」

 

とりあえず、同胞のシアが質問をするが、質問内容が多いのか、クロスボウをもつパルという少年兎人族のは落ち着くように言うのだが

 

「シアの姉御、パル君ではなく〝必滅のバルトフェルド〟です。お間違いのないようお願いしやすぜ?」

 

「………ふむ」

 

「七海さん‼︎『あぁ、そっちが本名なんだな』とか思ってるかもしれませんが、違いますからね⁉︎彼はパル君です‼︎というか、ラナさん達も注意して下さいよぉ⁉︎」

 

どうもバルトフェルド…もといパルは彼自身が呼んで欲しい2つ名があるのか、そっちで呼ぶようにしていたようだ。パルの言にシアが頭痛を堪えるような仕草をしているのを見て、七海は彼が子供特有の、所謂カッコつけをしていると考えていた。だが、現実は七海の考えや、シアの予想を遥か斜めに行くものだった。

 

「シア。私はラナじゃないわ……〝疾影のラナインフェリナ〟よ」

 

「⁉︎」

 

ドドンと効果音がついたような気がした。シアにとって、彼女、ラナはハウリアの中でしっかりものお姉さんという印象があった。そんな彼女が、パルのような返しをした瞬間、戦慄し、『まさか』と思うが、その最悪な考えは、当たってしまう。

 

「あ、あのラナさん?な、何を?」

 

現実逃避をしたいのだろうが、そんな暇は与えられなかった。

 

「私は〝空裂のミナステリア〟‼︎」

 

「俺は〝幻武のヤオゼリアス〟‼︎」

 

「僕は〝這斬のヨルガンダル〟‼︎」

 

「ふっ〝霧雨のリキッドブレイク〟だ!」

 

それぞれに独自のポーズを決めて、2つ名を名乗る。顔もなんか妙に劇画タッチみたいになっている。

 

「ぐぼぁぁ」

 

シアの表情が絶望に染まり、血反吐を吐くような声で倒れて膝をつく。無理もない。久々に再会した家族達が、ドヤ顔でポーズをとり、イタイタしい2つ名を名乗るのだから。

 

「なるほど…所謂、ちゅう」

「それ以上言うな谷口」

 

ぼそりと呟く鈴をハジメが止め、彼らの後々の恥ずかしさで悶える未来を考え、彼らに忠告しようとするが、そんなハジメにも流れ弾が飛んでくる。

 

「ちなみに、ボスは〝(あか)き閃光の輪舞曲(ロンド)〟と〝白き爪牙(そうが)狂飆(きょうひょう)〟ならどちらがいいですか?」

 

「……なんて?」

 

言われたことが理解できず……否、理解したくないハジメはそう聞く。どうも彼らはハジメの2つ名も考えたらしく、一族会議で10日以上もかけて協議し、ようやく先程の2つに絞り込んだが、どっちにするかで模擬戦までして協議し続けていたが、それでも決まらず、ボス、つまりハジメに再会した時に判断を委ねようとしていたのだ。

 

「ちなみに、俺は〝(あか)き閃光の輪舞曲(ロンド)〟派です」

 

サムズアップで言うのは説明をしてくれたバルトフェルドこと、パルである。

 

「そうね、よく言ったわ、必滅のバルトフェルド。ボスにはどう考えてもそちらが似合う。紅い魔力とスパークを迸らせて、宙を自在に跳び、多彩な武器を使いこなす様は、まさしく〝(あか)き閃光の輪舞曲(ロンド)〟‼︎」

 

「おい待てお前」

「何を言ってるの〝空裂のミナステリア‼︎ あのトレードマークの白髪をなびかせて、獣王の爪牙とも言うべき強力な武器を両手に暴風の如き怒涛の攻撃を繰り出す様は、〝白き爪牙(そうが)狂飆(きょうひょう)〟以外に表現などないだろう‼︎」

 

「その通りだ〝疾影のラナインフェリナ〟‼︎ロンド派は耄碌でもしたのか⁉︎」

 

ハジメの言葉はまったく耳に入らず、次々とイタイタしい2つ名とその由来をイタイタしく話すハウリア達に、ついにハジメの精神も限界が来て

 

「うぼぁ!」

 

とシアのように血反吐を吐いたかのように倒れて膝をついた。

 

「…っ……っ」

 

(谷口さんが笑いを堪えているが、いい感じですね。今の彼女には、こういうバカさが必要でしたから)

 

変化した鈴もこの状況に笑いが溢れる。それを冷静に見てよかったと思う七海と

 

「ふっ、ふふっ、ぐふっ……ちゅ、厨二病って感染するのね」

 

堪えきれず肩を震わせて小さく笑う雫に、ハジメは我を取り戻してそちらを見る。ユエと香織は困ったような曖昧な笑みになり、ティオとリリアーナ、それとジェネレーションギャップと、そういうのに関わったことのない七海は別の意味でキョトンとし、光輝と龍太郎は生暖かい微笑みをしており、ハジメ的にはこの2人の微笑みが1番のダメージだった。ともかく、激論を交わしているパル達をゴム弾でふっ飛ばそうとした時――

 

「あの、会話の途中に申し訳ないですが、こちらは急いでいるので、そのよくわからない内容は後回しにしていただけませんか?」

 

「「「「「「あぁぁ⁉︎」」」」」」

 

全員が『何言ってんだテメェ⁉︎』と言いたげな感じで圧をかけてくる。ヤクザか何かだろうか。

 

(つか、七海先生よく話しかけれるな)

 

これによって心のダメージを回復し、冷静さをハジメとシアは取り戻した。

 

「貴様、今なんと言ったぁ⁉︎くだらないだとぉ⁉︎」

 

「そのようなことは言ってませんが、この場で話すのは時間の無駄だとは思います」

 

基本的に身内とハジメとその仲間以外はどうでもいい彼らだが、七海の発言は我慢ならなかった。全員『こいつ、殺すか』と頭によぎるが――

 

「そんなに悩むなら、いっそ2つを合体させたらどうですか?」

 

何気なく、七海が言った言葉に

 

「「「「「「なんっ、だと⁉︎」」」」」」

 

彼らは驚愕の表情を浮かべる。彼らの頭上で落雷の音が鳴っているようである。

 

「南雲君達の故郷には、紅と白を合わせた言葉、紅白は縁起の良いものとされています。『赤』は赤子、『白』は死や別れを意味して、誕生と死…つまり一生の流れを表していることから、人生のハレの舞台で使われることになったと言われるほどのものになり、実際、結婚衣装やお祝いごとにも使われています」

 

七海からの説明に、ハウリア達の背後からドーン‼︎と爆発音がしている気がした。というか、ハジメはこの時点で止めるべきだった。

 

「な、なんということ!そんなこと、考えもしなかった⁉︎」

 

「なんていう逆転の発想‼︎そうよ、良いものと良いものを合わせれば、良い物になるに決まってる‼︎」

 

「そうだ‼︎ボスを表す言葉が2つあるなら、両方使えばよかった‼︎」

 

「しかも、好都合なことに、ボスの故郷にはちょうど、今回選んだ『紅』と『白』をつけた言葉があるとは‼︎」

 

「なんという幸運‼︎いな、豪運‼︎」

 

「また会議のし直しだが、これならば、双方の派閥も納得いくものになる!」

 

ハウリアの熱が、さっきよりも熱くなっている気がした。ハジメとシアは再び「「おぐぅ」」と、今度は鳩尾を殴られたように膝をつく。

 

「貴様、名は‼︎」

 

ミナステリアことミナが名を聞く。目が凄まじく輝いている。

 

「七海、七海建人です」

 

「ふむ、そう言えばさっきから、ボスに妙に馴れ馴れしいが………ボス、こいつは何者です?」

 

バルトフェルドことパルが聞く。

 

「俺の先生、一応、俺とシアに新しい戦い方も教えてくれた人だ」

 

「ですぅ」

 

弱弱しい声で、魂が抜けたかのように、ハジメとシアが言うと、再び――

 

「「「「「「なんっ、だと⁉︎」」」」」」

 

彼らの頭上で落雷が鳴り響く。

 

「ボスの師…ということで?」

 

急に言い方が丁寧になる。

 

「一応、戦い方や技術、用語などを教えましたが、彼らは既に私を超えてますよ」

 

「「「「「「⁉︎」」」」」」

 

またしても、頭上で落雷が鳴り響く。

 

「弟子が、師を超える」

 

「言い方や、ボスと姉御が否定しないあたり、つまりは最初はボスや姉御を上回っていた⁉︎」

 

「しかも、それを淡々と言って」

 

「きっと、本人も感無量なのだろう。今なら、ボスがさっき褒めてくれた理由もわかる。人としての成長を促したお方だ」

 

「なんと、素晴らしいこと‼︎」

 

「このお方は、間違いない」

 

そうして、全員の意見が一致した。

 

「「「「「「ビッグボス‼︎」」」」」」

 

「はい?」

 

困惑するが、そんな暇は与えられない。

 

「無礼な態度、申し訳ありません、ビッグボス‼︎」

 

「え。あの、私の名は七海で」

 

「我らがボスと、シアを育てあげた。それだけでなく、ボスの2つ名問題の解決に導いた!」

 

「これをビッグボスと言わず、なんと言いましょう‼︎」

 

「いや、ですから」

 

七海は元の世界、ハジメ達の世界、そしてトータスでもそれなりに慕われてきたが、このような慕われ方は初の為、困惑してしまう。

 

「ビッグボス!こちらへどうぞ!」

 

「ビッグボスナナミ!我々にもどうかご教授を‼︎」

 

「わかりましたから、その呼び方はどうにかなりませんか?」

 

「申し訳ない。ボスの2つ名は絞れていましたが、ビッグボスのような方がいらっしゃるとは思いもよらず……近々族長含めて会議の後、厳正に決めますので、ご了承下さい!」

 

「いえ、そういうことを言ってるのではないのですが」

 

この騒ぎは、再びハジメとシアの心が回復するまで続いた。

 




ちなみに
狡兎三窟:身を守るために用心深くたくさんの逃げ場や、策略を用意しておくこと。狡兎は悪知恵のはたらく兎の意味です。以前に言いましたが、今回のハウリア編のタイトルは『兎』がつく四文字熟語を探し、前々から決めてました。

ちなみに2
最初はハウリアに説教する七海というのを考えましたが、それできるか?というより、それでいいのか?と思い、ビッグボスにしようと思いました。ただ、七海はちゃんと訓練…というか教えをするところは書こうと思ってます

てなわけで、結局この章も長くなる……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。