ありがとう、超面白かったよ
さよなら、全ての呪術廻戦←⁉︎
ギクシャク…というよりギスギスとした雰囲気になり、一行は濃霧に包まれた樹海を進んでいく。会話はない。ついてくる亜人族はというと、大人はともかく、子供は早いうちに気を許しており、特に樹海を復活させた香織には特に懐いている。
「おねぇちゃん、仲良くしてあげて」
「……ケンカしてるわけじゃないよ」
そんな香織の悲しげな表情を見て、子供の1人が鈴に近付き言う。鈴はほんの一瞬、子供が怒ってくると思っていたのか、純粋な表情で、香織と自身を心配するような、励ますような、そんな顔で言ってきた事に驚いていた。
(幼い子供だからこそ、わかるものがあるのでしょうかね)
七海は鈴が「仲間と思えない」と言った理由はなんとなくわかる。これから自身がすること、自身に起きるかもしれない事に、彼らの想いを巻き込む事をよしとしてない。だからこそ、
「みなさん、谷口さんのことを、決して嫌わないでください」
鈴に聞こえぬように、隣にいた雫達に今言える限りの言葉で、それを伝える。身勝手なことだとわかっている。だが同年代で、クラスメイトで、友人だからこそ、伝える。
「……七海先生、1つだけいいですか?鈴は、どうなるんですか?」
「………具体的には彼女との約束がありますので言えませんが、このままでは、彼女は命を軽視した行動を取り続ける」
「「「⁉︎」」」
「そして、彼女は命を失うことすら受け入れている」
自身を救う気がない。苦しみの果てに得るものが何もくてもいいと、自暴自棄になりかけていると伝える。
「天之河君、君が今、彼女を止めようとしている感情は間違ってないですが、まだそれはしないでください」
「っ!どう、…いや」
どうしてという言葉が出ない。もう何度も、その理由は聞いている。
「本来なら彼女は鎖で縛りつけてでも止めなくてならない。しかし、それは同時に彼女の生きがいを奪う。私では、彼女を本当の意味で救うことはできません。できるのは意思を繋ぎ止めることくらいです」
本当に救うなら、その為にも、鈴の現状を教える義務はある。だが、本人が望まないのに、勝手に言うことも、七海にはできない。少なくとも、この件に関して、今は。
「今のことは、白崎さんにも伝えておきます。大人で教師の私が、頼ってしまい、申し訳ない」
3人とも、何も言えない。光輝すらだ。七海がこんな形で自身を頼ることに、困惑しているというのもあるのだろう。これまで光輝なら、簡単に「ハイ」と答えるだけか、「あなたに言われなくても」と愚痴を混ぜつつ肯定しただろう。
「七海先生、正直、いいですか」
だが、今の光輝は
「俺は、もう、鈴を信じていいのかわからない。今の鈴は、南雲やあなたと同じに見てしまうんです」
揺らいでいた。
「だから、諦めると?」
「諦めたいですよ。でも、それをしたら、俺は、もう俺じゃなくなりそうで、嫌なんです」
諦めない気持ちに揺らめきはあれど、救いたい気持ちだけは、残っている。矛盾に満ちた感情と想い。それを
「……君は、それでいい」
「!」
肯定されるとは、思わなかった。
「ハッキリ言って、君は甘く、そして子供です。しかし、君の考えと思想は、間違っているとも言えない。……もうひとつ言うなら、君が谷口さんが南雲君や私のようになろうとしていると言うなら、きっとそれは間違っている」
あれだけ今のハジメを肯定していた七海が言うと思えない言葉に、混乱してしまう。
「天之河君と八重樫さんには以前も言いましたが、私は今の南雲君の事を否定もしませんが、全肯定もしてません。もっと言うなら、できるならああならないでほしかった。彼だけでない。今の谷口さんもね」
雫は、七海が背負うものを、軽視したことはない。だが、そうしていたと思ってしまうほどのものを感じた。
「これから先、君達は、南雲君と自分を比較してしまう瞬間が多く出てくる。それでも、これだけは言っておきます。絶対に彼のようになろうとか、自分がああだったらなんて思わないでください。彼にとっての侮辱行為でもありますが、彼の生き方は、人がしていい生き方ではない。そう選ぶしかなかっただけ。本来なら、一歩ずつ登るべき階段をすっ飛ばした生き方です」
龍太郎は、訓練をしていた中で、ほんの少し感じた嫉妬を正されているような気がした。
「彼自身にそれに後悔はなくとも、繋ぎ止める存在、ユエさん達がなければ、どうなってたかわからない。大人らしく振る舞っているが心は子供の状態でとても繊細で、不安定なんです」
七海のいう繊細という言葉が、光輝は信じられない。傍若無人なだけではないかと。
「多くのものを捨て去り、今まさに拾い集めている真っ最中。それができている理由がユエさん達なら、谷口さんが捨て去る物を、捨てた物を、拾い、繋ぎ止めることができる人がいるとすれば、それは君達です。君のその気持ちを、より良い方向に向けれることを、私は願ってます。私も出来る限りの努力をしますがね」
光輝は、どう言えばいいか、答えが出なかった。龍太郎と雫もだ。言うべきことを言った七海の背を見ることしかできなかった。
そして彼らから離れて、ハジメの方へ行く。理由は
「前にも言ったが、俺は後悔もなきゃ、繰り返しても同じことをするぞ」
「わかってますよ」
鈴に聞こえないようでも、ハジメの強化された肉体の聴力なら聞こえると判断していた。だから後々言われるくらいなら今のうちにハジメからの不満を聞いておく。
「いい反め…いえ、いい例えにできる人がいるならそうするべきでしょう」
「おい、今反面教師って言おうとしたかこの暴力暴言教師」
「否定するつもりはないですが、ひどい言われようですね」
「フン。ただ、生徒を第一にしてるって点は、畑山先生とおんなじだな。形は違うけど」
「………それこそ、過大評価です」
「…先生、畑山先生の告白、断ったんだろ?」
なぜそれを知っているのかと、問おうとしたが、1つの可能性が浮かんだ。
「まさか、覗き見ですか」
「ちげぇよ!俺がそんなことすると思うか‼︎」
「ハイ」
秒で即答されたことに血管が切れそうになる。が、ハジメの周囲にいる。ユエやティオは「言われても仕方ない」と言いたげな表情を見せ、香織も苦笑しつつ否定しない。シアは先頭に立って道案内しているので表情は見えないが、苦笑しているのは間違いない。
「……畑山先生があんたに気があるのは見てなんとなくわかってた。で、出発前に見たあの人の顔はあまりにも暗いし、七海先生の顔を、まともに見れてない上に、言葉も交わしてなかったし」
それもそうだなと思った。が、これまで香織の好意に気付いてなかったハジメにそんな言葉が出るとは思わなかった。
(これも変化のひとつなんでしょうかね)
「それで、なんで」
「ハジメさん、正面から武装した集団が来ます」
ハジメの問いを切るように、シアのウサミミと、視力が捉えた情報を告げたので、後にしようと決めた。
現れたのは虎人族と呼ばれる集団。その名の通り、虎の模様のようなものが頬や腕に見え、全員が見るからに武闘派に見える体系をしている。気配で亜人族がいることはわかってはいたが、ここまで来たハジメ達を警戒し武装はしていたのだが、その集団のリーダーと思われる男がハジメを見た瞬間、驚愕に目を開く。
「知り合いですか?」
「うーん…あ、思い出した。確かギルっていうやつだ」
相手の表情を見てハジメは思い出して、ギルという虎人族の表情で、そこまでいい関係でもないなと確信していた。ギルはなんの目的でここに来たのかと問おうとしたが、ハジメが連れている亜人族の中にいた族長の孫娘であるアルテナを見るや否や、素っ頓狂な声を上げた。
「アルテナ様‼︎よくぞご無事で!お怪我はありませんか⁉︎」
「あ、はい。彼等とハウリア族の方々に助けて頂き、傷もそちらの方に」
アルテナの視線の先にいた香織はその言葉に恥ずかしがりながら、会釈した。が、香織は気付いた。
(ん、アルテナさん、まさか…⁉︎)
アルテナがチラッと、一瞬ではあるが七海を見ていた。そしてそこに特別な感情が含まれていることに。それに気付かないギルは心底安心して会話を続ける。
「それはよかったです。アルフレリック様も大変お辛そうでした。早く、元気なお姿を見せて差しあげて下さい。……少年、お前は、ここに来るときは亜人を助けてからというポリシーでもあるのか?傲岸不遜なお前には全く似合わんが……まぁ、礼は言わせてもらう」
「そんなポリシーあるわけ無いだろ。偶然だ、偶然。それより、フェアベルゲンにハウリア族の連中はいるか?もしくは今の集落の場所を知ってる奴は?」
「ハウリア族の者なら数名、フェアベルゲンにいるぞ。聞いているかもしれないが、襲撃があってな。帝国が去った後から、数名常駐するようになったんだ」
「そりゃよかった。じゃあ、さっさとフェアベルゲンに向かうぞ。まさか、前みたいに長老の誰かが来るまでその場に待機なんてことはないだろ?」
ハジメはそう言うとズカズカと先へ行くことを促す。
「相変わらず態度がでかいな」
「申し訳ありません、どうも彼らがご迷惑をかけたようで」
とはいえ、敵意がないのは亜人族がハジメ達と、そのハジメの鍛えられたハウリアに助けられたからだろう。ギルの口から出たのは、呆れながらも感謝の想いがあるように思えた。
「………で、お前は誰だ。どう考えても俺よりは強いのは、流石にわかる」
ギルはここに来てハジメを見た次に、七海を見たのだが、その瞬間に彼が強者であると判断した。仮にハジメが敵対する意志表示をしたら真っ先に動けるような準備をしているのがわかり、それに対応できる自信がなかったからだ。
「彼らの教師兼、保護者代理です」
「……………聞くが、どういう教育してたんだ?」
「………南雲君?」
「っ⁉︎」
ろくな出会いでなかったのだろうが、その皺寄せが自分に来ることに七海は苛立ちがあった。
「ま、まぁ、あれだ!今は置いておこうぜ!それに、先生も、そこまで気にはしてないんだろ!」
「…まぁ、そうですね。君が道中で問題を起こさないなんてことの方があり得ないことですし、悪意を持って他者に危害をもたらすような方でないことはわかっているので、そこは信用してます。ただ、ほんのちょっとでいいので、自重していただけると助かります」
「…まぁ、覚えておくくらいはする」
「ありがとうございます」
このとき、ハジメを知る周囲の者達、七海も含めて、思った。『無理だろうな』と。
*
案内を受けて着いたフェアベルゲンは、話しに聞いた通りか、それ以上に凄惨なものであった。ハジメ達の眼前には巨大な門の残骸、あちこちにクレーターができ、破壊のかぎりを尽くされたフェアベルゲンは、以前は自然と共生した美しさがあった名残りしか見えない。
「よくもまぁ、ここまでできるものですね」
明らかに意味のない破壊行動が多々ある。戦争ではなくただの虐殺、略奪の為。真の大迷宮攻略とは別の、理由とは別の、悪質な。
「以前俺はここに来たから、その意見には同意だな」
ハジメも本来のフェアベルゲンを見ており、その自然と共にあるありようと美しさがなくなったことに、思うところがあった。
「おい、アルテナ様だ!」
近くにいた亜人族がそう言った瞬間、周囲の亜人族達は信じられないような表情と涙を流して、こちらに寄って来た。人間が周囲にいることに警戒感があったが、アルテナが自分含めた亜人族を救い、ここまで連れて来てくれたことを告げると、近付いて来た物達は一瞬戸惑いつつもハジメに感謝し、囚われていた子供の親は涙で顔がぐしゃぐしゃになりつつ、我が子を抱きしめて、感謝をしていた。その数はどんどん増えていく。
それがどうにもむず痒いのか、ハジメは見る人が見ると照れているようにも見える。
「悪くないものでしょう」
「あぁ?いや、まぁ、そうだけど…」
七海の発言に、ハジメは困惑と恥ずかしさが混ざった表情になった時、周囲にいた亜人族の人垣が割れだし、その先にいたのは――
「アルテナ!」
「!おじい、様、お祖父様‼︎」
アルテナも他の亜人族と同じように目に涙を浮かべ、2人は抱き合う。
「あの方は、もしや」
「ああ。族長の1人、アルフレリックだ……どうした?」
「いえ、別に。ただ、よかったと思っただけです」
2人が再会できたことによかったと思ったのは事実だ。だが、それとは別の思いがある。
(アルテナさんは、害徒という言葉は知っているが、それ以上のことは知らないと言っていた)
彼女の祖父であるアルフレリックから、まだ詳細な情報を教えてもらっていないからと言われた。曰く、大したことない情報、だから後回しにしているそうだ。
(本当に、大したことないものだったら、それでいいんですがね)
そう思ってはいるが、ノイントの言葉、そして、無機質な表情が、わかりやすく歪み、そして、恐れていた。本人が見て間もない呪術を、絶対的な実力差があるにも関わらず、呪術師である七海を要警戒していた。やりすぎなほどに。つまり、ノイントの創造主たるエヒトは、呪術師を恐れていると見て、ほぼ間違いない。
(とはいえ、それは後回しでもいい。今は別にやるべきことがある。神代魔法の習得…それと、その前に)
「七海さん?どうかしましたか?」
「いえ、なんでも」
シアが見られていた事に疑問に思い問うが、あえて七海は彼女が言い出すまで待つことにした。と、アルテナと抱き合っていたアルフレリックが、アルテナの頭を撫でた後離し、ハジメに視線を合わせる。
「とんだ再会になったな、南雲ハジメ。まさか、孫娘を救われるとは思いもしなかった。縁というのはわからないものだ」
アルフレリックはハジメに深くお辞儀をした。
「ありがとう、心から感謝する」
「俺は送り届けただけだ。感謝するならハウリア族にしてくれ。俺は、ここにハウリア族がいると聞いて来ただけだしな」
ハジメの言葉に、アルフレリックは首を軽く横にふる。
「そのハウリア族をあそこまで変えたのもお前さんだろうに。巡り巡って、お前さんのなした事が孫娘のみならず我等をも救った。それが事実だ。この莫大な恩、どう返すべきか迷うところでな、せめて礼くらいは受け取ってくれ」
(これは、怒るに怒れませんね)
ハジメは困ったように頬を掻きつつも仕方なさそうに肩を竦める。その様子を見て、ハウリアを魔改造したことについて説教の1つでもしようと思っていたが、今回はなしにしようと七海は考えていた。
「…………」
「天之河君、嫉妬してもいいですが、あまりやりすぎないように。これも、単なる結果論です」
「別に、嫉妬なんて」
「してるでしょう。さっきからそんな複雑そうな表情をしてるんですから」
人間を救うために迷宮に潜って訓練を積んできた光輝。世界を巡り意図せず人々を救ってきたハジメ。自分の方が明確な意思を持って行動していたと思っていた。だが、結局のところ光輝は誰も救えず、光輝が忌み嫌う存在が感謝される。
「天之河君、君は君で、南雲君は南雲君です。近かろうが、遠かろうが、違う人。考え方も変わってくる。君が間違っているとは言いませんが正しいとも言いません。そしてこの先何度でも来るその感情からは、絶対に逃げないでください」
「逃げてなんか」
「自分の表情と別のことを言っている時点で、逃げてますよ」
「!」
ハジメは言わないだろうが、七海はきちんと言う。
「君のその逃げも、いつまでも続かない。いずれ限界が来ます。向き合った上で、どうかしなくてはいけないが、まずその立ち位置に立たない限り、君は強くなれない」
容赦なく言葉で七海は光輝に剣を刺す。
「逃げる、俺が、逃げてる……」
反復していう光輝は認めたくない思いでいっぱいだった。だが、反復するたびに、気持ちの悪い何かに身体が締め付けられる気がしていた。
*
アルフレリック曰く、ハウリア族はタイミング悪くフェアベルゲンの外に出てしまっているが直ぐに戻るはずだと聞き、アルフレリックの家で待たせてもらうことにして、移動中なのだが
「ねぇ、アルテナさん、なんかずっっと七海先生を見てない?」
「うん、確かに。七海、愛子を振ったくせに」
ユエも愛子の為に動いたこともあり、なんとなくそうだと確信していた。
「だよねー私はお似合いだと思うけどなぁ」
「これでもし、アルテナに振り向くなら、ちょっと軽蔑」
「コソコソ話すくらいなら、私の近くでする必要がありますか?」
小声であるが、近くにいるのだからそりゃ聞こえる。七海は少しイラッとしていた。
「アレは、別に私に好意があるからではないですよ。どちらかと言うなら、恐れでしょうね」
「?……じゃあ聞くけど、なんで愛子を振ったの?」
なんでそこまで気にするのかとは思うが、流し続けることは無理そうだなと七海は感じた。
「後でお話ししますよ。今はこちらの方を優先しましょう」
「必ず話せ」
圧を感じた。
(なんでそこまでこだわるんでしょうかね……いや)
脳裏に浮かぶ顔は、彼女の顔は、いつでも
(それは私もか)
*
アルフレリックの家について、アルテナがお茶の準備をする中、近況をハジメが話していた。ちなみに、香織は外傷のある者を癒し、破壊されたフェアベルゲンを、再生魔法を行使して直していたが、すぐに戻ってきた。
「早いな。もう終わったのか」
「9割くらいね。怪我人は全員治したけど、流石にフェアベルゲン全体を元に戻すのはちょっとだけ疲れたから、あと一息だから、ちょっと休憩」
練習も兼ねたものだったが、予想以上に香織はノイントの身体に馴染んできた。成長率で言うなら、香織は今が最も勢いがある。
「ユエさんとの訓練が、だいぶ活きているようですね」
「七海先生のおかげでもありますよ。ユエの教えに、七海先生から教わってた基礎が上手いこと噛み合ってるんです」
ユエのあの教えと噛み合うということに、些か納得できないが、言わないでおこうと決めた。あと、外から「香織様!」という熱烈なコールが聞こえていて、みると高揚し、頬を紅潮させた大勢の亜人族が、香織を讃えていた。
「新しい宗教が起きそうだな……って、あいつら長老集じゃねぇか」
休憩というのは嘘ではないが、実はあまりに熱狂的な亜人族がちょっと怖くなって逃げて来たのだ。
と、ちょうど良いタイミングでお茶を入れてきたアルテナが来た。今来た香織含めた全員分のお茶を配り、最後に七海に渡したあと、アルフレリックに、
「お祖父様、その、そちらの七海殿が、お話しがあると……害徒について、聞きたいと」
聞いた瞬間、アルフレリックの瞳が広がり、驚きを隠せていない。
「!……なぜ、その言葉を知っている。南雲ハジメ、この者、七海と言ったか?何者だ?」
「俺の先生。んでもって、俺らのいた世界とはまた別の世界の、呪力って力を使う、呪術師だ」
「呪力?魔力とは違うのか?」
「?…知ってるわけじゃねーのか?神の使徒が、呪力を持つ者を害徒と呼んでいたんだが」
ハジメの疑問は七海も同じだった。てっきり知っているのかと思っていたが。
「そもそも、その害徒というものどのような力を持つかは知らん。が、解放者や大迷宮攻略の証の紋章を持つ者に敵対しないことなど、フェアベルゲンの族長に口伝で残った掟がある。そして、それとは別に、今では我々の一族の族長だけに継承されている伝承がある。先程掟以上に曖昧且つ抽象的なものだ。おそらくだが、神の攻略に繋がる情報になるかもと、解放者が残した、僅かな、それこそ藁にもすがる程度の伝承。期待はしてないが、神を討つ為の何かに使えるかと、残した伝承だ」
伝承……しかも曖昧なもの。正直七海が求めていた情報は手に入らない可能性が高い。そう誰もが思うなか、
「かまいません。それを教えていただけますか?」
冷静に且つ、真剣な表情で七海は聞こうとしていた。
「先程も言ったが、曖昧かつ、残った伝承も、かなり少ないが……曰く、害徒は神の敵、神の創造した、世界を、滅ぼす者。神を追い詰めた者…世界の理を、覆し、侵食する悪意の塊。何もかもを破壊し、ありとあらゆる命すら、喰い尽くす悪意の化身の象徴。新たな害徒が生まれる、それ即ち、神の滅びの序章。故に、害徒は世界にいてならぬ者。同時に、世界を変える兆し。善意なる害徒、悪意たる害徒、それが現れる時、何かが起こる。まぁ、こんなところか」
本当に曖昧且つ抽象的だ。手に入った情報は、正直言って無意味なゴミのような情報だ。
「私に、そんな力があるとは思えません」
七海はそう言って吐き捨てた。が
(もし、この伝承が、単なるお伽話のようなものとしても、なにか、引っかかる。仮に、昔話だったとしよう。そうだとして、なぜそれが王都の図書館にない。それは、都合が悪いからだ。解放者の情報と同じく、エヒトにとって、都合が悪いから)
そして、エヒトが何故そこまでして害徒を、呪術師を嫌うのか、恐れるのか。
(もし、もしもだ、南雲君よりも以前、それこそ解放者が動くよりも以前、召喚、もしくはなんらかの形でこの世界に来た存在がいたとしよう)
もし、それが七海の世界の術師として、世界に干渉して来た、神を名乗る存在のエヒトを、追い詰めた存在がいたとしたら。
(もし、私の世界と南雲君の世界、そしてトータスの時間軸がズレていたのだとすれば)
いる。
ただの可能性。そうかどうかを確認する手立てはない。だが、もしエヒトという存在が恐れるほど、圧倒的な強さを持つ呪術師だったのだとしたら。そして、エヒトが呪力を見ることができたのだとしたら……否、その時に見えなかったとしても
その実力を、いやでも理解できる相手なら…
「七海先生?なんかあんのか?」
七海が手を顎に持っていき、考え出したのを見て聞く。
「すみません、正直なところ、考えあぐねています」
と考えていた全ては単なる憶測だ。それでも聞こうと思い、ハジメが声をかけようとした時、ドドドドドと足音が聞こえて来た。何事かと思い、全員がそちらを見た瞬間、
「ボスぅぅぅ!!お久しぶりですっ‼︎」
「お待ちしてました、ボス‼︎」
「お、お会いできて、光栄であります、ボスぅ‼︎」
扉を蹴り壊して、新たなハウリアが突入してきた。さっきパル達を見たというのに、余りの剣幕に光輝達はお茶を吹いて驚いていた。そして、その吹いたお茶の先には――
「……………」
「あっ、な、七海、先生?」
水も滴る…なんていいものではない、七海がいた。ついでに吹っ飛んできた扉が七海の隣に突き刺さっており、あと数センチ動けば確実に命中しただろう。吹き出した1人の光輝はまず謝ろうと思うが、七海の表情は、怒りは、別にあった。
「ハウリアの皆さん」
自分達のボスの前に立ち、敬愛するボスの顔を隠されたことで、ハウリアは怒りに燃えあがる。実際怒号が飛んでる。が、
「そろそろ、私も我慢の限界なので」
(((((あ、終わったな〔です〕〔のじゃ〕)))))
その後、ハウリアが黙ってしまうほどの、鉄槌が飛んできた。
ちなみに
感想の所や後書きでも書いたとおり、愛子の今の七海への想いは所謂、吊り橋効果ですが、もしトータスに来ることがなければ、互いに尊敬し合い、愛子の性格などもあって、七海の抱えている何かに気付いて、時間をかけて寄り添う事を続けて、堅実かつ着実に好意を上げていき、その頃には七海も過去を話さずとも、呪術師時代の自分に区切りをつけ、付き合ってました。
その段階と過程をすっ飛ばしてしまった現在の未来は………
ちなみに2
アルテナの抱く感情は恐れではなく、異分子を見るような、何かよくわかんないけど気持ち悪いものを見るようなものです。一応言いますが、ヒロインではない
最後に、全ての呪術廻戦ファンに告げます。
本当に、本当に、ありがとうございました
七海「この作品の最終回みたいな言い方ですね」
元ネタわかった?