ありふれたやり甲斐と生き甲斐を探して   作:戦鬼

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月曜の朝、いつもと違う日
何って?……呪術廻戦がねーんだよぉぉ!

ロス感がやばいです。まぁ他にも前から色々と読んではいますが、それでもねぇ、もうしばらくは続きそう

あと、こんかいもハロウィンで出せました!


狡兎三窟⑤

「あの、そろそろいいでしょうか、ボス?あの者はいったい」

 

後から来たハジメを知るハウリアの男が聞きながら、そのさらに後から来た者達が集まり、説教をされてる先輩達を見ていた。

 

七海はとりあえず扉を破壊したハウリア達を正座させて、理にかなった正論を交えたどキツイ説教をしている。後から来たハウリア達の中には、ハジメが初見の者もいるが、先輩である彼らが、そのボスであるハジメによって以外で、こんな状況になっていることに、僅かに戦慄していた。

 

「コレ何回目か分からんから端折るが、俺の先生、キレたらマジ怖い人」

 

「ボスの師匠ですと!」

 

「もういいよ、それで」

 

ついでにパル達が七海をビッグボスと呼んでいることも教えておく。

 

「巻き添えにしようとしないでください」

 

「いいじゃんか。間違ってもいないし」

 

「単純に自分へのダメージを分散したいだけでしょうに、まったく」

 

説教を終えた七海がハジメと話していると、正座をしていたハウリアはボスであるハジメが、話し方で途轍もない信頼を七海に置いていることを悟る。

 

「あの、大丈夫ですか⁉︎」

 

「あ、あぁ。しかし、あの方、ビッグボスは、間違いなく強い」

 

奇襲や隠密、騙し討ちを上等とし、ハジメに鍛えに鍛えられた彼らは、ただ怒られていたわけではない。隙あらばコイツの首をと思っていたが、彼らの並外れた勘が告げていた。並大抵の騙し討ちや奇襲程度では感付かれ、奇襲そのものが成功しても、並大抵の攻撃では効かず、逆に返り討ちにあうと。実際数名が動こうとほんの僅かに身体を動かした時、七海の警戒感が上がっていた。奇襲は警戒されてしまった時点でほぼ失敗している。

 

(仮に全員で仕掛けても、対処される光景しか目に浮かばない)

 

そう思うほどのものがあった。事実、彼らの予想通り、七海は彼らがおとなしく自分の言葉を聞く気はないと理解していた。と言うか、最初に会ったパル達ですら、口ではああ言っていたが、それはただハジメの2つ名を決めるきっかけを作ったことや、ハジメが七海は自分の師と言っただけではない。最初に見た段階で、ここにいる者達とほぼ同じ考察をしていたからだ。

 

「それと、話しの腰を折ってしまいましたね。南雲君に会いたかったのは間違いないのですから、そこは謝罪します。申し訳ない」

 

それ以上に、七海の人間性が良いのも、彼らが認める理由でもあるが。

 

「改めてだが、久しぶりだな」

 

「「「「「「「!さ、Sir‼︎ …Sir,Yes,Sir‼︎」」」」」」」

 

正座から秒で起立し、一切乱れない敬礼。大きな声は樹海全体に響かせるかのようにビリビリと周囲の者達にも響く。

 

「ここに来るまでに、パル達と会って大体の事情は聞いている。中々活躍したそうだな?連中を退けるなんて大したもんだ」

 

ハジメと直接会うのが初の者、久々の者、その全てが「恐縮であります‼︎」と声に出し歓喜の涙を流していた。

 

「ここまで来ると悪質な洗脳の類いですね」

 

「ごうぅ!」

 

ハジメがパルから聞いた内容を話す最中、その様子を見て言う鈴の言葉がシアにクリティカルヒットした。これからのハウリア…いや、兎人族の事を考えると、頭が痛くなりそうであった。

 

「なるほど、〝必滅のバルドフェルド〟達からの伝言は確かに受け取りました。わざわざありがとうございます、ボス」

 

「なぁ、お前も……2つ名があったりするのか?」

 

少し気になったハジメは聞く。とはいえ、結果は予測できていたが。

 

「俺ですか?……ふっ、もちろんです。落ちる雷の如く、予測不能かつ迅雷の斬撃を繰り出す!〝雷刃のイオルニクス〟‼︎でっす!」

 

「……そうか」

 

ハウリア族はもう完全に手遅れだった。厨二病が蔓延して感染してしまっている。パンデミックを封じ込められなかったことが悔やまれるが、ここはどうにか気を取り直して、雷刃のイオルニクスこと、イオに続けて聞く。

 

「ハウリア族以外の奴等も訓練させていたみたいだが、今、どれくらいいるんだ?」

 

イオは少しだけ考えるそぶりをし、頭の中で数を計算していた。

 

「ハウリア族と懇意にしていた一族と、バントン族を倒した噂が広まったことで訓練志願しに来た奇特な若者達が加わりましたので……実戦可能なのは総勢122名になります」

 

(随分と増加したもんだな)

 

(もし、全員の実力がバルトフェルト君達と同等なら、禪院家の躯倶留隊とも、勝るとも劣らないかもしれませんね)

 

百鬼夜行時に少しながら見た彼らの実力を知る七海はそう評価していた。

 

一方イオはハジメの質問の意図がわからず疑問顔を浮かべていた。ニヤリとハジメは笑い、イオに指示をだす。

 

「それくらいなら全員一度に運べるな。イオ…ルニクス。帝都に行く奴等をさっさと集めろ。俺が全員まとめて送り届けてやる」

 

本来の名前のイオで言おうとしたが、どうせ「〝雷刃のイオルニクス〟です!」と呼んで欲しいことを要求されるような気がしたハジメはそう呼ぶ。

 

「は?…はっ!了解であります!直ちに!」

 

イオは一瞬、何を言われているのか分からず、動揺していた。大迷宮攻略の為にここに戻って来たのだから、まさか自分達を手伝ってくれるとは思いもしなかったのだろう。以外すぎて間抜け顔で聞き返したが、ハジメが帝都に同行してくれるのを即理解し、ビッと敬礼をし、仲間に号令して引き連れて、他のハウリア族を呼びに急いで出て行った。

 

「ハ、ハジメさん…大迷宮に行くんじゃ……」

 

シアはウサミミをピンッ!と真っ直ぐに立てて、目がイオ以上にキョトンとしたように見開き、ハジメを凝視していた。

 

「カム達のこと気になってんだろ?」

 

「っ‼︎」

 

図星だったのか、シアは「それは……その」と色々と言い出しづらいところがあるのか口籠っている。

 

「シアさん、言ったはずですよ」

 

見かねた七海が口を出す。

 

「今更すぎです」

 

「!」

 

「南雲君の目的は大迷宮攻略で、私としても、早くしてほしいとは思ってます。ただ、やるなら状態がベストな時にしたい。君のそんな精神状態で、果たして大迷宮を攻略できる自信はありますか?」

 

「それ、は……でも、父さまが帝国に捕まったのは、連れ去られたからではなくて、自分で向かったからです」

 

元々亜人族にとって危険な場所が更に今はピリついた危険な場所に自ら踏み込んだ時点で、生死は自己責任。

 

シアもまた、自分の意志と責任をもち、彼らの考えに寄り、ここまで付いて行きた。父親達は父親達の道を、自分は自分の道を進むべきだと、そう思って何も言わなかった。

 

「でも、それでも心配だから、そんな憂いの表情をみせているんでしょう?私だけでなく、南雲君もユエさん達にも、バレバレです」

 

ハジメグループの女性陣は全員「うんうん」と頷いている。そしてハジメは「やれやれ」と呟いてシアの傍に寄り、そっとその頬を両手で挟み込んだ。

 

「ふぇ?」

 

「七海先生が言ってダメなら、俺の口から言おうか、シア」

 

ポカンと口を開けて間抜け顔を晒しているシアに、ハジメは可笑しそうに笑みを浮かべながら、真っ直ぐ目を合わせて言い聞かせるように言葉を紡いだ。

 

「シア、お前に憂い顔は似合わねぇよ。いつもみたいに、思ったことを思った通りに言えばいいんだよ。カム達が心配だってな」

 

「う、ぅぅ」

 

「つか、ほんとに今更だぞ。いつも俺に遠慮なしで迫ってくるお前はどこ行ったんだ?初めて会った時から変わんねぇ、図々しかったろう」

 

それでもまだ言い切れないのか、シアが言い淀んでいるとハジメは頬を掻いていう。

 

「それに、ほら、お前が笑ってないと、俺の……俺達の調子が狂うだろうが」

 

「ハジメさん……」

 

「そこは、『俺の』で良いと思いますけど」

 

「うっせぇ、黙れ先生」

 

と言いつつ、否定しないあたり、ハジメがシアと初めて会った時、七海が初めて彼らと会った時よりも、ハジメの中でシアへの想いが格段に上がっている。事すれば、ユエに匹敵するレベルに近い。

 

「ともかくだ!」

 

それを見透かされている気がしたハジメは、必要以上に大きな声を出して、シアに向き合って言う。

 

「あまり実感がないかもしれないが……これでも、その、なんだ…」

 

先程七海に吠えた手間もあり、尚のこと言い出しづらいのか、ほんのわずか顔もいつもより赤いようにも見える。「ふぅぅぅぅ」と息を吐いて間を置き、ようやく告げる。

 

「お前の事は、けっこう…それなりに、大切に想ってるんだ。だから、そのお前の憂いが晴れるって言うなら俺は、俺の全力を使うことを躊躇わない」

 

「ハジメさん、私……」

 

声が涙声で震え、頬通してハジメから来る優しく、熱い感触が、シアが閉じようとしていた思いをこじ開ける。

 

「私、私ぃ」

 

「ほら、泣くな。落ち着いて、言いたい事を言ってみろ」

 

湧き上がる気持ちのままに思いを言葉にした。

 

「……私、父様達が心配ですぅ……一目でいいから、無事な姿を見たいですぅ……」

 

「全く、最初からそう言えばいいんだ。正直、いきなり遠慮なんてするから、俺は何事かと思ったぞ?」

 

「わ、私、そこまで無遠慮じゃないですよぉ!」

 

「あなたは意外に思慮分別できる方だというのは、私も存じていますが、南雲君に対してはそうでないでしょうに」

 

「『意外に』は言い過ぎじゃないですかぁ⁉︎というか、最近七海さんも結構言いますよね」

 

「あなた方と一緒に旅してたら、嫌でもこうなりますよ…というか、割とこれでも抑えてる方ですけど」

 

七海の言葉に頬をぷくぅと膨らませて「むぅぅ」と言うシア。そんな彼女を見るユエ達ハジメグループ面々は微笑ましそうに見ている。ここにいないレミアも含めて彼女達は大切な仲間であり、ハジメを想うライバルでもある。次々と増えるライバルを前に、無意識に良いところを見せようと思い、このような事をしていたのだが、それもハジメの「大切に想ってる」であっという間に曇った心と共に吹っ飛んで、太陽のような明るい笑みを見せ、それに同調するように、七海も笑みがでる。

 

「ふっ………ん?アルテナさん?」

 

「……ましい」

 

何かぶつぶつと呟くアルテナ。

 

(気のせいでしょうか?今、妬ましいと聞こえたような)

 

なぜか七海は「気のせいにしたい」と思っていた。こう言葉には出せないが、このままではいけないような、そうでもないような、微妙な感覚に陥る。そして、それは後々分かることとなり、シアにとって、そして同時に七海にとっても、切り離せない事態になる。

 

「やっぱり、仲間の為なら戦うのか」

 

一方、光輝の方もポツリと呟く。それは七海にもちゃんと聞こえた。苛立ちにも、戸惑いにも感じるその声に、七海は告げる。

 

「天之河君、前に言ったことの繰り返しになるので、あまり長くせず1つだけ言います。『選ばない』のというのは立派な選択肢でもありますが、それは同時に自身を溺れさせる事態になる。そこを、理解しろとも言いませんが、そういうものなんだという考えくらいはもっていて下さい」

 

「選ばない……俺は……」

 

「何を選ぶも選ばないも、君の自由です。そして、それは南雲君も同じ。ただ、選んでいるだけの違いです。君は、どうしますか?」

 

その問いに、光輝は答えが出ない。今まで自分の感じていた、心に決めていた物が、崩壊してしまう気がしたから。

 

「今は答えなくていいです。君が答えを、探し続けることに、意味はありますからね」

 

七海の言葉が、光輝の中で何度も廻る。この世界に来て、光輝へとかけられた他の呪いと共に。

 

(いい方向に、行っていると思いたいですね)

 

この状態が良いのかと問われたら、決して良くはないが、悪いというわけでもない。少なくとも、以前の光輝は答えを決めつけて、それが正しいと決めつけて、固執して、本当の意味で考える事をしなかっただろう。

 

(考えることができるようになった分、1歩前進でしょうか)

 

あまりにも遅い1歩。牛歩と言うにふさわしい。それでも、光輝は認めないが、大きな1歩だ。そんな風に思っていたら、仲間を呼びに行ったイオが絶妙なタイミングで戻ってきた。

 

 

アルフレリック達がハジメ達を見送り、しばらくした後――

 

「……あの、お祖父様」

 

「ん?どうした、アルテナ?」

 

「その、実は」

 

言いづらいのか、吃る。それを見かねたアルフレリックは、ここでは話せないと思ったのか、他の亜人族達を外し、2人きりになる。

 

「これでよいか?」

 

「申し訳ありません、お祖父様」

 

そして、意を決してアルテナは告げた。

 

「実は、たぶん私にも、七海様の言う、呪力が見えるんです」

 

 

そして、所変わってフェルニルにて、ハウリア達を除いた者達がほぼ全員がブリッジに集まった時。

 

「それで、七海、聞かせてもらうか」

 

「………ここで、ですか?」

 

話すのはやぶさかではないが、この場で、生徒達も含めた者達全員の前で言うとは思ってなかった。

 

「?…なんの話しですか?ユエさん?」

 

真っ先に龍太郎が声をかける。それに同調するように、他の者も耳を傾けて、視線を合わせると、ユエの代理の如く、香織が説明する。

 

「実は、七海先生が愛ちゃん先生を振ったの」

 

「ええ⁉︎」

「なんと⁉︎」

「マジですかぁ⁉︎」

「………」

 

雫、ティオ、シアが真っ先に声を上げて驚き、鈴も声にこそ出さないが、表情は驚いていた。

 

「え?畑山先生が、七海先生を…?」

 

「ウッソだろオイ…つか、断ったのも驚きだけど…えぇ⁉︎」

 

光輝と龍太郎はそもそも愛子が七海の事を好いていることも気付いてなかったのか、混乱に近いほどに眼をぱちぱちさせている。

 

「ユエさん、白崎さん、わざとですね?」

 

ギロっと睨みつけ、「余計なことしてくれやがったな」的な事を視線で伝えるが、香織は七海の方を向こうとしない。一方ユエは「知ったことか」と逆に眼で告げ

 

「知ったことじゃない」

 

言葉でも告げる。

 

「それより答えて。なんで振ったの?」

 

「………それに答える前に、1つだけいいですか?なぜそれほどまで、彼女と私の関係に固執するんですか?」

 

「…愛子はハジメの為の、未来になる為の言葉をくれた。七海は、ハジメの為に、色々と背負ってくれた。そして、どっちも今のハジメを受け入れてくれた。そんな2人が、一緒になるのは、見ていて気持ちがいいし、嬉しい。七海も、愛子の事を、大人として見ていたから、好いてると思ってた」

 

それなのに、裏切られたような気がしたから、ユエは問いかける。何故かと。スッと七海が周囲を見る。それぞれ感想は違うだろうが、聞きたいと思いこちらに視線がある。こうすることで、有耶無耶にできないようにしたのだろう。当然、そんなことしなくても七海なら答えてくれるだろうなと確信した上でだ。七海は一息吐いて、口を開く。

 

 

 

その頃、王都にて

 

「「「「「「七海先生が愛ちゃん先生を振ったぁぁぁぁぁ⁉︎」」」」」」

 

日を追うごとに暗くなっていく愛子の事が、あまりにも気になった『愛ちゃん先生親衛隊』の代表として、園部が聞き出した。最初は愛子は濁そうとしたのだが、逃がさないと言いたげな生徒達が何度も問い詰めた結果、ついに折れた愛子が口に出した。のだが

 

「ちょっと帝国の方まで馬車出して下さい‼︎七海先生の事をぶん殴って来ます!」

 

「ちょちょちょ、ちょっと待ってくださぁぁあい⁉︎」

 

大突撃をしようとしかねた園部含めた生徒数名を止める事態になった。

 

「それで、なんて言われて断ったんですか?」

 

もしこれで愛子の容姿などを理由に断ったのなら、どうしてくれようかと本気で考えながら園部は座って聞く。「言わない方が良かったかなぁ」と思いつつ、もはや無理だと、答える。

 

 

『畑山先生、あなたの私への想い、嬉しいとは思ってます。何より、あなたは女性として魅力的です』

 

そう言われて愛子が素直に嬉しいと思えないのは、断ると言われたからだろう。

 

『しかし、畑山先生。あなたの私に抱いているその好意は、何度も危機から救い出したから。多くの人の命を救い、自身を救ってくれたことによる、無意識の錯覚。所謂、吊り橋効果です』

 

『!』

 

『そんな、一時の感情的なもので、自分の人生を決めてはいけません』

 

『けど、この想いは…』

 

『それに、私はこの先、多くの罪を引き受ける為の縛りを、南雲君との間で結んでいる。私が私で背負った物を、他者に背負わせることなどできません。まして、それがあなたとなれば尚のこと』

 

愛子は、言葉を出せなくなった。

 

『畑山先生、自分の感情を落ち着かせ、もう一度己の内面と話し合って下さい。呪術師と共に生きるという意味と共に。それでも尚、同じ気持ちであれば、私も、もう一度その想いに、誠心誠意お応えします』

 

 

「すみません‼︎やっぱり馬車出してください‼︎いや、早馬全部貸して下さい‼︎七海先生の事をぶん殴って来ます‼︎」

 

「ですから、ちょっと待ってくださぃぃ‼︎」

 

慌てて愛子は止めるが、行こうとしている者は皆興奮していた。

 

「何しとんだお前ら?」

 

「あ!メルドさん!助けてくださいぃぃ!」

 

「止めないで下さいメルドさん!」

 

いきなり食堂に来たら訳の分からない理由で生徒が暴れ、愛子が涙目でしがみつき、小柄な身体を引きずっている。側から見れば駄々っ子の妹に手を焼く姉のような構図見えなくもない光景に、頭を抱え、わけわからん状況に巻き込まれてしまったことを察した。とりあえず、落ち着かせ、何があったかを聞き出した。

 

「なるほどな。そういう経緯だったのか」

 

「メルドさん、知ってたんですか?」

 

「知ってたってわけじゃない。だが、その日に一緒に酒を飲んでた時、表情は変わんねぇが、なんか思い詰めたような感じがしてな」

 

その時ははぐらかされたが、そういう事かと納得する。

 

「あいつもあいつで、色々と思う所があったんだろう」

 

「でも、だけど、吊り橋効果なんて!」

 

「いいんです!……七海先生の言ってる事は、事実です」

 

「愛ちゃん……」

 

認めざるを得ない。愛子の抱いた気持ちは、七海の言う通り、吊り橋効果だ。自分自身がそうだと、七海に告白する前から、なんとなく気付いていた。それを七海はしっかりとわかっていた。否、分からないはずがない。愛子が気付く事を、気付かないはずがない。

 

「ほんと、バカみたいですよねー私…七海先生、あの時きちんとした意識を持って告白したって言ってましたけど、そんな事全然ないのに、そんなだから、断られるのなんて、そもそも当たり前で、それに、私じゃせんと最初から釣り合わないですし、背は小さいし、プロポーションもそんな…あの人には」

 

「おい、愛子。泣きながら言ってる所悪いが、後半の部分、建人は言っていたのか?」

 

見かねたメルドが止めると、愛子は崩れた笑顔を解いて、暗い顔で首を横にふる。

 

「あいつが、容姿で相手を選ぶような奴でもないのはお前達の方がわかってんじゃないか?」

 

「そりゃ、そうですね。メルドさんの言う通りです」

 

というか、そんな人では『愛ちゃん先生親衛隊』の面々は認めないだろう。

 

「前に、呪術師は1人身が多いって聞いたんだが、それが、俺にはなんとなくわかる」

 

人の負の感情より生まれる呪い。そんな物と立ち向かう者の命など、いつだって保証されていない。更に、呪いを生むのが人なら、その負の感情と真っ向から向き合い続けなければならない。そこに、誰かを巻き込むような事は、できない。少なくとも、七海建人には。

 

「けど、それで諦めるってのは違うと思うぞ」

 

「?」

 

「少なくとも、まだチャンスがなくなったわけではないだろう。必要なのは、たぶん愛子自身もあるが、あいつ自身にもあると俺は踏んでいる。この旅の終わりに、それが終わっていると仮定して、どうするか考えていけばいいんじゃないか?」

 

「………」

 

何かを考えるように、視線を落とす愛子を見つつ――

 

(俺はこんな役目をするようなやつじゃないっての。まったく……建人、お前は今、何に囚われてんだ?)

 

彼方にいる友に、思いを馳せつつ、またも「帝国へ行くぞ!」と興奮している生徒を宥めるメルドであった。

 

 

「…………」

 

「なんですか?ユエさん」

 

理由を話したことで、どうにか納得してくれた。が、どうにかだ。

 

「七海は、どこまでも愛子やハジメも含めた他の人の為なんだ」

 

「私が知ってる、私が認めている呪術師の子は、そういう子でした。彼に、恥じない大人でありたいというのが、今の私ですから」

 

「でも」

 

ユエはじっと七海の顔を見て

 

「七海、何に悩んでいるの?」

 

「別に、悩んでいるわけではないですよ。ただ……どんな理由であれ、蒔いてしまった種。種を蒔いたのなら、摘み取るまで」

 

「………やっぱり気付いてるの?アルテナに呪力が見えていること」

 

「ええ。というか、あなたも気付いてるんですね」

 

ユエは「最初は違うものと思ってたけど」と告げる。

 

「なんとなくだけど、七海を見る目が、七海を見てるというより、七海全身を見てる気がしたから」

 

「…さすが、なんやかんや言っても元王女ですね。人を見る目がある」

 

とはいえ、七海は彼女が呪力を扱えるか、術式があるかはわからない。だが、可能性としては術式があるにせよ、ないにせよ、呪力を扱えるのは、ほぼ間違いない。あの状況下で七海の呪力が見えたのなら、普通の一般人(七海の世界の)では無理だろう。

 

そして、彼が与えた影響は、彼の想像しているよりも、広がっている。白のキャンバスが黒く染まるように、負の感情は、穢れは、呪いは、簡単に世界を染める。

 

 

「なるほど、呪力………ふ、くくくく、そういうことか」

 

リリアーナは、これより訪れるかもしれない世界を、変わるかもしれない世界を、目の前の男に、ガハルドに伝えた。

 

「ますます欲しくなったぞ、七海建人!お前は必ず手に入れる………お前も、楽しみにしてろ」

 

ガハルドの隣にいた女性は、この場に、リリアーナのいる場所にいたくはなかった。1度は拒否した。だが、リリアーナが出した情報……七海建人に関してと、その人物が出した情報に、興味がでたから

 

「ええ、ええ!ええ‼︎」

 

その身に、呪力が激る。

 

「今から楽しみですわ!」

 




ちなみに
今回書いてあったように、実は最初にパル達は七海にあった時、ハジメの2つ名問題の件をバカにした(と思った)時に

「殺るか?」

と思いましたが七海には通用しないと判断しました。当然七海も気付いてました。気にはしてませんが、魔改造しすぎとハウリアが見てない所でハジメを叱ってます

ちなみに2
最後に出た彼女は術式持ちですが、強いかどうかというと、個人的には微妙。でも戦闘に使える術式です
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