ありふれたやり甲斐と生き甲斐を探して   作:戦鬼

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先に言いますが、今回のタイトル…ケツとタッパがデカい女が好きな呪術師はまったく関係ありません。あしからず


闘志闘堂(とうしとうどう)・開

ガハルドの、帝国の敗北の少し前。帝城地下の宝物庫で警備をしていた兵士達が、異変を知らせる魔法具が反応した。これはガハルドが身につけている備えであり、これが反応するということは、皇帝が自ら発する警告緊急召集を意味する。地下にいた彼らを含めて、ハウリアの襲撃のターゲットになっていなかった者達が合流し、帝城内部から連絡路を通るルートでパーティー会場のある建物に来たのだが

 

「張り合いないにもほどがあるですぅ」

 

ゴッとドリュッケンを落とすのはもちろん使い手のシアだ。彼女は会場に入る為のエントランスで増援を待ち伏せていた。最強の壁となり、家族達の作戦を、邪魔させない為に。現れた兵士の中に、彼らを束ねる者として、帝城に入る際に会ったグリッドもいたが、それがいけなかったかもしれない。

 

彼ら相手に、術式を使う予定は実はシアはなかったが、グリッドがいた為、使った。

 

「な、な、なに、を」

 

グリッドは訳もわからないだろう。相手の兎人族…シアと目が合い、三日月のような笑みを浮かべたと思ったら、自分の周囲にいた兵士達が、あっという間にほぼノータイムで圧殺されたのだ。そして、彼の最大の不幸は、この場に来てしまった事。あえてシアは彼だけは殺さなかった。ただ、足を潰した。悲鳴が響き、恐怖で顔が歪む。立てないがズルズルと残っている腕を使い下がるが、次の瞬間、腕を潰されて、芋虫のように身体をくねらせて、無駄だと思う思考すらなく、必死で逃げようとする

 

「たしか、ハジメさんの世界には、ゴルフって競技があるんでしたね」

 

だれに言うまでもない言葉を言いつつ、近付き、グリッドはそこで何をするか気付く。

 

「お、おい、冗談だろ、やめろ、いや、やめて、やめてください、許して下さい助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて」

 

「ぶっ飛べ」

 

シアは地面のボールを蹴るごとくグリッドを軽く蹴ってうかし、思いっきり、大きく振りかぶって

 

「黒閃‼︎」

 

黒い閃光が、輝く。グリッドにもう一つの不幸があるとすれば、芋虫みたいになっても、クセで身体強化してしまった事だろう。そうでなければ、黒閃を受けた時点で肉体は木っ端微塵だったろう。天井を突き抜け、しばし飛んだ後、グリッドの肉体は弾け飛んだ。

 

「ハッ‼︎ハジメさん風に言うなら、汚ねぇ花火だぜってやつですねぇ」

 

黒閃を術式を使って決めた為、ハイテンションになっていく。そんなシアのもとに、更にドタドタと兵士がやってくる。惨劇といえる状況を見て、兵士数人が息を呑む。

 

「ヒヒ、うヒヒ、ヒャッハァァァ‼︎」

 

覚悟決める暇など与えない。殺す。殺戮が行われた。

 

「お前で、終わりぃぃぃ!」

 

あっという間に殲滅した。そこに

 

「随分と、活気あるようですわね、殺りがいがありますわ」

 

(こいつが、七海さんの言ってた)

 

昨夜、七海は訓練前の作戦会議で告げた。

 

『帝国にいる、呪術師の対応です。私が見た限りの情報と目視で強者かどうかを確認していただき、そうだと判断したなら、捨て置けばいいです。あの術師の相手はシアさん、あなたです』

 

『わ、私ですか?』

 

『狙いが私なので、私が相手してもいいですが、それでは意味がない。これは兎人族の、ハウリア族の戦いなんですから。ハウリアを名乗る者が戦ってもらう必要がある。とはいえ、昨日戦った段階で既に準1級術師の実力はありました。術式によっては1級レベルもあり得ます。そうなると、ハウリア族から多大な犠牲者が出る可能性もある。故に、あれと戦えるハウリアを名乗る者は、あなただけです。シア・ハウリアさん』

 

金髪縦ロールと煌びやかなドレスを靡かせ、片腕には大鎌のエグゼスというアーティファクトを携えた女。吊り目から出る闘志はこの惨劇の前にも屈してない。むしろ高揚してる。

 

「いざ、死あ」

「うぜぇです」

 

黒閃。それが鳩尾にヒットし更に遠心力をつけて吹っ飛ばす。いつもならもう少しくらいは話しを聞いていただろうが、今のシアにはそんな言葉を聞く心の許容範囲は0に等しい。

 

「ガァっ!」

 

壁にめり込み、そのまま倒れて、

 

「まだぁぁあ!」

 

しまう前に渾身の魔力の斬撃がシアを襲うが、術式によってシアの身体を通り抜け、逆に接近を許してしまう。

 

「黒閃!」

 

またもヒット。だが、まだ倒れず不屈の闘志をもったまま体勢を直して攻める。

 

「いいですっわ!これですわ!昨日は七海建人に逃れられ、今日こそはと思えば、会いたいなら腹黒女の婚約式に参加せよと言われて、最悪の気分でしたが、いま、ここに」

 

黒閃が輝いた。今度はエントランスの壁を突き破り、吹っ飛ぶ前に穴のあいた壁を掴み力のかぎり戻ってくる。

 

「(これでもまだ?)タフですね。あと、長々とうざいです」

 

とはいえ、すでに死に体。もう後はない。

 

「………色々と、わかってきたんですの」

 

今度は打ち合うことができる。流石に黒閃を出したシアの方が出力は高いが、それでも、なんとか致命傷にならないようにエグゼスで打ち合う。ガキンと金属音が響くが、ドリュッケンに付与された衝撃によって、防いでも着実にダメージがいく。そして、

 

「終わり、ですね」

 

シアは今度は彼女の上に瞬間移動し、叩きつけた。…………否、

 

(いま、あえて受けた)

 

殆どの魔力を足に強化を入れて倒れるのだけは回避したが、おかげでドリュッケンをモロにうけてしまった。死ぬ。というか、数秒後には死ぬ。手から力を抜き、エグゼスを手放す。その最中に彼女は術式を発動する。

 

また、戦闘中の動きでシアが何かしら魔法か技能によって動きを察知しているのをほぼ確信した。故に、わざと攻撃を受け、未来視をさせるのを防ぐ。連発で未来視ができるとはいえ、常日頃、戦闘中常時未来を見ているわけではない。過度に見る行為は頭の中に雑音が響くようなものであり、更に未来を見ている間は当然ながら別の未来は見えず、次の未来を見る際に、一瞬のラグがある。当然そのラグがある事もシアは理解しているが、わざわざ致死レベルのダメージを受けてまでそのラグを得ようと思う狂人がいるはずないとたかを括ってしまった。

 

いまトレイシーが受けたのは、シアが術式に集中し、未来視をする際の最大のラグを作り、自分の術式発動の邪魔をされ、不発になるのを防ぐ為だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「領域展開」

 

ありえない言葉が、シアの耳の入った瞬間、周囲が変わっていく。構築されていく空間にシアが取り込まれるなか、光に包まれたような気がした。そして、次に見たのは

 

「ここは」

 

闘志闘堂(とうしとうどう)

 

それは高い壁が円を描くように立ち並び、更にそこには人影が幾つも見える。それは所謂、闘技場

 

「トレイシー!トレイシー!」

 

「やれぇ!ぶっつぶせぇ!」

 

「負けるなぁ!」

 

鎮座する者、立ち上がり叫ぶ者。それらは彼女、トレイシーを応援する。

 

(領域!そのレベルの術師!)

 

大迷宮攻略後、エリセンにて

 

『シアさんも術式に目覚め、使いこなせ、南雲君の方も、結界術の精度をあげたそうですし、呪術師として私が教えられるのは、もうないですが、最後に私ができない技術をおしえます』

 

一通り教えられることは教えてきたが、自分にできない事を教えるのはどうかと思う部分は七海にもあるが、知識として入れておくのは必要として、せっかくなのだからと集めた。

 

例によってなぜか関係ないはずの者達。今回はレミアまでいた。もうツッコむまいとして続ける

 

『七海先生にできないことって…俺等にできんの?』

 

『教える技術は2種ですが、そのうちの1つは術式のない君には不可能です』

 

『……先生、情け容赦ない真実って人を傷付けるんだぜ?』

 

『事実は事実として受け止めるべきです。続けます』

 

今回ハジメの隣の権利を得たユエとレミアが励まし、それを他のメンバーがちょっとだけ羨ましそうにしつつ、言葉で慰める。ちなみにミュウは胡座をかいているハジメの正面に座っている。

 

『では、まずそちらから教えましょう。その技術の名は、領域展開です』

 

『『『『『『領域展開?』』』』』』

 

『なの?』

 

『以前、グリューエン大火山で、フリードという魔人族に私が放った極ノ番というものについては以前も言いましたね?あれがその術式の奥義であるなら、領域展開は最終奥義とでも言いましょうか』

 

最終奥義という言葉を聞いて、ハジメの中にいる厨二の心が「やぁ」と出そうになるが、自分には使えない事実がすぐに出てしょんぼりとした感情とぶつかり、相殺された。

 

『術式を付与した生得領域…あ、生得領域はその術師が持つ心の中の風景とでもいいましょうか。それを呪力で周囲に構築する、結界術の一種です。レミアさんとミュウさん以外の人にわかりやすく言うなら、メルジーネで見た過去を見せるあの空間でしょうかね』

 

『それだけ聞くと、そこまで大した事ないように聞こえるが、そうじゃないんだろ?』

 

あれを大した事ないと言える人間が、果たしてこの世界に何人いるかは定かではない。だが、

 

『ええ。規模も系統も違いますし、何より私の知る領域とは程遠い』

 

『それだけヤバい術ってことか?』

 

『ええ。勿論幾つかデメリットもありますが、それを話す前に、メリットの方を話しましょう。メリットは2つ、1つは環境要因による術式の能力上昇。領域内はその術師がもっとも戦いやすいホームグラウンドのようなもの。領域内でのみ使えるようになる術式や、同じ術でも通常ではできない規模の攻撃など、術式能力は120%以上の上昇をします』

 

『ひゃ、120って…』

 

『確かにそれは厄介じゃが、それだけならデメリットの数に負けてしまいそうになるの』

 

香織は数字に驚くが、ティオの言葉でそれもそうだとなり、他の者達も頷く。

 

『南雲君、私の手に触れてみてください』

 

『?こうか』

 

パンっと出された手をハイタッチする。

 

『術式の中には、相手の掌に触れた瞬間に死ぬ、もしくは致命傷を負うような術もあります』

 

『その能力があんたにないからって、ちょっと今のは理不尽じゃねーか⁉︎』

 

ごもっともな事だが七海は『油断大敵です』と取り合わない。

 

『というより、領域展開はその理不尽の極地です。必殺の術式には、それに相応しい縛りとは別にルールや条件などがあります。しかし、2つ目のメリットはそういった条件をなくせる。なぜなら領域は術式が付与された空間。中にいる時点で、攻撃は当たっているんです』

 

その言葉を聞いた瞬間、ミュウ以外の者は全員その危険性を理解した。

 

『もう理解したようですね。そう、領域内で発動した術式には全てに必中効果が付与される。すなわち、攻撃は絶対命中します』

 

 

(まだ!)

 

領域はまだ完成していない。空間内の建造物が広がっていくが、コンマ数秒で完成するだろう。だが、シアの術式はそのコンマ数秒でもいける

 

月兎跳躍(ラピットラビット)は使う時間を設定は基本的にその場で決める。故にこの術式は咄嗟にどのくらいの時間で、どれだけの距離を移動するかを瞬時に判断する必要があり、0.1秒分の動きをするのに1秒以上かかる場合がある。シアは普段は持ち前のセンスと、未来視でそれを成しているが、今回はそれでは間に合わない。

 

(月兎迅光(ラピットファイヤー))

 

あらかじめ使用時間とタイミングを決め、決めていた時間を1日に使用できる回数に縛りを入れることにより、その場で決定しなくとも、瞬時に瞬間移動ができる拡張術式。これをつかい、相手が術式を発動するよりも早く倒そうとした。

 

「⁉︎(術式が⁉︎)」

 

だが、使えなかった。それどころか時間跳躍の為に動いた為、動きはそれに合わせたものであり、本来のシアの動きから見るならガタついたものになってしまう。そしてその大きな隙を逃すはずもない

 

「せぁあぁぁぁぁ!」

 

「っ!…⁉︎(武器が⁉︎)」

 

咄嗟にドリュッケンで防御しようとしたが、次の驚愕はそのドリュッケンがいつの間にか手から消えていた。完全に動きを抑制されしまい、大きな隙ができ、強化された渾身の蹴りが、シアに命中した。

 

「ぐっ…ぁ」

 

防御体勢になっていなかったのもあるが、それ以上にシアに大きなダメージを与えたのは、別の理由がある

 

(呪力が上手く練れない。この領域の効果?というか、傷が)

 

攻撃をされた瞬間は気付かなかったが、今見て気付く。トレイシーの肉体は瀕死寸前だった。おそらく骨や内臓にも致命的なダメージを受けていた。それらが全て、治っていた

 

「……初めて知りましたわ。呪術師に使うと、そうなるのですね」

 

一方で領域の主であるトレイシーもこの現象に驚いていたが、領域を構築する上での縛りを公表するのを優先することとした。

 

「ここは、私が決めたルールに基づいた戦闘しかできない空間ですの。互いの力量の差は流石に調整できませんが、傷を治して、万全な状態にはします。そして今のルールは、身体強化以外の行為の禁止と武器の使用の禁止ですわ」

 

(領域内の術式の説明……それに領域が完成してるのに、私に致命傷となる攻撃がこない。つまりこの領域は、フェアベルゲンに着く前に話してた)

 

 

フェルニルでフェアベルゲンを目指し始めた当初、七海は呪術的な知識や技術ついても説明をしていた。当然領域展開についても。大体がエリセンで話したことと同じであるが、そこでエリセンでは話さなかった内容を話しだす。

 

『とまぁ、ここまで話しましたが、領域展開にも、一部例外があります』

 

『例外?なんだそれ?』

 

『南雲君達も知らないの?』

 

雫は呪術的な知識のない自分達に懇切丁寧に教えてくれているので、ハジメ達もいま話している内容は理解してると思っていた。光輝達も同様なのか、若干不思議そうな顔をしている。

 

『すみません。あの時はこのような事態になるとは思わず、それに仮とはいえリゾートをエンジョイしていたので、あまり時間を取りすぎるのもどうかと思い』

 

申し訳ないと謝り、ハジメは『別にいいけど』と言ったので、そのまま続ける。

 

『領域の例外、それは、呪術高専3年生の秤金次君の領域、坐殺博徒があります。この領域は、必中必殺ではなく、必中のみを付与された領域です』

 

『って、結局、必中なら術式が当たったらヤベぇじゃん』

 

『まぁ、最後まで聞いてください。術式の必中とは、その術式の、ルールの強制です。例えば、自他ともに一定の行動制限、必中が術式の開示のみというような、領域そのものに必殺…つまりは殺傷能力がなく、その領域内で課されたルールを元に、戦うという事です』

 

『つまり、ルールのある空間で、お互い制限付きで戦うてことか?』

 

『そういったものもあるでしょうが、秤君の場合は、領域のルールの開示が必中で、あとは彼が領域内でパチンコをするものです』

 

『『『『『『なんて?』』』』』』

 

『あ、言い方が間違ってましたね。パチンコを打つ…』

『言い方の話じゃない⁉︎』

 

日本から来た者達全員がポカンとし、その後の七海のズレた発言に、代表でハジメがツッコミを入れる。

 

『今パチンコって言ったか⁉︎』

 

『ええ。より正確に言うなら、領域そのものがパチンコを再現し、それを秤君が打つのを、強制的に付き合わせるものです。ちなみに、パチンコのルールは知らなくても必中で情報を与えられるので、問題はありません』

 

『なんだそのまったく必要のない悪意に満ちた親切』

 

『と言うか、学生なんですよね?その秤って人。その、いいんですか?未成年がパチンコって?』

 

『光輝、混乱して質問がなんかズレてるわ。気持ちはわかるけど』

 

『まぁ、彼の術式は色々な意味で問題あるのは理解できますよ。それが原因で保守派と揉めて、私が死ぬ前は高専を停学中でしたから』

 

『保守派って聞くとイメージが悪くなりがちだけど、今回ばかりは同意と同情をせざるを得ないわね』

 

『あ、あははは、確かに…』

 

『コンプライアンスって言葉を、汚れた雑巾で拭いて、掃溜めに捨てるの如く、ふざけてる』

 

『例えがわかるようなわからんような表現だぞ鈴』

 

 

『……………』

 

 

日本から来た者は、イメージとしてあった呪術師の像をぶっこわされたのか、渇いた笑みと皮肉しか出ず、光輝はもう何を言ったらいいのかわかってないようである。そして、ハジメは

 

『七海先生の世界の呪術師って、そんなのばっかなのか⁉︎いい加減にしてくれよマジで!頼むから!イメージを壊すような真似だけはやめてくれ!』

 

『そんな事私に言われても』

 

これまでも自分の頭にあった王道の呪術師像を七海によってぶっ壊されてきたが、その中でも特にふざけた秤の術式にして領域に、怒りを通り越して悲しみにも似た何かを感じざるを得ないハジメであった

 

((((またしても蚊帳の外〔ですぅ〕〔なのじゃ〕))))

 

そしてトータス側の人間は、話についていけず、暴走している面々を凝視していた。

 

 

閑話休題

 

 

トレイシー=D=ヘルシャー。彼女が他者にはないものが自分にあるかもしれないとわかったのは、皇帝で自身の父親であるガハルドが、王国から戻った際に捨てようとしていた1本の折れた剣を見た時だった。

 

「それは、新手のアーティファクトですか?」

 

消えかかっているが、たしかにそこにある七海の術式の残穢を見た彼女はそう聞いた。ガハルドはその時、驚きと笑みの表情がでるのを必死で抑え、「なぜそう思った」と聞くと、そこから僅かだが魔力が出ていると言った。

 

「なるほど、どうやら奴には俺達にない力がある。そしてそれはお前にもか、トレイシー」

 

だが、その後どうやってもトレイシーがその謎の力を使う事もできず、剣についていた残穢も次第に消えてしまい、以降は見る事もなく、ガハルドもこの件を一時捨て置いた。

 

だがそれでも、トレイシーはその力を求めてた。自分でもわからない。それでも、その力を求めた。興味が出ていた。

 

「七海建人、ですか」

 

帝国の兵士達はガハルドが持ち帰った情報から、身体強化の技法を独自に模索していた。その技術の提案者にして、自分が興味の出た力を持つ七海にも、彼女は興味が出ていた。できるなら会いたい。そして、

 

「おい、トレイシー…目が、口が、……いや、いい。なんでもない」

 

ガハルドは狂戦士化しそうな娘にツッコミを入れるが、逆に暴れ出しそうなので、あえて放置した。

 

とはいえ、彼女ができることと言えば、もう残穢もない折れた剣を見たり握ったりするだけで兄達からは無駄な事をしていると嘲笑われた。それでも続けていたが、まったく成果が出ず、もう諦めるかと考えだした時、運命は彼女を、歯車の一部として組み込んだ。

 

魔人族の帝都襲撃。見た事もない魔物の軍勢が帝都を襲った。王国やフェアベルゲンほどの戦力はないが、それでも劣勢は免れない程であったが、七海の考案及び提唱した身体強化と魔力視認の方法によって大幅に強化された帝国の精鋭と近衛部隊によって撃退していた。

 

トレイシーもその戦いに参加していた。しかも帝国の外にも蔓延る魔物相手に、最前線で。言うまでもないが、ガハルドに黙ってである。その時の彼女は、色んな意味で暴走していたが、それと同じくらいに、何かを求めていた。ここでこうするべきだと。そうすれば、何かが掴めるという、確信にも似た。

 

だが、

 

「浅ましいな。その程度で我々の神に仇名すなど、恥を知れ。神に認められたフリード様に賜った魔物をこうも醜く蹴散らして、調子に乗っていたか?」

 

魔物を統率していた1人の魔人族が彼女を瀕死に追い込んだ。両足は喰いちぎられ、腹には魔法で風穴を開けられ、顔の半分以上は爛れ、数秒後には死ぬ。後は魔物の餌になるだけであった彼女は死ぬ1歩手間の瞬間、

 

「つか、み、まし、たわ」

 

呪力を、術式を、開花させた。彼女の幸運であり、魔人族のミスは、彼女の腕を奪わなかったこと。

 

領域展開

 

そして彼女は、本来なら勝てるはずのない相手に何もさせないまま、嬲り殺した。

 

 

「ここからが、本番ですわ!おーーほっほっほっほっほっ!」

 

(ちょっと、厄介ですね)

 

そして、本格的に牙と爪を見せた獣が、

 

(未来視も当然使えない。しかも呪力による身体強化も、ちょっといつもの感覚と違うというか)

 

呪力操作がおぼつかないシアに襲いかかる。




ちなみに
トレイシーの情報は修行前に七海が伝えたのですが、その容姿と口調を聞いてハジメが「なん、だと⁉︎」と驚愕し、

「金髪縦ロールのオホホでデスサイズって盛りすぎだろ!」

と七海がウソを言ったとほんの一瞬思いましたが七海がこんなウソつくわけがないと納得しました。でも会うまではまだ疑ってそう。

ちなみに2
帝都を襲撃した魔物を率いていた魔人族は原作よりもかなり強い奴です。更に魔物も原作よりも強いのが送り込まれてました。トレイシーがここで倒してなければもっと被害がありました。

ちなみに3
エリセンで話したもう1つの技術は反転術式です。この時はまだ七海も使えることに気付いてないので。ぶっちゃけこっちは書くかわからないので、とりあえず後書きに書きました。

トレイシーの術式の説明は次回にしますが、一応言うと、日車のように没収してるわけではないです。
また日車よりも才能は少し劣ります。彼女がここまでできる理由は、現代日本と違い、戦争がある世界且つ戦闘面に力を入れた帝国出身で、戦闘狂な為です
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