ありふれたやり甲斐と生き甲斐を探して   作:戦鬼

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後半です。
自分で言うのは何ですが、正直言ってトレイシー戦を2話かけるのは予想外でした。次回で帝兎戦乱…つまり帝国編は終わりです


闘志闘堂(とうしとうどう)・閉

トレイシー=D=ヘルシャーの術式:領域展開、闘志闘堂(とうしとうどう)

秤金次と同じく術式にデフォルトで領域が組み込まれているタイプにして、必中のみの領域。

 

領域の必中効果は、トレイシーが事前に決めていたルールに則った領域内での公平な戦闘の強要。領域展開時に術者と領域内に入った者の傷の差、毒による衰弱など、公平な勝負に著しい差がありすぎる場合、領域展開時のみ、1度だけフルオートでその傷を反転術式で治す。

 

トレイシーは領域展開を確実に成立させる為いくつか縛りをしている。1つはルールは領域を展開する前に事前に決めることがでるのだが、その際は必ず自身にとってもそれなりに大きい縛りとなるルールをつける。それが武器の使用禁止だ。トレイシーはありとあらゆる魔法具を使いこなせる〝魔道師〟の天職をもち、それによってこれまで帝国で扱えるものがいなかった〝魔喰大鎌エグゼス〟を使えるのだが、それらの利点を捨てるという縛り。2つ目に領域内を除いては呪力と魔力の同時身体強化をしないという縛り、領域展開時のルールの説明の3つで成り立っている。

 

「動きがガタついてますわ!」

 

「ぐっ」

 

元来なら、シアとトレイシーの間には埋まることのないほどの実力差が開いている。だというのに、シアは攻撃も防御もガタついている。その理由が

 

(呪力の身体強化がうまくいかない…魔力の方は元からある身体強化の技能でなんとかなってますけど、少しばかりやりにくい。おまけに未来視ができない)

 

シアは、これまで基礎的な呪力操作、術式運用、魔力運用、それらを合わせた身体強化の向上を学んでいたが、その2つエネルギー、術式と技能、コレらを動かす方法を感覚的に独自で導きだし、且つ慣れていた為、術式と技能に使用に制限をかけられた今、上手く互いの操作ができにくくなっていた。特に呪力はそれが如実表れている。仮に〝魔力操作〟に〔+身体強化〕等の派生技能が無かったら、〝魔力操作〟にも大きな影響が出ていただろう。

 

(極めつけにこの人)

 

「これほどまでに攻めているのに!まるで攻撃がクリーンヒットしないなんて!なんて素敵!」

 

(呪力出力がでかい。魔力はそこまででも、それを呪力で補ってるですぅ!)

 

トレイシーは戦闘狂だが、普段は優秀な皇女である。デフォルトで備わっていた領域の情報を基に、結界術の基礎、呪力による身体強化術。更には反転術式の使用法も、フルオートだったにもかかわらず、使用された際の感覚をもとに実行した。とはいえ、使用法のみが分かっただけで、それと通常の呪力との運用法はまだ確立できていない。そして、もっとも彼女が惹かれたのは、縛りの情報だった。

 

「ぜっいぃ!」

 

シアはトレイシーの攻撃を防ぐが、ピンヒールの尖った部分が地味に効いてくる。

 

(この人、呪力操作が上手いですけど、多分それ以上に、縛りの使い方も上手い)

 

シアの考え通り、トレイシーは領域内で呪力身体強化をする際、攻撃時のみ攻撃する部位以外に呪力をのせない縛りをし、ほんの一瞬だが、本来よりも高い出力をだすことができている

 

七海戦ではまだ己の術式の理解をしておらず、領域を使おうとしたが、今のトレイシーなら理解できる。あのまま使っても勝てないと。

 

闘志闘堂(とうしとうどう)にある縛りであり、裏ルールの存在。この領域はルールに則った公平なバトルをするが、余りにも空いた力量は埋められない。だが、展開前に受けたダメージ量とダメージ差に応じて、自身の呪力出力をアップさせる。当然ながら、並大抵のダメージではその裏ルールは適用されないし、相手とのダメージ差があまりない場合でも発動しない。(むしろその際は相手のダメージも必中で回復させる)

 

死ぬギリギリ、生死の境が曖昧になるレベルで、尚且つ相手とのダメージ差が大きく開いてる際に、発動する。それを見極める才能と、見極めても尚、それを実行に移すイカれっぷり。呪術師としての才能の高さの表れと言えよう。

 

「おーほっほっほっほっ!最っ高に最高ですわ‼︎」

 

そして、縛りによって発動した呪力出力の向上。昂る興奮と共に、漲る呪力。今のトレイシーは、領域内に限り、1級術師を優に越える呪力出力を出せていた。

 

「舐めてませんでした!しかし!呪力を使える者同士の戦いは、ここまでわたくしを昂らせる!そして!」

 

攻めの手を一切緩めず、むしろ更に出力を上げてシアの命を奪おうと躍起になる。

 

「これほどまでに、これほどまでに!七海建人以上に!強く、そして美しいぃ!濡れてしまいますわぁっ‼︎」

 

「っ!ど変態ですか⁉︎」

 

どこか既視感のある変態のセリフ思い出しつつ、呪力出力をシアも上げ、相手の攻撃の手を止め、トレイシーを下がらせた。

 

「っ、クソっ面倒です」

 

クセで今シアは術式を使おうとしていたが、当然ながら使えない。トレイシーの領域は、相手が術式に頼った者ほどよく効く。シアは術式完全覚醒後、すぐにでも戦闘に活かせる技量を持っていた。未来視の方も、それに合わせて訓練し、神代魔法習得などもあり、強化されてきた。それが、逆に今回は足枷になっていた。

 

(だというのに)

 

トレイシーは感じていた。自分とシアとの力量差に。

 

(これほどまでに、攻めても、攻めても、最初の一撃以外は攻撃を防がれ、かわされる。そのうえ、呪力操作も少しずつ戻り出している。領域展開前に見た感じでも、呪力出力は私以上)

 

大抵の者なら、その事実に気落ち、絶望、諦めといった感情をだすだろう。だが、トレイシーは、今のトレイシーは…

 

「あなた、名前は?」

 

「……シア・ハウリア」

 

シアは答えるかほんの少し迷うが、すぐさま構え直し、名を名乗る。トレイシーはニマリと狂悪な笑みを見せる。今のトレイシーは、興奮していた。これまで七海にあった興味は、いま完全に、別の者に移った。

 

「いいですわ!いいですわ!シア・ハウリア!」

 

トレイシーの目がキマっていた。そして、

 

「行けー!シア・ハウリアー‼︎」

 

「シア様ー!こっち向いてぇぇ!」

 

「トレイシー!負けんじゃねーぞ!」

 

「シア・ハウリアも頑張れー‼︎」

 

(っ!これ、は?なんですか?七海さんが言うには、領域の中のものは、そこにあるけどないのと同等って言ってましたけど)

 

余談であるが、闘志闘堂(とうしとうどう)内の闘技場と、そこで応援する人々も、元来の具現化された生得領域同様に、特別な意味も役割もなく、存在してないのと同じである。そしてここはトレイシーの生得領域。群衆がトレイシーを応援するのは当たり前だ。だが、トレイシーが心の底から認めた強者は、彼女の心に従い、観戦者はその者の応援をはじめる。

 

「⁉︎」

 

「隙ありぃぃぃ!」

 

シアは行動が遅れてしまった。トレイシーよりも早く動くつもりが、いきなり手に重みを感じ、それに気付くことで動きが鈍ってしまった。

 

闘志闘堂(とうしとうどう)の必中のルールは、領域展開前に決めておき、それは展開後に説明をしなくてはいけないが、1度だけ、領域展開後にルール変更をすることができる。その際は、相手にルールを知らせる必要はない。

 

シアの手には、領域展開後に手元から消えていたドリュッケンがあり、トレイシーはエグゼスを持っていた。当然ながら、急なルール変更も自身がしたものの為、即座に対応ができる。今トレイシーは、ルールによって制限させていた武器の使用を解除した。

 

「グッオ、ラァぁぁあ‼︎」

 

ガキンとシアはその狂刃を咄嗟に防ぐ。が、僅かに防げず、髪の毛が数本落ちる。

 

「流石ですわ!」

 

トレイシーは更にエグゼスを振る。元来、エグゼスは見た目通り、重量があり、槍や大剣とは違い、刃が曲がっている為、使いづらい。だが、彼女はそれを安安と振り回し、バトンのように回転させて殺傷力と攻撃力を上げる。更にその際に魔力によってできた斬撃を飛ばす(・・・・・・)。それらは光輝が使う〝操光〟のように、方向を変え、四方からシアに迫る。

 

「っ!」

 

未来視の使用ができない今、シアは魔力感知〔視認(上)〕によって、繰り出される魔力の動きから、予測して攻撃を回避するしかないと考え、目を皿のようにしてその動きの1つ1つを追い、的確な動きをする。

 

「シャオラァですぅ‼︎」

 

斬撃を回避しながら、シアは駆け、攻撃を仕掛けた。

 

「甘い、です、わぁぁぁ!」

 

今度は片腕でエグゼスの斬撃を、もう片腕からは高出力の呪力を弾丸のように放出する。

 

それを、ハジメが作ったアーティファクトで空中を蹴りながら回避する。

 

(武器が解禁されているならもしやと思いましたが)

 

使えなければ直撃だったろうが、シアは自分の直感で実行した。

 

「そのようなアーティファクトもありましたか!」

 

トレイシーは胸の谷間から宝石のような物を2つとりだし、それを握り潰した。途端、全身から禍々しい魔力が溢れてくる。それは彼女の増大した呪力出力にも釣り合い、双方の同時身体強化は、更にトレイシーの肉体の強度を上げる。その結果なのか、増大したエネルギーに耐えられず、彼女の衣服の一部が剥がれ出す。

 

「ふん!」

 

トレイシーは足に身体強化を集中させ、大ジャンプをし、そのままシアに突撃する。シアはそのまま更に上昇すれば、回避はできるだろうが、

 

(んなザコみたいなこと、できるかってやつです!)

 

引いてしまえば、己の弱さを見せるようなものというのもあるが、高揚感もあって、あえて迎え撃つ。アーティファクトによって加速をつける。

 

 

『なぁ、七海先生』

 

それは、メルジーネ大迷宮からエリセンに戻って間もない時。ハジメは唐突に七海に声をかけた。

 

『どうしましたか?』

 

『前にさ、黒閃について色々と話してくれたじゃんか?打撃との誤差、0.000001秒以内に呪力がぶつかった時に起きる空間の歪み…だったよな?』

 

七海は『ええ』と肯定した。だが同時に、その次の言葉が、何故か理解できた。

 

『多分だけど』

『それだけではない…ですか?』

 

ハジメは言う前に言われことに疑問と一瞬苛立ちが出る。

 

『わかってたのかって…違うな。先生が黒閃発生の方法をわかってて教えない事はないだろう。つまり、最近気付いたって感じだな。俺と同じく』

 

コクリと七海は頷く。

 

『私は今まで、五条さんであれば、黒閃をだせると思っていましたが、今はそれも違うなと思ってます』

 

『まぁ、六眼なんてチートを持ってりゃ、そう思うのは無理ねーけどな。……違うって考え出した理由は、やっぱり』

 

『十中八九、空間魔法の習得が原因でしょうね』

 

魔力のない七海にとって、神代魔法を習得しても一切使えないのでは、文字通り宝の持ち腐れである。だが、その知識は、習得時に頭の中に自動的にインプットされている。空間への干渉方法から逆算する形で導き出した、黒閃という現象の1つの考え。

 

例として、正拳に呪力を籠めた場合、

 

1、拳を強化する呪力

2、相手にぶつける呪力

3、その両方を担う呪力

 

これらに分けられる。接触タイミングだけでなく、これらのブレンドも黒閃の発生に影響する。そしてこのブレンド加減も、相手の呪力、自分の肉体のコンディション等によって変化する。特に3を自在に且つ正確に調整するのが難しいのだが、それなら六眼持ちの五条であれば難なくクリアできる。だが、問題はこれらとは更に別にある

 

『黒閃は空間に影響が出る現象。つまり、その時の気温や湿度、天候も左右される』

 

『少し前の私なら、笑い飛ばしてたかもしれませんね』

 

七海は知らないことだが、実際これを五条悟は他人に言った時、笑われたそうだ。そして要するに

 

『黒閃発生は、コレという正解はない。しかし……』

 

『そうなると、先生が発生しやすかったり、シアが自在に出してるのが、あまり納得がいかない。…だろ?』

 

事実、七海はその術式によって黒閃が発動しやすいのが自分でわかる。シアも同じ感覚があるだろう。いや、

 

『彼女の場合、私よりもその感覚が強い筈だと思いますが…』

 

実際の所はシアにしか分からないし、わかっていたとしても、先程の発生の原理を考えると、正解とは言い切れないと、七海は思うが、言葉はなくとも考えがわかったハジメはさらに続ける。

 

『それこそ正解なしってやつだ。術式が絡むと特にな。ただ、そうだな……シアの場合、術式もあるだろうが、本人の技能と、俺らと同じく空間魔法を習得した結果、無意識のうちにそれを応用してんのかも』

 

『そうなると、これから先、我々の黒閃発生率も、多少は上がるでしょうね』

 

『ああ。……ところで、この事実、シアに言うかどうかなんだが』

 

おそらくこちらが本題なのだろう。ハジメは困ったような表情で聞く。とはいえ、七海もハジメも、同じ答えであるが。

 

『黙っておきましょう。彼女の場合、下手に戦闘中に考えをさせるのは悪手だと思います』

 

考えるのが悪いわけではないが、無意識的に応用したり使っているなら、このままの方がいいだろうと判断した。

 

『だな』

 

 

黒閃は常に、微笑む相手を選ばない。もし、選ぶのだとすれば、それは才能のある存在のみ。

 

「「黒閃!」」

 

シアとトレイシー、2人の放った打撃が、同じ地点でぶつかり合い、両者から黒い火花が上がる。

 

「確か、黒閃でしたか?すさまじいですわね。……ふふ、ふふふ」

 

両者同時の黒閃であったが、トレイシーの拳は潰れていた。威力はシアの方が上だった。ドリュッケンを使ったことによるものだろう。だが、これで、両者とも

 

「あぁぁあ!昂りますわぁぁぁぁ‼︎」

 

120%のポテンシャルを引き出すことができる。そして黒閃を初めて決めた高揚感は、トレイシーを更に進化させる。

 

「いっきに決めに行きますわ!〝限界突破〟ぁ‼︎ですわ‼︎」

 

「なっ!」

 

ありえない言葉は、実際に今、発動した。

 

〝限界突破〟。勇者の光輝、例外中の例外のハジメを除いた、習得者を選ぶ技能。それを、トレイシーは掴み取る。ドス黒い魔力は更に跳ね上がり、それに合わせて呪力出力をあげる。ここに来てトレイシーは更に縛りを入れた。限界突破時間を半分に短縮する縛りを入れたことで、呪力の出力を上げた。彼女の周囲は、跳ね上がった2つのエネルギーによって、うねりだす。

 

(領域にも影響を与えている)

 

加えてトレイシーは、限界突破終了後に領域を強制解除する縛りを入れた。これにより、更に呪力出力をあげた。その結果、

 

「おーーほっほっほっほっほっ!更に、昂ってきますわぁぁ!」

 

(腕が回復していく。反転術式ですね)

 

領域展開時にしたフルオートのものではなく、自身でする反転術式。前日に七海戦でした時とは違い、安定した呪力運用ができていた。

 

「さぁ、行きますわよ、シア・ハウリア‼︎楽しい楽しい戦の、終局の!はじまりですわ‼︎」

 

トレイシーはニマリと、口は三日月のように、美しくも鋭い狂暴性を醸し出した笑みを見せる。大鎌エグゼスとその禍々しい魔力も相まって、見る者が見れば、まるで悪魔を連想するだろう。そして、

 

「楽しむとか、そんな暇、ないですよぉぉ!」

 

シアも魔力と呪力の出力を上げる。その青い瞳に煌々と光る炎が見える。瞳の中で燃える蒼炎は、見る者を惹きつけ、その者を焼き尽くすがごとく、シアは叩き潰すだろう。

 

「正直、気持ち悪い人でしたが、その才と研鑽に敬意を表し。今だけは、武人として真っ向から叩き伏せてやるですぅ‼︎」

 

「望むところですわぁ!」

 

ダっ‼︎と2人同時に駆ける。それと同時に、

 

「いざ!斬首の時間ですわぁっ‼︎エグゼスゥウウウウッ‼︎」

 

またしても、バトンのようにエグゼスを回転させ、威力の上昇した漆黒の斬撃。だがそれらはシアに向かわず、トレイシーに向かう。より正確に言うなら、エグゼスに吸収されていく。放たれた斬撃全てを取り込み、〝限界突破〟によって更に魔力は膨張し、巨大な魔力の刃となる。更にそこに呪力を流しエネルギーは暴走1歩手前というべきうねりを見せる

 

「「でぇぇぇぇぁぁぁぁぁぁ!」」

 

寸分違わぬ動きで、シアの首を、文字通り斬首する為の狂刃が迫り来る。その刃は

 

(届いた!)

 

首を

 

「⁉︎」

 

すり抜けた(・・・・・)。そして、再び、

 

「黒閃ぇぇん‼︎」

 

黒い閃光は、シアに微笑む。攻撃を空振りに終わらせてしまったトレイシーに、容赦ない一撃が入り、闘技場の観戦者がいるところにふっとび、

 

ドガァァァン

 

と大きな音を出して、土煙をあげる

 

「ま、まだぁ、ばだ、でず、わぁぁ!」

 

再び、反転術式で回復を始めたが、もう勝負は決していた。トレイシーの肉体限界でも、〝限界突破〟の終了でもない。シアは手を前に出した。黒閃による覚醒は、トレイシーにだけ恩恵があるわけでない。

 

 

 

 

 

話は変わるが、シアは勘違いしていた。闘志闘堂(とうしとうどう)の最初にあったルール、身体強化以外の行為禁止とは、術式を使えないというわけでない。例えば、御三家の相伝の術式、赤血操術であれば、百斂や穿血というような、身体強化とは関係ない行為は封じるが、赤鱗躍動や、体内血液の凝固による肉体硬度変化は、身体強化の1つと認められる。つまり、術式自体は常に起動しているが制限をつけられた状態になっている。仮にこれが伏黒恵等の式神使いや、術式に身体強化の能力がないものには、大きな制限がかかるが、そうでない術式や、そもそも肉体本来の強さや呪力出力の強い者に対しては、効果が低い。

 

加えて、闘志闘堂(とうしとうどう)のルール設定は、あまりにも片方が有利なルールは作れない。例えば、一方が武器が使えないのに、もう片方、つまりトレイシーのみ武器使用許可というような条件は作れない。当然だが、斬撃を飛ばすなど、どう考えても身体強化に値しない攻撃ができるということは、シアは今、術式の制限は解除されていた。

 

シアはこれらのことに気付いていたわけではない。先程首への攻撃を術式で回避した時も、今しようとしてる行為も、考えたわけではない。ただ、流れるように、肉体に刻まれた術式が、黒閃によって上がっているポテンシャルアップによる、己の戦闘本能が、そうするべきだと感じた。

 

「術式反転、回帰」

 

それを口にした瞬間、トレイシーが再び後ろへふっとび、闘技場に激突した。

 

「がぁ!?」

 

月兎跳躍(ラピットラビット)、術式反転・回帰:これはユエが王国でフリードに使用した、〝壊刻〟と少し似ている。術式解放中に1人、マーキングした対象の時間を戻すのだが、反転術式のように回復されるだけでなく、ダメージを受けた瞬間に戻すことで、事実上、大業、2撃分のダメージと衝撃を与える。弱点として、消費呪力が多いのと、対価の使用時間が多いこと。今回で言うなら、2分半の対価を支払って発動した。

 

(まだまだ、修練が必要ですね)

 

衝撃は先程黒閃を受けた場所から。威力も先程とまったく同じ威力。トレイシーは衝撃で壁を破壊し、同時にバリン!と領域が崩壊し、元のエントランス戻るがそれでも衝撃は殺しきれず、トレイシーは長い廊下を飛んでいき、やがて先にある壁にぶつかり衝撃音を出した。

 

「ま、だ」

 

それでも尚、トレイシーは立つ。ズルリズルリと身体を無理矢理動かして、シアの元に到着する。だが、そこまで。トレイシーはもう戦うだけの余力はない。

 

「よく考えたら、あなたは最初から私を差別してませんよね?」

 

シアの言う通り、トレイシーはシアを、兎人族を見たというのに、それ自体にはなんの感情も抱いていなかった。

 

「……弱い者なら、いざ知らず、あの状況で、そんなことをする意味が、あり、まして?」

 

トレイシーは最後の気力を出し、消えそうな意識の中、それでも、シアの前に立ちたかった。プルプルと手を振るわせ、前にだし、

 

「か、感謝、感激の、きわみです、わぁ」

 

グッとサムズアップをし、心底満足そうな顔で、お礼を言う

 

「ないすぅ、ふぁいとぉ~です、わ…………」

 

そして、前のめりに倒れ

ズドン

 

倒れない。本当に最後の力を無意識でだし、地団駄を踏み、そのまま、立ったまま意識を消失させた。

 

「…………」

 

トレイシーのように、戦闘狂でもないシアは、戦いそのものに意味を見い出したことはない。目的の為に力をつけ、戦ってきたに過ぎない。そんな彼女は今、この戦いが楽しかったと、本気で思っていた。

 

「…見事です。ユエさん達以外で私に攻撃が、しかも今の私に当てられたのはあなたが初めてです」

 

そして、自分がまだまだ強くなれる事を、この戦いで確信させたトレイシーを、

 

「ありがとうございます、トレイシーさん」

 

心から感謝していた。

 

 

尚、これらはシアが黒閃による興奮状態にあったのもあり、しばらくして戻り、以降トレイシーから熱烈な再戦と好意を求められるようになるのだが、それは別の話

 




ちなみに
トレイシーは原作と違い、この戦いの最中で限界突破と反転術式を自力で習得しました。彼女が皇女として優秀で、戦闘が当たり前の世界で生まれたからこそのものであり、もし彼女が帝国以外で生まれていたらここまでの成長はありませんでした

ちなみに2
領域展開: 闘志闘堂(とうしとうどう)
事前に決めたルールに沿った戦いの強要をさせる領域。実は武器の制限と術式の説明だけで領域は成り立ちます。トレイシー本人はまだ気付いてませんが、領域以外で同時身体強化をしない縛りにより、裏ルールが出現しました。そう、本編でもいずれ書きますが、この領域は展開前の縛りや決めていたルールによって、結界構成や術式に変化が自動的に出ます。ただし、裏ルール適用のダメージ差ですが、最低9:1。しかもかすり傷とかあまりダメージがない状態での10:0でも発動せず、死にかけレベルじゃないと発動せず、しかもその場合自分の呪力で相手の傷や毒なども治してしまいます。
術式の制限を簡単にいうならテレビのチャンネルになぞると
ニュース以外禁止(身体強化以外禁止)だとバラエティ番組やアニメをやってる番組(式神など)が見れない(使えない)ですが、情報番組、バラエティ情報番組、例で言うならラビッ●、王●のブ●ンチなど、番組内でニュースをする場合見れる(身体強化に近い術式もしくは運用方)場合であれば使えるってな感じ

術師、呪霊で何人か言うなら、
・伏黒、式神まったく使えない。かなり影響大。呪力操作の影響もでかい

・脹相、加茂憲紀、穿血や苅祓などは使えないが、赤鱗躍動、血の鎧などは使える。呪力操作の影響は僅かにあるが、すぐに直るレベル

・五条悟、無下限呪術は使えないが、六眼は体質なので封じることはできないので、呪力操作への影響は皆無

・真人、無為転変で相手の改造は、それが相手の身体強化につながる場合できる。また、自身の腕を大きくしたり、遍殺即霊体などはできる。呪力操作への影響は、一瞬だけ「あれ?」と思う程度

・宿儺、術式は封じることができても、日車の術式のように没収されているわけでなく制限かけられているというのに気付かれたら、あっというまに呪力操作をとりもどす

また影響が大きい術師が戻る時間は差異があります。

そもそも、呪術廻戦の強者はみんなゴリラなところがあるので、一方的な戦いはかなり難しいし、裏ルールの方も、適用レベルのダメージを受けなきゃ発動しない。その前に死んだらアウトだし

これらの面で自分はそこまで強い術式じゃないと考えました。

追記(書き忘れ)

掌印のほうですが、ありますが、仏教…というか地球上にないものになってます。最初はあるものにしようと思いましたが、異世界だから違うか?と思い。ちなみに両手は使います


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