それからの事を、話そう。
ハウリアに敗北した皇帝ガハルドには〝誓約の首輪〟がつけられた。ネックレス型のアーティファクトのそれは、魂魄魔法が付与されたもので、口にした誓約を魂レベルで遵守させる効果を持つ。呪術的に言うなら、所謂縛りの効果がある。
発動状態で口にした誓約が直接魂に刻まれ、誓約を反故にしたりを外したりすれば魂魄自体が強制霧散することになる。要するに、死ぬ。また、縛りとの最大の違いは、つけている契約者本人だけでなく、《連なる魂を持つ者》…すなわち、ガハルドの一族も効果の対象になっている所だ。この者達も同じく〝誓約の首輪〟を着けなければ死ぬ事になる。
これにより、皇帝一族全員に、末代まで誓約を守らせることができる。ちなみに姻族は別に用意し契約する必要があるが、ガハルドとそれに連なる血胤者が屈服した時点で、拒否権などない。というか、拒否すれば首が文字通り飛ぶだろう。
そして、契約された内容は4つ。1:現奴隷の解放、2:樹海への不可侵・不干渉の確約、3:亜人族の奴隷化・迫害の禁止、4:その法定化と法の遵守。
ガハルドは最初は拒絶していたが、交渉の話をしようとしなかったり、交渉を承諾しないというたびに、自分の側近、息子であり、リリアーナの婚約者だったバイアスの首も次々と斬首した。それでも交渉を拒否した。むしろ自分が殺されたら、万の兵がフェアベルゲンを滅ぼすと告げ、契約しなかったのだが、城外で爆発を起こし、跳ね橋を破壊したのだが、ハウリアはこれを治療院や隊舎の一部を破壊したとハッタリをかまし、言うこと聞かないなら今度は帝都そのものを爆破し、市民を犠牲にすると言い放った。ハジメがバックにいるのと、この場で起こしたことが、ハウリアの言い分に説得力を持たせ、結果、契約を結ばせた。
「とはいえ、問題は山積みですがね」
「ま、そうだろうな」
何世紀にもかけて作り上げてきた亜人族に対する偏見、差別、宗教観による優越感、それらをすぐに解消することなど不可能だし、フューレンであったような裏組織による奴隷化とてあり得る。亜人族側も、帝国を含めた多くの人間族から迫害を受けてきた過去は消えない。その怒りはいつ、どんなところで爆発するかわからない。更に問題なのが今回解放された元奴隷の亜人族だ。解放されたからよかったねで済むならそれでいいが、そうもいかない。彼らの中には、既に奴隷としての生き方を植え付けられている。生き方を制限されてきた者、考えを植え付けられてきた者は、それ以外の生き方が分からない。彼ら、彼女らをまともな生活ができるように戻すにも時間と労力がいるだろう。最悪、奴隷に戻りたいなどという者すら現れてしまいかねない。
「ま、それは最初からわかってた事だ。ただ、他はともかく兎人族はまぁ、大丈夫だろ?」
「……別の意味で問題がありそうな気もしますがね」
ガハルドの契約によって、少なくとも当面の間はフェアベルゲンが襲われる心配はない。その間にハウリア族以外の兎人族にも、今回ハウリア族の活躍は伝わるだろうし、ハウリア族も兎人族のこれからを想うなら、自分達で鍛えて、変えていく必要性を考えるだろう。全ての兎人族が帝国と渡り合えるレベルになるように。
そうなった場合、もう兎人族の概念は完全に変わるだろう。主に恐怖の対象として。
そんなこれからの事を話しながら、こちらを睨みながら帝国民の前に向かうガハルドをスルーする。
ハウリアからの要請で、次の日にガハルドは帝国国民の前に姿をさらし、全亜人族の解放と、今後の奴隷化禁止の勅命を告げた。当然だが、市民からの反発は多かった。個人、奴隷商も関係なく禁止。個人はともかく、奴隷商人はそれを商いにしてるのだから、尚更だろう。だが、
「全ては、創世神エヒト様からの〝神託〟である。見よ、帝国の民よ!エヒト様は帝国に、使徒様を遣わされた!」
ちょっと引き攣った顔でガハルドは天を指す。すると暗雲(ユエが頑張って作りました)を裂いてそこから光が降りてくる。銀の翼と煌めく銀の髪をなびかせて、ふわりふわりと降りてくる。
「帝国に、神の光あれ」←感情込めて
香織だ。だがいつもより輝きを増し増しにしている。その光は魂魄魔法と再生魔法の複合であり、その光を受けた人々は、心地よさにうっとりと目を細める。後に七海はいう「悪質な宗教の洗脳よりもタチが悪い」と
「エヒト様はおっしゃった!亜人族の解放は、帝国が更に繁栄する為に必要な事だと!困惑もあるだろうが、案ずるな!奴隷を失った者は、帝国より保障がある!私は帝国の皇帝として、帝国民の愛国心と信仰心を信じる!」
舞い落ちる銀の羽。それを手にした帝都の民は、歓喜の声をあげる。
「にしても、天之河の奴、断るとはな」
亜人族の解放の演出として、ハジメは光輝達勇者パーティにも協力を仰いだ。雫と龍太郎、鈴も承諾したのだが、光輝は拒否した。正直それは全員が驚いた。ハジメは亜人族の為とはいえ、帝国兵を大勢殺した事に納得いかず、ゴネていると思っていたが
『これは、南雲、お前と、ハウリア族の人達によって成した事だ。俺は何もしてない。何もしてない事で、賞賛されるのは、もういい。それに、俺がいなくても、香織を、神の使徒の姿を見せて、神代魔法を使えば、どうとでもなるだろ?必要なのは神の言葉であって、俺じゃない。その代わり…』
尚も亜人族を奴隷として国外に売ろうと画策する奴を全員捕まえる。と言った。この状況下で出る者はほぼいないだろうが、可能性は0ではない。その者が首を切られるのを阻止する為だ。地味で、しかも出るかどうかもわからない相手だ。更に言うなら、そういう類の人間が出ないよう、ハジメはきちんと監視ドローンの鳥を、帝国中に放っている。正直言って無駄だ。それでも、
「救うべき人じゃない人でも、無駄死にはさせたくないですか…よく許可しましたね、南雲君」
「別に。お優しい勇者なら、殺さず止めれるだろうよ。俺ならつい殺っちまいそうだし」
光輝の言葉に、ハジメがどう思って許可したかは、七海も理解しきっているわけではない。だが、今言った言葉が全てでない事はわかる。
そして光輝は今回は名声を捨てた。当然だが、光輝は今回の件全てに納得がいってるわけでもない。気持ちを落ち着けたい考えというのもあるだろう。それでも、彼も彼なりになりに、変わろうとしている事は確かだ。
「…………」
「なんだよ?」
「いえ、天之河君にも言ったんですが、なんであなた方はそんなにお互いに張り合ってないフリをしてるんですか?」
その言葉に、ハジメは心底嫌そうな顔をして、「ハァぁ?」と言う
「何をどう見たら、そんな感想を出すんだよ?」
「…君が彼に関しては、あまり無視したりせず、苦言を言う所を見て、でしょうかね」
「単にムカつくからだ。それ以上でも以下でもない」
「……そうですか」
これ以上言ったところで肯定の言葉はでない。それに光輝と違い、ハジメは言われた事をある程度はすぐに理解して、自覚もできる。光輝を無理矢理にでもこの場に出すこともできたにも関わらず、無駄だと分かっている事に対して「勝手にしろ」とだけ言い、「余計な事はするな」とは言わなかった。その時のハジメは、どうでも良さそうではあったが、目は光輝の心の奥底を覗くようだった。多少ビビっていたが、それでも光輝は折れなかった。
そんなわけで、今光輝達は起こる可能性は低いが、もしもの時に動けるように待機だけしている状況である。
「ま、ひとまず今だけは、これにて一件落着ってとこか?」
「まだまだでしょう?ガハルドをフェベルゲンに連れていき、長老衆と話し合いをさせ、改めて亜人族の奴隷の解放と、フェベルゲンへ干渉不可などを伝えて」
「そっちじゃねーよ。いやまぁ、それもあるが」
「?」
「これで、とりあえずは皇女様との縁談も、断りやすくなっただろ?」
「………元々受けるつもりはないですよ。仮に受けたら、さっきからジッと見られているユエさんに、何を言われるかわかったもんじゃないので」
ユエは未だに皇女との婚姻について明確に拒否してなかったのもあり、「愛子フったのに皇帝の娘には手を出すのか?」とでも言わんばりに睨んでいた。
「どうだか」
「ユエさん、流石にもう短い付き合いじゃないんですから、私が受けないなどわかるでしょうに」
「でも、今後の事を考えた場合、皇帝が言ったことが正しい面があったのも確かで、ちょっとくらいはどうしようかって悩んでるようにも見えた」
「…………………」
否定しない。というかできない。実際ガハルドの提案は悪くもない。七海は王族に興味はないが、ガハルドの言う強い術師が多くなれば、いずれ来る呪霊のいる世界になった時の対処もしやすい。清水のように見えるだけの人であっても、高専の時と同じく【窓】として雇うこともできる。どれほどの猶予があるかわからない中で、その準備を整える手助けをしてくれるのだから、むしろありがたいことだ。
「そうですね。確かに、婚姻云々は別として、ガハルドの言う事には、色々と刺さる所もありました。特に、意図してなくとも、この世界の根本を変えるきっかけになったという所は特に」
「義務だ云々だとかの所もか?もうそこまでいくと、義務感だろ?」
「耳が痛いですね、そう言われると。まぁ、婚姻はせずとも、今回の件で強制的に協力関係をとって行こうかと思ってます。その為にもフェベルゲンの…とくにアルフレリックさんとは、その辺の話し合いをしておきたいものです」
「アルテナが呪力を視認できるから、か………結局の所、やっぱ亜人族は呪術師になりやすいのか?」
「それはおそらく違うかと。話を聞いたかぎり、トレイシーさんが覚醒したのは、才能の部類が大きいので、脳の作りと、呪力の視認し理解する事と、それとは別に、覚醒の為に何らかのアクションやショックが必要なんだと思います。彼女の場合で言うなら、死に近付いた事でしょう。これに関しては南雲君にも同じ事が当てはまるのだと私は考えてます」
奈落で魔物を食い、それによる脳含めた肉体変化と、何度も死に近付いたことが大きいと七海は判断した。
「ふむ…七海よ、少し質問をよいか?」
とここまで黙っていたティオが質問をしてきた。
「なぜ死に近付くと覚醒するのじゃ?」
「これも前に言ったと思いますが、脳と呪力の関係は、私がいた世界でもまだまだわかっていない所が多かったんですが、脳の変化で呪力が使えるという事例はありました。つまり、大きな変化…いや、変異と言いましょうか。それを最も促すのは、死です」
術師が死後呪いに転ずることも含め、死は大きな変異。非術師も息絶える瞬間は大きく呪力を放出する。そこに術師としての才が加わることでこの世界や南雲の世界の人々も、覚醒に近づけるのだろう。
「もちろんこれは事例の1つで、且つ私の考えにすぎません。それにどの程度のショックやアクションで目覚めるのかも、わかりません。もしかするとそれも千差万別で、正解はないのかもしれませんし」
強いショックで目覚める者もいれば、逆にちょっとしたアクションで目覚める者いるかもしれない。要はなにもわからないのだ。
「なんにせよ、そこら辺のことから、私は逃げてはいけない。偶然にしても、必然にしても、変わる世界に対して、何かしらのことはしないといけない。その立場になってしまった」
「俺等はぶっちゃけ、その事には口出しもしないが、協力もしない。それはわかってんだろ?」
「もちろん」
この件にハジメ達は巻き込みたくはないという、気持ちも大きいが、同じく変わりゆく世界に対して、呪術師としての責任を果たす為に。そういう考えをしていることがわかるのか、ハジメ達はやれやれという表情になる。
「………呪具くらいなら、譲ってもいいぜ。管理を七海先生がするって言うならな」
「…ありがとうございます。ただ、その時が来たら、お互いに考えるという所にして下さい」
互いに小さな笑みを見せていた所に、ガハルドが来てイラっとした顔で睨んでいたのは、言うまでもない。
*
時と場所は変わって、王都。
「使徒様、本当にありがとうね」
「いえ、別に、たいした事はしてませんよ」
優花含めて、何人かの生徒は治安維持の為、王都で巡回をしていた。拠り所である教会をなくし、不安になる者も少なからず存在していた。だが、揉め事は意外も少なく、リリアーナ達王族に向ける悪意は少なく、優花達使徒に関して言うなら、悪意どころか良い感情と、
「でも、やっぱり悲しいでしょ?同じ世界の使徒様も何人か死んで、しかも師事してた人が、あんな奴だったなんて」
「っ、………はい」
巡回しだしてすぐの頃、優花達は過剰なほどに優しくされた。そしてその理由もすぐにわかった。七海が使徒の1人を唆し、王都に魔人族を呼び込んだという、根も葉もない噂があると。そして、自分達はそれに巻き込まれ、殺されかけたものの、追い出す事に成功しただの、つい最近まで王都にいたのは、自分の正体がわかるまで、魔人族の使者として暗躍してたとか、実は魔人族のそのものだったとか、まぁ様々で、どれも的外れもいいとこ。
だが、優花達が許せないのは、その事で自分達が同情されているということだ。生徒を利用するだけ利用し、魔人族に魂を売った悪人。その魔の手から、自ら脱し、強く生きようとしている使徒様達。
(何で私達、こんな同情されているんだろう?)
当初は否定する者もいた。だがそう言うと、「そう言うように洗脳されたんだね、可哀想に」等と言われた。怒りでどうにかなりそうだった。というか、叫んで怒ろうとした者もいた。その場に止める者がいたおかげで、どうにかなった。以降、話し合いの末、これに関しては何も言わないと決めた。勿論反対意見が多かった。
「これ、多分だけど人の手が入ってる。リリィが関わっているのかはわかんないけど、王都の重役の人達が関わってるのは確かよ」
そもそも今流れている噂は、ちょっと考えればすぐに嘘だとわかる程に、千差万別。なのに悪意だけは共通している。つまり、この噂を利用して王都の安定を図ろうしている。そしてそれを七海が気付かないはずがない。
「多分、七海先生も関わってる。自分から協力したのか、言われたかわからないけど…あの人なら、受け入れそうな気がする。それにこれは、私達の為だと思う。噂は全部嘘じゃないし、もしかしたら、私達も批判を受けてたかもしれない」
それがないのは、王国の敵意が七海個人に向けられているからだ。だが、この状況で個人のみに向くのはあまりにも不自然だ。
「七海先生が、私達が王都で問題なく過ごせるようにしてくれたなら、無理に否定したりしたら、その気持ちを蔑ろにしちゃう」
当然だが、七海もいずれ生徒達がこの件の真相に辿り着くのはわかっていた。そして、彼らなら、こちらの考えを理解し、その通りに動いてくれると信頼していた。
「けど、なんだってこんな、根も葉もない噂を信じるんだよ…」
「嘘か本当かなんて、あまり意味ないんだよ」
生徒の言葉に反応して答えたのは、パーンズだった。
「パーンズさん!」
「すまないな。お前たちの会話に入るつもりも、聞き耳立てるつもりもなかったんだがな」
「そう言うってことは、知ってるんですね?この件について」
「知ったのはつい最近さ。噂してた奴を見つけて出して、ボコボコにしてたら、団長に捕まえられて、そこで聞いた」
パーンズという人物は彼らにとっては、よく七海と話している「テンション高っ!」と思うほうであった。それが、王都が襲撃されて…いや、相方が死んでからは、ずっと分厚い雲に隠れた太陽のように、暗い表情が目立つ。ただ、
「俺も、建人殿の気持ちを理解してるんだけどな」
よく無理して笑みを見せる。特に七海の事になると。
「で、話しの続きだが、たぶん国民の多くは、この噂がでっち上げだって気付きだしてる。その証拠に、徐々に王都内では、建人殿とはまったく関係のない事で不満を出す奴が出ている。どれもすぐに抑えられるレベルのな」
「なら!」
なぜいまだこんな噂が人々に根付いているのか。その質問にパーンズは答える
「決まってるだろ。誰も困らないから、そして都合がいいからだ」
「それ、つまり先生はストレス発散の為のサンドバッグにされてるってことですか?」
「そのおかげで、王都は今安定してる。ありとあらゆる不満、その根本的な原因があの人だ……そう思えるような雰囲気にしてるんだ。上の連中と取引でな」
「取引?」
「縛りっていう呪術師がする、契約らしい。詳しくは知らんが、あの人の事だ。お前達を守る為の契約をしてんだろうさ」
縛りについては彼らも聞いている。他者間で結んだ縛りは断れないことも。
「リリアーナ様を含めた王族がどういう反応したかは知らんが、メルド団長曰く、最初は断ったそうだ」
「…でしょうね。でも結局は」
「それ以上言うな。お前達も、わかってんだろ?そうすることが、国を治める人達のすべきことだってのは」
そう言いつつ、「まっ、団長に言われたことだけどな」と付け加えたのを聞く限り、納得はしてないようである。
「その、愛ちゃん先生は……」
「当然、もう知ってる。ちなみに、つい最近な」
七海の自分達を想っての考え、愛子の悲しみと考えが、彼らの中で混ざり合い、どういう感情を出せばいいのわからないなか、
「心配いらないぞ」
「え?」
「むしろ、元気になってたぞ……空元気の可能性もあるが」
*
メルドに説明を受け、同僚を殴った事で城への登城を3日間禁止を受けて、スラムでしばらく過ごす。たったの3日で済んだのは、メルドのお陰だろう。
(俺みたいなスラム育ちが、信頼なんてされるはずもない。あるいは、スラム育ちで信用されないからこそ、かもな)
パーンズが暴力を振るったことも、城を出禁されたのも大体知られている。そんな男の言葉をだれが信じるのか。
そんな自棄をしつつ、何気なく散策し、崩れていない王国の外壁に登った時、愛子を見つけた。
「愛子殿」
物悲しげな愛子の横顔を見て、放っておくことができず、近付いて声を掛けていた。
「あ、パーンズさん」
「その、えと、なんつーか」
自分が七海に言ったことは当然知ってるし、たぶん愛子が自分が謹慎を受けたのも知られていると思い、声をかけたのはいいが、この先どう言うかを全然考えてなかったパーンズは、テンパっていた。
「(あぁっ!クソ!これだから俺は!マッドに言われたことが、何にも直らねぇ)」
「あの、心の中で思ったことだと思うんですけど、全部声に出てますよ」
「⁉︎」
しまったと思い手で口を噤むが、愛子はクスクスと笑っていた。それで少し落ち着いたのか、ゆっくりと話しだす。
「すんません。どう声をだせばいいか」
「かまいませんよ」
愛子はパーンズが七海に言った事を恨んでない。その優しさが、逆に辛かった。
「俺は責めないんですか?」
「………少し前の私なら、責めてたかもしれません。けど、あなたの気持ちもわかります。それに、私には責める権利はないです。それに」
「それに?」
「七海先生のことで怒って下さったんですよね」
なぜその事をと、思わず言いかけていた。だが、その時点で愛子は、この国で蔓延している七海の噂の真相に辿りついていた。そこから逆算する形で理解したのだろう
「あなたが、七海先生を心から嫌いになるはずがないですし、マッドさんのことも、ああする以外での救いがない事も、ちゃんと理解しているって事もわかってます」
「……愛子殿は、強いですね」
「弱いですよ。あ、心の方もですよ」
肉体面だけでない方の強さを言われる前に、愛子は答えた。
「弱いまんまで、あれやこれやと思って考えてるうちに、横からかっさらって背負っていく。正直、今ものすごく怒ってます。自分自身にも、七海先生にも。正直、私は、七海先生のようにはなれませんし、なるつもりもないです。でも、次会う時までに、私は答え出したい。この気持ちと、向き合って、それがどんな結果だとしても、あの人に背負う以外の選択肢を、あげたい。でも…」
「でも?」
「まだそれが見つからないんです。何も」
悔しくて、愛子は泣きそうになるが、その気持ちを自分自身で跳ね飛ばす。
「けど、見つからないからこそ、探し甲斐もある。そう思えるんです」
その瞳は、パーンズは眩しいと思った。
(建人殿が、守ろうとしている気持ちが、少しだけわかる気がする)
輝きを失わないその瞳は、大地の先を見据える。帝国と樹海がある方向に、そこにいるであろう、想い人に
ちなみに
光輝は根本が変わってるわけではないです。南雲のしたこと(今回は協力だけだが)で自分が賞賛されるのが気に食わなという感情が圧倒的に多い。
そして次の樹海編はこの小説書き出した時からずっとこうしたいというの詰めたものになります。そこで光輝は本当の意味で試練が始まる。
ちなみに2
今回トレイシーは出しませんでしたが、感想にもあるように彼女には色々とやってもらうことがありますので、後に一度別れる予定です。