ありふれたやり甲斐と生き甲斐を探して   作:戦鬼

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今までのさんぱシリーズは本編でもそれらしい描写を何度かしましたが、今回はそういうのはありません。

彼が見た、彼の話しです


どっちかっていうとじゅじゅさんぽよりも、ドラマCDか短編小説風ですね


ありふれさんぽ:「いつかのだれか」の夢

ゆらりゆらりと歩む姿を見る。全身の半分以上が焼けて爛れており、特に頭部は片目が潰れ、骨格の一部まで見えている。

 

周囲の光景はどこか見覚えがあるような景色で、ここは日本だと確信したが、それにしては人通りがない。彼以外の人間がいない。

 

【いくな】

 

それ以上進むな。というか、そんな身体でなぜ動くのか。なぜ進めるのか、なぜ行動するのか、理解ができない…いや、理解しているがしたくないのかもしれない。

 

そうして地下続く階段を一歩、また一歩と、歩いていく。恐ろしいくらいに静かで、彼自身も、恐ろしいくらい静かで、呆然としたような表情なのに、どこか、なにか、ここではない別の何処かを見ているような……そうして、階段を下りた先にいる、怪物の集団。

 

『マレーシア…そうだな…マレーシア……クアンタンがいい』

 

場違いすぎることを呟く。朦朧としているのか、それとも、もうどうでもよくなっているのか…

 

【逃げろ】

 

逃げることは恥ではない。少なくとも、その身体で逃げても、誰も文句は言うことはない。文句を言う奴がいるなら、そいつはクズだ。死んでもなんの問題のない奴だ。だから

 

【戦わなくていい】

 

そう思うのに、

 

【責務なんて、使命感なんて、捨てろよ】

 

願うのに、

 

『んっ!ぬぐああ!』

 

怪物達に立ち向かう。切り裂き、殴打で仕留め、片目が見えぬなかで、もがくように

 

『ふっ!あぁぁ!あぁあぁ!』

 

【もういい】

 

届かないことはわかっている。それでも、言わずには、願わずにはいられない。自身にとって、大事な人が、文字通り傷付きながら、それでも戦う姿を見て、どうしてそう思わないでいられるか。

 

『えぁぁ!ハァぁ!…はぁ、はぁ、ぐぉ!』

 

限界なんてとうに超えているそれでも、

 

『あぁぁぁぁぁぁ‼︎』

 

地面を怪物達の血の池にし、彼自身でもわからないタイミングで、一掃した。

 

その瞬間だった。立ち止まって、何かを確信するように、小さく呟く

 

『……いたんですか?』

 

『いたよ、ずっとね』

 

今、彼に触れているツギハギの存在が、人の形をしているのに、それが人ではない存在だと、理解できた。そして、けして善意のある存在ではないことも、はっきりとわかる。

 

『ちょっとお話しするかい?君には何度か付き合ってもらったし』

 

【触れるな】

 

おまえのような奴が、その人に触れるな。その人を汚すな。

 

『…………』

 

そんな最中、彼はまた、何処か別の…いや、ここにはいない…誰かを見ているような気がした。その誰に気付いた彼は

 

『ナナミン‼︎』

 

叫んだ少年の声に反応するように、指をさした方向を見るように、導かれるように、あらわれた少年を見た。

 

【頼む】

 

助けてくれ。自分は助けられない。無駄な祈りだと、わかっているのに、自分らしくないお願い…いや、ある意味自分らしい懇願をしてしまう。

 

彼は、一瞬だけ困ったような、何かを拒絶するような感情を見せたが、本当に一瞬で、その先の未来がわかるのに、いっそ清々しいまでに、笑みを少年に向け、最後になるだろう言葉を告げる。

 

【ダメだ】

 

『虎杖君』

 

そんな顔をするな。【ダメだ】なんで穏やかに【ダメだ】受け入れられるんだ【ダメだ】

 

やめろ

 

叶うことない願いを、斃るように

 

『後は頼みます』

 

呪いになる言葉を告げて、彼の肉体は、目の前で爆ぜた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…め、ハ…メ?」

 

「んあ?」

 

パチリと、眠そうにハジメは目を覚ます。旅の途中で立ち寄った街で寝泊りをし、ひと風呂入ったあとで椅子に座った後、寝てしまったのだと気付いた。

 

「ユエ?」

 

最愛の人と、大切な人達が心配そうに見ていた。

 

「ん。ハジメ、ちょっと魘されてた。昔の事、夢見てた?」

 

「………なんだっけな?」

 

思い出そうとしても思い出せない。もどかしいような、歯痒いような、そんな気持ちになる。

 

「そのままだったら、もっと優しく、激しくおこしてた」

 

「ユエぇぇぇ〜それどぉぉんなことかなぁ?かなぁ?」

 

「というか、こんな場所で何をしようとしてるんですかぁ?」

 

圧をかけるように香織とシアが言うが、ユエは知ったことかと、余裕そうにしている。

 

「おおぅ!このような場所で、人目も気にせんとは…はぁ、はぁ、はぁ、ぬ、濡れてしまいそうじゃ!」

 

「そのまま風呂に戻れ。そして沈んで戻ってくんな駄竜」

 

罵倒を受けても、むしろ喜んでいる変態のティオを睨んでいると

 

「こんなところで寝たら、風邪をひきますよ。…いや、その身体が風邪をひけるかわかりませんが」

 

浴衣っぽい服装で、コーヒー牛乳みたいな飲み物を飲みつつ、七海が歩みよる。

 

「七海、先生」

 

「なんですか?唐突に…まるで会えるのが驚きのような」

 

「いやそんな顔してるかぁ?というか、どこ行ってたんだよ」

 

「本格的に寝ぼけてるんですか?買い出しをすると言って離れたじゃないですか」

 

「……そうだっけ?」

 

七海は小さくため息をして、呆れていた。

 

「ほんと寝ぼけているなら、今日は早いとこ寝なさい。ミュウさん、南雲君がちゃんと寝るように、しっかり見守ってください」

 

「ハイなの!」

 

「おいコラ待てや」

 

ミュウより下の子みたいに扱われるのが腹が立ち、怒りを向けようとしたが

 

「パパ、どうしたの?悲しいの?どこか痛いの?」

 

「?」

 

近寄ってきたミュウに言われて目元に触れる。目から溢れた小さな水滴があった。

 

「あくびをすると、涙がでるんですよ。ほら、さっさと寝て下さい」

 

「オカンかあんたは!そういうのは八重樫だけでいいって!」

 

「えと、雫ちゃんもやりたくてやってるわけではないと思うけど」

 

「そう思うなら、白崎さんも自重してください」

 

「ハジメ、行こう。今日は寝かさない」

 

「って、コラァ!」

 

「何ナチュラルに一夜を共にしようとしてんですかぁ!」

 

「ユエさん、今日くらいはしっかりと寝かせてあげてください」

 

騒がしい中に、1人の大人のツッコミ。それが

 

「ふはっ」

 

なぜか今は、とても嬉しいと思う、ハジメだった

 




ちなみに
今のハジメはユエやシア達とはまた違う大切な想いを七海に抱いてます。あの時の瞬間をもし間近で見ていたら、真人を存在した場所ごと消滅させるくらいにはキレます。

次回はいつも通り、3月7日に出しますが、そっちは過去回想です。今回は『百鬼夜行』です
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