前回言ったように、自分なりの考えを入れてます。
視線の先、目の前に小さなカケラがヒラリヒラリと落ちてくる。淡い桃色の花弁は、多くの人々が儚さと、そこにある美しさと、春という季節を存分に感じ取る事ができる。
「いやーよかったよ!当日雨だって言ってたけど、こんなに晴れて!」
長めの坂道を歩きつつ、買い物袋を大量に持っているスーツ姿の男性と、その前にはラフな服装だが、大人の雰囲気をだす男性がいた。
「…そうですね」
花弁よりも、正面の人物を見つつ、気怠そうにスーツの男性は応答する。
「けど、こんな日に限って五条さん急な任務で出張なんて…ハッ!もしかして、五条さんって雨男なんじゃ⁉︎だとしたら居なくてよかったかも!」
「…そうですね」
かなり失礼な事をナチュラルに、且つハキハキと陽気に喋る男性とは対照的に、スーツの男性はつまらなさそうに言う。
「あ、あと虎杖君含めた1年ズと…あ、南雲君達も来るみたい!七海嬉しいでしょ!一時的とはいえ、自分の教え子達だし!」
「…そうですね」
同じようにスーツの男性、七海が呟くと同時に、正面の男性の方からコミカルな音楽が流れてくる。持っているビニール袋を全て片手に持ち、器用に空いた手でポケットを探ってスマホを取り出し、耳にあてる。
「あ、夏油さん!ハイ!今向かってます!え?場所取りですか?わっかりました!え?いいですよ奢りなんて…コーラ酎ハイで!ハイ!あ、ハイ!それで!…七海!夏油さん遅れるから、先に場所取りしてだってさ!」
「…そうですね」
「……七海?聞いてるぅー!さっきから随分不機嫌そうだけどー!せっかくの休日で、みんなでお花見なんだしさ!あと、七海の分のコーラ酎ハイも頼んだよ!」
気怠そうな七海に、目の前の男はテンション高めでキラッキラッな目で告げる。あと、『勝手に同じお酒にするのはどういう事ですか』と、普段なら七海は言うだろう。
「………あの、聞いていいですか?」
だがそんな事よりも言いたい事が七海にあった。
「お!ようやく違う言葉!なになに?なになに?」
「いえ、そこまで楽しそうにする事でもないんですが」
こういう部分は
「この茶番は、いつまで続ければいいんですか?」
「……?なんのこと」
「正直、私の記憶を基準にして、灰原の成長した姿を見せるのは、まぁ見事としか言えませんが……それでも、偽物とはいえ……いや、偽物だからこそ灰原を出されるのは、正直キツい所があるので。ああ、あの時の南雲君もこういう気持ちだったんでしょうかね?」
「………」
目の前の男性、灰原の姿をしている存在は、それまで見せてなかった驚愕の表情をする。
「な、なに、言って」
「もしかしたら、この幻覚…いえ、夢でしょうか?これをある程度見ないと先へ進めないのかと思って、それなりにスルーしてきましたが、そろそろ疲れましたし、どうも、気付いてそれを告げない限りは終わらなさそうなので、もう告げる事にしたんですが」
「あ、いや、そうではなく、いつから?」
灰原の姿をした者の口調が変わる。もう必要ないからか、それとも本当に驚いて素になっているのか、あるいは両方か。
「いつから?」
くだらない事を聞くなとでも言うように、七海は告げる
「最初からです。灰原を出した時点で、もうだいたい気付きましたよ」
*
「っっ!ここは」
あまり良い目覚めではなかったのか、ハジメは頭を数回振り、身体をサッと起こす。
周囲をキョロキョロと見る。光源はないが、〝夜目〟があるハジメには関係ない。そうしつつ、眠っていた事で曖昧になってる記憶を辿る。
(確か…そうだ。改造人間もどきと戦ったあと、でっかい木の魔物、トレントもどきに、七海先生が時間を使わせた謝罪を込めてって事で、あっという間に倒した)
トレントもどきの固有魔法は大量の木々を生み出し、自由に操るものだったのだが、あまりにも、七海の術式と相性が悪かった。術式で弱点を作り、作れない場合には
その時の戦い方を見て、ハジメは思った。
(やっぱ俺の知ってる呪術師の戦い方じゃない)
と
その後一応ダメ押しでトレントもどきのいた場所と、バラバラになったトレントもどきの本体を焼き払ったとほぼ同時に新たな道ができ、そこへ足を踏み入れたと同時に、また転移陣が発動して、光に包まれた。そして、
(あの甘く優しい夢を見せられたっと)
そうしてようやく、ハジメはお目当ての人物を見つけた。ドーム状の部屋に規則正しく円状に置かれているものがある。その場所の1つに、白雪姫に出てくるようなガラスの柩のようにな長方型の透明な中に、愛する人がいた。ユエが、そこにいた。
「まるで、琥珀だな」
「なんですかその例えは」
「どぅわあああ⁉︎」
ハジメの心から言葉だったが、それはユエに対してではなく柩の見た目のこと言ったのだが、見ればユエ本人に言っているように見え、本人が聞いてない中でしかも他人にきかせるようなものでないちょっと厨二チックな表現をしていたのもあり、まさかそこで声をかけてくる人がいるとは思わず、ハジメは本気で驚いて、
「ちぇええええええい‼︎」
相手の頭上目掛けてチョップをするが、洗練された動きでないのでガシッと手首を掴まれる。
「いきなり攻撃してくるなんて、いったいどうしました?まだ夢の中なんですか?」
「っ⁉︎な、七海先生か」
「……まぁ、君にとって最優先がユエさんのことなんだとしても、一応、私の方が先に起きてたんですがね」
〝気配感知〟で真っ先にユエを探していたのと、七海がユエと逆方向で眠りにつく人物を見ていたのもあるが、後ろを取られるのはいただけないと思い、ハジメを注意しようかと七海は思うが、そこに眠るユエを見て、七海は注意よりも先に安堵の表情を見せる。
「ユエさん、身体が戻ってますね」
「ああ。多分あのトレントもどきがいた階層をクリアしたことによるもんだろ」
ハジメは眠っているユエの傍らに腰を下ろし、愛しい恋人にそっと手を伸ばす。
「早く戻って来い、ユエ。今、無性にお前の声が聞きたいんだ」
(私が近くにいてもいなくても、目覚めていてもいなくてもこれですか)
すでに感じる甘い空気が広がるのを、七海は呆れつつ、ユエと、周囲の琥珀の柩に入る者達を見つつ、一瞬この柩の破壊を考えるが、今はすべきでないと決めた。
「これ、破壊すれば…」
「おそらく試練は失敗扱いだろうな。正直今めちゃくちゃ破壊したいんだがな」
ハジメも同じ考えなのか「流石にそれはできないな」と言い、破壊するのをハジメが必死で我慢していると、ユエの眠っている柩が、淡く、琥珀色の光を放つ。
「お、あちらもですかね」
もう1ヶ所でも光を発しており、七海は聞いてるかわからないが一応ハジメにそちらに向かう事を言い、眠っていた人物が起き上がるのを確認した。
「ん〜ここは」
「お目覚めですね」
七海が声をかけると、シアは特徴的なウサミミをピンっと立てて、薄目を開く。
「七海、さん?」
「ええ。南雲君のグループは恐らく全員目覚めると思ってますが、とりあえずこれで私を除いて3人目ですね」
「……っ!て事はハジメさんも!」
「ええ。あそこで今ユエさんと………」
暗闇の中だが、ある程度は見える。しかもすぐ近くなのだから尚更だ。
「イチャついてますね」
「ンン!ゴホンっ!」
2人で夢の内容を話し合っているのだが、首筋に触れるほどのキスを繰り返している。夢の内容はそれぞれ違うが、どうもそちらも相思相愛の仲で、それらの幾つか、例えばユエの制服姿や子供を作っている所は本当に叶えようと言ってる。その会話と共にスキンシップはどんどん進む。その度にシアが「ゴホン!」等と言っているが、やはり無視され、今度は耳元で大きく異音を口に出して、ようやく止まる。
「ぐすん。どうせ、どうせ私はいらない子なんですぅ…私だって頑張って現実に戻って来たのに、最初に見る顔はハジメさんじゃないですし、そのまま空気ですし」
「…なんとうか、申し訳ない」
「いえ、七海さんは悪くないです…グスグス、現実はいつだって非情なんですぅ~」
ウサミミが萎れ、体育座りでマジ泣きをしているシアに変わって、七海はハジメとユエの方に向いて、『相手してあげろ』と視線で告げる。流石に自分の力で現実世界に戻ってきたシアを放置して2人だけの世界に入ってたことを悪いと思ったのか、ハジメとユエは慰める……のだが、やたらハジメはシアの耳を触っている。
「やっぱりシアにはウサミミがないとな。ウサミミあってのシア。ウサミミなくしてシアにあらず。むしろウサミミがシアだな」
「あの、モフられる事は嬉しいんですが、ちょっと意味がわかんないですけど。あと、随分ウサミミを愛でてますけどハジメさん、夢の中で何かありましたか?」
「そうなんだよ。夢の中のシアはな、ウサミミがなかったんだよ。ただのシアだったんだ」
「……ん?それはシア?」
「あのユエさん。確かにウサミミは私のアイデンティティーと言っても過言ではありませんけど」
「ほぼ別人じゃないですか」
「七海さんまで⁉︎なくても私は私!シアですからね!」
「なかった場合、兎人族じゃないのでは?」
「うっ!いやまぁそうですけど…あれ?」
冷静かつ的確な七海のツッコミにシアは「うーん」と頭を捻る。
そんな会話をしつつ、シアにも夢の内容を聞くと、帝国兵に追われて亡くなった家族と、幼少期に亡くなった母も存在し、ハジメとユエ達と幸せな世界で日常を送るというものだったそうだ。ユエの方も詳しく聞くと、かつて統治していた国が滅びず、裏切りもない世界で愛するハジメと結婚して子供を産み、ユエや香織、ティオといった友人に恵まれた世界で、暮らすというもの。ハジメはトータスに召喚されず、平和な日常でユエ達と過ごす夢だ。
「共通してるのは、過去に受けた苦痛や、辛い経験を丸無視した、都合のいい世界というところですね」
「それに今ある幸せを組み込んでいるってところだろうな。そういえば、七海先生は」
「ぬがぁー‼︎」
ハジメが七海に質問しようとした時、淡い琥珀色の光が輝くと同時に、やけに大きな声で叫ぶ存在…ティオの声がした。ユエが魔法で灯を作り、部屋全体を見えるようにすると、拳を宙に振り上げ、怒っているティオがハッキリと見えた……のだが
「ご主人様の折檻はそんなに生温くないわぁー‼︎1から出直して来るんじゃな!」
「「「「……」」」」
その発言から大体どんな夢を見ていたのか4人とも理解し、3人は蔑んだ眼差しをし、自分のことを言われているハジメに関して言うなら、ゴミというか、汚物を見るような目をしている。その視線に気付いたのか、ティオはぶるりっと震え、振り向く。
「ご主人様〜!」
歓喜し、うっとりとした表情と、涎を垂らす
「あふんっ⁉︎」
即座にドンナーを放つ。ゴム弾ではあるが、途轍もなく痛いはずなのに、嬉しそうである。
「いっそゴブリンのままの方がよかったかもしれませんね」
半分冗談、半分本気で言いつつ、七海は
ただ、色々やってるが、ハジメがティオにも優しい笑みで「おかえり」と言う所を見ると、なんだかんだ気にしてるのだろうと七海は感じた。そして続くように香織も目覚めたのだが、ズザザザとハジメと距離を取り、随分とヨソヨソしい。どういう夢と聞くと、顔を真っ赤にして、呻き声をあげてしゃがみ込む。よほど恥ずかしい事なのだろう
「まぁ、言いたくないならそれでいいですよ。なんにせよ、南雲君のグループは全員あの
「あんたも一応俺らのグループだろ…って」
「ん?」
「え?」
「ふむぅ?」
「はい?」
全員が七海の言う言葉に違和感を感じて、5人とも七海を見る。
「なんですか?」
「いや、そういえば七海先生は俺よりも早く目覚めてたよな?悪夢って言ってけど…どんな夢だったんだ」
そんなことかと、七海は自分の見た夢の内容を教える
「たいしたものではないですよ。学生時代の友人と、先輩、私が死ぬ前の高専の方々といった知人に、なぜか君達も含めて、お花見をしようとしていました」
「………そんだけ?」
「えと、別に悪夢じゃないような、平和でいい感じなのでは?」
ハジメと香織の疑問の声に、残りの3人もコクリと頷く。
「いや悪夢ですよ。都合のいい幻想という名の夢に縛り付けて、考えを放棄させようとし、永遠の眠りに誘い、徐々に衰弱させ、おそらく最終的にこの大迷宮の養分にする。これを悪夢と言わずして、なんと言うんですか」
「「「「「…………」」」」」
言ってる事は正しいのだが、ティオの時とは別の意味で沈黙してしまう。『考え方が多分呪術師としてのものなんだろうな』という感心が強い。
「そ、それで七海さんはどうやって?」
「あ、そうそう。気になってたんだ。先生はどこで気付いて抜け出したんだ」
話しを逸らすのと気になっていた事をシアとハジメはついでに聞く。
「これが夢か幻覚かもしれないと感じたのは、最初からです」
「「「「「え⁉︎」」」」」
流石に全員が驚く。ハジメですら、一時は夢に呑まれていたのに、目の前の人物は始まった瞬間に気付いたのだと言う。そして、七海の事を知る5人は、それが嘘ではないとわかる。
「完全に気付いたのはそのすぐで、しばらくは無視していたんですよ。もしかしたら、この夢を最後まで見ることに意味があると思ったので。ただ、まったく終わる気配がないので、もう自分からこれは夢なのだろうと告げたら、解放されました」
つまり、やろうと思えばもっと早くに目覚めることもできたということだ。
「なんで、1発で気付いたんだ?」
「1発と言うより、強い違和感をすぐに感じたというものですが」
当然の質問であるが、七海は軽くため息を吐いて言う。
「先程言った学生時代の友人は、灰原と言うのですが…私が元の世界で死ぬ前に、既に亡くなっていたんです。私の目の前で、呪霊にね」
「っ!すまねぇ」
「いえ、別に」
「けど、それならユエやシアだっておんなじだろ?死んだ奴を登場させてだろ?」
ハジメに言われた2人は頷く。香織とティオも含め、『それだけで気付くものなのか』と思うが、決定的な不自然がそこにあったのだ。
「問題なのが、その姿です。灰原が死んだのは、私がまだ高専生だった時です。その時の姿ではなく、記憶を頼りに成長した灰原だったんですよ」
確かに本来なら見る事ない姿を見せられたら、違和感が強くでるだろう。だが、その程度は大迷宮が修正を入れてきてもおかしくない。
「そしてそれ以上に、圧倒的な欠落がありました。おそらく私がその欠落に早めに気付いて、訪ねてなければ、夢に囚われていたかもしれません」
「なんだよ?それ?」
「五条さんが出て来なかったんです。姿どころか、声も、写真などによる映像媒体でもね」
またしても疑問が彼らの中で出る。五条悟についてはこの場にいる者達には話しているが、その人物が七海の人生に関わりがないとは思えない。それがまるで出てこない。というより情報そのものをシャットアウトしていることに。
「それに、私が五条さんについて聞こうとすると、ある程度の理由を告げて露骨に話を逸らす瞬間もありましたし、その理由もメチャクチャでした」
例としていうなら、灰原が花見に来れない理由が急な任務があるからとの所だが、現代最強の術師の五条悟が急に呼び出されるような任務だというのに、動ける七海にまったく連絡が来ない時点で話に筋が通らない。
「なんでそんな事になってんだ?」
「それこそ簡単ですよ」
理由など、1つしかない。
「五条悟だからです」
「…なんじゃ、その理由?」
「そのまんまです」
「いや理由になってませんからね⁉︎」
ティオとシアのツッコミに、しかたなさそうに七海は答える。
「私にある記憶程度の情報で、五条悟という存在を再現などできない。つまりはそういう事です」
「「「「「だからどういうこと[ですぅ][じゃ]⁉︎」」」」」
間違いなくそれなりに深い関わりのある七海の記憶情報からでも再現不可能な五条悟という規格外に、5人は戰慄していた。
「それより、どうしますか?残りの方々……天之河君達はまだ、目覚めていないようですが」
「っと、そうだな……」
七海が光輝達が眠る琥珀の柩を見つつ聞いて、ハジメもそちらを見て考える。
「助け出すなら、最終的には琥珀をぶっ壊すしかないだろうな。つっても、それじゃここに来た意味がないし」
「だとしても、いつまでも待つなんてできないでしょう?」
七海と相談しつつ、「うーん」とハジメはうなり時間を決める。
「飯食って一休みするくらいかな。ぶっちゃけ、俺はこの試練を普通にクリアできたんだが、ついカッとなって力付くであの世界をぶっ壊したから、魔力が少ししかないんだ」
「「何してんですか」」
七海とシアが同時に呆れたような声を出した。
「反省はしてるよ。この大迷宮に挑み始めてから、どうも短絡的な行動が多いんだよな」
「君の場合はユエさんをダシに使われてばかりというのもありますが、短絡的と言うなら私もですね。色々と余計なお世話が多くなっている」
ハジメの短絡的という言葉に、七海は同意と反省をする。
「まぁ、七海先生の場合は性格もあるだろう」
「そう言っていただけると助かります。ただ、そういうのも試練に入っているのでしょうか?だとしたら、減点対象になるのでしょうかね?」
「その可能性は低いじゃろ」
七海の疑問にティオが答えた。
「絆を試すのなら、そういった感情が生まれるのは必然じゃ。感情すらも採点されては、メルジーネの方でもそれなりの減点がされておるじゃろうし、仮に減点対象じゃったとしても、これまで試験を突破しておれば、総合点で合格の判断はでると思うぞ」
「「「「「……………」」」」」
「な、なんじゃ?そんな奇怪な者を見る目をして」
「いえ、別に」
こういう面だけならティオは普通以上に優秀なのだ。それはもうわかっているが、ハジメは代表して尋ねる。
「お前、実はまた偽物になってねぇか?」
「じゃからなんでじゃ⁉︎でもその瞳がいいのじゃ⁉︎」
「よし、本物だ」
本来なら怒っていい本人確認だが、「うへへえ」と笑っている。ティオにはご褒美であった。
*
「七海先生、休憩するなら座ってたらどうだ」
休憩をするハジメ達を他所に、七海はいまだ眠り続けている光輝達の表情を順番に見ている。ハジメの言う通り、しっかりと休息を取るなら、座って食事をとるのがいいだろう。
「かまいません。そちらはそちらで、ちゃんと休憩をしていて下さい」
七海は手にパンを持ち、行儀が悪いのを承知で立ったまま食べている。
「どんだけ見たところで、なんか解決するわけでもねーし、一応この状態でも周囲の警戒はしてんだ。休める時には休んでおくできだろ」
ハジメの言う事は正しいし、七海も本来ならそうすべきなのは理解している。ただ、
「おそらく、ここが分水嶺でしょうし、彼らを見てきた者として、ちゃんと見守りたいんですよ」
七海は眠る4人を交互に見つつそう言うと、ハジメは光輝達に興味はないが七海の言葉に何か自分の考えと違うものがあると感じて聞く。
「分水嶺って大迷宮の攻略の有無か?」
「それもありますが、もうひとつは…ん!」
琥珀の柩の1つが輝きだす。その人物は、
「雫ちゃんのだ!」
「本当ですか!」
食事を中断して香織とシアはそちらに向かい、七海と共に目覚めるのを待つ。
「やっぱり1番早かったのは八重樫か」
「ふむ、雫はしっかり者じゃからの。順当といえば順当じゃろうな。…それにしても、香織はともかく、シアも随分と雫に懐いておるようじゃが」
「王都を出る際も、さん付けしなくていいって言ってたし、修行の際に仲良くなったって所だろ」
「なるほどの。ユエ、良いのか?妹分が取られるぞ?」
「むむぅ」
ティオの煽りにユエは少し苦い顔をする。ハジメにとっての特別は自分だという絶対の自信はあるが、大切な妹分のシアに関しては、今のシアの感じと雫の人間性を考えると、『少しだけ危ないかも』と思っていた
そうこうしてる間に、琥珀の柩が消え、少し呻き声をだしつつ、雫の目がゆっくりと開いて、意識を取り戻した。
「ここは」
「「雫ちゃん[さん]!」」
目覚めた雫を両サイドから香織とシアが抱きしめる
「香織、シア……そっか、戻ってきたのね」
「そうだよ。おかえり、雫ちゃん」
「おかえりなさいですぅ、雫さん…って、なんで雫さんもウサミミをもふもふしてるんでしょうか?」
「あ⁉︎ご、ごめんなさいシア。嫌だった?」
「いえ、雫さんなら別にいいんですけど…もしかして、夢でウサミミのない私が出ましたか?」
「え、あ、そうじゃないんだけど」
気怠そうな顔で雫は曖昧な言葉を言う。それを見て、七海は話しかける。
「八重樫さん、戻られたようですね」
「あ、七海、先生……ですね?」
「なんですかそれは。夢の中の私はどんなふうになって…いえ、いいです言わなくて」
夢の中とはいえ、七海は自分がどんな風な扱いをされていたのかを考えると、やはり複雑であった。
「いえ!そんな悪い設定とかじゃないですよ!祝辞とかしてくれましたし!」
「だからいいですって」
と七海が言うと「ハッ!」と雫は口を押さえて噤む。
「随分な寝坊だな。ま、乗り切れたようでなによりだが」
「っ!あ、な、南雲君…そうね、うん。何よりね」
(この反応…まさか)
七海は雫のハジメを見た反応と、この大迷宮での最初の戦闘の時の様子を思い出し、ある可能性が頭にでていた。それはユエ達も同じなのか、訝しむように見ている。とはいえ、七海はだいぶ前からその片鱗を感じていた。そしてそれが
(
彼女の最大の危うさであると七海は理解した。
「七海先生?」
「いえ、なんでも。それより1人目覚めましたが、まだ待てますよね、南雲君」
その表情を見た雫が声をかけるが、毅然とした態度で七海は言う。
「まぁ、一休みし始めたばかりだしな。八重樫も今のうちに休んどけ」
「え、ええ!」
(やはり、そうなんですね)
顔を赤くして言う雫がその後ぶつぶつと呟くのも耳に聞き入れた七海は、
「南雲君」
「ん?なんだよ」
「……………」
「なんだよ!その呆れたような顔は⁉︎」
「いえ別に」
七海はキーキー言うハジメを無視して、雫に休息を促し、再び眠る生徒の見守りを続けた。
*
数時間後、雫の精神的な回復もし、休憩も充分に取れたが、残った眠る3人はまだ目覚めない。
「そろそろ、区切りだろうな」
「ん、確かに」
ハジメの決断にユエは肯定し、七海も何も言わないが、『仕方ないだろう』と判断していた。
「ですねぇ。このままずっと待ち続けてたら、キリがないですしって、七海さん?」
シアは眠るある人物を見ていた七海に声をかける
「……いえ、正直あと1人、目覚めるかと期待してたんですが」
「つっても、シアの言う通り、キリがねぇのも確かなんだ。そこはわかるだろう?…香織、頼んだ」
強制的に琥珀の柩を壊すという方法もあるが、最適なのは香織の分解で琥珀の柩を消す事としたハジメは、香織に指示をだした時
「!」
七海が見ていた人物、それともう1人が眠る柩が輝いた。
さぁて、誰が目覚めたかな?
ちなみに
七海がハジメよりも早く夢に気付いた理由
灰原1%五条99%くらい。書いてませんが、最初の違和感の後、夏油と会い、七海が五条の事を聞いたとき夢の中の夏油が
「悟は今ここにいないよ」
と言ったのを聞いた瞬間に夢だと確信しました。
ちなみに2
五条を再現できなかった理由
1、無下限呪術
2、六眼
3、性格
さぁ、どーれだ?ちなみに私は全部だとおもいますw