そして、死滅回游編が始まった!映画でも見たけど、やっぱすごい!
というより、今季は全部のアニメがやばいw特に初回1時間のは
『両面宿儺。それが、かつて神が自分でもたらしたとされる、災いの名です』
両面宿儺。まさかその名を、しかも本来の伝承もないこのトータスで聞くことになるとは、七海は思ってもいなかった。
「「「両面宿儺?」」」
ユエ含めたトータス出身者達では名前を聞いてもちんぷんかんだろう。日本人であってもその名を聞いて『何それ』と言う者がいるくらいだ。現に龍太郎と光輝、鈴は日本の言葉っぽいのはわかるが、それがなんなのかはあまり理解してない様子だ。
「確か、腕が4本で顔が2つある鬼神の名前だが…なんでそんな日本の伝承の存在の名が…」
「あ、それ私も聞いたことあるし、なんならゲームとかでも聞いたことあるよ」
「一応私も名前くらいなら知ってるけど…」
ハジメ、香織、雫の3人はそれなりに知っているようだが、所詮はそれなりだ、七海の知る《ソレ》とはまた違う。ハジメ達は何か知ってそうな七海に聞こうと思ったが、まだリューティリス・ハルツィナの話しが続きそうなので、後回しにすることとした。
『先に言っておきますが、わたくしもその者が何をどうしたのかは、そこまで分かりません。しかし、神が呼び出したとされるその存在が、世界をわずかとはいえ二分したと言われています。神エヒトはその者を打ち倒したと、当初は伝承があったにもかかわらず、それらの情報は時代を重ねる事に抹消されてきた』
都合悪い話しには蓋をする、存在させない。神エヒトこそが至上の存在だと、そういう理を世界規模で作り上げたのだとしたら、何故自分の武勇を消そうとしたのか、しかもあの両面宿儺を打ち倒したなら、それこそ、エヒトのような存在は自画自賛を描くことくらいする。それを、自ら消し去ったというのを聞き、七海はなんとなく察した。
(打ち倒せなかったんでしょうね、本当は)
七海はそう考えつつ、リューティリス・ハルツィナの言葉を聞く。
『これを聞いている害徒のあなたが、どういう方かは知りませんが、もしこの名を知るなら大体予想はできるでしょう。……わたくしが生きた時代、少数ながら、魔力とは違う力を持つ一族と、それを視認できる少数の人がいましたが、視認ができる者はその多くがいわれのない罪で殺され、力をもつ一族に関して言えば、その存在していた周囲すらも滅ぼされました。生き延びた見える者達と滅ぼされた者達は皆、当時害徒と呼ばれ、神が恐れていたと言う者もいましたわ』
神の使徒であるノイントは、七海と、呪力を見せたハジメのことを害徒と読んだ。それを考えるに、その滅ぼされた一族とやらも、呪術師として覚醒した者達だったのだろう
『しかし、害徒という言葉も、彼らの存在も、歴史の中に残る事もなかった。あまりにも、情報の消える速度が早すぎていた。ここからは、あくまでもわたくしの推測ですが、神は、彼らのような存在に怯えている。その力が、いつか自分達を滅ぼすのだと信じている』
だからその存在を滅ぼす。そうせざるを得ないほどに、恐れている原因が
『そこまで恐れる原因たる存在が、その両面宿儺と呼ばれる存在。この名をわたくしが知ったのは、偶然です。先程話した一族の者が、神が消しきれてなかった情報を、口伝として残していたものですわ。その時の時点で、もうほとんどの内容は消えていました。彼らの意思を継ぐ形で、わたくしも口伝を残すこととしました……神の目と耳から逃れる為、伝承を少しずつ減らすような工夫もしましたが』
リューティリス・ハルツィナは「そうでもしないと、滅ぼされる気がした」と、続けて言う。
『何よりその一族が滅んだのを最後に、わたくしはあの力を持つ者を見たことがありませんでした…ですが、もし、ここにその害徒が来た時の事を考え、神代魔法、それとわたくしの目を媒介にし、害徒の持つ力に反応するようにしておりました』
そこまでして、なぜわざわざこのような事を話すのかがわからない。ハジメ達も、七海もだ。
『自分達にない力を持つ者、且つ神ですら恐れる力。そして、あの一族の妄信的な考えは、当時のわたくしは受け付けられなかったのです』
(妄信的な考え?)
七海の疑問を置いていくように、言葉は続く。
『それでも神を討つかもしれないのなら、その可能性を、捨てたくはなかった。害徒のあなたがどんな方かは分かりません。願わくば、この力を、わたくし達の力を、より良い未来へと繋いで欲しいとは思いますが…』
リューティリス・ハルツィナが、何を聞いたのか、何を知ったのか、宿儺がこの世界で何をしたのか。想像できる事は少ない。が、あまり良いものは少ないだろう。
七海がそう確信するのが充分な存在こそ、両面宿儺なのだから。
『はっきり言わせてもらいましょう。わたくしは、解放者は、害徒を信用していません。もしかしたら、この場にいる方は、善人かもしれない…それでもです。元の世界にない力とは、それだけで多くの
彼女の言うことは正しい。現に、この世界で呪術師と言える者達が覚醒しだしている。
『この大迷宮を挑んでいる時点で、この世界の多くを知っているでしょう。あなたの選ぶ未来に、生者でない我々がとやかく言う権利など、最初からない。それでも、この先も、進み、この世界で何かを成すなら…この場にいる害徒が、善人だろうと、悪人だろうと、我々はそうすべきと考えてます』
リューティリス・ハルツィナはそう言いつつ視線を上に向けるすると、彼女の視線の先、光の粒子がより集まっていき、小さな球体を作りだす。全員が警戒してる最中、真っ先にハジメはその球体を撃ち抜いた。だが、再びその光の球体が現れたことで、意味がないのだと悟る。
『行きなさい』
その言葉の直後、光は上空へ上がり、
『この場にいる害徒の中で、もっとも習得した神代魔法が少ない方の情報を基準とさせていただきました。次の試練では、害徒の方に対応した試練が1つ課されるでしょう』
その言葉に反応したのは、呪力の使える3人。ハジメ、シア、七海の3人である。
『ご安心ください。課されるのは1度だけで、以降の大迷宮では課されません』
「いや、1回だろうが3回だろうが迷惑なんだが」
そんなハジメのツッコミなんて聞いてくれるはずもなく、リューティリス・ハルツィナは続ける。
『誤解しないでほしいのですが、その試練を突破しても、信用するというわけではありません。かと言って、あなたを嫌っているというわけでもないですし、滅ぼしたいわけでもない。だだ、試したいとは思っている』
そう言っていると、リューティリス・ハルツィナの目が動き、数秒黙る。
『……あぁ、どうやら、ライセン大迷宮は攻略していないのですね』
七海の情報を読み取ったことで出た言葉だろう。
『もうひとつ言うと、今の光は大迷宮へ届きますが、その光が大迷宮へ完全に届くには、この場の害徒がその大迷宮へ足を踏み入れた瞬間です。その上で言いましょう。もしライセン大迷宮を攻略するのであれば、後回しにした方がいいですよ。…理不尽な事をしているのはわかっているので、せめてもの慈悲です』
((すでに攻略してる俺[私]には意味ないじゃん[ですぅ]))
ハジメとシアは不満は当然のものだが、七海は別の考えがあった
(なぜ、ライセンを?あ、そういえば、トレイシーさんは大丈夫でしょうか?……いや、おそらく大丈夫でしょう。今の内容から察するに、この場にいる害徒…つまり私、シアさん、南雲君に、なんらかのマーキングをしているんでしょうね)
七海はハジメとシアに悪い事をしてしまったなと考えつつ、話しに集中する。
『あなたが、話しに聞く両面宿儺のような存在か、それとも違うのか。どちらにしても、その道を止める権利は我々にはありませんが、その道に我々の想う、希望がある事を、勝手でしょうが、祈らせてもらいます』
そうして、今度こそただの木に戻り、会話は終わった。幾つもの疑問を残して。
*
そして現在、光輝の質問を受けて七海は答えるべきだと思い、口を開く。
「私については大体話していますよ。正直、ハルツィナがどのように宿儺の事を聞いたのかは知りようもないですが、この世界に来た最初の呪術師がもし、私の知る両面宿儺なのだとしたら、伝えられた内容から、他の呪術師にどう思うかなど、想像できます」
「俺らの世界でも、両面宿儺の名は伝承にある。地方では英雄や、それこそ神のように崇めている所があるが、それが先生の世界では本当に存在してたってのか?」
「いえ、違います」
まさかハッキリと違うと言われるとは思わず、ハジメは少しずっこけそうになる。
「あのよぉ、俺とかは正直言って両面宿儺とか言われても、よくわかんないんだが」
「…私も」
龍太郎と鈴、それと最初に七海に問いた光輝も『俺も知らない』と言うように手を挙げる。
「え?ハジメさんと同じ世界の人は皆知ってるような存在ではないんですか?」
「んー、創作とか、それこそ伝承とか、そういった類いのものだけど、日本人でもちゃんと認知してる人は少ないと思うよ」
「確かに。私も香織に付き合って、そういう創作の元ネタ探しで多少、本当に多少知ってる程度だし」
シアと同じくユエ、ティオもそんなに知られていない存在とは思わず、多少ではあるが驚いていた。
「そもそも、私が今言ってる存在も伝承の両面宿儺とは別ですよ。…両面宿儺とは、腕が4本、顔が2つある仮想の化身の名ですが、私の世界で宿儺を名乗っていたのは実在した人間で、呪術師です。1000年以上も昔の」
「1000って…」
途方もない時間すぎて、龍太郎は思わず声に出す
「その時代は呪術全盛の平安の時代です。私がいた時代も、五条さんの誕生で多くの強力な呪霊や術師が存在してましたが、当時はそれ以上でしょう。1級、特級の術師、呪霊が蔓延る、まさに魔境。そんな時代、多くの術師が総力をもって宿儺に挑み、敗れた。文字通り、呪いの王です。当時の術師のレベルは先程も言いましたが、その総力ともなれば、ここにいる全員でも勝てるか微妙なところです」
ゴクリと、生唾飲む者が数人いる中、ハジメはその術師の連合を打ち破った存在に、僅かな興味がでていた。
「その強すぎる呪いは、死後も残り、魂を20の指に切り分けられました」
「20?手足でですか?」
「いえ、宿儺は手が4本あったそうです」
この場にいるほぼ全員が『それは本当に人間なのか?』と思っていた。
「更に記録によると、口も2つあったとされます」
「いやだから人間じゃねーだろ⁉︎」
そしてついにハジメはツッコミを入れた。
「まぁ、ともかく、それが宿儺の身体的特徴ですが、問題はそこではないんです」
ツッコミを無視して話を続ける七海にハジメは一瞬イラっとするが香織とシアに落ち着くように言われていた。何より今から話すことの方が大事そうだと感じたから。
「宿儺は、天上天下唯我独尊、己の快・不快のみを生きる指針とし、残酷で残虐で非道な性格をし、比喩的ではなく文字通り人間を食ってきた、まさしく生きた厄災そのもの。そのような人物が、この世界に来て、エヒトと対峙して殺さなかったのが、不思議なんです」
「話が通用しないってことか?」
「ええ。仮に、エヒトが敗北し、元の世界に戻す事を提案したとしても、宿儺がそれを呑むとは……絶対とは言いませんが、可能性は低いです」
「……なぁ、七海先生」
質問していたハジメが、ある違和感を感じて聞く。
「なんでそんなに詳しいんだ?文献があったにせよ、随分とこう、宿儺自体を見てきたような、そんな感じがするんだが」
ハジメの質問はここにいるメンバーの数人も思ってたことなのか、小さく頷く者もいる。
「…実際見たわけはありませんが、その気配を感じた事はあります。宿儺の指を身体に取り込んだ者から感じた、程度ですけどね」
「そんなやばい指を取り込んだ奴のことも気になるが、まぁ、今はいい。で、その宿儺ってのは、五条悟とどっちが強い?」
「わかりません」
不明、曖昧な返答。五条悟についてはこの場にいる全員が認知している。その圧倒的な強さも。その存在をもっとも知るであろう人物が、「わかりません」と告げるという事は、宿儺が異次元の強さを持つとわかる
「まぁともかく、今の私が知ってる宿儺の情報ですが、宿儺がこの世界に何をしたのか、エヒトとどうなったかは私的には色々気になりますが、それは君達にとってはどうでもいいものでしょう?」
「ま、そうだな」
ハジメの言葉に
「確かに」
続く形で肯定する光輝。
「ん?」
ここでハジメは、『アレ?』と思った。今の言葉、誰が言ったんだと。思わず頭の中で巻き戻してもう一度再生していた。そしてその人物を、ハジメは…ハジメだけではない。雫や鈴、香織といった光輝の事をよくわかっている面々が見ている。
「な、なんだ?俺、何かした?」
「いや、天之河、今の話を聞いて、それでいいのか?」
「いいも何も、少なくともその宿儺っていうのと、七海先生が悪く思われる理由が全く関係ないってことはわかったんだし、それで充分じゃないのか?まさか、何か気付いてるのか、俺が気付いてない何かに!」
「…………………」
ハジメは『お前ならもっと言うだろ』と言いたかったが、出なかった。
「いや、なんもないから、安心しろ」
「なんなんだいったい?」
光輝は本当に理解してないようである。
(天之河は天之河のまま、変わってるってことか)
その事実に衝撃が隠せないハジメは、おそらくこの世界に来て、もしかしたら人生で1番驚いているかもしれない。そんな中、七海が話を再開する。
「ただ、これは私の勘に過ぎないので、心の片隅に留める程度で聞いてほしいのですが」
ひとしきりに話した後、七海は言う
「最後に、南雲君、シアさん」
「うおぉ!」
「ちょっ、七海さん?」
バッと七海は頭を下げた。
「申し訳ない。君達に、余計な迷惑をかけてしまい」
「……次の試練で、俺とシアに余分な試練が来る可能性のことか?」
「ええ。大迷宮は、全て命懸けで挑む場所。そんな場所に、私の存在で、余計な試練を追加してしまった事をお詫びします」
1人の大人として、彼の教師として、迷惑をかけてしまう事に、七海は謝罪をした。その行為に意味はなくとも、誠意を見せることくらいはしなくていけないと思ったからだ。
「別に問題ねぇよ。先生がいようがいまいが、試練が追加されようがされまいが、やる事は変わんねぇ。それに」
もし七海がいなくとも、ハジメはここまでの試練を乗り越えていた可能性は高い。それでも
「あんたがいたおかげで、色々とこっちは助かることや、学ぶことがあったんだ。それに対する
「そうですよ。私が言うのものなんですけど、今更ですよ、七海さん」
「……そう言って頂けるなら」
そうは言うが、七海の表情は暗い。
「ハルツィナが言ったことが気になるの?宿儺の事じゃなくて、この世界に与えている影響に」
ユエの言うことに、七海は「ええ」と答える。
「ハルツィナの話をそのまま解釈するなら、本当のきっかけはその宿儺で、もっと言うならそいつを呼んだエヒトにある。確かに、七海が来たせいでこの世界に変化があるのは間違いない。けどそれは、意図的に停滞していたものが、また動き出しただけ。七海は、何も悪くない」
「わかってますよ。気にし過ぎている訳ではないですが、気にしないというのも、できない。それだけです」
ユエとティオは『やれやれ』と言いたにため息をだし、香織、雫、シアは苦笑いをし、龍太郎は「そんなもんなのか」と言い、鈴は無関心。ハジメは
(ある意味天之河よりも厄介な性格してんな)
と呆れている。そして光輝は
「………」
ジッと七海を見つめいる。
「なんですか天之河君?」
「いえ、ただ、それも、責任を持つってことなんだなって」
問われた光輝は目線を外し、そう言う。複雑な思いが彼の中にはあるが、そう思えたのは、大きな変化と言えるだろう。
(あとは、今自分が感じている気持ちと、これからをどうするか、と言う所でしょうかね)
それが少しだけ嬉しいと、七海は感じていた。
*
その夜
大迷宮を攻略後、ハジメも含めた多くの者が眠りにつく中、七海はアルフレリックと対峙していた。
「両面宿儺…正直知らぬ名だ。以前言った伝承以上の事は、何も知らない。が、その存在が伝承に語られた者であるのは、ほぼ、間違いないだろう。そして、その両面宿儺が、この現在の世界、呪術師が生まれる世界となる下地となったのだろう」
「『世界を変える兆し。善意なる害徒、悪意たる害徒、それが現れる時、何かが起こる』…でしたか?おそらく伝承のここの部分は、善悪問わずに、次に呪術師が現れた際に、止まっていた変化が動き出すという、比喩表現なのかもしれませんね」
大迷宮で得た情報をもとに、2人はそれぞれ伝承の解析をしていた。
「1つわかっている事は、七海、お前は伝承にある、善意の術師というところか」
「私は、悪人ではないですが、かと言って善人というわけはないですよ。そもそも、呪術師にそういうのを求めるのは、私は間違っていると思ってます」
善人寄りの人物はいる。そういう人物が呪術師で、悪意に染まっている者が呪詛師。ただそれだけ。呪術師で本当に善人と言えるような人は、七海の中で虎杖悠仁くらいしか思いつかない。
「そういえば、他の長老衆の方々には、もう?」
「ああ、話したよ。包み隠さず、全てな」
呪術師と呪力、アルテナが呪術師として覚醒する可能性を。
「とりあえずは、抗議をあげる者はいなかったが、声に出せないだけで、反対派の者もいるだろうし、そうでない者にしても、ハウリア族や帝国への抑止力として、力を欲している者が大抵であろうさ」
「そうですか」
けして良いとは言えない結果だ。帝国のガハルドが七海に提示したものとそこまで変わりはない。新たな力は、確実に良くも悪くも利用される。仮にアルテナが呪術師として覚醒しなくとも、次の世代を期待するほどにはなるだろう。
「一応言っておくが、話す段階でこうなる事は想定済みだ。気にする必要はない。南雲ハジメとの縛りでこの件にお前が何もできないという事も含めて。これから色々と忙しくなる。我々の世代、もしかするとアルテナの世代でも終わる事のない山積みの問題を、少しずつ解決していくのだからな……正直、気落ちもする」
アルフレリックの言葉に、どう言うべきかを七海は悩む。何をどう言ったところで、何もできない。どうする事もできない。ただの感情論か、同情しかないからだ。だが、アルフレリックは「しかし」と続きを告げる。
「それ以上に、何というか、昂る気持ち…そうだな、ワクワクしている自分もいる」
「…………?」
今度こそ七海は言葉を失う。あえて言葉として出すなら、『なんでだ』であろう。
「変革の真っ只中に今、自分がいて、後々の亜人族達の為に、何かを残せ、繋いでいける。そう考えるとな、今から楽しみなのだ」
「…………」
心からの言葉だ。そう確信できるほどの明るい言葉だった。
「もちろん、できるならアルテナが力に覚醒しないでほしいという気持ちもある。だがそうなっても、あの子や、あの子の後に続く形で生まれてくる呪術師達の、拠り所となる場所を作るのが、私の…私達の使命だ。そこから逃げる事はせん」
(逃げない、ですか)
こう言ってはなんだが、多くの亜人族は、兎人族とは別の意味でずっと逃げてきた。人間、魔族、自他にある迫害、偏見、生まれによる諦め。解決の策など何もないのだから、当然というなら当然だ。だから変化の兆しが見えても、すぐに決める事もできなかった。それが、今まさに、変わりだしているのだ。
「そのきっかけとなった事、感謝しているぞ、七海建人」
「それは私ではなく、南雲君に言ってください」
「そちらには既に言った。お前さんにはまだだろう…それと」
とゴソゴソとアルフレリックは横に置いていた物を取り出す。陶器のようなソレからは液体が揺れる音がした。
「南雲ハジメから、酒好きと聞いてな。この地特有の酒だが、付き合ってもらえるか?」
七海は「ふっ」と、思わず笑みが出る。酒をもらえることが理由ではない。自分でもわからない気持ちが、七海をそうさせた。
「喜んで」
お互い、酔い潰れないようにしつつ酒を楽しんだ数日後、ハジメとは別に旅の準備や身だしなみを整えている時、森から聞き覚えのある女性の「うりゃぁあああ!」という雄叫びと、同じく聞き覚えのある別の女性の「いやぁあああ!」という声がしたが、あえて七海は無視した。気にはなるし、なんなら注意しようかとも思ったが、声の主がシアとアルテナだというのもあり、トラブルに巻き込まれる予感がして、無視した。だが、用意を終えて彼らの元に向かい、着いた時。
「な、なな、七海さん!」
「どうしました?さっきの騒音といい、朝から随分と」
「アルテナさんが、呪術師に覚醒しました⁉︎」
色々と聞きたいし、言いたいことはあった。どうやってとか、なにが起こってとか、まぁさまざまだ。だが、それよりも、目を背けたい状況があった
「どういう状況ですか?」
横たわるアルテナが、ズタボロなのに、既視感しかない表情をしていた。煌々とした目と、口からでる涎。快感を味わったような顔。
「ティオさんが乗り移ったんですか?」
「なぜそうなるのじゃぁ⁉︎」
ちなみに
アルテナが覚醒した一撃は垂直落下式ブレーンバスターです。よく死ななかったな!次の回でアルテナの術式の情報をほんの一部を出します。
ちなみに2
トータスでの七海の酒呑み仲間:メルド、アルフレリック。
軽く飲むとか言うくせして自分達よりも多く飲んでまったく酔い潰れない七海に多少戦慄してる。ここに後に孫娘の変貌ぶりに落ち込んだとある龍人族をいれようか考え中