ルフィの育ての姉   作:津々里 述

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盃姉弟 後編

 あのあとルフィが再びワニに飲まれることもなく狩りを終えて、ワニ飯をふるまった翌日。エース達は中心街へワニ皮を売りに行き、私は食糧庫の整理をしていた。一緒に行こうと誘われたけど、3人が中心街で食い逃げした前科があったので遠慮しておいた。

 あの子たちは気にしないのだろうが、私はちょくちょく中心街に買い物をしに行くことがあるからお尋ね者になるのはまずい。ただでさえ、この島ではあまり見ないタイプの肌色をしているから目立ってしまうのだ。

 

 そうして今は使い忘れて悪くなったものがないか確認して、今度買い出しに行く時どれを補充するかをまとめている。

 

「あ、ニンジン……萎びてるけど、腐ってないならいけるか……?」

 

 奥の方から出土したニンジンの処遇を考えていると、背後のあたりに馴染みのある気配を感じた。

 

「どうしたの?エース」

「あぁ、ちょっと必要なもん取りに来た」

 

 振り向くと、エースと目が合った。たしかルフィとサボと一緒に街へ行ってたはずだけど……2人はどうしたのかな?まぁ、とにかく話を聞いてみるか。

 

「何が要るの?探すの手伝うよ」

「盃4つと酒、あとお前も要る」

「えっ?」

 

 不可解な取り合わせに思わずキョトンとしていると、エースは迷いなく食器置き場から盃を取り出して、床下の収納庫にダダンさんが隠していたお酒を持ち出した。

 

「訳は行きながら教えてやるから、ほら行くぞ!」

 

 言うだけ言って、エースはさっさと出て行ってしまった。

 

「えぇ!?待ってよ、エースってば!」

 

 呼ばれた理由はわからないが、とにかくエースの後を追おう。急いで履いた靴の踵を踏んだまま、私は走り出した。

 

 

 森の中を移動しながら聞かされた話に、私は驚きと納得が半々だった。

 

「ゴミ山住みの子にしてはやたら上品で仕立ての良い服着てるとは思ったけど……」

 

 シルクハット、燕尾の上着、首元のクラバット。それらはどれも山を駆け抜け戦いに明け暮れる生活で薄汚れていたが、それでも生地の良さは分かる。初めて彼の服を洗った時から、なんとなく勘づいていた。

 

「なんで気づいた時、サボに聞かなかったんだよ」

「いいとこの子がゴミ山にいるなんて、何かしら深い事情があると思ったんだよ。没落したとか、家督争いで嵌められて放り出されたとかさ。貴族は権力と家柄が重要だからねぇ、家によっては身内同士で潰しあうのも珍しくない」

 

 「軽率に聞いちゃまずいと判断してさ」と締めると、エースは眉間に皺を寄せた。

 

「身内同士で……」

「一般市民の私たちには縁遠いことだけど……いいとこにゃいいとこなりの条理があるんだよ」

 

 そんなことを喋っていると、遠くにある切り株の周りで思い思いに過ごすルフィとサボの姿が見えた。「ルフィ!サボ!」と駆け寄りながら呼びかけてみると、二人がこちらを振り向いた。

 

「おっ!姉ちゃんだ!!」

「エース、サーラを呼びに行ったのか?」

「いや、本題はそこじゃねえ……お前ら、知ってるか?盃を交わすと“兄弟”になれるんだ」

 

 そう言ってエースは酒瓶の蓋を開けると、切り株に並べた盃に酒を注いでいく。

 ……エースはこのために、私を連れてきてくれたんだ。“兄弟”と“姉弟”の絆を、盃で繋ぐために。

 

「兄弟〜!?ホントかよー!!」

 

 口ぶりとは裏腹にルフィは目を輝かせ、盃をワクワクとした様子で見つめている。つられて、私も頬が緩んだ。

 

「海賊になる時同じ船の仲間にはなれねェかも知れねェけど、おれ達4人の絆は“姉弟”としてつなぐ!!どこで何をやろうと、この絆は切れねェ……!」

 

やがて、全部の盃が満たされた。それぞれを手に取り、同じ高さに掲げる。

 

「これでおれ達は今日から、姉弟だ!!」

 

「「おう!!!」」

「うん!」

 

 4つの盃が、打ち合わされた。目の前がキラキラとして見えるのは、はじけた酒のしぶきだけのせいじゃないのだろう。

 

 

おまけ

 

「ねぇ、せっかく姉弟になったんだし“姉ちゃん”って呼んでくれる?」

「エースとサボも姉ちゃんのこと“姉ちゃん”って呼ぶのか!いいな、それ!」

 

 エースとサボにそうお伺いを立ててみると、真っ先にルフィが食いついた。それに対して、エースは消極的なようだ。

 

「わざわざ変える意味あるか?それに姉ちゃん呼びはルフィと被るだろ」

「まぁまぁ、いいじゃねェか!おれ達が姉弟になったって分かりやすいし。な、姉ちゃん?」

 

 渋るエースをとりなして、サボがさらりと“姉ちゃん”呼びをしてくれた……なんてスマート!将来さぞかしモテるんだろうな。

 弟が将来有望で、お姉ちゃんは嬉しい……!

 

「サボ……ありがとう!!“姉ちゃん”か……嬉しいよ」

 

 顔を綻ばせてお礼を言うと、ルフィとサボが揃ってエースの脇を固めて、その肩をちょいちょいと小突きだした。

 

「エース!エースも姉ちゃんって呼べよ!」

「ほら喜んでるじゃねぇか!エース、お前も呼んでやれよ!!」

 

 それでも躊躇うエースに、私はダメ押しすることを決めた。だって、お姉ちゃんとしてはお姉ちゃんらしく呼んでもらいたいから……!!

 私はエースの目の前にしゃがんで、正面から思いっきり期待を込めた眼差しでエースを見つめる。

 

「ねぇ、エース。エースも呼んでくれたら嬉しいなぁ、私」

「うっ……」

「お願い?」

 

 エースは目線を逸らすが、それでも見つめ続ける。ひたすら視線で押して、さらに小首を傾げてお願いする。ようやくエースは観念したように目を閉じて、片手をおでこに当てるとため息をついた。

 

「あ゛ぁ〜……わァったよ、姉貴!!コレでいいだろ!?」

「やったァ!!ありがとうエース、嬉しい!」

 

 嬉しさあまって、3人を初めて行った狩りの時ようにまとめてギュウッと抱きしめたのは仕方ないはず!

 




アンケートの結果から、サボのお姉ちゃんへの呼び方は「姉ちゃん」になりました!ご協力ありがとうございました!!!
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