ルフィの育ての姉   作:津々里 述

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ROMANCE DAWN PLUS SISTER 前編

 シャンクスさんたちがフーシャ村に停泊し始めてから、1年ほど経ったある日のこと。度胸試しでルフィが目の下にナイフぶっ刺して2針縫うことになりました。

 

「あ──いたくなかった」

「嘘つけ!!バカなことすんじゃねぇ!!」

 

あまりにもバレバレな強がりに、シャンクスさんがすかさずルフィを叱った。

 

「シャンクスさんの言うとおりだよ、ルフィ!自分の身体は大切にしなさい!お姉ちゃんすっごく心配したんだから!!」

「うっ、姉ちゃんごめん……」

 

 シャンクスさんの言葉に乗じて軽くお説教をすると、シュンとルフィは縮こまって私に謝った。しかし、すぐに「でも!」と顔を上げる。

 

「おれはケガだってぜんぜん恐くないんだ!!連れてってくれよ次の航海!おれだって海賊になりたいんだよ!!!!」

 

「んも〜〜……舌の根も乾かないうちにこの子は……」

 

 半ば呆れつつ額を抑えると、シャンクスさんがルフィの言葉を盛大に笑い飛ばしていた。

 

(ま、海賊にカナヅチが致命的なのは事実だからねぇ。私は幸いなことに泳ぎが上手い方だから、今日のバイトが終わったらさっそく泳ぎの稽古でもつけてあげようかな?)

 

 

 そんなことを考えながら注文された料理を仕上げていると、シャンクスさんからジュースを頼まれた。一旦フライパンの火を止めて、冷蔵庫から出したジュースを綺麗に磨いておいたグラスに注ぐ。

 

「はい、どうぞ」

 

 カウンターの空いているスペースにグラスを置くと、シャンクスさんはいたずらっぽい顔で笑った。

 

「ありがとな、サーラちゃん」

「ちゃん付けやめてくださいってば、小さい子じゃあるまいし」

「いいじゃねェか、可愛くて!似合ってるぜ?」

 

 それは私が子どもっぽいって意味かと尋ねたくなったが、ここでムキになったらこの人の思うツボのような気がした。とりあえずスルーして「ハイハイ」と適当に答えると、シャンクスさんは再びルフィに向き直った。

 

「要するにお前はガキすぎるんだ。せめて、あと10歳年とったら考えてやるよ」

 

 ルフィがあと10歳年をとれば17歳。たしかに、一人で船出するならそのくらいが妥当だろう。しかしルフィは納得できずご不満なようで、プンスカ怒っている。

 

「まァ怒るな、ジュースでも飲め」

 

 シャンクスさんがジュースをすすめると、たちまちルフィは笑顔になってジュースをゴクゴク飲みだした。うん、今日も私の弟がかわいい。

 

「ほらガキだ面白ぇ!」

 

 ダッハッハと大笑いしながら言ってくれやがった言葉に、私とルフィは同時に憤慨した。

 

「きたねえぞ!」

「は?あのかわいい笑顔見て言うことがそれですか?」

「おっと、いらねぇ怒りまで買っちまった」

 

 そう言って頭を掻く目の前の赤髪男をジト目で見ていると、マキノさんから買い出しを頼まれた。お酒が尽きてしまったようだ。

 

「わかりました、買うのはいつもので良いですよね?ワゴン借りますね〜」

「ええ、気をつけてね」

 

 マキノさんに見送られて、私はこの後とんでもない一騒動が起きることも知らず酒場を出ていった。

 

 

「マキノさん、戻りまし、た……って、えぇ!?」

 

 酒場に戻ったら、カウンターが割れたガラスまみれになっていたうえ……弟の腕がゴムみたいにびょいーんと伸びてる光景が私の目に飛び込んできた。

 情報量が、多い!!!

 状況を把握しきれず、忙しなく目線を彷徨わせていると、ベックマンさんが事の顛末を説明してくれた。

 まず酒場に山賊が来て、お酒が無いことに腹を立ててシャンクスさんに八つ当たりをした。それをシャンクスさんが笑って流したことにルフィが怒り、引き止めたら掴まれたルフィの腕が伸びて、ゴムゴムの実という悪魔の実を食べてしまったことが発覚した……と。

 ゴムゴムの実はその名の通り、食べれば全身ゴム人間になる。そのかわり、悪魔の実全てにおけるデメリットとして、海に嫌われて一生泳げない身体になってしまうらしい。

 

「嘘でしょ……」

「俺らとしても嘘であって欲しかったモンだな」

 

 ベックマンさんいわく、悪魔の実はその貴重さからとんでもない高値がつくんだとか。1億ベリーは下らないとか。その情報で、サアァッと顔から一気に血の気が引き、冷や汗が垂れた。

 

「本ッッ当に弟がすみませんでした!!……その、弁償っていくらになりますか……っ」

 

 恐怖にぶるぶる震えながらオープンプライスを待っていると、「落ち着け」とシャンクスさんから肩を叩かれた。

 

「弁償なんざしなくていい。ルフィが簡単に手に取れるようなとこに、適当に放っといた俺らにも原因はあるからな」

「寛大なお言葉に感謝します……!!!神様仏様赤髪様ァ……」

 

 その言葉に心底ホッとして、思わず身体の力が抜けた。カクンと膝が崩れて、その場にぺしゃりと座り込んでしまう。緊張と一緒に涙腺まで緩んで、視界がぼやけていく。

 

 

 すると、ルフィがシャンクスさんに食ってかかる。

 

「おいシャンクス!姉ちゃんをいじめるなよ!」

「いやルフィ、これは違うんだって!むしろこいつの方が虐めてる感じだったろ!?」

 

 ベックマンさんを指差して弁解するシャンクスさんに、彼はため息をついた。

 

「……悪いな、脅しじみたことを言って」

「私の方こそ、早とちりしてすみませんでした……ルフィ、お姉ちゃんいじめられてないから怒らなくて良いんだよ。むしろ、許してくれたんだから怒鳴っちゃだめ」

 

 そう言うと、ルフィはシュルシュルと怒りを収めて「わかった」と素直に返事をしてくれた。まだ山賊との件を気にしているのか、釈然としない様子だったけれど。

 

 この日からしばらく経ち、赤髪海賊団が海に出て久しい頃だった。件の山賊が再びここにやってきたのは。

 




 設定を出す機会がなかなか来ないため、ここで出しときます。
 サーラちゃんのフルネームはサン・サーラ。
 由来→元々は「サーラ」という名前だけ思いついていて、どんな名字を付け足そうかと考えた際に「サンサーラ」という単語を何かの歌で聴いた覚えがあったのを思い出した。どんな意味だったかと調べると、サンスクリット語で「輪廻転生」を意味しており、転生したサーラちゃんにはドンピシャな名前だと思ってこのようなフルネームになった。

サーラちゃん13~15歳のイメージイラスト描きました。→
【挿絵表示】
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