ルフィの育ての姉   作:津々里 述

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ROMANCE DAWN PLUS SISTER 中編 

 今日もシャンクスさんたちがいないせいか、酒場はガランとしていた。ルフィ1人だけがカウンターでジュースを飲んで、私やマキノさんとお喋りをしている。

 

「もう船長さんたちが航海に出て長いわね、そろそろさみしくなってきたんじゃない?ルフィ」

「全然!おれはまだ許してないんだ、あの山賊の一件!」

 

 マキノさんの問いに、ルフィは膨れっ面で答えた。そのままカウンターに顎をのせて、氷だけが残ったグラスを口でゴロゴロ転がしている。

 

「おれはシャンクス達をかいかぶってたよ!もっとかっこいい海賊かと思ってたんだ、げんめつしたね」

 

 すごく不満げだ。ずっと憧れていた分、理想から外れた時の落胆は一段と強かったのだろう。

 

「そうかしら、私はあんな事されても平気で笑ってられる方がかっこいいと思うわ」

「私もマキノさんの気持ち分かるなぁ」

 

 ああいった場面で気にせず笑える度量や器の大きさは、そうそうあったもんじゃない。

 こういう魅力は人生経験を積まないと判りづらいから、まだ幼いルフィの視点だとイマイチかっこよさが伝わりにくいのかもね。

 

「マキノとねーちゃんはわかってねぇからな、男にはやらなきゃいけない時があるんだ!!」

「そう……ダメね私は」

「うん、ダメだ」

(うーん、青くてかわいいねぇ。こう言ったら年寄りくさいけど、若さを感じるよ)

 

 

 そんなことを考えながら温かい目で2人のやり取りを見ていると、入り口に人影があることに気づく。

 

「邪魔するぜェ」

「げ……」

 

 その声にマキノさんとルフィがそちらを向くと、2人の顔に驚きが見えた。ルフィの反応で、私は入り口に屯する集団がどんな奴らかを察する。

 

「今日は海賊共はいねェんだな、静かでいい……また通りがかったんで立ち寄ってやったぞ」

 

 シャンクスさん達に下らん八つ当たりした山賊だ、こいつら。無駄に大所帯だから、あっという間にガラガラだったテーブル席が埋まっていく。

 

「何ぼーっとしてやがる。おれ達ァ客だぜ!!酒だ!!!」

 

 山賊の横柄な発言に営業スマイルが引き攣りそうなのをなんとか堪えて、店員として発するべき言葉を探した。

 

「はい、只今!」

 

 ……無事に済めば良いのだけれど。

 

 

「はっはっはっはっは!!あの時の海賊共の顔見たかよ?」

「酒ぶっかけられても文句一つ言えねェで!!情けねェ奴らだ!!はっはっはっはっは!!」

 

 随分と見る目がないな、こいつら。そう思いつつ給仕に徹していると、山賊の頭が部下達に同調してさらにシャンクスさん達をこき下ろしだした。

 あ、誰だ尻撫でてきたの!……こいつらちょいちょいセクハラもしてくるからほんと嫌、仕事じゃなけりゃとっくに帰ってた。シャンクスさん達はそんなことしなかったぞエロ猿共。

 

「おれァああいう腰抜け見るとムカムカしてくんだ、よっぽど殺してやろうかと思ったぜ。海賊なんてあんなモンだカッコばっかで……」

「やめろ!!!」

 

 ひたすら心の中で愚痴り続けていたところに、突然ルフィの大声が酒場に響いた。山賊達の視線が、ルフィに集中してしまう。

 

「シャンクス達をバカにするなよ!!!腰抜けなんかじゃないぞ!!!」

「やめなさいルフィ!!」

 

 マキノさんが必死にルフィを制止するが、ルフィはさらに食ってかかろうとする。いけない、このままじゃルフィが山賊に狙われる……ッ!

 

「ルフィ、だめっ……!」

 

 反射的に、ルフィを止める言葉が口から出た。

 

「シャンクス達をバカにするなよ!!!」

 

 

「おれに口ごたえするたァいい度胸じゃねェか、クソガキ」

 

 山賊の頭が、立ち上がる。次の瞬間、ゴスッ!と鈍い音がして、ルフィの小さな身体がカウンターへ打ちつけられた。ルフィが、蹴り飛ばされた。

 

「ぐへっ!!」

「ルフィ!!!」

 

 お盆を放り出して咄嗟に駆け寄る。倒れたルフィを抱き起こすと、木製のカウンターへ勢いよくぶつかったにも関わらず、ゴムゴムの実のおかげで打撲も骨折も無かった。しかし、安心できる暇はない。

 

「嬢ちゃん、その生意気なガキこっちに寄越しな。痛ェ目見たくはないだろ?」

 

 山賊はルフィを抱きしめる私を見下ろし、命令した。その目は、私が従順に従うと踏んでナメきっているものだった。

 端的に、言い切ろう。

 

「嫌です」

「……オイ嬢ちゃん、おれ達をナメてんのか?自分は女だから手加減されるとでも甘く考えてんじゃねェだろうな」

「いいえ、ちっとも」

 

 腕の中のルフィが、「ねえちゃん……」と震えた声で私を呼んだ。心配そうな声にチクリと胸が痛むが、そっとルフィの頭を撫でてやり過ごす。

 

「分かってんならさっさとそのガキを渡せ!!」

 

「お断りします!!私の弟に指一本でも触れたいのなら、私を倒してからにしろ!!!」

 

 腹の奥底から、吠える。

 大声は、単純かつ原始的な威嚇。ガラスを揺らすほどの声量は、山賊達に二の足を踏ませるのに充分だった。場の空気は掴んだ、そのまま勢いに乗せてやる。

 

「表に出ましょうや。ここじゃお互い存分に暴れられないし、そちらの数の利も活かせないでしょう?」

「……辺鄙な村に似合わねェ美人かと思えば、とんだじゃじゃ馬だな。のったぜ、お前がおれら全員を相手に勝てたらそのガキを見逃してやるよ。ただし負けたら、お前を弟と一緒に殺す」

 

 そう言い残し、山賊の頭は部下達に一声かけてゾロゾロと酒場から出ていった。

 

 

「あいつら、しれっと無銭飲食しましたね」

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょサーラちゃん!!どうしてそんな危ないことを……!!」

「いくなよねえちゃん!!殺されちまう!!!」

 

 緊張が張り詰めたこの場を和ませようとジョークをかましてみたが、青ざめたマキノさんからは両肩を掴まれ、ルフィからはしがみつかれた。

 

「無銭飲食云々は冗談ですよ、失敗しちゃいましたが。勝負は本気ですけど」

「勝負が冗談の方がずっとましよ……」

 

  肩を掴んでいた手からふっと力が抜けて、ずり落ちていく。その手をそっと握った。

 

「マキノさん。私は……ルフィを守れるようになるために、あのクソジジイから地獄みたいな修行を受けてきました。ここで姉である私が、弟を守るため立ち向かわないでどうするんです!……ちょっとの間、ルフィのことをお願いします」

 

 そして、腹のあたりにしがみつくルフィをいつもより力強く抱きしめる。

 

「大丈夫だよ、ルフィ。お姉ちゃんのこと信じてよ!ルフィに信じてもらえたらさ、お姉ちゃん100倍強くなれるから」

「ほんとか……?なら、信じる!信じるからっ、絶対勝てよ!!!」

 

 ルフィは涙目になりながらも、私を信じてくれた。なら、私はお姉ちゃんとしてそれに応えなければ。

 

「ありがとう、ルフィ。勝ってくる」




ワノクニ編でサーラちゃんをうるティと対決させてみたい欲がある
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