―――偉大なる航路《グランドライン》 海上 リベル視点
「さっむーーい!!何なのこの海は!?」
ナミが船室から叫んでいるのが聞こえる。
偉大なる航路《グランドライン》初心者にありがちな混乱の仕方だ。
さっきナミに偉大なる航路《グランドライン》の常識を教えなかった不手際があるから、一応アドバイスをしておくか。
「ナミ!ログポースを見ろ!この海で変わらないのはログポースの指す針だけだ!」
「さっき見たわよ…って何これ!ウソップ!180°旋回!行先が変わってるわ。…ほら、あんたたちも動いた!客じゃないんだから働け!」
船内がせわしなくなっていく。
偉大なる航路《グランドライン》初心者にありがちな光景に苦笑いしながら、おれも持ち場について船を操作していく。
皆がドタバタしている中、ゾロだけは熟睡していたがナミが起こしに行っていたので放置しておいた。
「前方に氷山!船の進路を変えて!ぶつかっちゃう!」
「あー多分間に合わないぞナミ。ちょっと下がってな。」
そう言って先端が丸くなっている矢のついた弓を思いっきり引く。
死ぬ気モードにならなければ引けないくらいの大弓を、ギリギリッという音が聞こえるくらいに弓を引き絞りじーちゃんから受け継いだ技を解き放った。
「剛弓”轟”!!」ズドンッ
大きな唸りとともに弓が解き放たれ真っすぐ氷山へと進んでいき、そのまま氷山を大きくえぐり、粉砕しながら彼方へと飛んでいく。
その反動で船は大きく揺れるが、氷山の脅威がなくなったおかげで船は無事に進んでいく。
「「それでは私たちはここで失礼。送ってくれてありがとう。」」
そう言いながら船を飛び出し、2人組は泳いでウィスキーピークへと向かっていく。
それを呆れたように見送り、一味はウィスキーピークへと到着した。
―――偉大なる航路《グランドライン》 ウィスキーピーク リベル視点
「ようこそ、酒と音楽の街 ウィスキーピークへ!ここではもてなしこそが我らの誇り。皆様の冒険の話を肴に酒をふるまう宴を準備させてください。」
ウィスキーピークに到着したおれたちを待ち構えていたのは、街を挙げての大歓迎だった。
どう見ても怪しいし警戒するべきなんだが、ルフィとウソップ、サンジは当然のように受け入れてテンションが上がりきっている。
ゾロとナミは気づいていそうだし、2人に任せておれは船でも見張っておこう。
これくらいの力量しかいない街だし、ルフィたちにはいい勉強になるだろう。
そう考えて俺は船に残ることをルフィたちに伝える。
そうして俺にも大量の酒や料理が運ばれてきて、船の前で簡単な宴会が開かれていた。
酒に酔ったふりをして船に戻り、そして夜が更けていった。
「この船からありったけの武器と食料、宝をいただくぞ!中にいる海賊は殺しちまえ!」
そんな声が船外から聞こえてくる。
不躾にも船にずかずかと上がってこようとする何人かを船上から打ち抜くと、集団の前に飛び出て問いかける。
「船にいる海賊は殺しちまえ?それはおれのことかな?」
そう言うと一斉に銃口がおれに向けられる。
銃が放たれる前に集団に突っ込むと、発砲して相手の手にある銃を弾き飛ばしそれを奪う。
そのままグリップの底部で相手を2人同時に吹き飛ばすと、弾き飛ばした銃で発砲し相手を荒らしていく。
そのまま船の前にいた全員を無傷で片づけると、遠くから狙撃される。
飛んできた銃弾を自分で撃った銃弾で弾き、見聞色の覇気で相手の位置を正確につかんで狙撃し返す。
すべての敵を倒し終えたところで、大立ち回りしていたゾロの方もどうやらひと段落ついたようだ。
ゾロが斬ろうとしたら一応止めに入ろうかな?って考えてたけど、何やら揉めだしたので必要なさそうだ…ん?
ちょっと止めに入るか…
―――偉大なる航路《グランドライン》 ウィスキーピーク
「「うおおおお!!」」ガキンッ
「…いつまでやってんだ。手合わせをするにしてもほどほどに、だ。」
ルフィの拳とゾロの刀をそれぞれリベルがトンファーで受け止める。
急に止められた2人の矛先がリベルに向けられるが、リベルがトンファーを各々の腹部に振るったことで勝負はひとまずの決着を迎えた。
「…で、だ。船にいるときはあえて放置してたけど君ネフェルタリ・ビビだろ?アラバスタの王女がこんなところで何してる?」
そこにナミが遅れて到着し、リベルに声をかける。
「よくやったわリベル。これで10億ベリーゲットよ!」
「何の話だ?」
そこでナミからアラバスタまで護衛する代わりに報酬として10億ベリーをもらおうとしていることの説明がなされた。
「…話は分かった。ナミ、踏ん張れよ。」
そういってリベルがナミにデコピンをくらわせる。
よろめいて涙目になったナミはリベルに詰め寄った。
「なにすんのよ!乙女を傷つけて!これは安くないわよ!」
「なぁ、ナミ。おれはその話は初耳だし、寝てたであろうルフィにも話は通していないな?一味の今後の航路にかかわる問題を、船長や副船長に相談もなく決定し利益を懐に入れようとするのが航海士の役目か?欲を出すなとも言わない、金儲けの話を勝手にするのも構わない。ただ、それは個人の話であって一味を巻き込むのは筋が通ってない。そう思わないか?」
そう諭すリベルにナミは少し反省したような顔をする。
「この海は常識が通じないんだよ。いい意味でも悪い意味でもな。冒険するにしても危険に突っ込んでいくにしてもこの一味の船長はルフィだ。一味全体で請け負うんならルフィに話はしておこうな。…で船長、どうする?」
その言葉に、ゾロとの間の誤解を解いて談笑していたルフィがリベルのほうを向く。
「そもそも10億ベリーなんて払えないわよ。」
口を開きかけていたルフィより先に、ビビが話し出す。
「どうゆうこと?アラバスタって大国なんでしょ?」
ビビの言葉に反応したナミがそう尋ねる?
するとビビは、アラバスタが大国として栄えていたのは過去のことで、現在は内乱が起こっていること、原因を探るうちに耳にしたバロックワークスという組織に潜入し情報を収集していたこと、バロックワークスがアラバスタを乗っ取ろうとしていることを話した。
「それで、ボスって誰なんだ?」
ルフィがビビに聞く。
ビビは言うまいとしていたが、王下七武海の一角であるサー・クロコダイルであることを話してしまう。
それを聞いたナミが絶望したり、逃げようとしたり、逃げ場がなくなって絶望したりしていると奇抜な格好をしたイガラム*1が現れた。
イガラムの奇抜な格好はビビの変装で、自分がおとりになるからビビを国まで連れて行ってほしいとルフィに告げる。
「何のことだ?」
ルフィがそうつぶやく。
その言葉を聞いたリベルがナミにジト目を向けている間に、ゾロがあらましを説明していた。
報酬の交渉をしようとするナミを遮って、ルフィはその約束を快諾する。
そんなルフィにリベルがデコピンをかまし、様々な条件を設定して契約を結んだ。
「1.ログのたまり方次第で変動するため届けられる時期がいつかは分からないが、なるべく早く送り届けること。
2.自分たちにとって優先すべきことが起きた場合、そちらを優先すること。
3.しっかりと送り届けた際に、ビビを送り届けたにふさわしい報酬を王家が用意すること。」
この条件にビビとイガラムは納得したため、ルフィに確認をとったリベルは麦わらの一味として正式に契約を交わした。
報酬に思いを寄せるナミにリベルが苦笑いをしていると、出航の準備を終えたイガラムが最後に一味やビビと挨拶を交わす。
そしてイガラムを乗せた船は、ウィスキーピークを発ちアラバスタへと向かった。
―――偉大なる航路《グランドライン》 ウィスキーピーク リベル視点
船が出航し沖に出たぐらいでおもむろに大弓を取り出し、誰にもばれぬように弓を放った。
「忍矢”影”」
真っ黒に塗られ視認しづらい矢が空を割いて船へと向かっていく。
船に到達する手前で何かにぶつかった矢は大爆発した。
「これくらいはサービスしておいてやろう。」
まるで船が爆破されたように見える光景にビビがショックを受けている中そう呟き、ルフィたち一味に指示して出航の準備を進める。
サンジやウソップを回収し、一味の船は速やかにウィスキーピークを離れログポースが示す先へと進んでいく。
途中で船に何者かが乗り込んできたが、敵意がなかったので無視をしていると会話に交じってきた。
剛毅な女性だと思いつつ目を向けると目を見開いた。
「悪魔の子 ニコ・ロビンが何の用だ。」
そう口の動きで伝えるとロビンは驚いたような目をこちらに向け、秘密にしておくようにジェスチャーをする。
そのほうがおもしろそうだと思ったので黙っていると、会話の不自然さに気づいた一味たちがロビンに武器を向けた。
すると船の隣に着けていた大亀から、一人の男が敵意を発しながら乗り込んできて発砲しようとしたのでそれを蹴り飛ばして抑える。
そのまま男を抑え続けていると用事を済ましたロビンが男に声をかける。
「もう十分よMr.Extra。帰りましょ。」
「ここで仕留めておかないのか?」
そう尋ねるMr.Extraに必要ないと告げてから、ロビンは大亀に乗り込んでいった。
するとMr.Extraはおれに「次は仕留める。」と言い残すと大亀に乗り込み船を去っていった。
ある程度離れたところで置き土産のように放たれた砲弾を斬り飛ばすと、船の中へと戻っていく。
船ではビビが頭を悩ませ、サンジやウソップは説明を求めルフィに詰め寄っていた。
このようにビビを乗せた麦わらの一味は、次の島”リトルガーデン”を目指して進んでいくのであった。
オリジナルの敵キャラ出ましたね。
なるべくストーリーに沿わせてるので、代り映えのない展開が続いてます。
アラバスタ編をお楽しみに。