―――偉大なる航路《グランドライン》後半の海【新世界】 リベル視点
「見えたぞ、あれがモビー・ディック号じゃ。」
その言葉の通り、目の前にはクジラのような船があった。
船からは言いようのない偉大さというか、威圧感というか、形容しがたい何かが発せられている気がして、ただただ圧倒されていた。
「ニューゲート、儂じゃ!」
じーちゃんが大声でそう叫ぶ。
すると、中から炎を纏った鳥が飛んできた。
よく見るとそれは、両腕が翼になった、パイナップルのような頭をした人だった。
「よくきたよい、”大嵐”。親父がお呼びだ、ついてくるよい。」
そういうと船へと案内された。
中には大量の船員が両脇に控え、中心には白いひげを蓄えた大男が堂々と座っていた。
「グラララララ!久しぶりじゃねぇかティモ!何しにきやがった!」
「今日は引率じゃよ。孫がお前を一目見たいと言っておったからな。」
その言葉を聞いた大男――大海賊”白ひげ”はこちらに意識を向けた。
「ほぅ…てことはこいつが”紫天”と”晴姫”の息子か…名前は何だ。」
「リベルだ。トゥーリ・D・リベル。こいつは”大空”持ちだ。だからお前を見せに来た。」
「グラララララ!!俺に孫の成長を手伝えってことか!…甘ったれんじゃねぇぞアホンダラァ!!!」ゴウッ
白ひげを中心に激しい威圧感がおれを、周囲を襲った。
自分で意識するでもなく、全身が”死”を覚悟したのか、死ぬ気モードに体が勝手に入った。
今までで一番の出力の炎が額からほとばしる。
それでも崩れ落ちそうになる体を必死に支えていると、隣のじーちゃんからも同等の威圧感が発せられて中和された。
「結論を急くなニューゲート。お前に求めるのは、リベルを少しの間船におくことだけだ。手土産ならある。」
そういうとじーちゃんは持ってきた酒を取り出した。
白ひげはにやりと笑うと、杯を手に取った。
「いいだろう!ただし、そいつが船においておく価値があるかを示してからだ!!…マルコ!相手してやれ。」
そういうと、先ほど迎えに来たパイナップル頭の男が前に出てきた。
「親父ぃ、正気かよい。こんなガキを相手に戦えっていうのか。」
その言葉は、厳しい修行を乗り越えたおれのプライドを逆なでするような発言だった。
しかし、同時に現実も見えていたおれは黙って口をつぐむしかなかった。
「いい、相手してやれ。そいつはお前の言葉が偉く気に入ってねぇみたいだ。派手にやれ!グララララララ!」
―――偉大なる航路《グランドライン》後半の海【新世界】 名もなき島
栗色の髪をした少年―リベルと、パイナップル頭の男―マルコが相対している。
「ほんとにやんのかよい…」
とどこかやる気なさげなマルコに対して、リベルはやる気に満ち溢れていた。
憧れの海賊の前で無様をさらすことはできないという思いがあったし、何より先ほどの言葉が頭に来ていた。
「審判は儂が務める。何があっても死ぬことはないようにしてやろう。リベル、本気でやれ。」
その言葉と同時にリベルが駆け出す。
額にはすでに炎が灯っており、修行で体得した剃を使って急速にマルコとの距離を縮めた。
「指銃!」
勢いよく指を突き出す。
マルコはそれをこともなげによけた。
「嵐脚!」
今度は蹴りから斬撃をとばす。
しかしマルコはそれをひょいと軽くかわした。
「動きはなかなか悪くねぇよい。今度はこっちから行くぜ!」
そういうとマルコの拳が迫る。
「紙絵。」
とっさにかわすが何度も連続で放たれる拳を交わしきれなくなってきた。
ついに一発を腹に食らってしまいそのまま吹き飛んでいく。
しかし、マルコは飛んだ先をじっと見つめたままであった。
「…チッ、さすがに騙されないか。」
とリベルは無傷のままで空を跳ねていた。
「海軍や政府がよく使う体術かよい。鉄を殴ったみてぇだった。」
そういうマルコの言葉を無視してリベルが飛び掛かる。
素早く攻撃を仕掛けるが、すべてがかわされていく。
息も絶え絶えになったリベルは勝負に出た。
「全部かわされるなら、かわせなくするまでだ!」
そういうと、無造作に嵐脚を放ちだす。
斬撃と同時に駆け出すと、勢いよく拳を突き出した。
「獣厳”空砲”」
突き出された拳に押し出された空気の塊が、勢いよくマルコを襲う。
それらを淡々とかわしていくと、周りは嵐脚だらけになっていた。
「これで仕留める!」
そういうとリベルは右腕に炎を滾らすと、マルコに向けてまっすぐ放った。
「大空の一撃《ソフィオ・ディ・チェーリ》!!」
勢いのある炎に前が見えなくなっていた。
リベルはその手に確かな手ごたえを感じていたが、首筋に強い衝撃が走る。
「俺に能力を使わせるとは…なかなかの腕前だったよい。」
そういうマルコの腕は翼に変じていた。
翼で防御をした後、後ろに回って強い一撃を加えたのだった。
「勝負あり!マルコの勝ちじゃ。」
その言葉を最後に、リベルの意識は落ちて行った。
―――偉大なる航路《グランドライン》後半の海【新世界】 モビー・ディック号 リベル視点
意識が急浮上する。
外では何やら話し声と、大きな笑い声が聞こえてきた。
「…あれ?」
…知らない天井だ。
当たりを見渡すと、船の一室のベッドで寝かされているようだった。
外に出て声のする方向へと進む。
すると、白ひげ海賊団とじーちゃんたちが宴をしてた。
「目ぇ覚ましたかよい。大丈夫か?」
マルコが酒を片手に尋ねた。
左腕には先ほどまでなかった包帯が巻かれていた。
「大丈夫だよ。その腕は?」
そう尋ねるとマルコは苦笑いをした。
「これはお前さんの一撃の後だよい。ちょっと受けきれなかったみたいだ。なかなか強かったぜ、お前。」
そういうとおれの頭をガシガシと撫でる。
乱暴な手つきだったが決して嫌ではなかった。
「…悪かったな。」
マルコがそういう。
何を言っているのかわからなかった。
自分を気絶させたことへの謝罪だろうか?
そう考えているとマルコは話を続けた。
「お前をガキだと侮ったことへの詫びだ。お前は俺にちゃんと一撃加えてるよい。」
そういって包帯を掲げて見せる。
途端に模擬戦での敗北が脳裏によみがえり、悔しい気持ちがあふれ出した。
「…でも、おれは結局一撃しか与えられなかったよ。」
そうふてくされて言うと、マルコはにっこりと笑った。
「はっはっは。俺はこれでも1番隊隊長だ。簡単には当たってやんねぇよい。俺に一撃あてたことをむしろ誇るべきだぜ。」
そうマルコは言うが納得いかなかった。
いずれ絶対に勝ってやると息巻いていると、おれを呼ぶ声が聞こえた。
そっちに行くと、じーちゃんと白ひげが酒を飲んでいた。
「…じゃからリベルはまだ……!?おう、リベル!来たか。」
「おれがどうしたの?」
「ニューゲートのやつの面倒を見てもらうにあたって、お前のことを話してたんじゃよ。なぁ、ニューゲート?」
「ああ。お前…リベルだったか。マルコに一撃入れたんなら大したもんだ。俺の船に少しの間乗せてやる。ただし!俺らは教えねぇぞ。勝手に学んでいけハナタレ。」
「そういうことじゃ。船を降りるまでにマルコに攻撃をまともに当てれるようになっておくんじゃな。すべて読み取られておったぞ。」
「しっかり経験を積んで強くなるよじーちゃん。おれは強くならなきゃいけねぇ。」
「…そうじゃな。」
そういうじーちゃんの顔は少し寂しそうに見えた。
「なんでおれあんなに見切られたんだろう。」
慌てて話を変えるように話題を振る。
それにきょとんとしたじーちゃんは口を開いた。
「それh「そいつは”覇気”だ。」ニューゲートォ…」
じーちゃんが恨みがましい目で白ひげを見つめる。
それを意にも介さず白ひげは説明を続けた。
「覇気には三つの種類がある。実態をとらえ、自分に鎧のようなものを纏う”武装色の覇気”。気配を感じ取り、時には相手の思考をも読み取る”見聞色の覇気”。お前が攻撃をかわされまくったのはこれが原因でもある。ここまでは誰しもが持つものだが、最後の一つは違う。数百万人に一人しか持たねぇと言われている”王の資質”、”覇王色の覇気”だ。こいつはお前のジジイも父親も持ってるもんだ。お前さん、”大空”だろ?ならお前さんも持ってる。」
「覇気か…」
実をいうと伸び悩んでいた。
父さんや母さん、じーちゃんはおれに優しく、修行は厳しいものであったがどこかで加減が見られた。
それはじーちゃんと白ひげの最初の威圧感…覇王色の覇気のぶつかり合いではっきりと分かった。
自分に必要な技術だとおれの超直感も囁いていた。
だから…
「おれに覇気を教えてください!!」
勢いよく頭を下げる。
すると白ひげは大笑いをしたのちに、覇王色の覇気をおれにぶつけた。
「グラララララ!…甘えるなよハナタレ。俺は盗めと言ったぞ。この俺から奪って見せろ!」
一歩も動けなかった。
ただ、ここで飲まれるとおれはもう立てなくなると超直感が告げていた。
止めようとするじーちゃんを目で制すると、まっすぐに白ひげを見つめる。
「それでもいい…それがいい!!あなたから全ての技術を、力を盗んで見せる!だから…これからよろしくお願いします!!」
死ぬ気モードになって深々と頭を下げる。
それを見た白ひげがどんな顔をしているかはおれにはわからない。
ただ、頭を下げ続けた。
いつの間にか宴の声は鳴りやみ、全員がおれたちを見ていた。
「よく言って見せた!いいだろう、今日からこいつはおれたちの船に乗せる!野郎どもォ!!酒を掲げろ!宴だぁぁああああ!!」
その声とともに白ひげがグラララと大笑いする。
爆発したような歓声が船を覆い、宴が再開された。
今日からおれは、この船で力をつけて強くなってやる!!
白ひげ編です。
あと1,2話で終わります。
それが終わったら原作開始。
リベルの勘違いも散りばめてるので、それも楽しんでください。