―――偉大なる航路《グランドライン》後半の海【新世界】 モビー・ディック号 リベル視点
コンッ「…クソッ」
「また外れだよい。もっと気配を読むんだな。」
目隠しをしたまま悪態をつく。
軽く頭をたたかれた回数はもう数えていない。
最初のころに強く頭を狙われていた時は、自分の超直感が反応してすべて回避してしまっていた。
なので、危機感のない見聞色の覇気の訓練はとてつもない行き詰まりを見せていた。
一方武装色の覇気は、これもまた苦戦していた。
見えない鎧を纏おうとすると、死ぬ気の炎があふれ出てしまうのだった。
「困ったよい。お前ぐらいの才能ならすぐに修得すると思ってたんだがな…」
マルコがそういう。
そんなこと言われても…と思う自分がいると同時に、これ以上ない悔しさが自分の中で湧き上がっていた。
「見てなって…すぐに修得して見せるから!」
そう見栄を張ってみる。
しかし、修得につながる方法は一向に見出せず途方に暮れていた。
その時、自分を呼ぶ声が聞こえた。
「おいハナタレ!ちょっと来い。」
白ひげに呼ばれたおれは素直に顔を出した。
そこではじーちゃんが不機嫌そうに、白ひげが愉快そうに座っていた。
「お前、覇気をものにできていないんだってな。」
白ひげがそう尋ねる。
悔しい気持ちをぐっと抑えて「そうです。」と答える。
すると白ひげはさらに言葉を続けた。
「お前、覚悟をはき違えてねぇか?お前の覚悟は一体なんだ?」
「…強くなることだけど。」
「そいつは手段だ。目的じゃねぇ。お前は何で強くなりてぇんだ。」
「サボの、死んだ兄貴の分まで自由に生きてやること。」
そう答えると白ひげは目を丸くする。
そして優しい目をしながらさらにつづけた。
「今のお前じゃあ死ぬ気の炎は十分に扱えねぇよ。ただ、扱えねぇ理由は自分で気づくべきもんだ。おれの口からは言えねぇし言わねぇ。ただ、覇気の使い方は簡単に教えてやろう。ティモが頭を下げたからな。グラララララ!」
そういうと白ひげは、目の前で実際に武装色の覇気を纏って見せた。
そして、おれに攻撃を加えるかのような勢いで振りかぶってきた。
死ぬ気モードになったおれは勢いよく後退し、観察を続ける。
白ひげは超直感での読みが間に合わなくなるペースで攻撃を仕掛け続けた。
それを超直感や鉄塊、紙絵も併用した回避術でかわしていったが、紙絵でかわそうとした瞬間に超直感が猛烈な警告を発した。
後ろにラタがいた。
この攻撃を全霊ではじけなければラタか自分が死ぬ。
そう思える攻撃を白ひげが仕掛けた時に、超直感が生き残る方法を感じ取った。
全力で武装色を纏いながら白ひげの攻撃の軌道を読み、腕を上にはじいた。
その後後ろ向きに倒れ伏した。
ラタが心配そうに駆け寄りおれの顔をなめる。
息が絶え絶えになる中、白ひげが大きく笑った。
「グラララララ!そいつが覇気だ!死ぬ気の状態で纏っちまえば違いも分かるだろ!見聞色も使えるようになったみてぇだし、その感覚を磨き続けるんだな!」
そういって船室に戻っていった。
「ラタ…絶対に見返してやろうな…」
心配そうにすり寄るラタを抱えて、おれはそうつぶやいた。
それに呼応するかのようにラタが鳴くのが聞こえた。
全身の疲労を自覚したおれは、睡魔に身を任せて意識を閉ざした。
――1年後
「鶴爪《オングル》!」
「武装硬化:大空の一撃《ソフィオ・ディ・チェーリ》!」
ドォォォオオン!
「手加減してるとはいえ、おれの一撃を相殺するとはなかなかやるようになったよい。」
「ゼェッゼェッ・・・よく言うよ。こっちは死ぬ気をほぼ振り絞った武装色込みの全力!マルコは手加減に手加減を重ねた撫でるような一撃じゃないか!」
「そんだけできれば上等だよい。その年でこいつを相殺できる奴が何人いるか…」
「武装硬化も短時間しかもたないし、見聞色も範囲は狭いし、死ぬ気の炎に至っては伸びる未来が見えてない!…俺、これ以上強くなれるのかな。」
「なれる…とは言えねぇよい。お前の場合は心の持ちようだ。親父に言われたことをよく考えることだよい。」
「…それが分かったら苦労しないよ。」
そういうとマルコは笑顔を見せる。
弟を慈しむかのような表情は、昔サボがおれによく見せていた表情だった。
「…サボ。」
思わずそうつぶやく。
するとマルコが「サボ?」と聞き返してきた。
しまった!と思いつつも、自分の身の上を話してみる。
するとマルコは同情するような、それでいて激励するかのような表情を浮かべた。
「お前が何のために強くなろうとしてるかはわかったよい。ただ、そいつが本当にお前にそう望んでいるのか、じっくり考えてみることだな。」
そういうとマルコは去っていった。
マルコが何を言っているのかいまいち分からなかった。
分かりたくなかったのかもしれない。
ただ、ズキリと頭の片隅が痛んだ。
気分転換に船長室を訪れる。
1年もたった現在では、白ひげをもう一人の祖父のように慕っていた。
「なぁじーさん。おれって覚悟を間違えてるのかなぁ。」
そう白ひげのじーさんに尋ねる。
じーさんは軽く笑いながらおれに話しかけた。
「グラララ。覚悟に間違いも何もねぇよ。覚悟ってのはテメェがそれぞれ心に秘めた自分のもんだ。そいつをよく覚えておくんだな。」
そう言いながら酒を飲む。
「じーさん。体に障るよ。」
と言いながらもじーさんやマルコが言ったことが頭を駆け巡っていた。
「…今は答えを出せそうにないや。」
そういうとじーさんはにやりと笑って俺に語り掛ける。
「グラララララ!それでいいぞ、リベル!時間をかけて答えを出すもんだ。生き急がなくてもおのずと答えが出るもんだ。」
そう言いながら大きな手で俺を撫でる。
じーさんの手は大きく、心地よい手だった。
「絶対にじーさんに追い付いて見せるからな!」
そういうと船長室を出る。
そしてじーちゃんに話しかけると、死ぬ気の炎の修行をつけてくれとねだりに行った。
――さらに1年後 リベル14歳
ついにモビー・ディック号を離れる時が来た。
どうしても寂しい気持ちは抑えられなかったが、お世話になった船員1人1人に挨拶をして回った。
「ありがとうサッチ。ご飯おいしかったよ。」
そういうとサッチは満面の笑みを浮かべて「また食べにこい!」という。
「サッチ。怪我とかに気を付けてね。おれの超直感がすごい警鐘を鳴らしてるから。」
サッチにそう伝えると、サッチは「気を付ける。」と表情を引き締めた。
次にマルコと話す。
「マルコ、次に会うときはマルコに並んで見せるから、そん時はまた勝負してね。」
「おう!リベルは強くなったな!もうちょい体が成長すりゃもっとお前の強みが活きる。武器術も様になってくるだろうよい。」
「…これはじーさんにも言おうと思ってるんだけど、ティーチには気をつけてね。超直感がすごく警鐘を鳴らしてるんだ。…おれも仲間を疑いたくないんだけど、ティーチには目を配っておいてね。」
「…それでも仲間は疑えねぇよい。ただし、お前の超直感は本物だ。頭の片隅にはおいておいてやるよい。」
最後にじーさんに声をかける。
「1年間お世話になりました、じーさん。じーさんの船に乗ったこの2年は忘れられない思い出になると思う。じーさんはおれの目標の一人になったよ。絶対に追い付いて追い越せるような漢になる。…覚悟はまだよくわかんないけど。おれはおれなりの答えを見つけてみせるよ。」
そういうと白ひげは「グラララ!」と笑う。
「思う存分悩め!リベル、お前はまだ世界を知らねぇ!この海は広い!お前の答えはこの海にあるだろう。この俺が保証してやる!」
そういうと酒を浴びるように飲み始めた。
「じーさん、ほどほどにね。」
と声をかけながらじーさんに近づく。
おれの真面目な表情に気づいたのか、じーさんも真面目な顔をする。
「じーさん。おれは今からじーさんを怒らせることを言うよ。おれの超直感が、ティーチに警鐘を鳴らしてる。…仲間を疑うのはよくないことだけど、これだけは伝えたくて。」
するとじーさんは顔に井形を浮かべる。
そして低い声でおれに語り掛けた。
「リベル。お前は紛れもなくおれの家族だ。…だがな、ティーチもおれの息子に変わりはねぇ!俺は家族を疑わねぇ…が、トゥーリ一族の超直感だ。ティモも俺に同じことを言ってきやがった。…頭の片隅にはおいておいてやろう。」
そういうとまた酒を飲み始めた。
申し訳ない気持ちと、後味の悪い別れになってしまったと若干の後悔をしながらモビー・ディック号を発つ。
すると、目の前に海賊船が現れ襲い掛かってきた。
ドォーン「奪え!殺せ!相手はジジイとガキ、若い奴が何人かだ!俺達【黒豹海賊団】の敵じゃねぇ!」
そういいながら船を寄せようとしてくる。
その時バリバリバリッという音がすると、目の前で船が沈んだ。
振り返ると、じーさんが薙刀を振りかぶって立っていた。
「いってこいリベル!これからがお前の冒険だ!」
そうやってじーさんは叫ぶと、振り返って船に戻っていった。
おれは上を向いて零れ落ちそうになる涙をグッとこらえた。
そして、船が見えなくなるまで大きく手を振り続けた。
そうして、おれがセッテ島に帰ってから4年の月日が経った。
大海賊編終了です。
次回から原作に入ります。
時間が取れなくて、しばらく投稿できなくなる期間があると思います。
申し訳ない…