遥か昔、旧時代と呼ばれる時代に人間たちは戦争で大きく数を減らし、残された僅かな生き残りは戦火の届かなかった大陸に移住し暮らすようになった。
そしてしばらく経ったある日、空から一条の光が落ちてきた。
その光とともに落ちてきた者は女神と名乗り、その光は世界に数多の恵みを与えた。
世界は神秘に溢れ、女神が連れた獣達は人間たちの生活の糧となった。
そうして、女神が崇められ国をまとめるようになり、次々と女神がやってきてこの大陸は四人の女神が統治する世界となった。
???「はぁ……はぁ……」
森の中を全力で疾走する。弓を持ち、襲いかかる獣たちを正確に無慈悲に額や喉を射抜いては土を蹴り上げ駆けていく
???(あぁ……なんで魔獣の討伐なんて依頼受けたんだろ)
少女を囲むように後を追ってくる魔獣達の爪や牙を掻い潜る中、少女の頭上から奇襲の一撃が迫る。咄嗟に気づきクナイに持ち替えるも眼前に迫った爪がその身を引き裂くーーーーと思割れたその瞬間、魔獣の手が切り落とされ地面に転がり呻く。
???「サーエーカーちゃん、お楽しみを独り占めはずるいなぁー?」
エメラルドのような美しい髪の青年がサエカの目の前に現れる。どうやら手に持った棒のような仕込み刀で手を切り落としたようだ。
サエカ「シグナさん……ありがとうございます。でも依頼ですからお楽しみという訳じゃ…」
シグナ「一応コンビだし?一人で魔獣を狩るのは面倒だからね〜」
そう言いながら足元に転がる魔獣を念入りに刀で突き刺し、手馴れた動作で魔獣達の急所を捉え屠る姿が彼の実力を物語る
サエカ「えっと……残りはどうします?」
シグナ「依頼だからね〜、勿論全部ぶち殺す!」
一気に地面を踏み抜くように飛び出し、魔獣達を切り裂いていく。
サエカの静止も届かず、仕方ないと諦めて後を追い、魔獣達を殲滅していく。
杖に仕込んだ刃と少女の手から放たれる矢が魔獣の皮膚を切り裂き肉塊へと変え、やがて元の森の静けさを取り戻す。
シグナ「はぁー終わり終わり、もうさっさと着替えたいね」
返り血で染まりながらも満足気なシグナに呆れを覚えながらも激励する。
サエカ「お疲れ様です。依頼は終わりましたがどうしましょうか……」
シグナ「うーん、村に戻ろうとは思うけど…もう少し探してみない?あの噂」
サエカ「あの噂…ですか?」
ニヤニヤと何か企んでいるかのようなあからさまな笑顔を向ける相方に不安を覚えた。
シグナ「そう、あの『女神への叛逆軍』さ」
相方の口から詳しく語られる噂、本当か怪しい話ではあるがこの世界に下りられた女神達が現在は人間達を駆逐しようとしているらしい。人々を支配し恵みと繁栄を齎したがそれも女神達自身の目的のひとつに他ならないという。目的は分からないが中立地帯に住まう村々では時折そういった話を耳にすることがある。
そして、その女神達の統治を崩し目的を阻止するために反旗を翻した者を『レジスタンス軍』と呼んでいるようだ。
シグナ「だから、ほら!村に戻ったついでに探してみない?もしいたら退屈しないじゃん。」
サエカ「もう……分かりましたよ、じゃあ日が落ちない内に村に戻って探しましょう」
実際のところ定かではないがこうして魔獣の討伐を依頼されることから魔獣が人を襲うことは周知の事実だ。
日も落ちればより魔獣達は活発になり、新たな獲物を狩ろうとあらゆる場所を闊歩し始める。
そうならないうちにと相方の話を半分に聞いて、荷物を簡単にまとめ足早に来た道を戻ろうとサエカは体の向きを変える。
ひとたび戦いが終わればこうして暖かな陽の光と、身体を清めるかのように突き抜けていく涼しい風がとても心地よく、ずっとこうして自然の流れに浸っていたいという気持ちをそっとしまい村へ歩いていく。
「ええ……あ、はい大丈夫です、ありがとうございました」
二人は依頼の簡単な報告と報酬の引渡しを終えて南東の街道を行く。
日も傾き、もう少しすれば夕時といったところだろう。疲れた身体を癒したいところではあるが、まだ動けるうちに街道を進んでいく。
見晴らしのいい光景、穏やかに揺れる木々、見下ろすと陽の光を反射して輝く海一面、平和な光景に思わず見蕩れる。
シグナ「うーん、相変わらずここら辺は見晴らしいいねー、落ち着いたらピクニックとかいいな」
サエカ「そうですね、きっと心地が良いでしょう」
シグナ「サエカちゃん、今日は顔が浮かないじゃん、やっぱり嫌だった?魔獣討伐」
長い付き合いである彼には今日一日の様子がバレバレのようだ。思い返せば終始浮かない表情で依頼をこなしていたような気もする。今でも鼻腔に魔獣の焼き付くような青臭い血の匂いがこびり付いているような感覚がより気分を悪くする。
サエカ「いえ…そういう訳じゃ、ただ……気分が良くなるようなことでは無いですから」
疲弊した重い足取りで街道を南へ進んでいく。街道を道なりに進むと一際広い樹海が広がっているのが見え、樹海を北に少し進むと樹海の国〔アースティア〕と呼ばれる国が存在する。食と自然を使った産業が発展している栄えた国で国内では常に料理の香しい匂いで覆われているらしい。
アースティア付近の樹海は広く入り組んでいるため様々な村が転々としており、魔獣と隣りあった日々を送っていると相方の口から道すがらの暇潰しに語られていく。
サエカにとって魔獣に関わることはなるべくしたくないが、誰かの役に立てるなら……と不安を心の隅に追いやりながらも気を引き締め足を進めていくのだった。