それは女神達が来る日にもたらされた恵み、人・大地・文明に豊かさをもたらし、過去の遺物と呼ばれる旧時代の一部の武器・武具を更なる業物へと昇華させた。
それは戦士達の新たな力となり、国防の要となり、時には英雄を生み出す導き手となった。
だが、必ずしも身に余る力には代償が付き物である。
人という限界を持ちながらも人として成せること以上を成そうとすれば、それに応じた報い……或いは人ともつかぬ何かに変わることもあると……
南の大陸に陣取る樹海大国『アースティア』から南南東に離れた場所に位置する大森林、通称-アルディクス大森林。
旧時代の頃のとある皇帝の名からつけられたという歴史を持つが、今この時代においては旧時代の資料などほとんど残ってはおらず、あったとしても大抵は眉唾だ。
そんなことはさておき。大森林という名の通り、一つ一つの木々が20r(リートル)は軽く超える大きさを誇り、様々な生態系が織り成す大自然で南の大陸の3分の1を占める。
各地に転々と居を構える村も存在するがこの大森林では人を見かけることは少ない。
それは何故かと言うと・・・・・・・・・
???「良いか!!各グループ必ず守備担当と攻撃担当のペアで相手をするんだ!二人で防いでもう二人で確実に仕留める!残った弓兵は索敵と奇襲に備えろ!」
???「小型の魔獣と言っても群れになって来れば苦戦はする!油断はするな!」
広大な大自然に少年の声が響く。
ただの狩りであればあまり気張る必要も無いが、彼の声に気を引きしめられ、盾や剣を構える人々の瞳が薄らと陽光差し込む森を組まなく見張る。
少しずつ、土を蹴る音と共にタタッ、タタッ、と複数の足音が近づいてくる。
???「全員!来るぞ!」
号令と同時に木々の間から飛び出したのは約1r(リートル)程の犬達であった。だが、ただの犬ではない。牙は鋭く長く生え、獲物を捉える眼球は赤く充血し、黒く針のように生え揃った毛皮は異様な艶光りを見せる。
まさに猛犬、いや………これなるは『魔獣』なり。
女神達が人間界に降り立つ際、飢える人々の為に持ち込まれた食料の代わりとなる動物達だったものだ。
だが、人が狩るにはあまりにも強すぎた。大人でさえ、この犬型の魔獣1匹に容易く噛み殺されてしまうほどに奴らは獰猛である。
1匹の魔獣が爪を振り下ろし盾を地に崩し、もう1匹がその牙を守備役の青年の首筋に突き立てんとする。
そんな凶行を許さず、攻撃役の少女の剣が魔獣の額へ突き刺さり青年の眼前で息絶える。
生温い鮮血が滴る様子を目にしながらも、次の襲撃に備えるため剣の血を振り払い陣形を整える。
周りの仲間達も次々と同じように、陣形を活用し撃破していく。
男性団員「副団長、群れのリーダーが見当たりません!それに今回の奴ら、1匹1匹が割とデカいです!」
???「わかった!全員外向きに円を組んで待機!」
???「サクナ!結界は張り終わったか!?」
少年が大木を見上げながら大声を放つ。
次第に声が反響し消えていくが、しばらくすると上空から少女がにこやかに飛び降りてくる。
長く美しい桜色の髪に目を奪われるが、装備はごてごてとした革と軽い鉄防具にそれらを覆い隠すほどの薄桃色のポンチョというとても目立つ格好により目が引かれる。
サクナ「もっちろーん!じゃあ後はよろしくねー、アル君」
サクナと呼ばれた少女が少年の隣を通り過ぎていくと、森の奥からひときわ大きい魔獣の咆哮が鳴り響く。
犬型魔獣の長「グオォォォォォォ!!」
他の魔獣達の3倍はある巨躯を揺らし、少年ら集団へと突き進んでくる。
少年「サクナ!今だ、引け!」
サクナ「オッケー!」
少年の号令に合わせ、少女が腕を大きく引くとリーダー格の魔獣の頭上から丸太が降り注いでいく。
大森林に生える巨大な木々の丸太が魔獣の巨躯を打ち据え、リーダー格は堪らず血に伏せる。
少年「ふっ!」
その隙を見逃さず、少年はリーダー格の頭上に飛び乗り長剣を眉間にこれでもかと突き刺す。
犬型魔獣の長「グキャアアアアア!!」
痛みから耳をつんざくような悲鳴をあげながらも最後の力を振り絞り辺りの木々に向かって暴れ回る。
少年は剣にしがみつきながらより押し込む。
少年「サクナ、もう十分だ!結界を使え!」
少年が勢い良く飛び降りたのと同時に魔獣の全身から血が吹き上がる。
目を凝らせばリーダー格の魔獣を絡めとるように幾つもの糸が巻きついていた。その糸が蜘蛛の巣のように罠として張り巡らされ、サクナの手によって誘導されたのだ。
何重にも絡め取られたリーダー格も遂には動かなくなった。
少年「よし、被害は……ないな?なら倒した魔獣から皮と肉を取って戻るぞ、今回はそれなりに多く倒したから余裕もある、残さず持っていけ」
戦いの疲れを気力で押しのけ、それぞれが魔獣の解体を始める。これらを持ち帰り、食糧・皮や牙を加工し武具や生活の道具へ利用するためだ。
いくら強かろうと魔獣も獣、使えるものは使うに限る。
そうして、辺りの喧騒も落ち着いた頃、少年が草のガサッという音に気づき振り返る。
少年「………みんな、武器を構えておけ」
別の魔獣による襲撃を予感しながら警戒する。
待ち伏せながら相手の姿が見えるのを待つと目に映ったのは2人の少年少女だった。
シグナ「あらら……、お取り込み中?というよりはもう終わったが正しいかな?」
サエカ「魔獣が……しかも群れを」
シグナ「もしかして、君たちが噂のレジスタンス?」
少年達からすれば、単なる旅人にも見えるの2人だが
少年「噂かどうかは知らないが、俺たちがそのレジスタンスで間違いはないな」
アルド「俺はレジスタンスの副団長をしている。アルド・ノワールだ」
この少年、アルド達とサエカとシグナの出会いにより、女神への反逆の狼煙となる種火が小さく小さく燃え始めるのである。
シグナ「俺の名前はシグナ・ノクターン、この子はサエカ・グロウラー。よろしく〜」
アルド「はぁ……」