女神達が下界に降りた際に共に連れてこられた生物
下界に生きる動物達の原点でもあり、大きさや種類、形状など様々である
人間を主に狙うが、野生化していない女神の管理下にある魔獣は自ら人間を襲うことがない
魔獣は個体差はあるがかなりの高栄養を含むため、レジスタンスの団員たちは大きく数を減らした動物たちの代わりに狩った魔獣の肉を食料として代用している(大味なものが多い)
シグナ「団長さーん、帰ったよ〜。」
軽快な声でシグナが小屋の戸を開ける。
ミランダ「ん、ご苦労だったな、それで…そこの彼女が?」
アルド「あぁ、色々訳ありみたいだけど協力の意思はあるみたいだ。」
アルドの数歩後ろからミランダにセラが頭を下げる。
セラ「はじめまして、修道女のセラと申します。」
表情というものがあるのか分からない様子で淡々と自己紹介を終える。
ミランダ「とりあえず2人ともひとまず任務は終わりだ、アルド、前線の押し上げだ。少しずつ前に進みアクアヴァルナに圧力をかける、号令をかけてきてくれ。」
アルド「分かった。」
シグナ「さて、俺も少し準備しないとなー。」
疲労を感じさせない足取りで小屋を後にする。
ミランダは、2人の若さに羨ましさを感じつつも目の前の少女に顔を向ける。
ミランダ「さて、協力の意思があるのはとても助かるが…探しておいて失礼かもしれないが幾つか質問させてもらう。」
セラ「ええ、どうぞ。」
冷静にこちらを見つめてくる双眸に少し気圧されながらも、一息深呼吸して改めて目を向ける。
ミランダ「セラ、君の目的はなんだ?」
セラ「女神の殲滅」
ミランダ「理由は?」
セラ「今はお話できませんが……いつかは」
ミランダ「年齢、生まれ、家族は?」
セラ「年齢は自分でも把握していません、生まれは…大陸の外とでも言っておきます、家族もいません」
ミランダ「……」
あぁ……非常に頭が痛い、こんなに謎だらけの協力者を引き入れて良いのだろうか。
ついため息をつきそうになるが、心の中で軽くぼやくことで気を引き締める。
相変わらず何を聞かれても表情ひとつ崩さないその様子にも怪しさ、一抹の不安が過ぎる。
ミランダ「アクアヴァルナの女神について知ってることは……?」
セラ「かの女神の名はリュース、真名はアクリュースと名乗り、水の権能と武芸に秀でた女神です。」
噂には聞いていたアクアヴァルナの女神の力。
アクアヴァルナの建国にはその女神が関わっているのだとか…眉唾と思ったが。
そんな考え事を頭の隅にやりゆっくりと腰を上げる。
ミランダ「まぁ……女神の情報を持っているだけでもこちらとしては助かるからな、君が信頼出来る存在かはこれからの活躍次第とさせてもらう。」
セラ「ええ、よろしくお願い致します。」
互いに固い握手を交わし、セラが小屋を後にする。
ミランダ「はぁ……これが吉となるか凶となるか…」
(レジスタンス拠点、北西方面出入り口)
サエカ「……はぁ」
少女もまた、ため息をついていた。
まだ入って間もないが、役に立つと意気込んだ手前、まだ何も成せていないことに不安と不甲斐なさを感じていた。
サエカ「足を引っ張らないようにしないと…って思ったんだけど、うーん…また魔獣でも狩って……いや、勝手に1人で行くのはダメだから」
セラ「もし…何かお悩みですか?」
しゃがみこんで1人黄昏ていたサエカの頭上から優しい声が聞こえる。
サエカ「あ……さっきの修道女さん…」
セラ「このたび協力者としてこのレジスタンスに身を置かせていただくセラと申します、よろしくお願いします。」
綺麗に正されたその紹介に驚きながら慌てて返す。
サエカ「わっ…!え、えと私はサエカと言いますよろしくお願いします!」
セラ「何か悩んでおられるようですが、どうかされましたか?」
サエカ「あ……えっと、私もまだレジスタンスに入ったばかりで、そんなに力になれてないのでどうすれば役に立てるかなぁ…と。」
セラ「そうですか……若い人間の力はどんなことに置いても大事です、何より戦力としても期待されているのであれば焦らずとも出番は回ってくることでしょう。」
不安混じりの声でサエカは呟く。
サエカ「魔獣と戦うのは好きでは無いので……あ、いえ、皆を守るため必要な事なので勿論頑張りますよ?でもシグナさんみたいにどんどん前に出れる力強さもないので…」
セラ「女神を相手にするのです、不安になるのも無理はありません、ですがその調子のまま戦いに身を投じれば要らぬ危険を呼び込み兼ねません。」
セラ「意外と感情は顔に出るものですよ。」
そう言い自分の顔を指さし示すセラに気づき、思わず顔を両手で触る。
サエカ「え!?そ、そうですか!?ご忠告ありがとうございます…気をつけないとなぁ」
セラ「それでは私は失礼します、あまりうろついていても迷惑かけますから」
そう言い残し、馬車を停めてある厩舎に歩いていった。
サエカ「焦らなくてもいい……かぁ」
シグナ「サーエーカーちゃん!」
サエカ「ひゃあ!?急になんですかシグナさん、びっくりするじゃないですか……」
いつの間にか傍にしゃがんで顔を覗いていたのに驚き尻もちをつく。
シグナ「サエカちゃん、セラの事苦手でしょ?」
サエカ「せっかくアドバイスくれたんですよ?苦手に思うことなんてありません。」
シグナ「そう?まっ、良いけどね〜、任務頑張ろ〜」
(しばらくして、拠点広場)
アルド「さて、みんな揃ったな、出発の準備は?」
シグナ「問題なーし」
サクナ「私も〜」
サエカ「大丈夫です!」
3人は変わらず、普段通りに返事をする。
アルド「セラ、お前も問題ないか?」
セラ「はい、特に異常なく」
セラの方は明らかに手ぶらで何も持っていない。
アルド「お前…荷物とか武器とかあるだろ?」
セラ「勿論、携帯していますので心配いりません。」
アルド「あっそう……」
どこをどう見て心配するなというのだろう、これから女神との命をかけた戦いをしに行くと言うのにほとんど備えなしの状態で行くのは…
観光でもしに行くのかと勘違いしてしまう。
アルド(まぁ……何かあるんだろ)
言いたいことを飲み込んでアルドを含めた一行は馬車に向かう。
ローゼン「やぁ、待ってたよ」
アルド「ローゼンさん?なんで馬車に乗ってんだよ?」
ローゼン「陽動組と違うルートを行くからね、アクアヴァルナに潜入するための入口までの案内役さ。」
シグナ「潜入路なんてあったんだ?なんで今までそれで攻め込まなかったの?」
当然の疑問にローゼンは苦笑いしながら答える。
ローゼン「それは戦力的な部分もあるけど…西のレジスタンスとの連絡路としての運用が主だったから、今回は新しい協力者もあって踏みきることが出来たんだよ。」
サクナ「おじさんは偵察とか潜入とかはとーっても得意だもんね〜、助かるよ〜」
???「サエカ、ちょっといいか?」
サエカ「団長さん?どうされたんですか?」
ミランダ「うん、実はお前には陽動部隊の指揮を任せたくてな。」
サエカ「アルドさん達とは別…なんですか?」
ミランダ「気を落とさないでくれよ?アルド達が帰る時に西のレジスタンスの奴らも連れて帰れるように南側に集中する敵戦力に圧をかけておきたいんだ。そのためにもお前には途中で拠点に戻ってきて欲しい。」
サエカ「ですが、アルドさん達は…」
シグナ「大丈夫だよサエカちゃん、俺たちちゃんと戻ってくるから。」
浮かない表情をするサエカにシグナが肩に優しく手を置く。
シグナ「サエカちゃんは俺たちが帰りやすいようにしっかりやってくれればいいんだよ、そうしてくれないと帰る時大変だもん。」
にこやかに笑い、心配しなくていいとサエカの頭を撫でる。
サクナ「そーそー、私もアル君もそう簡単にやられるつもりもないしね〜」
アルド「頼めるか…?サクナ」
サエカ「…はいっ!任せてください、皆さんの帰り道は私がしっかり作っておきます!」
期待の目線を受け、やる気を取り戻し力強い返事を返す。
ローゼン「それじゃ出発するよ、サエカちゃんも無理しないようにね。」
ローゼンの合図を機に馬車が走り出す。
ミランダ「さて、では私達も行くとするか。」
サエカ「はい、頑張ります!」
そうして、二人も他の戦闘員を連れてマクナール草原に走り出していった。
(アクアヴァルナ壁外・東部渓流地帯付近)
ローゼン「さぁ、着いたよ。」
アルド「こんなところにあるのか?」
ローゼン「まぁまぁ見ててよ。」
馬から降りたローゼンが渓流の小石の山になっているところに歩き出す。
大小様々の石が蓄積しているが、これといって入口らしいものは見当たらない。
ローゼン「んっ…しょ、よいしょ……ほらこれさ。」
少し大きめの石を何個か退かすと円形状の大きな蓋が地面についている。
ローゼン「アクアヴァルナの下水道への入り口さ、昔にこっそり掘って作ったんだ。」
シグナ「お〜やるね」
サクナ「下水道かぁ」
アルド「中に入る方法があるならなんだっていいさ、ありがとうローゼンさん」
ローゼン「いやいいさ、それより無事に帰ってきてくれよ?まだ教えたいことあるからね」
アルド「当たり前だ、簡単に死んでたまるかよ。」
アルド「みんな……行くぞ!」
アルドの号令と共に潜入を開始する。
強大な激流に立ち向かうために。