迫真将棋部。   作:名取クス

1 / 9
(将棋小説は)初投稿です。




迫真将棋部

Q,「りゅうおうのおしごと!」の世界に転生したら何をする?

 

A,「迫真将棋部」を流行らせる。

 

当たり前だよなぁ。

 

という事で『りゅうおうのおしごと!」ワールドに転生した俺は現状を確認するためにパソコンを買ってもらい先輩達の芸術的ガバと洗練され尽くした切り返しが楽しめる動画(リプレイ)を拝見しようと思ったのがこれが酷い。

 

「検索ヒット件数…ゼロ⁉︎」

 

無常に画面に映し出される「お探しの動画は見つかりません。」

 

つまり、先輩部員/zero。

という事は将棋部期待の星、絵師兼部員『色硬筆』兄貴、ドアノブカバーを被った狐でお馴染み『MLT』兄貴、迫真将棋部創設の原点にして頂点『猪兄貴』さえ、いない…?

 

ウッソだろwwww。

 

いや、まだだ。

俺には奥の手がある。

 

俺の転生特典は『迫真将棋部』。

迫真将棋部のみんなが積み上げてきた歴史(もの)は、全てこの頭に入ってる。

 

なら、また始めればいい。

誰かが続く限り、『迫真将棋部』は不滅!

 

先駆者兄貴はいなくても、俺はやるよ!俺はやるよ!

 

だから、できれば俺の投稿した動画で笑ってくれよ。

それが俺なりの最高の兄貴たちへの恩返しになるはずだ。

 

さぁ

間抜けなガバに笑い

及ばぬ負けに奥歯を噛みしめ、

ギリギリで掴んだ勝利に拍手する時だ。

 

俺が、俺たちが『迫真将棋部』だ! 

 

流行らせコラ!

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

 

 

私は息子が心配だ。

昔から将棋が大好きで、小学校に上がった途端にパソコンをねだるようになった。

最初は抵抗があった私達夫婦だったけど、とうとう折れてお誕生日の日には買ってあげた。

 

今までずっと聞き分けが良い子だったのに、急にワガママを言うようになって安心した面もあった。

 

「たまのお願いぐらい聞いてあげるか。」

夫もそう言っていたし私と同じ意見だったみたいだった。

 

箱から無骨な真っ黒なパソコンを取り出した時、息子は心底嬉しそうにはしゃいでいた。

買って良かったと思った。

 

息子は次の日からさっそくパソコンをいじるようになった。

何をしているか画面を覗くと、オンラインでひたすら将棋をしていた。

 

息子がパソコンにのめり込みすぎる心配があったけど、やっぱりうちの子は聞き分けが良かった。

私の言いつけはいつもきっちり守って、パソコンを使っていた。

 

その上で私は不安だった。

息子は友達をあんまり作らない。

どっちかと言うと、作れないのかもしれない。

将棋だけが友達みたいだった。

 

 

そして息子は時々突拍子もない事を言う。

それは、小学3年生の12月。冬。

息子が改まった感じで私に言った。

 

「俺、桜花戦に出たい。」

 

桜花戦は、将棋の7大タイトル戦に次ぐ新しい準タイトル戦として新設される、アマからプロへのチャレンジマッチの意味を含んだ将棋の試合だ。

 

勝つのは難しいかもしれないが、せっかくならそこで知り合いとか友達とか作ってこないかなぁ、ぐらいの願いを込めて私は快く頷いた。

 

そして息子は新準タイトル初王者のトロフィーを持って帰ってきた。

私は顎が外れた。

 




読了ありがとうナス
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。