第二次世界大戦中、ドイツ占領下、フランス某所、兵器工廠。
ドイツ占領下となったフランス軍人は、ここの兵器工廠で労働力として働かされていた。
俺……ピエール・アンドレ・サンチェもその1人だ。
今日も今日とてクソナチ共が同胞をヤるための銃を造らされる日が始まる……と思っていたんだが、今日は違った。
「おい、タマネギ喰わねぇか?」
「は?」
そう隣のレーンのバカ……トニー・アンドレ・ペレクが話しかけてきた。
しかも唐突にだ。
いつもどこからか知らねぇが外にいるレジスタンスとやらから情報を得てるとかいうバカだが、今日は普段とは違い、細工のやり方を教えようとしてくるとかじゃなかった。
「タマネギだぁ?いつもナチどもにジャガイモ食べさせられてるだろ、それで我慢しろ」
「ああ、アレもアレでいいもんだ、味付けさえすればどんな食い方もできる……そこにソーセージとビールが着いてきた日にゃもう堪らねぇさ」
「だろ?殺されてねぇだけマシだよ」
「違ぇねぇ。だがお前の革命魂はその程度か?あのクソナチ共に銃の暴発や不具合とは違ったモノを喰わせたくねぇか?」
急に何を言うんだコイツは。
俺らには武器なんてものは下半身についたイチモツと己の拳しかねぇ。
Vive la Franceなんて叫んだ日には独房か痛い目を見るだけだ。
……まあ、こんなクソッタレな日々を過ごすぐらいならそれもアリかもしれないが。
「俺には秘密裏にシャバと繋がっているパイプがある、そこが言うには、だ、1週間後、その気があるならここを脱出して、レジスタンスとして活動させて貰えるらしい。これはお前にしか話せねぇ話だ」
「なんで俺だけなんだ?ここには軍の上官もいるだろ?」
「お前がいい戦闘力がありそうだからだよ、聞いたぜ?開戦した時、前線でナチどもをヤりまくったらしいじゃねぇか」
「あんなのたまたまだ、たまたまナチの戦車が前線に走っていった後で後方の補給部隊を奇襲できただけに過ぎないさ、しかも上手くいったのもそれっきりだ」
「だがヤったのは事実だろ?」
「……まあな」
そんな会話をしながら、俺は既に手馴れた動きで、銃のパーツにバレないように致命的なキズをつける。
それを見てトニーの野郎が軽く口笛を吹きながら、俺と同じように、手馴れた動きでキズをつけていく。
そして、そんな事をしながらでも、いくつかキズをつけていないパーツを、トニーがパクっているのが目に入った。
「……おい?」
「なんだ?」
「なんだ?じゃねぇ、今何した?」
「見ればわかるだろ?銃を組み立てるためのパーツをパクったのさ」
「バレたらどうする?パーツが足りないとなるとガサ入れされてバレるぞ?」
「それは大丈夫だ、製造レーンの野郎と既に手は組んである、いくつか余分に作ってくれてるよ、それを俺はパクるだけさ」
「……今どの辺まで進んでる?」
「看守に気づかれないルート開拓が終わった所さ」
「……そうか、そのレジスタンスとやらに入れば何がある?」
「自由なフランスが手に入る……かもしれねぇ。興味出てきたか?」
「作戦決行は?」
「今日から1週間後の夜だ、漏らすんじゃねぇぞ?」
そんな会話をしているうちに、いつの間にか晩飯の号令がかかった。
俺たちは別れ、マズくも美味くもないメシを食べさせられ、夜の作業を終え、牢屋で眠りにつく。
そして気がつけば、6日経っていた。
「……進捗は?」
そう、自分の作業をしながら、見張りのナチに聞こえない声で尋ねる。
「順調さ、ブツもあるし弾もある、マガジン2本分だけだがな」
「………計画は?」
「明日は曇りだ、月明かりも遮られる」
「なるほどな………」
「やっとその気になったか?」
そう尋ねてくるトニーの方向を向く。
トニーも嫌なニヤケ顔で俺の方を向いてくる。
「お前もバカ野郎だな」
そう言いながら拳を突き出す。
「お互い様さ」
そう言って、トニーはその拳に拳を打ち付けてきた。
「おい!そこの2人!何をしている、作業に戻れ!」
「クソがよ」
そう悪態をつきながら作業を再開し、俺たちは夜になるのを待った。
そしてその日の夜。
作戦決行の時間。
俺はいつの間にか掘られていた通路から建物の外へと出て、事前に組み立てられていたMP40と、その弾の入ったマガジンを手渡される。
それを構えながらトニーについて行き、事前に壊されていた有刺鉄線の柵を越えていく。
やがて裏山のようになっている、死角の多い場所へとたどり着き、少し離れたところで、車のエンジン音が聞こえてきた。
そちらの方向へと銃を構えて進んでいくと、車のエンジン音がする方向から、声が聞こえてきた。
「ここで合言葉を使うんだ……『タマネギの喰い方は?』」
「『揚げ、だが焼きもいい』」
「味方だ」
「なんちゅう合言葉だよ」
そんな会話をしながら、俺たちは草むらを通り過ぎ、ランタンの灯りに照らされている道路へとたどり着いた。
服装はフランス軍のものだ。
「……アンタらが、例の?」
「ああ、枢軸に対するレジスタンスだ、これから仲良くやろう」
そう言って、俺らと同じくMP40を装備した男が手を差し伸べてくる。
俺はその手を取り、男の指示に従い、車に乗り込んだ。
それと同時に、祝福するかのように曇り空が晴れ、月の明かりが、俺たちを照らした。
いかがでしたでせうか?