同じ町で、同じ名前?まさか……
「住所は?」
「○○だよ。」
ここまできたら、嫌でも分かる。
「僕の名前も蓮見武臣です。もしかしてもうひとりの僕ですか?」
もうひとりの僕?は、呆然と自分を見ている。それはそうだ、自分が二人とか早々信じられないだろう。
「……何歳だ?」
「え?」
「答えてくれ。確かめたいんだ」
「13ですけど……急にどうしたんですか?」
「私は23だ。同一人物だとしたら年齢が合わない。」
「そんな……じゃああなたは一体誰なんですか!」
訳が分からない。同じ住所で同姓同名なのに別人てどういうことなんだ?
「君と私は、過去と未来の同一人物で別々の体に意識が宿ったのかもしれない。」
ややこしいけど、状況から考えたらそれぐらいしか考えられないかもしれない。
「ただ、私には中学以前の記憶がないんだ。若い頃の記憶だから忘れていただけだと思っていたが、中学以前の記憶が君に別れてそれ以降の記憶を私が持っている。可能性としてはこっちの方が高いかもしれない。」
「過去と未来の僕じゃなくて、記憶が二つに分かれてるだけと言うことですか?」
「憶測だから正しいかは分からないけどね。」
もうひとりの自分は肩を竦めて、力なく笑ってる。
「名前決めようか」
「え?」
「同じ名前だと混乱するだろ?二人で適当に名付けして呼び合った方がいいかと思ってね。私が君の名付けをするから、君が私の名付けをしてほしい。正直自分が今どんな姿をしているか分からないから、名付けをしてくれると助かる。」
確かに、僕と同じ名前だと呼びづらいし分けた方がいいだろうな。ただ、名付けなんてしたことがないから急に言われても名前が全然浮かんでこない。
何か名付けのヒントにならないかともうひとりの僕を見る。もうひとりの僕も女性だが、僕とは違って大人っぽくてすごく綺麗で彼女の目を見ていると落ち着かなくて目をそらしてしまう。彼女の顔を見てふと浮かんだ名前を呟いた。
「ユキさん……」
「ユキか……まぁなんでもいいんだけど、この体は日本人みたいな顔をしてるの?」
「そうですね。でも、どうしてそんなことを?」
「だって君どう見ても日本人離れした顔してるから、私もそうなのかなって思って。」
そう言われて僕の長くなった髪を見たら、サラサラとした金髪が揺れている。頭がいたくなった僕は頭を抱えようとして手を横にやった瞬間
「んっ……」
何だ!?耳に触った瞬間、くすぐったくて背筋が粟立って落ち着かない。気持ち悪くてもう一度耳を触る。
「ひんっ」
敏感になってるとか色々あるけどそれよりも
「耳が長い!えっなにこれ?気持ち悪っ」
「何やってるんだ?」
ユキさんが呆れた顔で僕を見ている。
「耳に!耳に何かついてる!」
「耳しかついていないが?」
「そういうことじゃなくて!」
「あー、悪い。確かに耳は長いな。というか、ファンタジーとかでよくあるエルフにしか見えないな。」
「エルフ?」
自分の体じゃない?一生この訳の分からない体のまま?どこなのかも分からない場所でこのまま死んでしまうのか?
そんなことを考えていたら、急に怖くなってきて体が震えてきた。
「寒いのか?」
そう言ってユキさんは上着をわたしのローブの上から羽織らせてくれた。不安に刈られた僕は羽織ってくれたユキの手をギュッと握った。ユキさんの手は想像以上にひんやりしていて暖かくはならなかったけど、誰かが近くに居るだけで心が少し落ち着いてきた。
「セナン」
「え?」
「君の名前。」
そういえばそんな話だった。聞き馴染みのない言葉だったので、名前だって分からなかった。
「どういう意味なんですか?」
「なんだろう?何となく」
「ははっ、僕たちほど適当に名前つけてる人はいないんじゃないんですか?」
「そうかもね」
そう言って、ユキさんも笑う。ユキさんが笑うのを見るのは始めてで、やっぱりユキさんもこんな訳が分からない場所に来て辛いんだって気づいた。辛いのは自分だけじゃないと思うと、少しだけ頑張ろうって気になってくる。年上な上に自分だけどこんなに優しくしてくれるユキさんの役に立ちたい。
「ごめんなさい。一生このままで迷子のまま死んじゃうかもって考えたら。」
「……大丈夫だよ。」
「そうですよね!もとの場所に戻る方法を見つけて一緒に帰りましょう!」
ユキさんは返答の代わりに僕に微笑んでくれた。美人がやると儚い感じがして絵になるな。……もうひとりの僕じゃなかったら惚れてしまいそうだ。
そうやって話をしていたら開けた場所に出てきた。今までずっと森の中で薄暗かったので明るい場所に出れて少し沈んだ気持ちも軽くなる。
「ユキさんも一緒に行きましょう」
そう言ってユキさんの手を引くが、日の光に入る直前でユキさんは手を離してしまう。
「どうしたんですか?」
「ごめん。少し眩しくてね。」
ユキさんはローブについていたフードを目深く被って、僕の後ろをついてくる。
少し進んだ先が丘のようになっているため、周囲を見渡すために先へ進む。進んだ先の景色は山、山、山………どこまで行っても人の気配が感じられない光景だった。
正直、ここまで来れば何か手がかりがあるんじゃないかと思っていたけれど、人がいるかどうかも分からないという絶望で膝を付きそうになった瞬間
「あそこに何か塔のようなものが建ってないか?」
ユキさんの視線の先を見るが何も見えない。ユキさんが嘘を付いているようには見えないので目を凝らして見ようとするがどうしても見えない。
「どこにあるんですか?山とかの見間違えとかではなくて?」
「見えないか。この体は目がいいみたいだからそのせいかもな。あれは人工物だ。人工物ということは少なくとも作った人間がそこにいるはずだ。とりあえずはそこを目指そう。」
「はいっ!目標はとりあえず決まりまふごっ」
突然ユキさんに押し倒されて、胸に顔が埋まる。突然のことでしだばたしていたら
「静かに、何かに囲まれている。」
周囲を注意深く見てみたら、森の中から光る無数の目が僕たちを見ていた。