二人で旅をしたい   作:kumakiti

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別れた記憶3

「草に隠れながら移動しよう。見つかってるかもしれないけど、なにもしないよりはましかもしれない。」

 

 緊張で喉がカラカラで呼吸も早くなる。周囲から見つめている何かの息づかいがずっと聞こえている。ゆっくりと移動していたら木の間から緑色の子どものような生き物が出てきた。

 

「妖怪みたいなのが出てきたな。」

 

「僕、あんなの初めて見ました。」

 

 ばれないように顔を近づけて小声で話しているが、心臓の音の方が大きいのではないかというくらいばくばく言っている。

 先ほどの一匹から続くように次々と同じ緑の小人が森から出てくる。20匹、30匹と出てくるのを二人で呆然とみていたら、横の草むらからも出てきた。

 出てきた瞬間横から体を引っ張られる。

 

「逃げるぞ!」

 

 抱き抱えられながら緑の小人を見ていると目が合う、緑の小人は微動だにせずこちらを見ている。

 

「待ってください。少し様子がおかしいです。」

 

「どうした?」

 

「あいつらは僕たちに全く興味がないみたいなんです。さっきの奴も丘の方に向かっています。」

 

 今自分達の横を通っている小人たちもこちらを多少見るがすぐに興味をなくして丘の方に向かっている。丘は小人が集まりすぎて毒々しい緑色になっている。

 

「何がしたいんだあいつら?」

 

「上を見上げて口を開けていますけど何か降ってくるんですかね。」

 

 一匹の小人が痒いのか喉をかきむしり出した。それに呼応されるように小人がのどを一斉にかきむしり出す。異様な光景に固唾を飲んで見守っていると、口から何か出てくる。

 

「あれは木?」

 

「小人て植物だったんですか?」

 

「緑色の肌は、葉緑体だったてことなのかな。」

 

 二人でそんな話をしていたら、小人たちの方角から異様に甘い匂いが漂ってくる。あまりの甘い匂いに気持ち悪くなってしまう。ユキさんも服で顔を隠しているから同じ匂いを感じているようだ。

 その場から離れようとユキさんに提案しようと振り替えったら、森の中からまた小人が出てきた。ただ、今までのどこか無気力だった小人とは違って、勢い良く丘の上の小人集団に駆け寄っていく。

 

「やけに活きのいい奴だな。今までのとは別種なのか?」

 

「ユキさん、あの小人が木から何かを取ろうとしています」

 

「木の実?キウイみたいなものがぶら下がってるね。」

 

 ユキさんの言っていた木の実を小人はかぶり付いている。小人が食べ始めた途端に周囲の甘い匂いがいっそう濃くなる。その匂いに釣られたのかたくさんの小人が出てくる。

 甘い匂いで頭が痛くなってきた僕たちはその場から離れた。

 

「小人が植物なんじゃなくて、植物が小人を動かしていたのかもしれないな。木の実を食べた小人に寄生して数を増やしてるのかもしれない。」

 

「うぇっ、もしかして道端に生えてる木の実とかも小人から生えてたりするんですかね?」

 

「そうかもしれない………」

 

「小人に寄生するんだとしたら、僕たちにも寄生したりとか……」

 

「拾い食いしないようにね」

 

「食べないですよ!でもどうしよう、僕たち食べるもの持ってないですよ。」

 

「果物は、生で食べるのは少し怖いね。どうしても必要なら火を通して食べるようにしよう。肉も食べたいけどまず捕まえないといけないね。」

 

「今のところ見た動物は良く分からない獣と、小人だけですね。最初の獣はともかく小人は食べたくないですね。」

 

 よっぽど追い詰められれば食べなければいけないと思うが流石に食べる事態にはなってほしくない。

 

「あ……ポケットから何か出てきた。」

 

 ユキさんはそう言ってビスケットのようなものをポケットから出す。甘い匂いがして僕のお腹がくぅと鳴った。

 

「食べる?」

 

 ユキさんはにやにやしながら僕を見ている。確実に馬鹿にしている。

 

「いいです!」

 

 からかわれてるのが分かった僕は、そっぽを向いた。

 

「ごめんごめん。お腹が空いてないから本当に食べていいよ。」

 

「いいんですか?」

 

「ああ、どうぞ。」

 

「ありがとうございます」

 

 ここに来てから何も食べてなかった僕は夢中になって食べてて気づいたら手の中には何もなくなっていた。食べ終わって少しもの足りない気持ちもあったが、ユキさんは何も食べてないと思うと我慢しないといけないな。その後もユキさんと少し雑談しながら道なき道を進む。

 

「最初に会ったときにセナンは私を助けてくれたよね。」

 

 あの時は夢中で意識せずに力を使ったが、あの力はなんだったんなんだろうか?今でもあの程度のものであれば何度でも打てそうだ。

 

「あれ以外で何か出きることとかあるかな?」

 

 自分に出きることと想像していたら、次々と力の使い方が出てくる。急に頭の中に記憶が浮かんだからか頭痛がして頭を押さえてしまう。ユキさんが心配そうに背中をさすってくれるが、お礼を言うほどの余裕もない。視界が揺れるほど痛みで立つこともできず地面に倒れ込んでしまう。

 

---

「えーと、テントとあと食料も出してと...」

 

 体少し熱くなってきたと思ったら、少し力が抜ける感じがして気が付いたら目の前にテントと食事が出ている。僕はそれを取ろうとして手が動かせないことに気づく。

 ああこれは夢だな。そうぼんやりと考えていたら

 

「いつもすまないな。荷物を持たせてしまって」

 

「気にしないでください。荷物はいつでも収納できるんで」

 

 僕はそう言って振りかえ

 

---

 

 目が覚めたら、ユキさんが心配そうに僕の顔を覗き込んでいる。どうやら膝枕をして僕のことをずっと看ていてくれたみたいだ。先ほどの夢を思い出したかったが思い出そうとしても霧のように記憶が消えてしまう。とりあえず夢のことは忘れて起き上がろうとしたがユキさんに押し返されてしまう。

 

「そろそろ暗くなってきたし、すぐ近くに雨風が凌げそうな木のうろがあったからそこで休もう。」

 

 大丈夫だと言ったが、遠慮はしなくていいと言われ背負ってもらっている。誰かから背負ってもらうのは小さな頃に父親から背負われていたとき以来でとても懐かしい。夕方まで遊んでそのまま背負われた状態で寝ていたときのことを思い出し、ユキさんの背中で目をつぶった。

 

「着いたよ。一応枯れ草とかもあるから冷えることはないと思うけどどうかな?」

 

「ありがとうございます。実はさっき使ってた力の記憶が急に出てきまして、ものが取り出せるんです」

 

 僕はさっきの記憶の中にあるもので、別の空間に繋げて物を持ち運ぶ術を使う。記憶が正しければこの中に目当ての物があるはずだ。

 

「毛布とシート?」

 

「はい、何か持っていたみたいでテントや半年ぶんくらいの食料もあるみたいなんです。これでしばらくは何とかなりそうですね!」

 

 干し肉と凍った果物を二人分、空間から出す。

 

「ユキさん、お腹空いちゃったんでご飯食べましょう。」

 

 ユキさんは僕の出した食べ物をおなかがすいていないと言って受け取らなかった。ご飯をずっと食べていないので体調でも悪いのだろうか?心なしか顔が赤いような気がする。我慢をしていないか不安だったがユキさんは大丈夫だと答えたためそれ以上は追求しなかった。

 

「ユキさんも何か力は使えるんですか?」

 

「ごめん、何も分からないんだ。セナンみたいな力があればいいんだけど、今のところセナンみたいな不思議な力は使えないな。」

 

「ユキさんの言ってたエルフと言ってましたけど、この体は人間じゃないんですかね?」

 

「あー、見た目が小説とかに出てくるエルフに似てたからそう言っただけでそこまで深い意味はないよ。それよりも、食料とかが取り出せると言っていたけど、私たちの意識が宿る前までにあそこまでこの体は旅をして来てたんじゃないかなと思うんだ。さっきセナンが取り出した荷物も旅をするための食料や道具じゃないかと思うんだ。」

 

「そうですね。何となく力を使ってましたが、急に力を使えるっておかしいですもんね。」

 

「だからこの体をもとの人たちに返したらもとの場所に戻ることが出きるんじゃないかなと思うんだ。」

 

 まぁ希望的な観測なんだけどねとユキさんは肩を竦めた。でも、手がかりない状態だとそれぐらいしか思い付かないし、何をするにしても人里に降りないと状況は好転しないだろう。とにかく何とかこの山岳を抜けなければいけない。

 焚き火を見つめてたユキさんが座る位置を直して僕によって来た。ユキさんはもうひとりの僕だと言うが、僕の知らない経験をしているユキさんをどうしても自分だと思えず少し距離感を掴めていない。正直に言えばとても緊張している。

 

「ひとつおねがいがあるんだ。」

 

 ユキさんからたくさん助けてもらっているから、僕に出きることなら何でもやりたい。助けてもらってばかりでは申し訳ないし、役に立ちたい、そんな思いでうなずいた。

 

「血を……吸わせてほしいんだ。」

 

「えっと、血って血液のことですか?」

 

「ああ。ずっと我慢してたんだけど、もう苦しくて……変なことを言っているのは分かるんだがお願いできないかな?」

 

「のどが渇いてるんですか?飲み物ならすぐに出しますよ」

 

 僕は別の空間に保存してある水を取り出すため力を使おうと目をつぶる。

 

「ごめん」

 

「え?」

 

 急に押し倒されたかと思うと、肩に鋭い痛みが走る。

 

「痛いよ、ユキさん…。」

 

「あ、あぁ…」

 

 ユキさんはすぐに離してくれたけれど、酷く動揺した顔で僕を見ている。ユキさんの信じられないものを見るような目を見ていると怖くなって目をそらしてしまう。

 

「どうして?」

 

「昼間からずっと飲みたくてしょうがなかった。我慢できるかと思ってたけど、ごめん…」

 

 ユキさんはそれっきりうなだれてしまって、火の音だけが響いている。何て声をかければいいか分からなくてすごく気まずい。ビックリはしたけどちょっと痛いだけで特になんともない。だから大丈夫だと言おうとしたところ

 

「私はもしかしたら吸血鬼なのかな。実は日の光も指すように痛かった、血も吸いたくなる。」

 

「ゆきさん…」

 

「ごめんね……痛かった?」

 

 最初は何を言われたか分からなかったが、すぐに首筋の穴のことだと分かり触ってみるが穴がない。

 

「あれっ?さっきまで穴が空いていたのに」

 

「本当だ。君の治癒力がすごいのか、私が噛んだからなのか…どちらだろうね」

 

「うーん。何となくですけど私はそんなに治癒力はないと思うんですよね。」

 

「なんともなくて本当に良かった。」

 

 そう言って、ユキさんは目を伏せてしまった。

 

「き、気にしないでください!」

 

 ユキさんはほっとしたように息を吐く。ユキさんの吐いた息からは鉄の匂いがするけど、嫌な匂いじゃない。

 それから後は、二人で火を見つめながら僕の記憶の話をした。学校の話や友達の話をユキさんは楽しそうにニコニコしながら聞いている。ユキさんが笑ってくれるのが嬉しくてさらに両親の話もする。二人に連れていってもらった場所や料理の話をしたが、両親の話を始めたときにユキさんはどこか寂しそうに感じた。ユキさんも大人とはいえやっぱり両親に会えないのは辛いのかもしれない。自分も両親に会えないのは辛いけどユキさんも励ませるようにならなきゃいけない、そう思った。

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