気がつけば人から、人ならざるモノになってしまった時の気持ちをどう表現すればいいのだろう。
前世の記憶は殆ど無い。自分に家族がいて、友人や知り合いがいたという事は覚えてるが、それだけ。
相手の名前も思い出せないし、自分がどこで育ち、一体何歳だったのか。仕事はしていたのか、それとも学生だったのか。それすらも覚えていない。
そんな中で唯一覚えていたのは、モンスターハンターというゲームをしていた、という記憶だけ。
どんなモンスターがいて、どんな装備があったか。
私が実際にプレイし、見聞きした記憶だけは鮮明に覚えていた。
誰がこんなことをしたのかは分からないがクソ食らえと思う反面、その記憶のお陰で今の私が何になってしまっているのかはスグに理解できた。
ジンオウガ。
モンスターハンターP3のメインモンスターで《雷狼竜》と呼ばれる、人気のモンスター。
それに生まれ変わった……訳なのだが、どうも違和感がある。
まず気付いた時には、私の体は既に成体であったこと。
ジンオウガの幼体を直接この目で見たわけではないので、断言することはあまり出来ないが、それでもゲームをプレイしていた時に見ていたサイズ感と、自らの視点の高さからこの肉体が成体のモノであろうと推測できる。
となると、必然的に自身が幼体であった時期がある筈なのだが幾ら掘り返そうとも、ある時目が覚め、その視界に煮え沸き立ちながら流れていく溶岩を納めた以前の記憶がない。
まさか、突如として自然発生したわけでもあるまい。
ジンオウガという生命体の成長速度は知らないが、幼体から1日2日で急激に成長する……なんてことはない筈。
生まれた直後から成体に近いサイズであったということも考えられるが、その場合まず間違いなく子を生んだ母親は死ぬ筈である。
仮に成体に近いサイズでジンオウガの子供が生まれるとしても、子供には違いなく、近くに親であろう個体がいるべきだ。
しかし、それらが確認できないと言うことは、既に親元を離れ己で生き抜く成体となっていることは間違いないであろう。
……まぁここまで長々と語りはしたが、私が既に成体であった事に関してはそこまで深く考える必要はないと今は思う。
狩りの方法は獣の本能というべきなのか、自然と体が動いたし、他の命を奪う事に関しては罪悪感や忌避感は感じなかった……生肉を食らうことに関しては当初、若干の抵抗はあったが、今では好物となっている。
さて、ここまで来て一番の問題は私の外見である。
近くに水場がなかった為に全体像は確認出来なかったが、それでも視界を動かし、腕の形状から自分がジンオウガらしきものであると理解した。
……そう、ジンオウガらしきものである。
私の体は己の知るジンオウガとは少々異なっていたのだ。
まずは前脚──いや、前腕と言った方が正しいのか。自分の知る一般的なジンオウガと違い著しく発達している前腕は、本来であれば黄色の甲殻に覆われているはずだが、自分の視界に映った色は黒。
更に爪も赤く変色しており、形状も心なしか鋭く凶悪なものに変形している。
その後周囲を彷徨き、発見した水場に私の体が反射したことで分かったが、前脚だけでなく全身の甲殻が黒色に変色しているだけでなく、角も形状が変化しているなど随所に細やかな変化が確認できた。
全体的に禍々しい雰囲気を感じるその姿は"漆黒のジンオウガ"と評するに相応しいモノであり、何処かの作品の裏ボスと言っても通じるのではないかと思うほど。
しかし悲しいことに、自分はP3で一旦モンハンから引退しており、後に友人の勧めでXXという作品で復帰をしたという経歴のため、それらの作品に登場したモンスターの知識しか無い。
無論最新作であるワールドにもハードの問題上、手を付けることが出来ず仕舞いな為に、ネルギガンテというモンスターが居ることくらいしか分からない。
故に、この黒いジンオウガが自分がプレイしたことの無い作品のみに登場していた個体だという可能性はかなり高く、亜種か希少種、はたまた金雷公のような2つ名持ちか。それともオンラインゲームであったフロンティアに登場していた個体なのかもしれない。
まぁ何はともあれ、こうして私はこの厳しくも美しい大自然を生き抜く為に奔走することになった訳だ。
一先ず私が何者だとしても、生まれ変わった以上はそう易々と死にたくはない。
まだまだこの火山地帯と思わしき場所の力関係には疎く、時折グラビモス殿やリオレウス殿といった先人(先竜?)の縄張りに踏み込んでしまうが、親切にも『ここから先へはくるな』といった風に警告してくれるのだ。
こちらも謝罪の意味を込めて軽く吠えて、頭を下げると、向こうも納得してくれたのか、縄張りの奥へと消えていく。
それから数日間は生前で体験したことのない光景を楽しみながら歩き回っていたのだが、流石に飽きて来はじめ、更には一人の時間に寂しさを感じ始めた。
しかし親らしきモノ勿論、自分の同族は1体もおらず、かといって種の異なるリオレウス殿やグラビモス殿の元へ向かうのもどうかと思う。
そんな時、私はジンオウガという種は群れで子育てを行うと言ったことを思いだし、それならば同族が沢山いるであろう渓流などに脚を運ぼうと思い至り、今まで世話になったこの地に心中で礼を述べ、大地を蹴り目的地に向かって駆けていった。
少し前からハンターギルド上層部は蜘蛛の子を散らしたかのように騒がしかった。
どうしてそのようになったのか、それは世界各地を飛ぶ数ある観測気球の1つから知らされた、とある情報から始まった。
突如、火山地帯で正体不明の巨大な赤黒い光が観測される。
落雷と言うにはあまりにも長く、天に昇るかのように輝き続けているように見えたその光は、だんだんと収束していき、やがて何事もなかったかのように消えた。
単なる自然現象と片付けるにはあまりにも不自然であったその光の正体を調べる為に、ギルドは直ぐ様信頼できるハンター達による調査団を派遣。
ほどなくしてその光の発生源を特定することが出来た。
威圧的な漆黒の外殻、そしてそれとは対照的な白の体毛に身を包むなか、相手の肉体を切り裂く武器である爪はドス黒い赤に染められ。
加えて肩から背中、そして尻尾の裏側には常に薄らと赤く光る模様が浮かび上がっている。
漆黒の甲殻と白銀の体毛に覆われ、仄かに赤黒く明滅させるその風貌は、見るものに"黒い悪鬼"を連想させる。
その名はジンオウガ亜種。
"無双の狩人"、"森の王"などと呼ばれ、威風堂々とした王者の風格を漂わせる通常種から一転、凶暴且つ獰猛な性質を持ち、それに加え前述した禍々しさすら感じられるその圧倒的な迫力を放つ風貌から《
《
そんな中で発見された本個体は、従来のジンオウガ亜種と比べ、体の随所が変異している事が調査団によって判明する。
まず目につくのはその体格。従来の個体を大きく上回る体を持ち、真っ直ぐに伸びる頭部に生える1対の角はかの《角竜》ディアブロスの角のように捻れ、悪鬼という呼び名により近づいている。
そしてその巨体を支えるためであろう。前腕と後足も更に強靭になっており、特に前腕部の発達が著しい。爪もより獲物や相手の肉を引き裂く事に特化したように鋭く、より太く頑強な形状へと変化している。
本領を発揮する"龍光まとい状態"ではない状態であるのにも関わらず、見るものに畏怖を与える外見に変貌したそのジンオウガ亜種は、ほどなくして発見された火山地帯からその姿を消した。
直接的な戦闘は観察出来ていないが、我が物顔で灼熱の大地を歩き回る彼に歯向かうものはおらず、それまで生き生きと過ごしていたモンスター達は触らぬ神に祟りなし、まるでそう言っているかのようにある者は岩の影に息を殺し身を潜め、ある者は悪鬼の視界に入らぬよう慌てるようにその場から立ち去っていく。
天空の王者リオレウスや鎧龍の呼び名を持ち、火山の重鎮とも言われるグラビモスといった縄張り意識の高いモンスターでさえも、何時ものように自身の縄張りに脚を踏み入れたこのジンオウガ亜種に自ら攻撃を仕掛けることはなく、あくまでも相手の間合いの外から吠えて威嚇するだけにとどまっており、まるでこの獄狼竜との戦闘を避けているかのように感じられた。
この事からこの獄狼竜は通常状態でそれ程までの力を持っていると考えられ、要注意個体としてすぐさま狩猟するべきであるとの声も上がるほどであった。
そんな獄狼竜が今まで我が物顔で歩き回っていた火山地帯から離れるというのは、ある意味衝撃的であった。
住みかを変えたのか、それとも元々別の住みかがありそこから遠征に出掛けていたのか。
それとも……自分よりも強い何者かによって住みかを追われたか。
かつてユクモ村で発見され、同村の専属ハンターによって討伐された個体は、古龍の1体《
この事からこの個体が元々住みかにしていた火山地帯、もしくはその一角が古龍種などの強大な存在によって奪われたのではないかと、姿の見えない脅威に備えると共に、姿を眩ました特異な獄狼竜の行方の捜索に乗り出した。
主人公「景色も堪能したし、仲間探しにいこーっと」
人間&竜人族「あんな強ぇのが姿を消した!?もっとヤバいのがおるかもしれんのか!?」
こんな感じです。
主人公は強いです。
フロンティア産のように魔改造されています。
ニフラム系の技は……使うかどうかは分かりません。
ヒロインはどの種族?
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ナルガクルガ種
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ジンオウガ種
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タマミツネ種
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ルナガロン
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キリン
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全員(出来るとは言ってない)