負けるな、踏み台君!ファイトだ、悪役令嬢ちゃん!   作:サニキ リオ

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第127話 道中での戦闘

 

 一組の男達が馬車に揺られていた。

 

「しっかしよぉ、スタンリー。男二人旅とは味気ねぇもんだな」

「仕方ないだろ、ファーガス以外に自由に行動できる奴いないんだから」

 

 スタンリーとファーガスとお互いを呼び合った二人はボロボロのローブを身に纏い、馬車の手綱を握っている。

 

「俺様は竜をぶった斬りたくて仕方ねぇってのに」

「我慢してくれ。あとから合流組がくれば別れて行動できるんだから」

 

 不満げなファーガスをスタンリーが窘める。

 そんなスタンリーを見て、やれやれといった表情を浮かべるファーガスだったが、すぐに真面目な顔に変わる。

 

「にしても、変装までする必要あったか? そのうえ偽名まで使うなんて慎重すぎやしねぇか」

「兄上の配慮だよ。ここから先何が起こってもおかしくないんだから慎重に動いて損はない」

 

 スタンリーことスタンフォードは退屈そうなルーファスに苦笑する。

 偽名まで使い、変装してまで調査に出向く。

 そこまでしなければならないほどに状況は切迫している。

 

「強制的にサボったことにされるのはちと不満だが、仕方ねぇか」

「国家が転覆したら学園どころじゃないからね」

 

 学園での生活が当たり前になっている二人が現状に違和感を覚えるのは当然のことだ。

 しかし、その生活が崩れ去る可能性がある以上、泣き言は言っていられない。

 

「そんで先行組のこっちは目的地についたらどうするよ?」

「そうだなぁ……まず、その前にやるべきことがあるかな」

 

 スタンフォードは剣を手に取ると、鞘から抜いて上空へと視線を向ける。

 そんなスタンフォードを見て、ルーファスは楽しそうに獰猛な笑みを浮かべた。

 

「戦闘か?」

「ああ、お待ちかねの幻竜だ」

「どこにも見当たらねぇが……」

 

 上空には雲の切れ間に青空が微かに見えるだけ。

 怪訝な表情を浮かべるルーファスを余所にスタンフォードは馬車を停めて剣を上空へと構える。

 

「雲竜クラウドラン。雲を身に纏い姿を隠し、天候を操る幻竜さ」

「お前さんが倒したライザルクとどっちが厄介だ?」

「もちろん、こっちさ」

 

 答えながらスタンフォードは空に向けて剣を振り下ろす。

 

「〝武雷斬波(ぶらいざんぱ)!!!〟」

 

 すると、一瞬にして雷の斬撃波が発生し、雲が濃い場所へと向かっていく。

 大きな雲はまるでその一撃に反応したかのように、大きくうねり始めたが、斬撃波の方が早く直撃した。

 

「グルォォォォォ!」

 

 雲は晴れ、灰色の鱗を持つ竜が咆哮と共に現れる。

 

「幻竜は知能が高い。きっと待ち伏せされていたんだよ」

「けっ、学園サイドの内通者は騙せても、敵は手広くやってるってわけか」

 

 舌打ちをするルーファスを他所に、スタンフォードは竜に向かって駆け出した。

 そして、そのまま勢いよく跳躍すると、空中で身体を回転させて剣を横薙ぎに振るう。

 それを見たルーファスもまた、口元に弧を描きながら地面を踏み砕いて走り出す。

 

「ルーファス、翼を斬れ」

「御意」

 

 スタンフォードの命に短く答えると、ルーファスは腰の鞘から二振り剣を抜いた。

 

「〝砕牙一閃(ブリッツファング)!!!〟」

「グルァ!?」

 

 目にも止まらぬ速度で振るわれた一撃により、クラウドランは翼を切断される。

 

「〝武雷尖刃(ぶらいせんじん)!!!〟」

 

 そこにすかさずスタンフォードが魔剣により、切れ味を増した一撃を浴びせる。

 それを嫌がるように暴れるクラウドランだったが、ルーファスはそれを許さない。

 さらに追撃するように双剣を振るうと、クラウドランの動きは徐々に鈍くなる。

 

「ちっ、翼斬っても飛べるのかよ」

「どうやら纏っている雲にも飛行能力があるみたいだ」

 

 一度地面に着地した二人は、上空から降りてこないクラウドランに顔を顰める。

 クラウドランの纏っていた雲には物理攻撃を防ぐ力があり、更には魔法に対する耐性もある。

 ルーファスが翼を斬り落とせること自体、とんでもないことなのだ。

 

「物理攻撃にも魔法にも耐性があるとくりゃやることは一つだな」

「ああ、答えは至ってシンプルだ」

 

 二人はニヤリと笑うと上空から威嚇をしてくるクラウドランに剣を向ける。

 

「「最大火力でぶった斬る!」」

 

 


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